【医療ニュースPickUp 2016年8月5日】リオ五輪開始に向け、渡航者へのアドバイスを公表 FORTH
2016年8月4日、厚生労働省検疫所FORTHは、WHOからのオリンピックへの旅行者に向けた健康アドバイス(その1)を公開した。2016年7月26日に、世界保健機関(以下、WHO)は、オリンピックへの旅行者に向けた健康アドバイスの掲載を開始しているが、これは旅行前のワクチン接種と蚊が媒介する感染症への注意の2本の柱で構成されている。
FORTHでは、このWHOからのアドバイス情報を元に、今回は「その1」として、前半部分のワクチン接種に対する情報提供を行った。
ワクチン接種が推奨される
これによると、各国には定期予防接種計画があり、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、はしか、B型肝炎、インフルエンザ菌b型に対するワクチンの接種が行われている。
さらに、日本を含む多くの国では、風疹、おたふく風邪(ムンプス)、インフルエンザ、黄熱、ヒトパピローマウイルス、ロタウイルス、肺炎球菌関連疾患などのワクチン接種が可能である(日本はこのうちの一部は任意接種)。
特に、麻疹・風疹・ポリオは、ブラジル国内へ持ち込むことが無いよう、注意喚起がなされている。
さらに、季節性インフルエンザのワクチン接種も、この季節のブラジルでは必要となる。WHOでは、以下の人たちに対するワクチン接種を推奨している。
- 妊娠女性
- 高齢者
- 特定の慢性疾患を持つ人
- 6-59か月の子ども
- 医療従事者
リオデジャネイロでのインフルエンザのピーク(6月~7月)は過ぎたが、ブラジル国内にも感染ピークが違う地域があるため、少なくとも旅行の2週間前には、ワクチン接種を済ませておくことを推奨している。
この他、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、狂犬病、黄熱に関する注意事項も明示されている。ブラジル国内は、A型肝炎に関しては「集団感染を起こしやすい」となっている。
また、腸チフスに関しては、オリンピック・サッカー大会が行われるアマゾンのマナウスを含む北部、および北東部での発生率が最も高くなっているという。
参考資料
厚生労働省検疫所FORTH
WHOからのオリンピックへの旅行者に向けた健康アドバイス(その1)
http://www.forth.go.jp/topics/2016/08041457.html
同上 オリンピック・パラリンピックでブラジルへ渡航される方へ
http://www.forth.go.jp/news/2016/02051708.html
厚生労働省 東京検疫所 オリンピック向けリーフレット
安全に行こう!!リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック
https://www.forth.go.jp/keneki/tokyo/280118panfu.pdf
WHO. International travel and health. 26 July 2016
Brazil - Health Advice for Travellers to the 2016 Summer Olympic and Paralympic Games
http://www.who.int/ith/updates/20160621/en/
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
いよいよ、リオデジャネイロオリンピックが始まります。今回のオリンピックは、開催までに競技場の整備(工事)が終わらないのではないか、深刻な水質汚染はどうなるのか、といった問題の他にも、ジカ熱へのブラジル政府による対策はどうなっているのかなど、ここ最近の様々な報道をみると、問題が山積みであるような印象を受けます。
ジカ熱は蚊を媒介する感染症で、ブラジルではこれから冬になりますから、蚊そのものが居なくなる時期ではあります。つまり、これから夏になる国の方が、感染拡大への懸念があるわけです。
実際に、現在はブラジル国内よりも赤道直下の国々での感染が拡大しているようですし、そこからアメリカ国内へ拡大していくことが容易に推測できます。感染症は、事前のワクチン接種である程度は予防できますので、ジカ熱ワクチンの開発に期待がかかっているようです。
しかし、日本も他人事ではありませんよね。ブラジルへ行く→蚊に刺されて日本へ帰ってくる→日本での感染拡大 というのも、充分に有り得るでしょう。
これから夏になる日本では、ブラジルなどへの渡航歴が無い人への感染拡大が、進んでいくのではないかと思います。
ジカウイルスを持つ蚊に刺されても、およそ8割は無症状とのことですので、帰国後2週間くらいは蚊に刺されないようにすること、また発症中(無症状であったとしても)は精子の中にはジカウイルスが多く確認されることから、ブラジルから帰国後4週間くらいはコンドームを使用することなど、細かな注意喚起がなされてはいるようです。
でもこれが、日本国民のどこまで浸透しているのかが分からないわけですから、怖いですよね。特に医療機関を受診した患者さんが「ブラジルに行ってきた」あるいは「これからブラジルへ行く」という自己申告をされた場合は、生活上の注意として、上記のことを徹底的に伝えて頂きたいと思います。
4年に一度の世界的なスポーツイベントであるオリンピック。開催中は世界中から多くの人が集まるわけですから、終了後に世界の「感染」がどうなっているのか、注目していきたいです。
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