よりよい医療機関を目指して~外来患者に対するサービスとは?

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山崎 裕史

山崎 裕史

医業経営コンサルタントYHコンサルティングオフィス
医療業界に20年以上かかわり、クリニック事務長7年経験。現在は、クリニック開業後専門の経営戦略コンサルタント・クリニック専門Webコンサルタント・医療専門のWebライターとして活動中。クリニック事務長経験とアクセス解析士の資格・知識を生かした独自の「事務長不在クリニックのWeb&リアル経営戦略提案」が専門。

外来機能の強化がこれからの医療機関には必須

現在の外来機能について

医療機関というサービス業態は、法令に忠実に遵守したサービス業として、発展してきました。

昭和の時代には数々の伝染病や感染症が蔓延した時代には、感染者を封じ込めることや病気を治すということが医療機関の大きな目的だった時代です。

しかし、医学の発達によって、伝染病や感染症の蔓延予防や予防接種によって、撲滅に近い形が確立してきました。

最近では生活習慣の欧米化によって、新たな「生活習慣病」という症状が増えてきているのは、皮肉なことです。

現在の医療機関における外来診療も、早期発見・早期治療することで、治療の削減に関して寄与するべきところですが、残念ながらそれらは、患者さんの意識の高さに左右されるところでもあります。

これから論ずるのは、患者側の視点に立って考えてみたいと思います。

私は、医療機関にかかわってきたというだけで、医療従事者でもなく国家資格も持ち合わせていない一般的な患者であるということが前提になります。

そのため、医療業界において業務をしている方には、耳の痛い話になるのではないかという推測のもと、お読みいただければと思います。

外来診療について、立ち止まって考えてみる

現在の日本においては国民皆保険という制度の下、外来診療が実施されています。

しかし、人口が増加するという前提に立ったこの制度は、人口減少・高齢化が進むことが間違いない現代にとって時代遅れの制度であることは間違いない事実であると考えられます。

そのため、厚生労働省は2025年を最終ゴールとした「地域包括ケアシステム」構想を打ち立て、医療システムの適正化を図ろうとしています。

地域を細分化した上で、病院だけではなく診療所との機能分化を明確にすることが前提となります。

スクリーニング機能として診療所を利用し、重病化した患者さんだけを専門病院ないしは中核病院に紹介することで手術を含めた治療を行うという、病診連携(あるいは介護連携)を目指すというものが骨子になります。

この制度の根底にあるのは、大病院への外来患者の集中という問題からでした。

確かに大病院は敷地面積も広く、医師数も多いことで今まで受入が可能でしたが、外来患者数の偏りを是正することが喫緊の課題でもあります。

しかし、この制度を是正するには、矛盾が生じます。

なぜなら、日本の医療制度はフリーアクセス制度を採用しており、日本全国どの医療機関でも同じ料金で治療を受けることは患者さんの自由であるということです。

地方の病院で受診しても、都心の大病院の著名な医師にかかっても、同じ料金で医療が受けられることは、画期的なことです。

しかし、医業経営の面から見てみると地方間の土地取得・維持費や賃料の差異を全く考慮しない効率の悪いシステムです。

その上、患者さんの医療費から消費税を徴収できないので、医療機関は物品の仕入れ・購入に関して、消費税分の負担を強いられるということが経営を圧迫する原因のひとつになっています。

かつての医療は、患者さんと医師(医療機関)との立場の違いによって成り立ってきました。

患者さんはすべてを医師に「信頼し、お任せする」という関係性です。

そのため、患者サービスという点について、医療機関側の論理が優先され、患者さん向けのサービス向上対策をほとんど打っていない時期が長く続きました。

しかし、やっと最近になって他医療機関との差別化と、患者ホスピタリティー向上のために、いろいろな施策を打ち出している医療機関も増えてきたようです。

外来患者満足度の把握

そのような「上下関係」になっている場合、患者さんアンケートなどを行っても、医療機関に対して不満があっても、患者さんの口から出るケースは非常に少ないようです。

特に、入院患者さんに関しては、衣食住を共にしているという共有感からか、あるいは治療・完治してもらったという「負」の意識が強く、不満があっても口に出しにくいという関係性があります。

つまり、入院期間に治療という戦場をともに戦ってきたという「戦友」であり、人間関係のコミュニケーションができているという前提が成り立ちます。

一方、外来患者さんに関しては、入院患者さんほどでもないですが、「長年お世話になっている」「お医者さんにそんなこと言えない」などの気持ちからアンケートや調査を行っても、(特に長年外来に通院している患者さんは)医療機関の不満については口を閉ざす傾向が高いようです。(下図グラフ参照)

