「医療法人社団」の設立とその手順

医療法人社団の設立方法、先生はご存知ですか?

「医療法人社団」の設立とその手順

■ 記事作成日 2016/10/25 ■ 最終更新日 2016/10/25


筆者プロフィール

医業経営コンサルタント 山崎 裕史

 

医療業界に20年以上かかわり、クリニック事務長7年経験。

 

現在は、クリニック開業後専門の経営戦略コンサルタント・クリニック専門Webコンサルタント・医療専門のWebライターとして活動中。

 

クリニック事務長経験とアクセス解析士の資格・知識を生かした独自の「事務長不在クリニックのWeb&リアル経営戦略提案」が専門。

 

所有資格:医業経営コンサルタント・上級ウェブ解析士・日本Webライティング協会所属

 

※山崎氏への当コラムご感想、フィードバックは下記アドレスまで

YHコンサルティングオフィスWebサイトURL:https://cons-office.com/web/

個人診療所と医療法人のメリット・デメリット

「医療法人社団」の設立とその手順

 

勤務医から独立して開業をするときにまず個人経営の診療所を設立し、数年後に医療法人を設立するかどうかの判断をしなければならない時が来ます。

 

東京都だけは、開業時と同時に医療法人を設立することが認められているようですが、他県については下記のような手順で法人化するのが通例です。

 

  1. 診療所開設
  2. 数年ほど診療
  3. 医療法人申請
  4. 医療法人認定

 

個人診療所と医療法人の大きな違いは、設立者の立場の違いです。

 

1.経営母体と診療体制の違い

 

A:個人診療所の場合

 

  • 院長先生が体調不良で診療ができない場合、管理者は院長先生になるので代診の医師であっても診療は認められない。(※この場合は院長先生が復帰するまで休診、復帰不可能なら閉院
  • 院長先生から息子への事業継承は認められない(別医療機関として申請し直し)

 

B:医療法人の場合

 

  • 院長先生が体調不良で診療ができない場合、代診の医師で診療を行うことは可能
  • 院長先生から息子への事業継承は可能(ただし、理事長変更の各都道府県への書類提出が必要)

 

2.個人診療所と医療法人、それぞれのメリットについて

 

A:個人医院のメリット

 

  • 医院収入と個人収入が一緒
  • 事業報告書や資産登記などの議事録を作成する義務がない
  • 従業員が5名未満の場合、社会保険や厚生年金に加入義務がない(ほとんどが医師国保に加入)
  • 交際費は、全額必要経費算定可能
  • 都道府県の監督下に置かれることがない(事業計画や事業展開が拘束されることがない)

 

B:医療法人のメリット

 

  • 個人と法人の資金が明確に分けられる
  • 職員の給与所得控除が受けられる
  • 支払基金からの振込の際に引かれていた源泉税がない
  • M&Aや解散時には都道府県の許可が必要(事業の継続性が認められる)
  • 家族に役員報酬等を支払うことができる
  • 理事長にも退職金が支給される
  • 生命保険の加入に関して、損金算入が可能
  • 自動車を法人名義にできる
  • 法人名での借り入れが可能
  • 税率は、一定税率(個人医院は累進課税)

 

以上のようなメリットがそれぞれ考えられます。個人医院の方がよいこともありますが、ある程度収入が上げってきたら、税制上のメリットが大きいので法人化する検討をする院長先生が多いようです。


医療法人制度について

1.概要

 

医療法人とは、病院・医師が常時勤務する診療所を開設する時の社団・財団のことを指し、原則として都道府県の許可を受けて設立する法人です。医療法上、医業は営利目的で行われることが禁止されていますので、民間企業などが医業の経営をすることは認められていません。

 

昭和25年に、病院で行うことを個人(診療所)で行うことは様々な困難があるという理由で設立された法人制度です。

 

2.医療法人と財団法人

 

医療法人を設立する時に、「医療法人社団」と「医療法人財団」の2つを選択することになります。

 

A:医療法人社団

 

「社団」とは、社員の集まりを基盤とした医療法人のことを指します。平成26年3月時点では、83.1%が「社団」です。「社員」に集まりで主要条件として法人格としたもので、定款に理事会と社員総会において意思決定や執行がとり行えます。

 

B:医療法人財団

 

「財団」は寄附行為により提供された財産を運営するために作られる法人で、社員は存在しません。「財団」は全体の0.8%しかなく、寄附行為に評議員会で意思決定や執行がとり行われます。

 

3.医療法人の設立基準

 

医療法人社団については、理事長1名、理事3名以上(理事長は兼任可)、監事1名以上で構成され、評議機関である社員総会は原則として3名以上であれば認められます。理事の選任は、社員総会によって決定されます。

 

一方、医療法人財団も理事構成は全く一緒ですが、評議機関は評議員会になります。理事選定は、評議員会によって決定されます。

 

