看護師のための保健医療計画のミカタ No.14 「和歌山県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」

和歌山県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は紀州南高梅で有名な和歌山県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策についてお伝えします。

 

和歌山県の看護職員数の動向

 

世界遺産に登録されている熊野古道と、高野山で名高い和歌山県。
古来より聖地として人々の信仰を集めてきた山岳地帯や南部のリアス式海岸など、変化にとんだ美しい景観が魅力です。

 

本州最南端の紀伊半島は、黒潮が作り出す温暖な気候と、豊かな水産物に恵まれています。
農産物も豊富で、みかん、梅などの生産量は日本一。

 

そんな和歌山県ですが、総人口は全国40位。平成26年時点で、すでに高齢化率が30%を超えており、全国で3番目に高齢化が進んだ県です。
また、悪性新生物と心疾患等による10万人当たりの死亡者数が、全国平均よりも多くなっているという特徴もあります。

 

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は12,896人(保健師456人、助産師247人、看護師8,279人、准看護師3,914人)でしたが、平成26年には、就業看護職員数は13,820人(保健師474人、助産師278人、看護師9,629人、准看護師3,439人)となりました。

 

保健師、助産師、看護師はいずれも増加し、准看護師は減少しています。人口10万人当たりの就業者数は、看護師991.7人で、全国平均855.2人よりも大幅に上回っています。

 


和歌山県の看護師需要

 

和歌山県では病院勤務の看護師が最も多い72.8%を占め、全国の72.8%と同等です。
診療所に勤務する看護師も12.3%で、全国の12.4%とほぼ同じ。

 

また、和歌山県は10万人当たりの病院・診療所数が全国平均よりも多く、平成22年の時点で

 

  • 病院:全国6.8施設 VS 和歌山県9.2施設
  • 一般診療所:全国78.0施設 VS 和歌山県106.1施設

 

となっています。

 

在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務割合、介護保険施設等勤務割合ともに、全国平均よりも0.9ポイント高くなっていることから、在宅医療関連に勤務する看護師がやや多い傾向にあることがわかります。

 

全国でもトップクラスの高齢化率に加え、がんの罹患率が高い和歌山県では、今後も増えると思われる在宅療養患者を支えるために、24時間対応型在宅医療サポート体制「わかやま在宅医療推進安心ネットワーク」を整備しています。

 

県内では小規模な訪問看護ステーションが多く、その中で訪問看護師の需要はますます高まっています。

 

また、和歌山県では「地域密着型協力病院」という独自の制度を導入。
以下のような役割を担う病院を、県が指定しています。

 

  • 回復期機能病床等を保有し、退院支援看護師を配置
  • 在宅療養患者の入院を受け入れ
  • かかりつけ医の要請に応じて往診などに対応

 

こうした回復期を担う人材が不足する中で、積極的な人材確保が課題となっています。

 

和歌山県全体では看護師数が全国平均を上回っていますが、二次保健医療圏ごとに見てみると、看護師の就業者数が10万人当たりで県平均を上回っているのは、和歌山、御坊、田辺の3医療圏です。
医療施設が集中している和歌山医療圏は入院患者が集中する傾向にあり、特に那賀、有田からの流入が多くなっています。

 

一方、那賀、橋本、有田圏域では、看護師数が全国平均を下回っています。
県内でも特に高齢化の進んでいる新宮医療圏では、拠点病院が平成28年から地域包括ケア病棟を新設し、今後は高度急性期病床機能への転換も見込まれています。

 

また、那智勝浦町には新設移転病院の建設(平成30年4月開院予定)が進んでおり、今後は看護師需要がさらに増えるでしょう。

 

 

こうした状況に対する県全体の課題は、「看護職員の養成数」「看護職員の離職防止」「再就業の促進」、さらに医療の高度化や専門化、医療の安全確保、多様なニーズに対応できる質の高い看護職員の育成・確保です。

 

県内の看護師数は全国平均よりも多いものの、今後はそれ以上に看護師の需要が高まることが予想されるため、和歌山県は「養成力確保・離職防止・就業促進・資質向上」の4本柱で看護師の確保対策を行う方針を立てました。

 

現状では、平成26年4月に新たな看護専門学校が開校し、看護師数増加につながると期待されています。
また、質の高い看護を提供できる看護師として、平成29年10月現在で131名の認定看護師、24人の認定看護管理者、9人の専門看護師が在籍しています。


和歌山県の看護師確保に向けての取り組み

和歌山県では今後のさらなる看護師確保への取り組みとして、以下のような施策を行っています。

 

1.養成力確保
  • 県内の看護師養成施設の運営支援
  • 看護専門学校の新設
  • 中・高校生への啓発
  • 県内定着を促進するため学生への修学資金貸与

 

2.離職防止
  • 病院内保育所の施設設置
  • 新人・中堅・指導的立場とぞれぞれの状況に応じた研修を実施
  • 不安やストレスの軽減、問題解決のための相談窓口を設置

 

3.就業支援
  • ナースバンク事業の充実やハローワークとの連携で潜在看護師の再就業を促進
  • 看護学生や就業希望者に説明会を実施

 

4.資質向上
  • 専門分野研修の充実、特定分野で水準の高い看護技術を提供できる看護師の育成・活用

 

また、和歌山県看護協会は日本看護協会の配信するオンデマンド研修のほかにも、さまざまな研修を準備しており、看護師のキャリアアップを支援しています。

 

山間部が多く、きめ細かな在宅支援が求められる和歌山県。訪問看護師として地域の方々とふれあいながら働くのも魅力的かもしれません。

 

2000年の歴史を持つ熊野三山の周辺には風情ある温泉も数多く、熊野詣の後は温泉で仕事と旅の疲れをリフレッシュするのもいいですね。水量豊かな河川では水上アクティビティが楽しめるほか、日本一パンダの多いテーマパーク、「たま駅長」で有名な和歌山電鐵貴志川線など、心癒される見どころもいっぱいです。

 

 

参考資料

 

和歌山県保健医療計画
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/050100/iryokeikaku/keikaku.html

 

平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf

 

平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf

 

和歌山県ホームページ
http://www.pref.wakayama.lg.jp/

 

和歌山県看護協会ホームページ
http://www.wakayama-kangokyokai.or.jp/new_site/

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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