そのため、医療機関や医療コンサルタント会社が患者満足度のアンケートを行っても、その回答を鵜呑みにするのはある意味、回答の精度は低いのではないかと推測されます。

そのような中で、患者増患対策として医療機関がこぞってクローズアップしている問題のひとつに「待ち時間」があります。

ある医療系マーケティング会社が調査したところ、やはり患者さんの不満第1位は、「待ち時間が長い」ということでした。第2位は「駐車場待ち」、第3位は「会計待ち」という結果がわかります。

地域や医療機関の規模などによって、若干事情が変わると思いますが、おおむねこの傾向はほぼ不動のものでしょう。(下記グラフ参照)

以上のグラフを見てみると、人間の心理上40分以上待たされると、怒りのバロメーターが上がり始めるという医療機関が想定していることと一致するデータです。

「最近、医療機関に対するクレーマーが多くなってきた」ということを耳にします。

しかし、その原因を医療機関が作っている可能性もあるということを、このデータは示唆しているのではないかとも考えられます。

このデータを見ると、診察時間の待ち時間だけではなく、駐車場・会計待ちにおいてもかなり待たされるという印象が強いと見て良いでしょう。

さらに、この後に薬局での待ち時間が加算されると、自宅と医療機関の往復にかかる時間を考えると、ほとんど1日潰れるということがお分かりになるでしょうか?

単純に診察待ち時間を調査し、改善するという発想は、非常に評価されることです。

しかし、患者さんの立場に立つと、診察待ち解消だけでは解決しない深い溝が、医療機関と患者さんの間にあるということです。

また、患者さん寄りのサービス向上という点において、ここまで精神的負担をかけていることを理解している医療機関があるのか?ということが求められるではないのでしょうか?

患者さん視点で医療サービスを考えると・・・

以上のデータから患者さんの行動を推測してみましょう。

  • 自宅~医療機関・・・2時間(往復)
  • 駐車場待ち  ・・・30分~1時間
  • 診察待ち   ・・・30分~1時間
  • 会計待ち   ・・・30分~1時間

以上を合計すると、薬局での待ち時間を入れなくても5時間です。昼食を含めると6時間にもなります。また、この他に検査などが入るとさらに待ち時間が伸びてしまいます。

患者さんの待ち時間がネックになっていると、病院・診療所とも問題点抽出の把握はかなり前からできていたと思います。

しかし、それを積極的に改善する医療機関は少なく、むしろ待たせることが人気のバロメーターという認識でいた施設もあるようです。

待ち時間調査というと、ほとんどが「診察までの待ち時間」対策としてきた施設は多いかと思います。

駐車場待ちに関しては、致し方ない点もあるので今回の考察からは除外した方がよいでしょう。

たとえ、医療機関が駅前にあり、駐車場がそれほど広い訳ではない場合でも、自家用車でやってくる患者さんに関しては、医療機関側では制御できない要素が含まれています。

これらを観察すると、すべての部門で混雑していることが見て取れます。

そのたびに、患者さんは30~1時間待たされるという構図になります。また、医療機関側の論理による仕組みにも欠点が散在しているのではないでしょうか?

各種検査窓口の受付

ひとつの例として患者さんによっては、診察前後に検査を行わなければならないケースもあります。採血・超音波検査・各種放射線(レントゲン単純撮影・CT・MRI)検査などが該当するでしょう。

そのたびに、患者さんが各検査場所の窓口に書類を提出し、検査待ちというのが一般的でしょう。

しかし、医療機関によっては、診察室から検査の場所が別フロアにあるなど複雑でわかりにくいという欠点があります。そのような場合、高齢者では迷ってしまうケースが考えられます。

また、主治医が出した検査指示箋をなぜ患者さんが、各検査の窓口に出さなければ検査してもらえないのでしょうか?これが医療機関側の論理です。

保険証の確認

長年通院された患者さんは慣れっこになっていると思いますが、毎月の健康保険証の確認があります。

医療機関は診療報酬請求(レセプト:いわゆる医療報酬の請求書です)を地域医師会や社会保険診療報酬支払基金に毎月提出しないと医療費を振り込んでもらえません。

その確認のために健康保険証の記号番号などを確認する必要があります。

そのため、ほとんどの医療機関では、毎月患者さんに保険証を持参してもらうということをしています。

しかし、患者さんにとっては、たいして重要なことではないので、忘れたりすることもあります。

しかし、医療機関によってはFAXで受け付けるところもあるようですが、保険証を目視確認することが前提と決めている施設もあります。

この点についても、医療機関の論理で行っているため、患者さんのサービスを高めることではないことは明白です。

上記はその一部分ですが、そのようなことをひとつひとつ改善することが、患者満足度につながってくるのではないでしょうか?患者さんを取り巻く環境はかなり変化してきています。