4.医療法人の業務

 

医療法人は医療法第39条により病院・診療所・介護老人保健施設の運営が可能です。また、診療に妨げにならない範囲で附帯業務を各都道府県知事の許可のもとで下記のようなことを行うことが可能です。

 

  • 看護師等の医療関係者の養成・再教育
  • 医学に関する研究所の設置
  • 精神障害者社会復帰施設の設置
  • 疾病予防のための有酸素運動をおこなう施設
  • その他保健衛生に関する業務

 

薬局・施術所・衛生検査所・老人介護支援センター・介護福祉士養成施設・ケアハウス・訪問看護事業・老人介護支援センターなど

 

5.持ち分あり医療法人と持ち分なしの医療法人

 

かつての医療法人には、解散した時に配当や出資金の返還を行う「経過措置型医療法人」として認可してきました。この法人は全体の83%を占めています。

 

しかし、厚生労働省は平成19年に「基金拠出型医療法人」を設立し、新規開設の医療法人においては、「経過措置型医療法人」を一切認めていません。

 

厚生労働省は、平成26年10月に施行された、出資金の返還を行う「経過措置型医療法人」から出資金は返還しない持ち分なしの医療法人に移行を進めていますが、なかなか進んでいないようです。

 

そのため、「経過措置型医療法人」については、当分継続することとなり、「認定医療法人」として分類され、経過措置期間として推移しています。3年間は出資持分に係る相続税等が猶予されるようにしてあります。

 

今後、「経過措置型医療法人」に該当する医療法人は、どのように経緯を経て持ち分なしの医療法人に移行するのかあるいは他の医療法人に移行するのか、税理士などの専門家の意見を聞きながら慎重に進めることになるでしょう。

基金拠出型医療法人について

今後の医療法人設立については、すべて解散時の持ち分なしである基金拠出型医療法人になりますので、持ち分ありの経過措置型医療法人の解説については割愛いたします。ここでは、基金拠出型医療法人の制度やメリット・デメリットについて論じたいと思います。

 

1.基金拠出型医療法人の概要

 

基金拠出とは、余剰金の配分をしないという医療法人の本来の主旨である非営利性を維持するために作られた医療法人です。資金調達を基金というお金だけではなく、建物・医療機器なども含みます。

 

基金の特色下記のようになります。

 

  • 基金の支出と用途に制限がないこと
  • 基金の拠出は個人。法人を問わない
  • 基金拠出者は社員でなくても構わない
  • 基金返還時期は定款で定める
  • 基金制度を使っても寄附は受けられる
  • 基金制度は、定款で明記しておけば法人設立後でも基金の募集は可能
  • 基金制度は社団のみしか認めない

 

2.基金拠出型医療法人化のメリット

 

A:メリット

 

  • 医療継続性の確保(院長先生の脂肪等による診療所の廃止・中断に対処できる)
  • 所得税超過累進課税の回避(個人の場合に比べ、法人であるため所得税の累進課税が19%と25.5%の二段階税率が適用)
  • 理事長報酬に給与所得控除が適用(法人化により理事長報酬が算定可能になり、給与所得控除にとり税額の縮小が見込める)
  • 生命保険料の損金算入が可能
  • 役員退職金の支給が可能
  • 相続税の負担がない

 

B:デメリット

 

  • 経過措置型医療法人からの移行の場合、課税される可能性がある
  • 交際費等の損金算入の制限がある

その他の医療法人

1.特定医療法人

 

国税庁長官の承認を受けて、法人税率が軽減される医療法人です。特定医療法人は、事業そのものが社会福祉の貢献など公益の推進に寄与することが認められると、相続税・不動産取得税・固定資産税が免除されます。

 

《承認基準》

 

  • 出資持分も放棄をすること
  • 役員等の親族割合が1/3以下であること
  • 診療報酬が医療収入の80%以上であること
  • 病床数は40床以上であること
  • 医師等の年間給与総額が3,600万円以下であること

 

2.社会医療法人

 

医療法人社団と同じように各都道府県知事の承認を受けた医療法人ですが、特別医療法人にかわる公共的生活を持つ医療法人としての位置付けという性格を持っています。

 

《事業認定の要件》
  • 各都道府県知事が出す医療計画の5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療(その他))のいずれかに病院の名前が記載されていること
  • 各都道府県知事が出す医療計画に記載された救急医療等確保の5事業のいずれかに該当し、3基準を満たすこと
  • 下記の10の基準を満たしいること
  1. 理事は6名以上、監事は2名以上
  2. 理事及び幹事は社員総会で選任されていること
  3. 財団の場合は理事・監事は評議会で選任されていること
  4. 同一団体関係者は下記のD〜Hの項目通り制限されてこと
  5. 理事・監事・評議員の報酬の支給基準
  6. 社会医療法人関係者に対する特別利益供与の禁止
  7. 営利事業を営む者等に対する特別の利益供与の禁止
  8. 遊休財産保有の制限
  9. 株式等の保有の制限
  10. 直近3会計年度で法令に違反する事実がないこと
  • 次の2つの基準を満たしていること
  1. 社会保険診療収入の制限(診療報酬が医業収入の80%以上であること)
  2. 自費患者に対する請求方法の規定

