医師の独立開業 明暗を分ける10のカギ

いつかは独立開業と、思っているものの…

医師の独立開業 明暗を分ける10のカギ

■ 記事作成日 2015/10/29 ■ 最終更新日 2015/10/29

 

平均41.3歳。

 

これは、医師の独立開業時の平均年齢です。(日本医師会調査による)

 

卒後10年も経過し、医師として一定の力量を自覚できるようになると、将来のキャリアプランの一つに「独立開業」という道も探るようになるというものです。

 

そして多くの場合、卒後20年くらいまでの間に自らの歩む方向性を定め、独立開業するか否かのキャリアプランニングを自己決定するようです。

 

同調査の開業後の年数別に開業時の平均年齢を見ると、「30年超」が37.5歳、「20−30年」が39.4歳、「10−20年」が41.7歳、「5−10年」が43.5歳、「5年以内」が44.9歳となっています。これは、開業後の年数が短いほど、開業時の年齢が高くなる傾向がある事が原因です。最近の傾向として、病院などで一定期間のキャリア形成を経た後に開業するケースが目立つと言われています。

 

40歳前後と言えば、医師としてのスキルも気力も体力も充実し、転職市場で最も人材価値が上がる時期の一つです。すなわち、独立開業という転職においても、適性な時期と言えるでしょう。

 

先生は今、何歳でしょうか?…もしも卒後10年から20年の間で、40歳前後の年齢層ならば、将来のキャリアプランを本格決定するために、一世一代の自己決定をすべき時期です。また、他の年齢層の先生も、独立開業への道をぼんやりとでも考えているならば、一度立ち止まって、熟考すべきでしょう。

 

独立開業の成功の鍵は、いったいどこにあるのか?しっかりと考えてみる事にしましょう。


医師の独立開業に必要な10の鍵

医師の独立開業 明暗を分ける10のカギ

 

医師が独立開業をするならば、必ず成功させなければなりません。一度開業したならば、皮膚科等の小規模なクリニックでも、開業には自己資金および借入金併せて数千万の投資が必要となる上、地域医療貢献面、また業界内外の「評判面」から考えても、1度閉じてしまった医院を再開させてることは非常に困難が伴うからです。

 

医師独立開業のこういった一面は、勤務医自分以上のプレッシャーがあるかもしれません。実際、日本医師会の調査では、勤務医時代よりも開業後の方が、大きなストレスを抱えている医師が過半数である事が分かっています。

 

医師とは別に、経営者としての顔も併せ持つ事を意味する独立開業において、そもそもドクター自身が向いているのでしょうか?そして、必ずや成功させるための鍵は、どこにあるのでしょうか?

 

独立開業という転職を成功させるための10の鍵は、以下の通りです。

  1. 独立開業に適性はあるか?
  2. ビジョンやコンセプトワークを描いているか?
  3. マーケティングを充分に行っているか?
  4. 十分な準備時間を確保できるか?
  5. 開業や経営や運営のパートナーに誰を選ぶか?
  6. 法人経営か個人経営か?
  7. 接客業である事を理解しているか?
  8. リスクヘッジができるか?
  9. 経営者としてお金を把握できるか?
  10. 絶対成功させると覚悟できるか?

ドクター自身がこの10の鍵を手中に収める事ができるかどうか?しっかりと考えていく事にしましょう。

 

1.独立開業に適性はあるか?

