日本人の健康状態を考える:健康診断結果と問題視される結核

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第10回:日本人の健康状態を考える:健康診断結果と問題視される結核

「健常人」ではなく「半病人」が半数

空気が乾いた季節でもないのに、よく咳をする方が増えたように感じます。気になるのは私だけでしょうか?季節を問わずマスクする女性も多いようですし、これから乾燥する季節に向けて、ますますこのような方が増えていくのでしょう。

よく聞けば風邪をこじらせている方も多いようです。暑い夜を過ごすために、エアコンをつけっぱなしで寝ることも毎晩のように続く毎日ですから、仕方ないといえば仕方ないことかもしれません。

健康診断事業をやっている医療機関では、健常者を検査するということを行います。しかし、下図のように治療中の方を含めとはいえ、有所見率が50%を超えているのを「健常人」と呼ぶのはいかがなものかという思いがあります。

平成3年には有所見率が30%にも満たない状態だったのが、グングン増え続けています。平成20年あたりから上昇のカーブが緩やかになっているとはいえ、有所見率が上昇し続けているというのは、大きな社会問題となりうるのではないでしょうか?

「有所見者」という解釈は労働基準監督署によれば「経過観察」「要再検査」「「要精密検査」「要医療」「治療中」に該当する人数(再掲者除く)が「有所見者」にあたります。これだけ該当すれば半数以上は有所見者になるかもしれませんが、逆にいうと「正常」「やや正常」は半分いないということであり、まさに「半病人」といえるでしょう。このままでは、後期高齢者医療費だけではなく、各健康保険組合の経営を圧迫する原因なのでしょう。

この原因のひとつといえるのが、血中脂質の推移ではないでしょうか?下記のグラフをご覧ください。

血糖・血圧・心電図肝機能・貧血などの他の検査に比べて、圧倒的に有所見率が上がっています。しかしかつては、単純に資料を読み替えることはできないという問題もありました。それは、血液検査の検査方法が地域で統一されておらず単純に比較できないということでした。

それを受けて、日本臨床化学会(JSCC)血液検査の全国統一規格を発表し、厚生労働省も、JSCCの血液検査方法を採用する医療機関でないと平成20年から開始される特定健診を実施できないという仕組みを導入し、電子データでの提出を義務付けました。

そのため、平成20年以降の定期健康診断に対する血液検査の評価基準は、信頼性が上がっているといえるでしょう。

しかし、それらを加味しても血中脂質有所見者率の上昇はあまりにも高く、他の項目とかけ離れた状況を作り出しています。食事の内容・身体活動など生活習慣に複雑に絡み合っている結果だと推測します。

一般の方の健康に対する意識はどうかといえば、下記のような傾向が出ているようです。これらはインターネットのワード別の人気度からの推測値です。

1位:糖尿病(人気度:74%)
2位:高血圧(人気度:27%)
3位:脳梗塞(人気度:27%)

※人気度とは100%を上限としたバロメーター

3位以下はアクセスがあまり集まっていないので割愛させていただきました。(たとえば高脂血症・動脈硬化など)
傾向としましては10年以上大きな変動はなく、コンスタントに検索されているようです。

特に、メタボリック(メタボ)というワードは、特定健診が開始された平成20年4月に「高血圧」を追い越す人気ワードだったのにもかかわらず、3ヶ月で激減し今では見る影もないようなことになっています。おそらくマスコミのトレンドに左右されているという影響が大きいのではないかと推測されます

また、「人気ワード」の季節性についてもリサーチしてみました。「脳梗塞」には季節性はほとんどないようですが、「糖尿病」「高血圧」などに関して、毎年6月・11月~12月という時期に定期的に人気が上がり、すぐに下がるという傾向が見られます。

これは、健康診断のピークが春と秋ということから考えると、健診結果が悪かったため慌ててインターネットで検索し、調べているという行動を起こしているからではないかと考えられます。

また、データを読み込んでいくと、地域別の傾向も興味深い傾向があることに気がつきました。各病名で全都道府県はほとんど検索しているようですが、「動脈硬化」に関して「山形県・秋田県」はほとんど検索されていないことがわかりました。

以上の事から考えますと、健診で全国的に血中脂質が上昇しているにもかかわらず、心配は糖尿病・高血圧・脳梗塞などで、自覚症状の少ない高脂血症になっても、動脈硬化や心筋梗塞の事まで気にしていないという結果になりました。

