クリニック経営における患者満足度調査と職員意識調査の活用法

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山崎 裕史

山崎 裕史

医業経営コンサルタントYHコンサルティングオフィス
医療業界に20年以上かかわり、クリニック事務長7年経験。現在は、クリニック開業後専門の経営戦略コンサルタント・クリニック専門Webコンサルタント・医療専門のWebライターとして活動中。クリニック事務長経験とアクセス解析士の資格・知識を生かした独自の「事務長不在クリニックのWeb&リアル経営戦略提案」が専門。

第9回:クリニック経営における患者満足度調査と職員意識調査の活用法

クリニック経営に向けてチーム医療思考

開業して初めて気づく先生も多いと思いますが、病院に勤務している時点では気づかない点も出てくることも多いと思います。特に医療という組織は、医師を頂点とした完全なピラミッド構造になっていることはご存知だと思います。

そのため、医師が臨床に集中できるように、周りのスタッフがいろいろな面でバックアップすることになります。

開業すると、その点でご苦労する先生も少なくないのではないでしょうか?特に、医療現場は女性スタッフがほとんどですので、医療機器(電子カルテや画像連携システムなど)の管理などは院長先生が担当することもあります。また、人間関係や人事面などに関して女性スタッフの扱いが苦手なことが多い先生も多いかと思います。

医療機器・ICT関連機器の管理や修理に関しては院長先生が行うか、お金を払って業者に管理を委託することになるかと思います。

確かに医療機器は業者に半年~1年ごとの点検は法令上行う必要があります。しかし、何もかも業者に任せていては管理費も高くなる一方です。

しかし、それ以上に考えなければならないこともあります。医療に関して知識や技術ばかりに気を取られがちですが、医療は「人と人とのコミュニケ―ション」の上に成り立っているといっても過言ではありません。

患者さん・医療スタッフ・事務スタッフ・製薬会社のMRさん・各種取引業者の営業担当者など、たくさんの人たちとコミュニケーションをとりながら業務を進めなければならない環境下にあるということです。

その中でも大きなウェイトを占めるのが、スタッフに対する人事労務マネジメントではないでしょうか。一般的な会社でもこの人事に関するマネジメントを軽視している経営者も少なからずいるようです。

特に、クリニックのような小集団においては、なおさらでしょう。しかし、これをおろそかにするとスタッフの「やりがい」「やる気」を引き出すことがうまくできないことにつながります。その結果、スタッフが入職・退職を繰り返し安定しないクリニックになりがちです。

スタッフが退職を繰り返せば、求人広告費や引き継ぎなどの雑務等、無駄な費用と時間を浪費してしまいます。その上、クリニックの医療レベルがいつまでたっても上がらず、常に院長先生が注意しなければならないという悪循環に陥ってしまいます。

そのため経営者として必須のアイテムとして「患者満足度調査」「職員意識調査」をのちほどご紹介いたします。

医療業界の悪い習慣を断ち切るには?

医療機関に勤務する医療従事者は、ほとんどが国家資格所持者であり専門家でもあります。法的には、すべての医療行為に関して医師が実施可能ですが、そのために構築されたのが医療従事者の完全分業化制です。

医療従事者が、各々の業務において「専門家」となり、技術や知識を高めそれを患者さんに還元していくというシステムは理にかなっています。

しかし、それを統括するコーディネーターが不在という弱点もあります。

本来は医療全てを統括している医師がその役目を担うことになろうと思いますが、診療が忙しくなかなか手が回らないというのが実情なのではないでしょうか?

また診察後から検査など、患者さんの動線に関してもあまり把握されていないのが現状です。

たとえば、患者さんが医師の指示通り検査を受けるために、診察室を出てからどのような動線でどれくらい待ち時間があり、最終的に薬局を出るまで病院・薬局で何時間滞在していたかということに関してはあまり把握されていないようです。

診察は「医師」、採血は「看護師」、レントゲン・CT・MRI撮影は「放射線技師」と完全分業になっているため、お互いの連携があまりできていないようです。

そのため、患者さんが極端に混んでいる場所や空いている場所の差も出てしまい、連携が取れていないために協力体制やバックアップ体制を敷いている医療機関はほんのわずかのようです。

このような医療独特の習慣を断ち切り、よりよい患者サービスを目指すには、医療提供側からだけの「視点」から利用者(患者さん)側の視点に、目を向けるべきではないかと思います。

他施設との差別化も含め、そのような仕組み・システムが、今後注目されていくのではないでしょうか?