 

独立開業とは、特別な転職です。そして必ず一生に一度しか訪れません。複数回複数施設の開業は経験できても、独立開業はただの一度きりです。ここで踏み出す一歩は、キャリアや人生の一大分岐点に他ならないのです。人生で最も大きな自己決定の一つといっても過言では無いでしょう。

 

そもそも独立開業をすべきかどうか?…その一歩を踏み出すかどうか?…十分すぎるくらい熟考する事が、最も基盤となる成功の鍵です。医師としては優秀でも、経営者に向かない人もいます。高度先進医療を提供したい医師なら、そもそもステージが合いません。

 

独立開業という大きな一歩を踏み出す前には必ず、
先生が今どんな医師でどんな働き方をしているのか?
先生が将来どんな医師を目指し、どんな働き方をしたいか?
しっかりと自己分析して欲しいのです。

 

日本医師会の調査によると、医師が開業した理由は以下の順となっています。

 

1位:42.4%
「自らの理想の医療を追求するため」

 

2位:35.1%
「勤務医や研究者としての将来に限界を感じたため」

 

3位:26.3%
「経営も含めてやり甲斐を感じたため」

 

4位:21%
「勤務医や研究者時代の精神的ストレスに疲弊したため」

 

5位:18.6%
「勤務医や研究者時代に過重労働に疲弊したため」

 

1位「自らの理想の医療を追求するため」や3位「経営も含めてやり甲斐を感じたため」と類似した理由を持っている医師ならば、開業という医業=商売の大海に投げ出されても、知恵を絞り、体を張って、立派に航海をする事ができるでしょう。

 

2位「勤務医や研究者としての将来に限界を感じたため」の場合、やや消極的な理由にも見えますが、自らの適性を一次診療と考えた上での前向きなキャリアチェンジならば、何も問題ありません。

 

しかし、4位「勤務医や研究者時代の精神的ストレスに疲弊したため」や5位「勤務医や研究者時代に過重労働に疲弊したため」の理由だけで独立開業をしてしまっては、必ずと言っていいほど失敗すると考えられます。

 

独立開業は、決してストレスフリーな決定ではありません。これまで感じた事の無い大きなプレッシャーを、たった一人で飼いならさないとならないのです。資金繰り・スタッフ管理・広告宣伝・医療過誤回避など、様々な経営的問題を診療をしながらクリアしていく事ができるか?…まずはそもそもの適性を見極めて下さい。

 

2.ビジョンやコンセプトワークを描いているか?

 

独立開業のための具体的なコンセプトは、当事者である医師本人にしか描けません。何を志し、どんな医療施設を創るのか?…それは、ビジネスの大海を航海するための、唯一無二のコンパスです。どこにどのように行くべきか?…を、きちんと定めていなければ、その船は座礁をするか、別の場所に行きついてしまう事でしょう。

 

私は医師転職コンサルタントとして、開業を考えるドクターから、開業コンサルティングの依頼を受ける事もありますが、過半数のドクターが、このコンセプトワークが皆無な状態で開業しようとしています。しっかりとコンセプトを持っているドクターは1割いるかどうか、ぼんやりと考えているドクターを合せても、3割にも満たないという状況です。一般のビジネス社会では考えられない、非常に恐ろしい事です。

 

コンセプトが無い事業は、経営や運営の正解を導く事ができません。どんな患者さんに来院いただきたいのか、そのためにどこでどんな医療を提供するのか、戦略も戦術も立てる事ができず、芯の無い場当たり的な行為は、よほどの幸運が降って来ない限り、失敗への一途を辿るものです。

 

開業という事業が、「成功するかどうか?」…には、人事だけでなく天命(幸運)も必要です。しかし、「失敗するかどうか?」…は、人事さえ尽くしていれば回避できるものです。

 

たとえば先生が、自由診療で単価の高い医療を提供しようとしている場合、駅ビルなんかに入ってはいけないかもしれません。立地やアクセスは重要ですが、駅からの利便性よりも、郊外に開業し、充分な駐車場を確保した方が、ターゲットに合うというものです。

 

たとえば先生が、単価の低い医療を提供しようとしている場合、多くの患者さんを短時間で診療しなければならない事が前提となりますから、例えイニシャルが高額でも、電子カルテや電子レントゲンを整備しておいた方が良いというような判断も必要です。

 

どんな医療をどんなスタイルで提供したいのか?それに伴う患者さんのイメージを具現化し、メインターゲット層はどんな人でどんな暮らしをしているのか?そのターゲットが喜ぶサービスは何なのか?…を、しっかりと考える必要があるでしょう。

 

メインターゲット層が分からなければ、医療施設の立地も、営業時間も、内装も、スタッフの質や数も、元来、何一つ決められるものではありません。ホームページやショップカードやチラシや看板など、広告販促にだって着手はできません。

 

ビジョンやコンセプトワークを描く事は、コンサルタントにサポートしてもらった場合でも、最終的には経営者かつ医師である、先生本人にしか決められない事なのです。

 

3.マーケティングを充分に行っているか?