循環器系の疾患に関しては、高脂質が最初のスタートであるという意識が低く、動脈硬化や心臓及び脳梗塞などの自覚症状が発覚してから疾患に気付くというケースが浮かびあがってきます。

筆者が健康診断にかかわっていたころ、衛生委員会の出席や健診結果の集計などからその傾向は多かったような気がします。

また、産業医などの指導が行われたあとの行動も、個人情報であるため放置されるケースが多く、人事課や総務課などの衛生管理者が2次検査・精密検査まで管理することはなかなか困難です。

かといって、医療従事者がいつまでも受診促進することに関しては、限界もあり最終的には「放置」されるということになるケースがほとんどでした。

健康はあくまで「個人管理」であり、個人情報保護法のために第3者が立ち入れないことが多く、本人の自覚に頼ることになります。しかし、上記のように「高脂質」の怖さが理解できていないと、「未病」から「病人」に移行する割合も非常に多くなります。

症状が悪化してから医療機関において治療しても、治療期間も長くなり特定疾患療養管理料等を含めた治療費もかさんできます。そういう意味でも、「予防医学」の原則論としての早期発見・早期治療ということが非常に重要です。

このようなことから今後、各メディアにおいて啓蒙活動を行っていかなければならないということでしょうか?

テレビで毎週に放映している医師を招いての健康番組や、医療業界がインターネットにおいて警鐘を鳴らしていても、各地域での啓蒙活動に頼らざるを得ないところもあります。

出典元:厚生労働省「2014結核登録者情報調査年報集計結果」

年々問題視される結核

そのような環境の中で、なかなか解決しない病気のひとつに「結核」があります。

かつては高齢者がかかる病気というイメージが強かったですが、最近は若年層にも結核が増えてきています。全体としては少ないですが、テレビで活躍している芸人さんやタレントさんが結核を患って入院したことなどが報道されたこともありました。

会社員やそのような職業ではいろいろな外部の方と接触しているが罹患した場合、病院での集団感染のようにすぐに隔離することが困難です。第三者に感染が広がらないように迅速に対応しなければなりません。そういう意味では、クリニックの院長先生の方が遭遇するケースが多いかもしれません。

そのようなケースに遭遇してもあわてないよう、結核者対応マニュアルを作っておくのも良い方法です。会社員だけではなく、大学の学生さんでも健康診断等で突然結核が見つかるということも珍しくありません。

諸外国との比較

全体的に見ても結核の新規登録者は減少傾向です。しかし日本が問題視しているのは、先進諸外国に比べるとまだまだ罹患率が高いということです。下記の表をご覧ください。

明らかに日本の罹患率が高いことが明確です。特にアメリカとの差は大きくかけ離れています。これからの日本はインバウンド観光を国の成長産業のひとつとしていますので、この結核の罹患率は非常に気になるところではないでしょうか?

日本における新規登録者の推移

諸外国から見れば罹患率が高いが、国内の年次経過を見てみると徐々に減少しています。

平成27年は結核による死亡者は「1,955人」と前年より145人減少し、死因順位は26位から29位になりました。また、新規登録者も前年から1,335人減少、前年比6.8%減となっています。

年齢別に見てみると、80歳以上の新規登録者が全体の38.3%を占める一方、減少数が一番多いのもこの年代です。高齢者になってから抵抗力が落ち、集団生活の中で感染し発症するというケースが多いことを物語っています。

一方、感染しやすい環境の医療従事者の感染は減少傾向となっていますが、高齢者が増加したため、医療従事者ではない介護職などの一般職の新規登録者が増えていることに関しては、注意が必要です。

介護施設や訪問介護などにおいて感染することが原因と考えられます。施設であれば隔離は比較的容易ですが、訪問介護の場合、患者の特定に時間がかかる可能性もあります。そのあたりの労働環境が影響しているのではないでしょうか?

