急変対応時の言動で分かる“医師の素質”とは

第13回: 急変対応時の言動で分かる“医師の素質”とは

急変対応時の言動で分かる“医師の素質”とは

■ 記事作成日 2017/1/16 ■ 最終更新日 2016/1/16


筆者プロフィール

名前:紅 花子(べに はなこ) 
性別:女
PR:正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在はフリーライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

急変期の医師対応

 

元看護師のフリーライター元看護師のフリーライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で感じた“医師として活躍するために必要な素質”について考えてみたいと思います。

 

今回は、“急変の対応で分かる医師の素質”として、私が実際に看護師として勤務していた中で出会った2人の医師について、考えてみます。

 

その道数十年の大ベテラン!なのに、急変時は荒々しいA医師

 

消化器内科医として20年以上勤務するA医師。院内ではかなり権威(立場)のある医師です。普段の診療中は患者さんに対しても、看護師に対しても淡々と話し、的確な指示を出します。

 

そんなA医師がある日の当直中、脳外科病棟の看護師から、急変対応の依頼が舞い込みました。理由は「患者さんが心肺停止です!」とのこと。

 

すると、普段のA医師の診療時の態度から一変、荒々しく声をあげ、威圧的な態度を看護師に取る医師へと豹変したのです。

 

 

指示内容も支離滅裂で、長年脳外科で勤務している看護師たちが、首をかしげるような指示内容でした。結局、深夜帯にも関わらず、担当医がわざわざ駆けつけて事なきを得る、という結果になりました。

 

後日、他の医師や看護師からそれとなく話を聞いてみると、A医師はこの時の“急変対応”がたまたまそういった態度になったというわけでは無く、“急変対応”の時は、自分の属する消化器内科の病棟でも、威圧的で荒々しい態度になるのだとか。

 

また、A医師が急変対応に当たった患者は救命率が低く、他の医師や看護師からの信頼度は、現在の立場ほどは高くなかったようです。

 

医師としては中堅だが、普段の診療も急変時も穏やかなB医師

 

2人目は、もともとは産婦人科医として医師生活をスタートさせたものの、あるきっかけにより、呼吸器内科医に転身したB医師。前出のA医師よりもかなり若い医師ですが、普段から丁寧でおっとりとした話し方で指示を出すB医師は、患者さんや看護師にとって“癒しの存在”です。

 

そんなB医師が当直中、脳外科病棟から「患者さんが心肺停止です!」という急変対応の依頼が舞い込みました。

 

B医師は急な対応であるにも関わらず、普段通りの声色や対応で、いつもと変わらず、看護師に的確な指示を出し、患者さんは一命をとりとめました。

 

 

こちらも後日、他の医師や看護師からそれとなく話を聞いてみると、B医師は、いつどこで急変対応の依頼をしても、この調子で対応しているとのことでした。

 

また、B医師が対応した患者の救命率は高く、他の医師や看護師への指示も的確なのだそうです。

 

医師としての知識や医療技術に対する信頼だけではなく、人柄的にも、医療者のみならず、患者さんやその家族からの信頼も厚い、とのことでした。

 

A医師、B医師の急変対応から考える医師の素質とは

 

A医師とB医師、2人の急変対応時の状況を振り返ってみます。

 

  • 自分の診療科ではない病棟の急変対応をしている
  • 当直中(深夜帯)の急変対応である
  • 患者さんの状態は心肺停止状態

 

2人とも、似た様な状況の中で、患者さんへの急変対応をしています。経験年数や、日常的な勤務実態などを考慮し、同じ“内科系当直医”で比較すれば、他の医師や看護師から信頼が集まるのはA医師と考えられるでしょう。

 

しかし、A医師の急変対応時の状態から推測すると、あくまでも看護師視点ではありますが、A医師は急変対応への自信がなく、それを悟られまいとする自己防衛本能が働き、結果的に“威圧的な態度”に至ったように見えます。

 

一方のB医師は、急変対応への自信については定かではないものの、平常心を保ち、心に余裕をもって対応するよう心がけていることで、冷静に物事を捉えることができ、結果的に救命率が高くなっているとも考えられます。

 

医師にも得意、不得意がありますから、“急変対応への自信”に差があることは、仕方のないことです。

 

しかし、医療のチームリーダーとしての役割もある医師が、威圧的な態度をとることや、状況を見慣れている看護師が首をかしげるような指示を出すことに対する、周りの反応はどうでしょうか。

 

周りの医師や看護師は、威圧的な態度の医師と、チームとして一緒に働きたいとは思えなくなりますし、その医師への信頼も低くなってしまいます。

 

それよりも、医療チームのリーダーとして冷静に指示を出し、連携体制を敷いてくれる医師の方が、他の医師や看護師との間に、信頼関係が生まれるのかもしれません。

 

また、一時的に傍観者となってしまう、患者さんの家族はどのように感じたでしょうか。例えば、以下の2つのケースでは、結果的に患者さんが残念なことになってしまうのですが、

 

  • 周りに威圧的になり、大声で騒ぎ立てたにも関わらず助けられなかった患者さん
  • 冷静に指示を出しながらも、結果的には助けられなかった患者さん

 

後者の方が“先生は、万事を尽くしてくれたのだ”と感じることができるのではないでしょうか。

 

“医師として活躍するために必要な素質”という視点で考えると、専門外の診療科に対する知識や医療技術といったスキルはもちろんですが、“急変”というアブノーマルな状況に直面した時にどう動けるのか、周囲にどのような態度で振る舞うのか。

 

医療のチームリーダー的存在でもある医師の素質は、こんなところにも表れるように思います。

 

医師自身が気づいていなくても、周りの医療者は、いつもとは違う状況の医師の姿をしっかりと見ているということなのです。

 

まとめ -急変期の立ち居振る舞いで医師の本質がわかる-

 

 

医師というのは、非常に過酷な職業だと思います。しかし、誰でもが出来る仕事ではないからこそ、急変時の立ち居振る舞い次第で、その医師の本質が見えてくることもあります。

 

その結果、他の医師や看護師、さらには患者さんやその家族からの信頼度が、大きく変わってくることもあるのです。
次回は研修医のコミュニケーションについて看護師の視点から考えてみたいと思います。

 

※この記事は聴覚障害のある方向けに、音声化してYoutubeにアップされています。

 

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在はフリーライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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