現状では、医療サービス向上というと「相談コーナー」や「インフォメーションブース」を設置したり、接客研修を実施したりすることが先行しているようです。

しかし、それは民間企業的発想でいえばサービス業としてあたり前であって、できているのが前提ということになります。

「わからないことはお客様に聞け」とはよくいわれる言葉ですが、まったくその通りではないかと思います。

利用している方の本当の気持ち・意見など、サービス向上の情報収集が不可欠だと思います。そういう点で患者アンケートを積極的に行っている医療機関も出てきています。

そしてそのアンケートに基づいた話し合いを病院・医院内で行い、決定した改善点をホームページや院内掲示板などに掲示することが大切だと思います。

このように患者さんに前向きな姿勢を示すことが、お互いの距離感を縮めコミュニケーションのきっかけになればと思います。

患者満足度調査の実施

病院ではすでに、「患者満足度調査」について積極的に情報を公開し、その集計を厚生労働省のホームページに掲載されています。

これらの調査では、外来患者に比べて入院患者は満足度が高いといわれています。確かに、入院・手術などでお世話になっているのに、悪く言えないとという「患者さん心理」も反映されていると推測されます。

そのため、今回は「外来」にスポットを当ててみていきたいと思います。

全体的な傾向

平成26年に発表された病院に対する満足度調査が上のグラフです。約8年間の年次調査ですが、「不満」がやや低下し、「満足」が約10%に伸びてきています。

参加病院数が不明なので、推測の域でしかコメントできませんが、50%~60%の患者さんが満足していると回答しています。加えて、「満足」+「ふつう」で約90%近くなりますので、ほとんどの患者さんは不満に思っていないということになります。

待ち時間調査

次に診察までの待ち時間についての調査結果です。「満足」している患者さんは、平成17年から平成23年までは約25%からやや回復傾向になっているようです。

参加病院数が不明なので、推測の域でしかコメントできませんが、病院全体の満足度に比べ「満足」+「ふつう」が61%程度であり、他の理由で「不満」なことが隠れているようです。

またこれは、来院してから帰るまでの時間ではないので、診察以外の待ち時間(検査・会計・薬局など)は対象外になっていることになります。医療機関で個別にアンケートをとるのであれば診察以外での待ち時間等の総合的な調査が望まれるところです。

以上の資料以外にも「医師による診療・治療内容に対する満足度」「診察時間に対する満足度」「診察時のプライバシー保護の対応に対する満足度」などもあるので、参考にしていただけたらと思います。

これらのデータは、ベンチマークといって自院と全国を比較してみたりするときに非常に便利です。今回は外来だけのデータでしたが、「入院」や「病院の種類別」などもあります。自院の医療サービスを患者さん視線で検討するにはいい指標になるでしょう。

※出典元:厚生労働省平成26年_受療行動調査

職員意識調査の実施

「患者満足度調査」に続いて、次は医療機関の職員に対する「職員意識調査」について解説しましょう。

この勤務環境改善に関しては平成26年6月に医療法が改正されたことが発端となっています。この医療法の改正によって医療機関が医療従事者の勤務環境等の指導措置を努力義務のとしたことによるものです。

患者さんの満足度調査により患者サービスの向上と同時に、医療機関の職員がやる気になって楽しく仕事をしていなければ、医療サービスの質が向上することはあり得ません。

そのために、医療機関ごとに職員満足度調査などを実施することが望ましいといえるでしょう。

患者さんは医療機関に対して自分の健康を託しているという気持ちがあり、どちらかといえばお世話になっているので控えめな意見が多いようです。特に地方に行けば行くほどその傾向は強いようです。

