看護師のための保健医療計画のミカタ No.7 「千葉県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」

千葉県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

■作成日 2018/2/24 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は全国で6番目に人口が多い千葉県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策についてお伝えします。

 

千葉県の看護職員数の動向

 

千葉県は三方を海に囲まれた、温暖で自然豊かな地域です。首都・東京のベットタウンとして人気が高く、東京ディズニーリゾートをはじめ、ゴルフ場やアウトレットショッピングモール、海や山のリゾートなどが楽しめます。

 

千葉県のデータによると、平成26年の就業看護職員数は、52,636人(保健師1,856人、助産師1,335人、看護師38,739人、准看護師 10,706人)でした。また、厚生労働省の平成26年の「衛生行政報告例」によると、人口10万対人数では、保健師29.9人で全国第42位(全国平均38.1人)、助産師21.5人で全国第45位(全国平均26.7人)、看護師625.1人で全国第46位(全国平均855.2人)、准看護師172.8人で全国第44位(全国平均267.7人)と、どの職種もかなり低い水準にあります。さらに今後は高齢化が急速に進展する見通しで、看護職員はますます不足することが予想されています。

 

ここ数年で、千葉県内で就業する看護職員は増加傾向にあるのですが、まだまだ全国平均よりも少ない水準に見えます。しかしそこには、実人数と人口との関係もあります。例えば、看護職員数が同じでも、人口が減少すれば、人口10万人あたりの看護師数は多く見えてきます。逆に、看護職員数が同じで人口が増えている場合、人口10万人あたりの看護師数は少なく見えます。千葉県の場合、県全体の人口増加に、看護職員の増加がおいついていない、という状況にあると考えられます。

 

 


千葉県の看護師の就労状況

 

平成26年の患者調査によると、千葉県は入院受療率が神奈川県と埼玉県に次いで全国で3番目に少なく、外来受療率は沖縄県に次いで全国で2番目に少ない県です。人口10万人当たりの病院数、診療所数、薬局数、訪問看護ステーション数、いずれも全国で最も少ないグループに属しています。これは全国の中でも、比較的高齢化率が低く、労働人口が多い「若い県」であることを表していると考えられます。

 

 

県内の人口は、中央の山を隔てると大きく異なります。県西部に位置する東葛北部医療圏、東葛南部医療圏、および千葉医療圏では、東京の人口増加に合わせるかのように人口が増えており、病床数も増加傾向にあります。一方、県東部に位置する香取海匝、山武長生夷隅、安房、君津、市原の各医療圏は、人口が少なく、病床数も減少傾向にあります。

 

千葉県では、千葉医療圏と東葛南部医療圏、安房医療圏に、全県対応型周産期医療を担う大きな病院があり、どの地域でも救急搬送や出産に対応できる体制が整っています。その中でも東葛北部、南葛南部、千葉の3医療圏には、高次の救急医療に対応できる医療機関が、複数存在しているという現状です。

 

看護師の就業場所として最も多いのは病院で全体の73%。それに診療所が12%、介護保険施設等5%と続きます。尚、2015年度の日本看護協会の調査によると、千葉県の常勤看護職員の離職率は11.7%でした。看護師数が少ない千葉県にとって、離職の解消と再就業の促進が、今後の課題となっています。


千葉県の看護師確保に向けての取り組み

こうした状況を受けて、千葉県では看護師確保のために様々な施策を行っています。看護師の養成においては、看護師養成校の運営を支援するほか、県内就業・県内定着をはかるために、看護学生への修学資金貸付制度を行っています。

 

また、看護職員の離職防止や、再就業による看護職員の確保をはかるため、次のような施策も行っています。

 

  • 院内保育運営への支援を含めた就労環境の改善
  • 離職者の再就業を促進すべく、ナースセンター事業を強化
  • 再就業を希望する看護職員への、継続的な情報提供
  • 職場復帰を容易にするための、看護力再開発講習会の実施
  • 職場適応を支援するため、メンタルサポートや看護職員の就労環境改善を推進

 

また、看護職員の資質の向上を図るため、新人看護職員に対しては、研修やスキルアップのための継続教育を実施しています。さらに、質の高い看護ケア提供にかかわる看護管理者、院内助産所や助産師外来を運営できる技能を有する助産師など、大学と看護協会が協同で能力の高い看護職員の育成を図っています。

まとめ

 

西部には複数の高機能病院を擁し、高度医療を展開できる病院が複数ある千葉県。大学と看護協会が協力して、看護師の育成を図る手厚い体制なら、未経験の分野でも、安心してスキルアップを目指せそうですね。

 

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2016/6/25

 

参考資料

 

千葉県第6次保健医療計画(平成23年度~平成29年度)
https://www.pref.chiba.lg.jp/kenfuku/keikaku/kenkoufukushi/hokeniryou_5.html

 

平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/gaikyo.pdf

 

平成22年「衛生行政報告例」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_hojyokan.pdf

 

千葉県看護協会ホームページ
http://www.cna.or.jp/

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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