医師免許取消処分の怖さ

3年間で11件の医師免許取消の処分が下る

医師免許取消処分の怖さ

■ 記事作成日 2014/7/26 ■ 最終更新日 2016/5/28

 

毎年、厚生労働省の医道審議会の医道分科会では、医師の行政処分を行なっていますが、この3年間で11件の医師免許取消処分が下されています。(医道分科会では歯科医も対象になっていますが、今回は医師だけを取り上げています)

 

釈迦に説法だとは重々知りつつも、今回は医師免許の処分について取り上げてみたいと思います。


医師の行政処分は3区分

医師の行政処分には医師免許取消、業務停止、戒告の3区分があります。

 

基本的に秋と年度末(2013年は3回医道分科会が開催され、実際に処分が下されたのは2回)に医道審議会のもとにある医道分科会で具体的な処分内容が決定されています。刑事罰の対象になった案件では司法による裁判結果なども参考にし、行政処分の量刑が決定されています。2012年以降の処分内容は別表の通りです。

 

医道分科会の行政処分に対する考え方は2002年にまとめられ、10年後の2012年に見直しがされています。(ほぼ内容は踏襲されています)それによると、処分内容の決定にあたっては、司法における刑事処分の量刑や猶予の有無などが参考にされ、また医療過誤においては、刑事事件に至らなかった案件においても、現場の医療水準などに照らして明白な注意義務違反が認められる場合には、処分の対象になるとしています。

 

この行政処分の考え方は基本的考え方と事案別考え方に大きく2分類されていて、基本的考え方は4項目事案別考え方は12項目に分類されています。

基本的な考え方

  1. 医師としての当然追うべき義務(応召義務、カルテ等に真実を記載する義務を含む)を果たしていないことに起因する行為において信用を失墜させたとき
  2.  

  3. 医療行為を提供する機会や医師の身分を利用して行なった行為において1と同様の考え方から処分の対象となる
  4.  

  5. 業務以外においても他人の生命・身体を軽んずる行為をした場合
  6.  

  7. 医師は非営利の事業と位置づけられているので、自己の利潤を不正に追求する行為。これは業務と直接の関係を有しない場合でも対象になることがある

事案別考え方(対象となる法案違反名のみ列記)

  1. 医師法、歯科医師法違反
  2.  

  3. 保健師助産師看護師法等その他の身分法違反
  4.  

  5. 薬事法違反
  6.  

  7. 麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反
  8.  

  9. 殺人及び傷害
  10.  

  11. 業務上過失致死@交通事故(轢逃げ等)A医療過誤
  12.  

  13. わいせつ行為
  14.  

  15. 贈収賄
  16.  

  17. 詐欺・窃盗
  18.  

  19. 文書偽造
  20.  

  21. 税法違反
  22.  

  23. 診療報酬の不正請求等

実際の医師免許取り消し状況

ここで別表1で紹介した医師免許取消の処分にあった案件がどの項目に該当していたのかを示したのが別表2になります。〔〕内の数字は取消以外の行政処分になった件数を示しています。

 

医師免許取消処分の怖さ

別表1

 

医師免許取消処分の怖さ

別表2

 

現行の行政処分に関する考え方は2002年に施行されたものなので、それ以前と比較するのはどうかと思いますし、現在厚労省で掲載しているデータも2001年が最古になりますので、2002年から3年間との比較をしてみると、顕著に増加している違反行為があります。それが覚せい剤等違反(大麻、向精神薬物違反含む。以下同じ)です。

 

2002年から2004年までの3年間における覚せい剤等による処分件数は、免許取消が1件、業務停止あるいは戒告処分までが4件です。しかし、2012年から2014年までの3年間では取消が2件でそれ以外の処分が8件になっています。一般社会でも覚せい剤やドラッグ類がかなり蔓延していることが問題視されていますが、これを見る限り医師の世界においても例外ではなく、むしろ深刻な状況といえるかも知れません。

 

そのほかの事例でみると、わいせつや子供へのわいせつによる処分が相変わらず多く見受けられます。もちろん、3年間で数件程度ですから、医師全体数と比較すればほんの0.00何%に過ぎず、あくまで全体のモラルというよりは個人的な問題ともいえますが、それでも確実にそうした医師がいることも事実のようです。

 

また、今後増加することが考えられるのが、「心身の障害」を理由にする医師免許の取消です。2013年9月の医道分科会で実に20超年ぶりに同理由による医師免許取消が報告されましたが、今年2月にも続けて心身の障害による医師免許取消がありました。

 

厚労省は一般的には医師免許取消になった医師名は公表しているのですが、この心身の障害については「個人のプライバシー」を理由に公表していません。具体的にどんな心身の障害なのかは公表されていませので、詳細は不明なのですが、多くの医師が過酷な労働環境の中で働いている現状を考慮すれば、何も対策を検討しなければ、今後こうした理由による医師免許取消は増加していくことも予想されます。

 

※追記:近年の医師免許取り消し処分理由

 

医師免許取消処分の怖さ

あなたの医師免許が取り消されないために

医道分科会が示している処分の考え方によれば、医師(歯科医含む)は、常に高いモラルを求められていて、「基本的な考え方」の3項目に象徴的な文言があります。「医師、歯科医師は、患者の生命・身体を直接預かる資格であることから、業務以外の場面においても、他人の生命・身体を軽んずる行為をした場合には、厳正な処分の対象になる」とあります。

 

この文言を具体的に示しているのが、交通事故における処分対象例です。一般的な交通事故に対しては戒告等の取り扱いにすぎませんが、救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については倫理の欠如と判断され、重めの処分になると明記されています。今後は、昨今の社会状況を鑑み、飲酒運転による交通事故等も同じような対応になることも考えられます。

 

医師という職業は人の生死に直結しています。業務中はもちろんですが、業務以外の場面においても常に医師であることを念頭に置くことが求められています。その対価として一般的には高い報酬を受け取っていると感じる必要もあるのかもしれません。逆にそのことが強いストレスになってしまい心身の障害をきたしてしまうのでは本末転倒にもなりかねません。自らの健康に十分留意し、そして24時間365日医師であることが医師には求められているかもしれません。

 

(文責・医師紹介会社研究所 所長 野村龍一)

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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