一方で、医療業界全体を支える職員が定着しないことについて問題になっています。特に入院施設のある病院は24時間運営が必須であり、交替制の勤務状態は避けて通れない勤務体制になります。

そのような条件下による勤務において、職員の定着化が病院全体の質の向上には不可欠です。

しかし、実際は職員の勤務期間が短く「人材を育てる」という状況にほど遠いのは現状です。勤務に慣れてもすぐに他の医療機関への転職を繰り返すということが常態化しています。

全員が国家資格を持った医療従事者ということもあり、サラリーマンに比べ比較的求人状況が良好という環境も手伝っているの可能性も否定できません。

医療サービスにおいては、人命を預かっているという特殊な性格を持つ職業のため、人材育成というということができないというジレンマに陥っています。

しかし、企業においては新入社員から人材を育てるということが、企業の財産ということが一般的に行われています。

しかし、在職期間の短い医療機関にとって、人材育成が図られずに退職・採用を繰り返す環境下では医療機関だけではなく、患者さんにとっても良い環境とはいえない状況です。

そのために、各都道府県では各労働局を中心に医療機関に対する職員意識調査などを行っています。

東京都の例(東京都医療勤務環境改善支援センター)

医療法改定に施行されることを受けて東京都は、東京労働局が「勤務環境改善支援センター」を立ち上げ、「専門家による支援」と「周知広報」などを行っています。

東京都では「東京都医療勤務環境改善支援センター」が中心となって『勤務環境改善を経営戦略に』をスローガンに勤務環境改善を目的とした支援を無料で行っています。

職員意識調査だけではなく、私の所属している「公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会東京都支部」と「東京都社会保険労務士会」が協力して、医療機関の勤務改善のコンサルティングを行っています。

医業経営が専門の医業経営コンサルタントと労務管理が専門の社会保険労務士が、2名1組のチームとなって対応しております。

この2名が担当医療機関の職員が勤務しやすい環境をどのように構築出来るか、ということを病院経営者や担当者と相談しながら改善していくという仕組みになります。

導入支援

現状把握・課題抽出支援

「第一回職員意識調査」をまず実行します。これらの結果によりどのような課題があるのか抽出します。特に医療機関内において「何が問題なのかもわからない」という最初の定義を具体化することとしては非常に意義のあることでもあります。

改善計画策定支援

東京都医療勤務環境改善支援センターが課題抽出された対策として、いくつかの提案を医療機関側に提示します。この案を医療機関側と検討し、実施可能なものから実施していきます。

一定期間後に「第二回職員意識調査」を行い改善内容の評価と再検討を行います。提案内容を実施することによって職員の意識やモチベーションが改善したのかということを精査します。第一回職員意識調査と比較し客観的に評価を行い、どの程度改善したか定量的に検討を行います。

このようなPDCAを回し、「現状把握」・「改善案検討」・「実行」・「再評価・再検討」を常に繰り返し、PDCAのやり方を勤務環境改善の習慣として定着させる素地を作ることを目標としています。

随時相談

主に労務問題を中心に電話による問い合わせを「東京都医療勤務環境改善支援センター
」が担当します。相談者は「社会保険労務士」及び「医業経営コンサルタント」が行います。

医療機関や医療関係団体への研修講師派遣

各医療機関の状況に合わせて下記のようなテーマに関して研修講師を派遣いたします。

  • 職員に対するストレスチェックを勤務環境改善に生かす
  • 労務管理、労働契約等の問題
  • 医師事務作業補助者・看護補助者の導入
  • 勤務環境改善マネジメントシステムの導入 等

今回のまとめ

事業運営にとって、人材は非常に重要なコンテンツです。良い人材には患者さんの求心力が生まれ、経営改善とともに労働環境改善にも貢献できます。

診療所レベルではなかなか大変な問題ですが、かといって放置しておくと「退職・採用」を繰り返すことになり、人材が落ち着かないためコミュニケーションが取れないというケースが多々あります。

チーム医療を目指すような診療スタイルを目指すのであれば、「PDCA」を常に機能し続けるしくみを確立することが必須なのではないでしょうか?

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