 

独立開業はビジネスです。従って、必ずやマーケティングリサーチを行い、市場性や事業性の可否を見定める必要があります。

 

独立開業の目的は、開業する事そのものではありません。多くの患者さんに選んでいただき、自らの生業として成り立たせる事が目的です。それに、医師としての志やライフワークが重なれば言う事ありません。

 

開業に際する最低限の目的である「多くの患者さんに選んでいただき、自らの生業として成り立たせる」ためには、マーケティングおよびマーケティングリサーチが欠かせません。

 

自ら理想とする診療にはどんな施設が必要か?
一日何人の患者さんにご来院いただく必要があるか?

 

自らの医療は、“わざわざ外来”と“たまたま外来”のどちらをメインとしているのか?(わざわざ外来とは、いわゆる指名買いの状態で、その医師や提供サービスを目的にご来院される方の事を指します。たまたま外来とは、たまたま生活導線上に患者さんが必要としている医療サービスがあるので偶発的にご来院される方の事を指します。)

 

ライバルクリニックの経営状況は?
自らの売りとなる特異性は?

 

…などなどを、コンセプトと照会して、立地や診療時間や標榜や広告などを決定する事となるでしょう。

 

ある程度開業したい立地を決めてマーケティングを行っても、理想の医療に基づいたマーケティング結果に基づき立地を探しても、それはどちらでも構いません。

 

しかし、交通や人口や競合や提供サービス内容などの様々な市場要因から、商圏を定め、ターゲット数を把握し、受診率や頻度を定め、患者数を割り出さなければなりません。マーケティングの主目的は、患者数の割り出しに尽きます。そのために、不確実性の高い市場において確実性を得るための状況把握=マーケティングが必要なのです。

 

もしも成功している理想的なクリニックがあるならば、ロールモデルとしてその市場性を分析し、自らの開業プランの参考にしてみても良いでしょう。

 

しかしマーケティング作業とは、ドクターが一人で行うには専門的かつ複雑で、非常に難しいものです。コンサルタントや、薬剤メーカーや医療機器メーカーが提供している開業サービスなど専門の協力者を利用して、しっかりとポイントを抑えて下さい。

 

マーケティングによる患者数の割り出し結果は、その根拠によって随分と異なります。従って、実際に出て来た結果そのものよりも、その根拠をしっかりと理解する事が重要です。そして最後は、協力者の意見ではなく、先生本人の意思として、想定数字を決定しなければなりません。

 

4.十分な準備時間を確保できるか?

 

独立開業には充分な準備が必要です。おそらく殆どの医師は、生まれて初めて事業を興す訳ですから、事業主としての自覚を持ち、充分な開業準備を行う事が望まれます。

 

一般的に、独立開業まで必要な準備期間は、“平均2年程度”と言われています。医局など現職を離職するための期間を入れると、もっと長いケースもあります。

 

ここで認識していただきたいのは、開業準備とは、物件を見つけて内層を整え、スタッフを雇って教育をし、広告販促を行う事だけではないという事です。

 

これら具体的な作業は、数か月〜半年も時間があれば充分に出来るでしょう。独立開業にあたって充分に仕上げなければならない最重要ともいえる準備は、2.ビジョンやコンセプトワークを描いているか?3.マーケティングを充分に行っているか?…というポイントです。

 

