看護師視点での「保健医療計画」のミカタを知っておく

■作成日 2018/2/24 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター紅花子です。

 

当サイトでは「保健医療計画からみる都道府県の姿」というコラムを毎月お届けしていますが、そちらは医師向けの情報を中心に取り上げています。こちらのコラムでは、各都道府県の看護師確保状況を中心に、看護師が転職を考えた時にほんの少し役立つ情報をお届けします。

 

日本における看護師就業・転職事情

 

皆さんもご存知の通り、日本は深刻な少子高齢化という課題を抱えています。「少子高齢化の何が問題なのか」この問には幾通りもの答えがあるでしょう。しかし一番深刻なのは「働き手が居なくなる」という現実です。

 

近代になって、日本では「看護師不足」という大きな課題を抱えることになりました。これは、医療の発展と、それを実現する医療機関が増えたこと、その「医療を享受したい」人たちが増えたこと、それに対して「働いている看護師」の人数が、追い付いていないことが原因の一つではあります。

 

日本はこの先「高齢化」が進むことになります。すると「医療を受けたい人」や、「介護を受けたい人」「在宅での定期的な看護ケアを受けたい人」も、必然的に増加します。一方で、「少子化」により、働き手となる人材は現在よりもどんどん減っていくのです。
するとどうなるのか。

 

各医療機関や介護施設等では、看護師の争奪戦が始まります。すでに始まっているかもしれません。なぜなら、現在の日本では実際に働いている看護師(保健師・助産師含む)の数は109万人足らずしかおらず、全国の医療機関、介護施設等をカバーしなくてはならないからです。

 

本コラムでは、このような「看護師不足を補う」ための対策について、各都道府県が定める「保健医療計画」を元に考えてみたいと思います。看護師の皆さんにとって、自治体が公表する資料は、普段はなかなか目にする機会が無いものかと思います。

 

第1回目の今回は、「保健医療計画」の概要と、その資料の見方(ミカタ)について、お伝えしていきます。


保健医療計画とは何なのか

 

「保健医療計画」という言葉を、初めて目にする人も多いかもしれません。これは「医療法」により「各都道府県が、自地域の実情に沿って定めるもの」となっています。

 

厚生労働省では、保健医療計画の趣旨について、次のようなものであるとしています。

 

  • 各都道府県が、厚生労働大臣が定める基本方針に即して、かつ、地域の実情に応じて、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るために策定。
  •  

  • 医療提供の量(病床数)を管理するとともに 質(医療連携・医療安全)を評価
  •  

  • 医療機能の分化・連携(「医療連携」)を推進することにより、急性期から回復期、在宅療養に至るまで、地域全体で切れ目なく必要な医療が提供される「地域完結型医療」を推進。
  •  

  • 地域の実情に応じた数値目標を設定し、PDCAの政策循環を実施。

 

例えば、皆さんが勤務する病院の病床は、どのようなタイプのものでしょうか。各病院における病床には、2つの考え方があります。

 

一つは、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」と、病期によって分ける考え方です。

 

もう一つは、入院する患者さんの傷病や状況から考える方法です。これは「医療法」で定められた区分であり、保健医療計画と密接に関係します。

 

現在の保健医療計画では、病院における病床を「一般病床」「療養病床」「精神病床」「感染病床」「結核病床」の五つに分類しています。このうち「一般病床」と「療養病床」は、

 

  • 一般病床:積極的な治療が必要な患者さんが入院するところ
  • 療養病床:主に「長期にわたる療養を必要とする患者さん」が入院する病床

 

と考えると分かりやすいかもしれません。

 

病院の病床のタイプを考える時、この二つの考え方を併せて見ていくことが出来ます。こう考えると、皆さんが働いている病院の「病床」には、どのような役割があるのかが、見えてくるのではないでしょうか。

 

また、各都道府県により、少子高齢化の進行状況や、現在ある医療機能、土地の高低などによる人口の分布、移動手段の有無などは、全く変わってきます。

 

しかし住んでいる人たちにとっては、みな平等に、日本全国どこにいても、同じレベルの医療を受ける権利があります。このような地域の実情を踏まえ、各都道府県内にどのような医療機能を維持、追加していくべきか、人口の増減を鑑みて病床数をコントロールしていくべきか、こういったことが事細かく定められているのが、保健医療計画なのです。


看護師は「保健医療計画」をどう見るか

 

では、今回の本題です。保健医療計画には、記載する内容が決められています。

 

○疾病・事業ごとの医療体制

  • がん
  • 脳卒中
  • 急性心筋梗塞
  • 糖尿病
  • 精神疾患
  • 救急医療
  • 災害時における医療
  • へき地の医療
  • 周産期医療
  • 小児医療(小児救急含む)

○居宅等における医療
○医療従事者の確保
○医療の安全の確保
○施設の整備目標
○基準病床数 等

 

都道府県によっては、全部で300ページくらいに渡るものもありますので、全部を真剣に読む必要はありません(もちろん、読んだ方が良いですが)。

 

上記のうち「疾病・事業ごとの医療体制」とは、いわゆる「5疾患5事業」と呼ばれるもので、各疾患や各事業に対する医療体制の整備について、各都道府県の考え方や今後数年間での具体的な施策などが書かれています。

 

医師だけでなく、看護師の皆さんにとって、一番興味深いのは「医療従事者の確保」ではないでしょうか。

 

これは、各都道府県が、先に定める「医療体制の整備」に向け、どのような医療者をどうやって確保するか、これまでの施策の結果がどうだったか、などが書かれています。ここだけはしっかりと読んでおくと、看護師が転職先を考えるヒントになることでしょう。


まとめ

 

看護師を確保するのは、病院などの医療機関や介護施設など、実際に「看護師が働くところ」です。しかしその背景には「都道府県の考え」があり、今後は病床数が増えるのか減るのか、実際に働いてほしい看護師の人数がどう変わっていくと予測されるのかなどが見えてきます。

 

さらに「実際の看護師確保対策」に活かされている部分も、少なからずあります。

 

また、自分が働きたいと考えている病院には、どのような役割があるのか。そういったところから転職先を考えてみるのも、一つのヒントになるのではないでしょうか。

 

 

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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