第1回:【医療経営士】とは、何者なのか
■ 記事作成日 2016/5/31 ■ 最終更新日 2017/12/5
病院経営を変える救世主となるか?【医療経営士】という資格
元看護師のライター元看護師のフリーライター紅花子です。今回から新しいコラムがスタートしますが、そのテーマは【医療経営士】という資格についてです。第1回目の今回は、この資格に関する全般的な情報をお伝えします。
医療経営士資格を認定している機関は?
医療経営士の資格認定を行っているのは、一般社団法人日本医療経営実践協会(以下、医療経営実践協会)という組織です。この組織は、次のような目的により、2010年に設立されました。
その背景には、日本の医療情勢にあるようです。日本は現在、次のような喫緊の課題を抱えています。
- 医師の不在と偏在
- 医療費の急激な増加
- 医療機関の経営難
こういった、ともすれば医療崩壊となりかねない状況の中、日本国民に対し「安心、安全で、高度、良質な医療」を提供し、なおかつ「医療費の抑制や医療機関の経営の安定化を図る」というのが、医療経営士に求められる役割とされているようです。
医療経営士の資格は3段階
医療経営実践協会では、医療経営士の資格を、次のように分けています。
- 3級:医療及び経営の基礎知識を有する者
- 2級:医療経営に関する幅広い知識や、問題解決のための分析力を備えた者
- 1級:理事長や院長とともに、経営幹部として意思決定を行うことができる者
当然のことながら、1級がもっとも難易度が高く、3級に合格すれば2級が、2級に合格すれば1級を受験することができます。
資格試験そのものは2010年9月からスタートしているようですが、最初の年は3級の資格試験しか行われていません。その後、数回の資格試験を実施し、2014年に初めて1級の合格者が出ました。
しかし、試験に合格したからといって、すぐに医療経営士が名乗れるわけではなく、医療経営実践協会による認定審査が行われます。これにより医療経営士1級と認められた方は、2014年の時点でわずか5人だったそうです。
取りやすい資格なのか、取りにくい資格なのか
では、これまでにどれくらいの受験者・合格者が出ているのか、その推移をみてみます。
【3級の場合】
これまでの申込者数は、累計で15,000人を超えているそうです。
第4回は、東日本大震災の影響があったためか、合格者数・合格率ともに低くなっていますが、それ以外の回では(最初の3回目までを除くと)、40~50%前後のようです。
【2級の場合】
2級になると、合格率はだいぶ下がってきます。
過去最高は、第8回の31%ですが、それ以外の回はおおよそ10~20%台です。
2級の試験は2つの分野に分かれており、1つの分野が合格しても、2つ目の分野が不合格となった場合は、2年間のうちに再試験を受けて合格しないと、合格した方の分野も無効となります。3級と比較すると、かなり狭き門となるようです。
【1級の場合】
こちらは、さらに難易度が高くなります。
2級、3級と比較すると、受験者そのものがとても少ないことが分かります。過去3回の累積でもわずか29名しかいません。
1級の試験は、一次試験と二次試験に分かれており、一次試験合格者のみが二次試験に進める、という仕組みになっています。一次試験の合格率は40~50%台ですが、一次試験にクリアすれば、そのまま二次試験もクリアできることが多いようです。
ただし、その後に医療経営実践協会による認定審査があり、ここでもふるいにかけられます。2016年5月現在、日本の中で【医療経営士1級】を公的に名乗れる人は、わすか16名しかいません。
これまでの受験者数のすがた
では、医療経営士の資格を取得しているはどのような人なのかをみてみましょう。
【3級の場合】
3級の場合、受験者数がもっとも多いのは病医院関係者ですが、合格率がもっとも高いのは、金融機関勤務者です。
これは第17回までの累積ですが、そのときによって合格率には違いがあるようです。直近の第17回では、合格率がもっとも高いのは医療機関企業勤務者で、受験者数310名中、合格者は194名(合格率62.6%)でした。試験の内容の違いによるのでしょうか。
【2級の場合】
病医院関係者の受験者数がもっとも多く、合格率も高くなりますが、それでも24.4%程度と、およそ4人に1人か合格できない、狭き門となっています。
【1級の場合】
1級になると、受験者数、合格者数ともに、だいぶ様変わりします。
実は、1級の試験を受験するためには、次のような条件があります。
つまり、実際に医療経営士として仕事をしているか、もしくは医療機関内での勤務実績があること必要となるため、これまでは病医院関係者以外が1級を取得することはほぼ無い、ということになります。実際に、病医院勤務者以外の方も、一次試験・二次試験には合格されていますが、その後の認定審査をパスした方はまだ出ていません。
今後、「医療経営士有資格者として医療機関に勤務していること」という条件を満たす人が現れる可能性はありますが、やはり病院内の現状をどこまで理解しているかという部分が、大きく問われる資格のようです。
医療機関の経営者・管理者を目指すなら
医療経営士という資格は、一般社団法人が認定している協会資格であり、医療者として勤務する限りでは、特に必要な資格ではありません。しかし現在は、医療分野における日本や世界の状況が目まぐるしく変わっていく中で、病院経営そのものが大きく変動しようとしているときでもあります。
今後、クリニックを開業する、あるいは院長・副院長になるなど、病医院経営に携わる可能性があるならば、役に立つ日が来るかもしれません。
参考資料
一般社団法人 日本医療経営実践協会
医療経営士とは
http://www.jmmpa.jp/about/
同上 代表理事 ご挨拶
http://www.jmmpa.jp/association/
同上 「医療経営士3級」資格認定試験受験者数の推移
http://www.jmmpa.jp/examination/cat4/cat/
同上 プレスリリース
第 17 回「医療経営士3級」資格認定試験合格者525名
「3級」受験申込者の累計15,000 名突破!
http://www.jmmpa.jp/docs/press_release_20160322.pdf
同上 プレスリリース
第10回「医療経営士2級」試験83人合格、第16回「3級」試験471人合格
「医療経営士2級」合格者の累計554人、「3級」合格者の累計5,480 人
http://www.jmmpa.jp/docs/press_release_20151125.pdf
同上 プレスリリース
第3回「医療経営士1級」資格認定審査 新たに6人の「医療経営士1級」認定者が誕生
http://www.jmmpa.jp/docs/press_release_20160127.pdf
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