コンセプトワークとマーケティングがしっかりした事業ならば、その後の作業はスムーズです。しかし、勤務をしながら開業準備をしたり、最初に物件を押さえてしまったような場合、「時間が無い」という事を言い訳に、コンセプトワークやマーケティングをおざなりにしてしまう事があります。これは、最も多い失敗の原因です。

 

事業の失敗を防ぐためには、ドクターが開業を考えた時点で、コンセプトワークやマーケティングに考えを及ばせながら、じっくりと時間をかけて、経営者本人にしかできない理想像を描いて欲しいものです。たとえ直近に開業の予定がない若手医師でも、何度も反芻してイメージを固める事は重要です。

 

もしもドクターが勤務医で、開業準備に充分な時間がとれない状況ならば、開業までの期間、非常勤勤務をしながら時間を確保するなどの手立ても必要でしょう。

 

先に物件を押さえてしまうと、その時点で家賃等の経費が発生しますから、どうしても開業を急ぎがちです。時間の無さを失敗に繋げないために、くれぐれもコンセプトワークやマーケティングを終えていない段階で、物件を探すような事だけは避けて下さい。

 

5.開業や経営や運営のパートナーに誰を選ぶか?

 

コンセプトワークとマーケティングが固まったならば、それを共に創り上げていくパートナーを選びます。その思考的精神的パートナーは、コンサルタントかもしれませんし、妻かもしれません。また、業務的なパートナー(施工業者やメーカーや広告販促業者や人材派遣会社や税理士や銀行など)さえいれば、思考的精神的パートナーは不要な場合もあります。

 

ドクター自身の得手不得手や性格などから、どのような人をパートナーに選ぶか、しっかりと吟味して下さい。

 

開業コンサルタント
医師の開業を専門に取り扱うコンサルタントに有償で依頼をします。契約内容により、コンセプトワークからマーケティングはもちろん、全ての業者の紹介や、事業計画の作成、金融機関との交渉、広告販促、スタッフ教育など、開業に関わるAからZをサポートしてくれます。費用はコンサルタントや契約によって様々ですが、クリニック開業の場合、100万円程度〜500万円程度が一般的です。全てのパートナー候補の中で、もっとも経営的結びつきの強い専門的なブレインといったポジションとなります。

 

転職エージェントのコンサルタント
多くの転職エージェントは、勤務医としての転職だけでなく、開業の相談に乗ってくれる窓口も設けています。費用は原則無料ですが、責任の無い状態でのアドバイスとなるのが前提です。ただし、様々なケースタディやデータを保有しているため、コンセプトワークやマーケティングの足がかりとなる情報を得られる事もあるでしょう。また、開業後のスタッフを転職エージェントから採用する事が前提の相談であれば、一歩踏み込んだサービスを提供してくれるでしょう。しかしながら、転職エージェントにあくまで責任性は発生しません。その事を前提に、ドクター自身が主体性を持って対峙する必要があります。

 

薬剤メーカーや医療機器メーカーのコンサルタント
多くのメーカーには、原則無料で開業コンサルタントを提供する窓口があります。開業時に医療機器を導入してもらったり、開業後に継続的に薬剤を仕入れてもらうための関係づくりを目的とし、ドクターの独立開業の成功が、彼らのビジネスの成功に繋がると考えています。従って、非常に協力的なコンサルタントが多く、マーケティング情報なども惜しみなく提供してくれます。ただこちらも、ドクターの今に寄り添うというよりも、将来的な取引を目的としたものであるため、コンセプトワークやマーケティングの主体は、あくまでドクター本人に帰依します。

 

親や妻などの身内
クリニック開業の場合、大半は個人事業となりますから、家族が精神的パートナーやサポート役になる事はよくあります。しかし、開業医の親やビジネスに明るい妻でもない限り、思考的パートナーには成り得ません。独立開業に、身内の理解や協力は不可欠ですが、身内がその道のプロではない限り、全ての経営的・運営的主体はあくまでドクター本人であるという事を予め理解しておきましょう。

 

6.法人経営か個人経営か?

