看護師のための保健医療計画のミカタ No.3 「高知県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」

■作成日 2018/2/24 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター 紅花子です。

 

各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は四国の中でもっとも広い土地面積をもつ、高知県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策についてお伝えします。

 

高知県の看護職員数の動向

 

高知県は、人口10万対の病床数、医療従事者数ともに多く、全国でもTOP5に入ります。厚生労働省による「衛生行政報告例」によると、高知県内で就業している看護職員数は、平成26年時点で看護師は8,522人、准看護師は4,316人で、平成26年時点では、看護師は9,700人、准看護師は3,922人と、看護師の全体数はやや増加しているようです。

 

 

また、人口 10 万対看護師就業者数は1,114.8 人と、全国平均を大きく上回り、全国第 1位。准看護師でも人口 10 万人対の就業者数は531.4 人で全国第6位となっています。この背景には何があるのでしょうか。

 

これらに共通する数値は「高知県内の人口」です。つまり、実際に高知県内で働く看護師および准看護師の実人数に対し、分母となるべき「高知県内の人口」が減少しているため、人口に対しての人数を出そうとすると、数値が大きくなってしまうのです。これは医師数についても同じことがいえます。

 

さらに、厚生労働省による「平成 26年 病院報告」によると、高知県内の人口100人に対する病床数は全国平均のおよそ2倍、ランキングでも全国1位となっています。その一方で、100 床当たりの看護師等の数では、全国平均 57.6 人に対して高知県は 51.7 人で、徳島県と並んで全国最下位なのです。

 

これらの数値は、高知県内の人口に対して実際に働く看護師数が多いこと、高知県内の病床数はそれに対してさらに多いことを、表しているようです。


高知県内における看護師需要

 

高知県の医療を見る上で大きな特徴となるのは、医療資源が極端に高知市周辺に偏っていることです。高知市内に医療機関が集中していることから、必然的に看護師等も、高知市のある中央保健医療圏に集まっています。その数は高知県全体の8割です。

 

それに対して、交通の便が悪く人口も少ない中山間地域には医療機関が少なく、深刻な医師・看護師不足というアンバランスが生じています。こうした背景から、県内の入院患者は中央保健医療圏に集中し、それ以外の医療圏では「自医療圏で医療を賄うことが困難である」という現状があります。実際に高知県内で働く看護師のうち、78%が病院勤務です。もちろん、中央保健医療圏以外にも病院はありますが、高知市内の病院で働く看護師が、非常に多いと推測されます。

 

全国の中でもいち早く高齢化が進んでいる高知県。特に、遠い病院への通院が困難な中山間地域などでは、地域に密着した医療が求められており、在宅医療を支える訪問看護師等の確保が急がれます。上記のグラフではオレンジ色の部分、全体の2%にも満たない「訪問看護ステーション」で働く看護師の確保が、急務といえます。

 

一方、看護師数の多い高知市では、より高度化・専門化する医療現場のチーム医療を担う一員として、専門性の高い看護師の必要性がますます高まっています。つまり、中山間地域では人数の確保、中央保健医療圏においては質の確保が大きな課題と言えるでしょう。


高知県の看護師確保に向けての取り組み

 

「平成 23 年度高知県看護職員実態調査報告書」によると、高知県における看護師等の常勤職員の離職率は 11%。理由としては「本人の健康問題」「人間関係」「結婚 ・出産・育児」などが挙がっています。また、新人看護師等の離職率も7.5%となっており、その理由には「基礎教育と現場のギャップ」「現代の若者の精神的な未熟さ」「看護師等に高い能力が求められるようになったこと」などが挙がっています。

 

こうした現状と今後の少子化の進行を踏まえ、高知県では若い看護師の育成とともに、離職防止と潜在看護師等の再就業の促進が重要であるとし、以下のような取組みを行っています。

 

  • 中山間地域への勤務を前提とした、看護学生への「看護師等養成奨学金」の給付
  • 医療施設の管理職研修で、ワーク・ライフバランスを意識した働きやすい環境づくり
  • 勤務環境改善の相談・支援事業
  • 院内保育所の整備
  • 看護師等の離職防止、再就業を促進する研修の実施
  • ナースバンク事業で未就業の看護師資格保持者に就職先を紹介

 

さらに、看護師のスキルアップをはかるための、多くの研修制度があります。

 

〈新人研修〉

 

新人看護師等が県内のどこの病院に就職しても、厚生労働省のガイドラインに沿った研修が受けられるような新人看護職員研修

 

〈在宅医療〉

 

訪問看護師等の育成研修、退院調整を行う看護師等の育成研修、訪問看護ステーション看護管理者を養成する研修

 

〈継続的な資質の向上〉

 

継続的に看護師の資質の向上をはかるための、がん、糖尿病、救急看護、看護教育方法や看護管理などの多岐に渡る研修

 

〈専門性の高い看護師等のキャリア形成〉

 

高知医療再生機構による、認定看護師や認定看護管理者の資格取得の支援

 

このほか、看護師が在宅医療への移行、医療の高度化などの状況に対応できるべく、県をあげて後押ししています。

まとめ

 

少子高齢化の進行が他県よりも早い高知県。そこには「高知県内の医療を支える看護師の育成」という大きな目標があります。高知市内の大病院で高度な知識を身につけて認定看護師としてスキルアップを図る、今後ますます需要が高まる在宅医療のスペシャリストとして経験を積む、高知県の多様な研修制度を利用するなど、様々なスタイルでのスキルアップが可能な県といえそうです。

 

 

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参考資料

 

第6次高知県保健医療計画 第4章医療従事者の確保と資質の向上
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/131301/files/2013032900604/2013032900604_www_p

 

平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf

 

平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/gaikyo.pdf

 

平成26年「病院報告」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/14/dl/gaikyo.pdf

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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