看護師のための保健医療計画のミカタ No.11 「岡山県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」

岡山県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回はいち早く第7次保健医療計画を策定した岡山県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策についてお伝えします。

 

岡山県の看護職員数の動向

 

海と山に囲まれ、晴れた日が多く温暖な気候の下、ブランド果物や和牛などの農産物が豊かな岡山県。県内企業における女性役員の比率は1/4を超えており、全国8番目に「女性が活躍する県」でもあります。

 

厚生労働省の「平成24年衛生行政報告例」によると、平成24年12月末現在の看護職員の就業者数は26,885人(保健師946人、助産師468人、看護師19,975人、准看護師5,466人)でした。同じ調査の2年度のデータでは、平成26年の看護職員の就業者数は27,434人(保健師936人、助産師453人、看護師20926人、准看護師5,119人)です。2年間で看護師が951人増加していることになります。

 

 

県内の10万人当たりの看護師数は1087.6人と、全国平均よりやや多め。しかし岡山県医療推進課によれば、県内の病院の求人数に対する採用割合は 88.2%(平成25年度)と、看護師はまだまだ不足しているようです。


岡山県の看護師の就労状況

 

県内の看護職員の就業場所は、病院、診療所、 訪問看護ステーション、介護老人保健施設、社会福祉施設など多様です。

 

ところが、県内には現在、地域看護・老人看護・在宅看護などの分野の専門看護師や、訪問看護分野の認定看護師がいないようです。今後高齢化が進み、過疎地域で在宅介護のニーズが高まっていく中で、大きな課題と言えるでしょう。

 

 

県内の人口分布を見ると、県庁所在地である岡山市と倉敷市に約120万人が居住し、県人口の60%以上がこの地域に集中しています。一方で、中北部のほとんどの市町村では、過疎化・高齢化が進んでいるエリアが目立ちます。県内27市町村中、20市町村が過疎地域に指定(一部指定を含む)されているのが現状です。医療機能も岡山市に集中していますが、その岡山市の中にも無医地区は存在します。

 

こうした環境の中で適切な保健医療サービスを提供していくため、岡山県では平成26年度末には27,434人だった看護職員数を、平成29年度末には28,652人まで引き上げ、1年未満の離職率を7.0%まで引き下げることを数値目標として掲げています。


岡山県の看護師確保に向けての取り組み

 

岡山県では看護師を確保するための施策として次の5つを掲げています。

 

  1. 看護の心・看護の総合的な普及啓発
  2. 養成力の強化
  3. 職場定着の推進
  4. 再就業の促進
  5. 資質向上

 

看護職の啓発普及活動や、看護師養成機関への助成、県内就業を前提とした奨学金貸与などで、看護職を希望する人数の底上げ図ると同時に、すでに就業経験のある看護師が働きやすくなる支援も充実させています。

 

看護職員の職場定着対策としては、院内保育への支援や、延長保育、病児・病後児保育などを充実させ、小学校入学後も市町村や地域と連携した放課後児童クラブなど、子育てしながら働き続けられる環境づくりに力を入れています。

 

また、早期離職を防止する新人看護師研修の経費を助成するほか、研修責任者や医療施設管理職研修を実施。短時間正規雇用を含めた多様な勤務形態の導入を支援するなど、看護師が出産・育児・介護といった個々のライフステージに応じた働き方を選択できる体制づくりを進めています。

 

また、現場を離れた看護職員の再就業を支援するため、県内各地での就業相談や出張相談、医療現場での実践的な研修、訪問看護師養成講習会などを開催しています。ブランクのある看護師に対しても、最近の看護知識や技術を習得する再教育講習会などを受講することで、スムーズな復職を支援。また、こうした研修や講習会に参加する際の一時保育利用も支援しています。

 

看護師の資質向上については、岡山県看護協会と連携してさまざまな研修を開催。例えば

 

  • 訪問看護事業や社会福祉施設等で働く看護師への研修
  • 経験年数に応じた各種研修
  • 医療の高度化に対応するための研修

 

など、多くの研修プログラムを立案、実践しています。

 

この他、新人看護師研修に対する助成、働きながら准看護師から看護師へステップアップする通信制2年課程の周知や受験対策を支援する講習会も行っています。
さらに、今後必要とされる分野の専門・認定看護師の養成を目指し、教育機関に看護師を派遣する医療機関への支援も行っています。

 

子育てしながら働ける環境づくりに重点をおいている岡山県。中山間地域や離島のある地域では、医療従事者の高齢化も進んでおり、今後これらのエリアでの看護を担う若い看護師が求められています。山や海の自然いっぱいの環境で、子育てと仕事を両立させながら、地域の在宅医療を支えるチーム医療の一員として働くのもいいですね。

 

 

参考資料

 

岡山県第7次保健医療計画 第10章 保健医療従事者の確保と資質の向上
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/425796_3272678_misc.pdf

 

岡山県看護職員確保対策委員会資料
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/61750_1768663_misc.pdf

 

岡山県ホームページ
http://www.pref.okayama.jp/

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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