 

理想の医療サービスを掲げて独立開業をしても、経営が成り立たなければ何の意味もありません。患者が医療機関を選ぶ時代に対応するには、盤石な経営体制を整える必要があります。独立開業をする際、法人経営にするのか、個人経営にするのかは、大きな決断の一つでしょう。

 

個人経営のメリット〇・デメリット×

 

〇立上げが簡単で法的認可などが不要。
〇開業後の管理業務が少ない。
〇小規模運営(従業員5人以下)ならば社会保険加入義務は無く経費削減ができる。
〇交際費が概ね経費として認められる。
〇自由にお金を運用できる。
〇後に法人化する事も可能。
〇医師国保の加入資格があり経費削減に繋がる。
×税率は最高50%程度となる。
×診療報酬の10%は社会保険支払基金から徴収される。
×個人のお金と事業のお金の線引きが難しくなる。
×車両費の一定額は個人利用分として家計から支払う。
×クリニックを継承する場合、相続税が大きな負担になる。
×院長医師に、医療・経営・運営全ての責任が圧し掛かる。
×生命保険は個人契約となり、大きな負担となる。
×院長が業務不能となった場合継承者がいないと潰れる。

医療法人のメリット〇・デメリット×

 

〇事業を大きくしやすい。(介護や健康分野進出も可能)
〇個人だけではなく法人としての借り入れもできる。
〇医師(理事長や院長)や家族に役員報酬を支払える。
〇役員報酬による所得の分散が節税に繋がる。
〇役員などに退職金を支払う事ができる。
〇税率は最高40%程度となる。
〇車両費の全額を法人経費にできる。
〇役員の生命保険料を法人が支払え経費にできる。
〇院長が業務不能となっても、別の理事長を立てる事ができる。
×立上げの法的手続に時間や費用を要する。
×弁護士や税理士などの専門科を雇う必要もある。
×全正社員を社会保険に加入させる必要があり負担となる。
×理事長であっても、法人の資金を自由に個人利用できない。
×行政などに対する書類手続きが煩雑かつ多用となる。
×定期的な決算が必要になる。
×定期的な登記が必要になる。

×各行政からの監査の対象となる。

 

法人経営と個人経営のどちらが適性かを考えるには、想定される事業規模や継承の有無に関わります。小さなクリニックを立ち上げる場合は、まず、個人経営として立上げ、規模が大きくなった場合で法人化すると良いでしょう。

 

また、税金や管理コストは経営に関わる重要問題ですので、コンサルタントだけではなく、税理士などの専門家にも、必ず相談する必要があります。

 

7.接客サービス業である事を理解しているか?

 

勤務医時代は、診療に関わる医療サービスだけに注力していれば良かったとしても、独立開業後はそうはいきません。

 

これまでは事務方が一手に引き受けてくれていた、患者さんを待たせないための仕組みや、快適に待合できる環境、予約のしやすさ、プライバシーの保護や管理・スタッフの教育などの全てを、院長がしっかりと行わなければなりません。

 

それには、挨拶・笑顔・声掛け・傾聴といったコミュニケーションも重要になってきます。

 

挨拶と笑顔は、患者さんとの基本的なコミュニケーションですが、その程度や方法は、患者さんの意向を汲みとり、適性バランスを保つべき難しいものです。挨拶と笑顔で十分な関係性が得られた患者さんにのみ、一歩踏み込んだ声掛けが功を奏します。医師のコミュニケーションが、そのまま接客業としての評価=経営的人気につながるため、軽視できないポイントです。

 

また、「傾聴する」というポイントも、接客業としての極みです。患者さんは、医師から専門的な話を聞きたい場合より、自らの話を聞いて欲しい場合の方が圧倒的に多いのです。どのような状態でこんな症状になったのか?この症状によってどんな事を心配しているのか?…医師として即座に結論を提供できても、先ずは傾聴により、相手を満足させなければなりません。さもなければ、患者さん自身が医師の話に耳を傾けなくなるのです。

 