医療過誤報道による医療に対する信用の失墜、各メディアによる医療情報の氾濫などが良い例だと思います。

これからは、医療機関がこれまでと違った患者さんの価値観に対応すべく進化を求められる時代になってきました。医療機関と患者さんの関係性も、「お任せ医療」から「ともに病気と闘う医療」に変わりつつあるのではないでしょうか。

その縮図が、外来診療に表れているともいえるでしょう。

外来患者満足度を上げるためには?

外来患者満足度調査を単純に行っても、上述した理由によって医療機関の欲する答えは、導き出せないかもしれません。

しかし、調査を行う意義は存在するはずです。

アンケートに協力した患者さんの気持ちから察すれば、貴重な意見に基づいた改善策を公表することによって患者満足度が向上するという考え方もあります。

また、これらのことを実際に行っている医療機関も存在します。

これらのことから民間企業の顧客第一主義の発想からすると、医療機関のテコ入れが遅れているのではないかと考えられます。

一概に医療サービスと比較することは危険ですが、良い点を導入するアイデアにはありそうです。

通常、サービス業の民間企業においては、カスタマーサービス(通称CSと呼びます)を充実させており、業種によって様々ですが「コールセンター」「お客様相談サービス」などの事業を展開しています。

企業では、これらを積極的に行うことにより、顧客満足度を上昇するとともに、至らないサービスをお客様から「教えてもらう」という姿勢で、取り組んでいます。

改善点が見つからない場合は、お客様が教えてくれるという姿勢が貫かられています。そのためにカスタマーサービスやコールセンターなどの設備投資を行っています。

医療機関も導入すべきとは決して思いませんが、外来機能改善にヒントになりそうな要件が含まれているのかもしれません。

新患が減った、外来患者数が減ったという場合、何か理由があるはずです。

それらを解決するためにも、日頃から患者さんの意見を聴き、蓄積しておくということが重要になるでしょう。

導入前に行っておきたい「職員満足度調査」

外来患者満足度調査やアンケートを行う前に、医療機関内で確認しておいた方がよい調査があります。

それが、職員が業務に対してどの程度モチベーションをもって毎日仕事をしているかということを職員満足度調査です。この結果を経営者(院長・理事長先生)が把握しておくが大切です。

患者満足度を上げようとするためには、経営サイドと現場サイドが同じベクトルを向かなければ、まったく意味のないことになってしまいます。

医師をはじめ全職員が非協力的な場合、まったく意味をなさず逆に退職に加速をつけることになってしまいます。そのためにも職員の本音を見定めることが必要になります。

このように「根回し」を事前に行った方が、反発を最小限に食い止めることできます。

いきなり患者満足度調査に踏み切ると、職員の反発が出ることは必須と考えた方がよさそうです。

アンケートの内容によっては、職員に対する個人攻撃の温床になりかねない可能性を含んでいるからです。

まとめ – 外来患者対応を重要視する必要性

新患獲得のための戦略として、外来患者さんの満足度を上げることは、非常に良い取り組みです。医療は人と人とのコミュニケーションで成り立つ業態です。

待合室などでどうしても外来患者さんが長く待つような場合は、看護師やコンシェルジュさんが「あと何人目ですよ」などと声をかけてあげる配慮や、診察室に入ってきたら主治医から「お待たせして申し訳ない」という一言があれば、クレームや満足度はかなり減るのではないでしょうか?

このような取り組みを全職員が意識して行い、患者さんといろんな話が聞けたりすることで、生の声を改善に生かせることにつながります。

確かにアンケートや調査をとることも重要です。

しかし、お互い人間ですので、コミュニケーションをとってよりよい人間関係を築き、最善の医療環境に持っていくことが前提にあるのではないかと考えます。

それと同時に、外来患者さんをいかに待たせないよう、業務の効率を計ることを常に工夫していこうとする姿勢や改善が必要です。

このような取り組みの蓄積がこれからの医療機関の差別化において重要な戦略になることになるでしょう。

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