医療法人の設立手順

「医療法人社団」の設立とその手順

 

医療法人の設立するためには、いくつかの問題をクリアにしていかなければなりません。特に民間企業との関係は厳しく制限されていますので注意が必要です

 

1.申請する前に確認しておくべきこと

 

A:医療法人の種類

 

前述したように医療法人は社員が必要な「医療法人社団」と社員は必要ない「医療法人財団」の2つがあります。どちらにするのか決めておきます。

 

B:理事長・理事の選任

 

理事長は医師でなければならないので、ここでは割愛します。
理事の人選ですが、いくつか注する必要があります。

 

  1. 法人の役員は理事に就任できますが、医療法人と直接取引がなく、利益が発生しない法人ならば問題ありません。
  2. 理事長は理事になれます。
  3. 法人は役員になれません。
  4. 透明性・公平性を確保するため、顧問税理士は監事になれません。
  5. 社員は3名以上必要です。
  6. 社員は必ずしも出資は必要ありません。

 

C:法人名の名称

 

名称は、結構厄介です。役所の担当者ともめることもたびたびあります。名称の基本的なルールをピックアップしてみました。

 

  1. 誇大な名称は避ける(セントラル・第一など)
  2. 国名・都道府県名・市区町村名を入れない
  3. 既存の医療法人名と同一あるいは類似している名称は避ける
  4. 取引会社や営利法人の名称は避ける
  5. 診療科目名の単独使用は避ける。ただし、「クリニック」などの固有名詞との併用は可能
  6. 広告可能な診療科目名以外は使用できない
  7. 当て字・通常の漢字と異なる読み方の名称は避ける

 

C:医療法人の財産

 

診療所から法人化する時には、固定資産のみ引き継がれます。借入金は引き継がれませんので注意が必要です。都道府県によっては、減価償却残を引き継げることもありますので、顧問税理士などに確認して下さい。

 

D:運営管理指導要綱

 

  1. モデル定款(寄附行為)に準拠している
  2. 社員名簿を作成
  3. 出資持分に決定・払戻には適正な評価をすること
  4. 会議(社員総会・理事会)の招集は文書で5日前にすること
  5. 議事録は必ず作成・署名・保管が必要
  6. 基本財産は明確に区分し、定款に記載しておく
  7. 医療法人と理事長の直接取引は禁止。必ず特別代理人(理事長関係者除く)を立てておくこと
  8. 医療法人の義務
  • 事業報告書等の提出
  • 登記の届出・役員変更があった場合にも届出が必要
  • 書類の閲覧・整備
  • 都道府県による指導監督(報告・検査・法令違反に対する措置など)

 

前述をしましたが、新規開業と医療法人を同時に申請できるのは、東京都だけのようです。他の都道府県は、個人診療所を設立してから医療法人に移行する必要がありそうです。

 

各都道府県によって若干異なりますので、詳細は開業コンサルタントなどに確認してください(今回は、東京都を例にとって解説していきます。)

 

2.医療法人の申請時期

 

2月・8月の年2回しか申請書類は受け付けてくれません。それを逃すと次年度になりますので、賃貸契約・医療機器導入・スタッフ募集などと、うまくリンクさせながら開業時期を計画します。通常は何もなければ、約6ヶ月で開業可能です。

 

3.申請方法

 

医療法人設立までの手順を整理してみましたので、参考にしてください。

 

1.「医療法人設立の手引き」の入手(※新規開設の時は都が開催する説明会の出席が前提)

2.定款・寄附行為(案)の作成

3.設立総会の開催

4.設立許可申請書の作成

5.設立許可申請書の提出(仮受付)

6.設立許可申請書の審査

7.設立許可申請の本申請

8.答申

9.設立許可書交付

10.設立登記申請書類の作成・申請
11.登記完了

 

参考資料
出典元:第五次改正医療法:平成26年10月1日施行

 

この記事を書いた人


山崎 裕史 (医業経営コンサルタント)

医療業界に20年以上かかわり、クリニック事務長7年経験。クリニック開業後専門の経営戦略コンサルタント・クリニック専門Webコンサルタント・医療専門のWebライターとして活動中。クリニック事務長経験とアクセス解析士の資格・知識を生かした独自の「事務長不在クリニックのWeb&リアル経営戦略提案」が専門。

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