開業したクリニック等においては、一人当たりの診療スピードも経営に大きく関わる鍵です。医師が充分に傾聴する時間が無い場合は、看護師やその他コミュニケーションスタッフにじっくりと傾聴させ、患者さんの「聞いて欲しい願望」に対応する事が望まれます。

 

また、サービス業である以上、患者さん本意の運営体制を整える必要があります。診療開始時間を早めたり、診療終了時間を遅らせたり、駐車券サービスを準備したり、ウォーターサーバーや雑誌などを準備したり、キッズコーナーを設けたり、診療とは別にカウンセラーによる相談窓口を設けるなど、とにかくニーズのあるものは、できるだけサービスとして無尽蔵に提供する心づもりが重要です。

 

接客業である事を理解さえしていれば、独立開業後の患者ニーズへの対応は、そう難しいものではありません。事業の成功には「これは医師の仕事ではない。」…という発想がご法度である事を、充分に理解して欲しいものです。

 

8.リスクヘッジができるか?

 

経営には不確実性がつきまといます。医師が独立開業する場合には、不確実性に備えた主に二つのリスクヘッジが必要です。

 

一つ目は、経営難に備えたリスクヘッジです。

 

先々までの経営資金をシミュレーションし、ギリギリの状態に陥る前に、診療日や時間を増やしたり、保険外診療を併設したり、運用のシステム化などで人件費を削減したり、必要とあれば、非常勤勤務のアルバイトをするくらいの覚悟で、経営難を回避しなければなりません。

 

二つ目は、医療過誤に備えたリスクヘッジです。

 

安定した経営のためには、安全第一で、医療過誤を絶対に起こさない覚悟が必要です。医師賠償責任保険への加入は必須中の必須であるとしても、それだけでは足りません。仮に大事に至らなくとも、医療過誤の疑惑がおきただけで、病医院の評判は地に落ちます。独立開業が客商売である以上、風評被害だけは徹底的に避けなければなりません。

 

そのために医師ができる事は、運用フローの敷設とスタッフ教育、そして、自らの医療技術の100%を提供しない事です。難しい症例は、例え勤務医時代に経験のあるものでも、易々と引き受けず、設備やスタッフが整った大学病院を紹介するなどの対応も大切なのです。100%医療過誤を起こさないと自負できる範囲の医療サービスに限るならば、せいぜい60%〜70%程度の実力発揮で済むものだけに対応すべきでしょう。

 

もしもドクターが開院する医療機関が、「救急医療の砦」というコンセプトのクリニックならば別ですが、「地域のかかりつけ医」とか、「一次診療のスペシャリスト」とか、「一番近い〇〇科」といったようなものならば、門外漢のものや、対応診療レベルがコンセプトと乖離している患者さんは、易々と引き受けない事が賢明です。

 

リスクヘッジにおいては、戦いに勝つ事よりも、敵を作らない事の方が大切な概念です。そういう意味では、特別な志が無い場合、医師会などに不用意に反発するような事も、経営的には避けるべき事でしょう。

 

9.経営者としてお金を把握できるか?

 

独立開業している多くの医師は、勤務医時代の「私は医者なので、お金の事はよく分からないのですよ」…というスタンスをなかなか崩せません。

 

もちろん、専門的な事は税理士などのサポートを受けて然るべきですが、キャッシュフローや月々の経費額を把握していないという、経営者としてあるまじきトップが非常に多いのが、医業経営医師の特徴です。

 

一日の平均来院者数、初診率、平均売上などの基本情報を把握していなかったり、曜日や季節性を要因とした経営的な浮き沈みにも無頓着であったりするのです。

 

このような医師は、経営が立ち行かなくなった場合、立て直す事ができません。売掛金や買掛金のおおまかな数字と、お金が出入りする時期が分からなくては、どんな経営のプロでも手の施しようがありません。

 

今や医師免許を持っているだけで安泰な時代ではありません。医業の経営が簡単ではなくなっている今、小さなクリニックで事務長を雇用するわけにもいかないでしょう。

 

お金を把握する事は、経営者としての最重要項目です。多くのドクターは、経営を学ぶ機会もなく開業しますが、経営に関するお金については、生涯学習のつもりで半永久的に学んでいく必要があると認識して下さい。

 

10.絶対成功させると覚悟できるか?