最近の傾向として20歳代全体としては減少していますが、新規登録者の約50%は外国生まれであり、外国生まれの新規登録者の数が年々増えています。

日本国内でも地域差が激しい

地域差に関しては通常、人口密度に左右されるところが多いはずですが、人口密度がそんなに多くない地域も上位に含まれていることがわかります。

治療推移と薬剤耐性

かつては結核の治療率は低かったのですが、1944年に開発された結核菌に効果のあるストレプトマイシンができてからは、薬で治療できる疾患となってから飛躍的に治療率が上がってきました。

当時は、2~3年ほど入院や治療に年月がかかっていましたが、どんどんいい薬ができてきた今日では、2ヶ月くらいの入院と通院と合計しても6か月くらいで完全治癒する疾患に変貌を遂げています。

しかし、投薬を途中で中断したり、薬剤の量が足らなかったり(特に粉末の場合は、薬が残りやすいので注意が必要です。)すると、完全に治癒する確率は非常に低くなるだけではなく、完全に結核菌を叩けないため再発率も高くなる結果も招いてしまいます。

また、そのような薬剤耐性菌に変化してしまうと、治療する方法がなくなることを意味します。

そのためにも、入院時の投薬管理が非常に重要です。

患者さんが投薬をごまかしたりすると、結核菌が薬剤耐性をもち非常に厄介なことになります。そのため、入院中は担当看護師が決められた薬剤をきちんと飲んでいるか管理しないと、完治は望めません。

このような薬剤耐性菌の患者さんから感染した場合、発病した時から薬剤耐性を持った結核菌なので、完治が非常に困難になります。そのような患者が増えないよう対策を打たなければなりません。

そのためにも、結核の治療は非常に重要です。しかし、最近は高齢者の貧困が社会問題になりつつあります。特にひとり住まいの高齢者に関しては、薬剤管理も難しくなります。

そのため、平成28年診療報酬改定に盛り込まれた「かかりつけ薬剤師」の存在価値は非常に大きいと思います。特に、訪問診療に医師と同行する薬剤師が大切な役割を果たします。

訪問時に残った薬剤を確認し、きちんと薬を飲んでいるか管理することが治療効果を確認する大きなポイントになります。医師や看護師との情報交換し、治療計画や体調管理に必要な戦力になります。

特に問題になるのが複数の有効な治療薬に対しての耐性ができてしまう「多剤耐性結核」です。日本では治療体制が進んでいますが、医療体制が整っていない国などでは、治療も満足に受けられないことも考えられない。

このように「多剤耐性結核」が発生しやすい環境が整ってしまうと、「多剤耐性結核」が蔓延してしまう危険性が高まります。

この「多剤耐性菌結核」を取り上げて、医学情報誌などに取り上げられたこともありました。

しかし、平成26年の厚生労働省の調査では、全新登録肺結核培養陽性結核患者の0.5%となっており、データ上ではそれほど高率にはなっていないと解釈しても良いかもしれないかもしれません。

しかし、新規結核登録者の約半数が海外生まれであることを考えると、多剤耐性結核がこれから日本でも増加する懸念がある可能性があるということです。

今後、インバウンド観光を積極的に誘致する動きや観光を日本の成長産業と位置付けていますが、このようなリスクが付きまといます。

病気と治療薬の開発とは、常にこのようにイタチごっこのような関係ですが、薬剤によって菌やウィルスのDNAが変化し、その進化を促進するようなことになってしまうのは、皮肉なものです。

同じように、インフルエンザワクチンも毎年DNAが変化し、そのような傾向にあることも残念な結果といえそうです。

出典元:大阪府立公衆衛生研究所「最近の結核事業」
出典元:大塚製薬株式会社「結核は世界の問題」

まとめ

国民の健康状態のバロメーターとなる「定期健康診断」の結果から、日本人の健康状態と健康に関する意識についていろいろと浮かび上がってきました。思ったより医療業界が患者さんに望む姿とのギャップもあるようです。

「予防医学」が普及するために、一般の方が医学的知識を向上させ、自分の健康を守るための自己管理が向上することを願いたいと思います。

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山崎 裕史

山崎 裕史

医業経営コンサルタントYHコンサルティングオフィス
医療業界に20年以上かかわり、クリニック事務長7年経験。現在は、クリニック開業後専門の経営戦略コンサルタント・クリニック専門Webコンサルタント・医療専門のWebライターとして活動中。クリニック事務長経験とアクセス解析士の資格・知識を生かした独自の「事務長不在クリニックのWeb&リアル経営戦略提案」が専門。
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