 

事業の成功の可否は、経営者の覚悟の度合いと比例します。一世を風靡するような大成功には、幸運という要素も必要ですが、失敗しない運営は、経営者の意志そのものだと言えます。

 

先生は、独立開業をかんがえる時、「絶対成功させる」…という、覚悟ができますか?

 

開業には艱難辛苦がつきものです。全ての事業には、成功の方程式など存在しません。答えが無い問題の答えを自ら創造し、見出していく作業の連続です。

 

時には、プライドを捨ててでもしなければならない行為もあるでしょう。たとえば売上が足りなければ、当直のアルバイトをしてでも窮地を凌ぐ覚悟は必要です。

 

しかしそもそも、コンセプトワークとマーケティングが正しく行われれば、開業後の問題発生率を最低限まで抑える事は可能です。絶対成功させるという覚悟は、開業後ではなく、開業準備時期から重要なもので、その基礎がしっかりした所のみが、事業の波にうまく乗る事ができるのです。

 

最初は訳の分からない自信でも、自己暗示でも構いません。兎にも角にも、「絶対に成功させるという覚悟」が無ければ、他にどんな好要素が揃っていても、開業への適性は無いでしょう。

 

1.独立開業に適性はあるか?から始まった、独立開業という転職の成功に関わる10の鍵ですが、1の鍵と、10の鍵…絶対成功させると覚悟できるか?…は、メビウスの輪のように繋がっています。

 

覚悟はあるか?

 

この問いにYESと言えるドクターは、覚悟を現実のものにするための準備を怠りません。そしてその準備に基づく経営・運営に精進するでしょう。


独立開業という一世一代の挑戦を成功に導くために

医師の独立開業 明暗を分ける10のカギ

 

転職エージェントの門戸を叩くドクターは、勤務医としての転職相談だけを行う窓口だと認識しているようです。しかし、多くの転職エージェントでは、キャリアプランという観点で、開業の可能性を探るドクターのサポートはできますし、開業サポート窓口や機能を有償・無償で設けている所も多々あります。

 

私、野村龍一が、医師転職コンサルタントの立場から、口を酸っぱくして言っている事があります。それは…良い転職は、転職エージェント選択時に決まっている…という事実です。

 

転職とは、何も勤務医の転院だけを指しません。ドクターにとっての最たる転職は、むしろ独立開業でしょう。独立開業は、責任のある大変な事業ですが、新たな世界が広がり、収入を大幅にアップする事もできるものです。相談できる窓口はどんどん活用し、構想段階から多くのプロフェッショナルに関わる事は重要でしょう。独立開業をシミュレーションした結果、自らの適性に合わなければ、勤務医として生きる道だってあるのですから。

 

転院だけでなく、独立開業の可能性を視野に入れた場合でも、ドクターの転職が良いものになるよう、医師紹介会社の選び方には慎重になることを考えてみるべきでしょう。

 

 

(文責・医師紹介会社研究所 所長 野村龍一)

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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医院(クリニック)開業の資金調達方法
多くの医師にとってクリニック開業を迎えるにあたって一番の心配事は資金調達であることは間違いありません。手元の資金がある程度潤沢な方でも、安くない投資を無駄にせず開業を軌道に乗せるための安全な方法はあるのでしょうか。
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医師の独立開業あるある事件簿
本コラムをお読みの先生には、独立開業を目標の一つにしている方も多いでしょう。しかし、意を決して開業に踏み切った医師の多くは、決して順風満帆ではない様々なアクシデントを乗り越えながらクリニック経営をしているのが実情です。独立開業の落とし穴を知るべく、あるある事件簿を見てみる事にしましょう。

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