医師のアルバイト報酬相場

研修医時代にアルバイトをされたことがある医師、または、今もスキルアップのためにアルバイトを積極的にされている先生も多いことと思います。

おなじみの「検診」「コンタクト外来」などに限らず、医師のアルバイト求人内容は進化を続けていて、バイト医師による医療が、実質的に本物の医療現場の中心的存在になっていることも珍しくありません。未来の医療は、アルバイト医師なしには立ちゆかないかもしれません。

実際、フリーランスというくくりで考えてみると、アルバイト医師の方が、常勤の医師より給料が高いという現象も起きています。それだけの報酬がもらえる社会背景と医療業界事情が存在しているからなのは言うまでもありません。

ところで、みなさんはそういった医師のアルバイト報酬相場についてしっかりと考えてみたことはありますか？今回は、医師アルバイト報酬の相場について考えてみました。

当記事では1日のみのアルバイト（医師スポットアルバイト、医師単発アルバイト）に焦点を当てて執筆します。定期非常勤のアルバイトやフリーランス医師に関する記事は、こちらの記事をご覧ください。

離島は24時間勤務で13万円

アルバイト医師を最も必要としているエリアの１つは、離島です。日本の最北の地である稚内から、さらにフェリーに乗って到着する利尻島の病院では、医師は1日で13万円ももらえます。

しかし、勤務時間は午前8時30分から、翌日の午前8時30分までです。日中の外来診察のほか、夜間は病棟の急変対応、さらに救急車搬送の治療もこなさなければなりません。

稚内と利尻島を結ぶフェリーは欠航することが多く、その場合、札幌の地方空港から飛行機で利尻島に「出勤」しなければなりません。

千葉県市川市の拘束時間時給5,333円

伊奈町は、埼玉県の中心部にある人口4万4千人の街です。東京からのアクセスもそれほど困難ではありません。この街の病院の医師の当直バイトは1回7万円。勤務時間は午後6時から翌朝7時30分までの13時間30分です。勤務内容は病棟管理と救急対応です。

東京に隣接している千葉県市川市の中規模病院は、日中の外来と夜間当直を合体させた「日当直」のバイト医師を募集しています。午前9時から翌朝7時30分までの22時間30分拘束で、12万円です。勤務内容は外来、病棟、救急で、利尻島と同じです。

それでは3つの求人のコスパを比べてみましょう。いずれも救急患者を受け入れているので、ひっきりなしに救急搬送があったと仮定して、仮眠や休憩が取れなかった状況を想定します。

そこで日当を、就業規則上の勤務時間ではなく、拘束時間で割った時給で比べてみます。利尻島5,417円、市川市5,333円、伊奈町5,185円となります。

利尻島が最も高くなりましたが、それでも最も安い伊奈町との差は200円しかありません。僻地医療の場合、通勤の大変さに加えて、「うちが最後の砦」という責任の重さが加わるので、離島の医師バイトはコスパが悪い、といえるのではないでしょうか。

透析は時給1万円が相場

次に人工透析医療の報酬を見てみましょう。外来で透析を受けている患者は、症状が安定していることが多く、3時間から4時間の透析を受けて終わり、ということが珍しくありません。そういった患者は、ほとんど医師と接触することがありません。業務は看護師や臨床工学技士が担い、医師は急変時対応のために現場を見守っている状態です。

滋賀県の透析クリニックでは、午前9時から午後6時までの9時間拘束で、医師に9万円を支払っています。このクリニックは昼休みがありますが、日当直のバイトと比較するため拘束時間で日当を割ると、時給はちょうど1万円です。

東京23区内の透析クリニックは、11時間拘束で10万円です。時給は9,090円となります。大阪府摂津市のバイト透析医の求人でも、時給換算9,000円となっています。

このように、透析医療のアルバイト相場は大体時給1万円であることが分かります。

時給1万円は、利尻島のアルバイトよりはるかに「おいしい」と感じるかもしれませんが、話はそう単純ではありません。先ほど「医師は急変時対応のために現場を見守っている状態」といいましたが、透析は50人が一斉に治療を開始することが珍しくありません。ほとんどの透析クリニックは午前と午後の2回、透析を行います。

午前8時に50人を集めて一斉に透析を開始し、正午ごろ午前の部が終了します。2回目は別の患者50人に対し午後2時ごろから透析を開始し午後6時ごろ終了します。

1日に来る計100人の患者に対し、医師は1名です。透析患者は心臓や血管に重大な合併症を持っていることが多く、急変は頻繁に起きます。同時に複数人が急変したら、医師はそれを1人で対応しなければならないのです。

次に健康診断の医師のアルバイトをみてみましょう。企業の健康診断では尿検査から始まり、身長体重、血圧、視力、聴力、心臓、胃などを次々検査していきます。対応するのは看護師と放射線技師です。医師が登場するのは内視鏡、CT、MRIといった専門性の高い検査及び、最後の診察時が中心です。

健診アルバイトの医師求人募集は非常に多いです。福岡県嘉麻市の健診バイトは、午前9時～正午、3時間拘束35,000円、時給11,667円です。福岡県福岡市は、午前8時～正午、4時間拘束35,000円、時給8,750円です。都心部の方が安くなる傾向はみられますが、ここでも時給1万円が相場のようです。

そのような中で、時給1万4千円の健診バイトがありました。神奈川県川崎市の婦人科クリニックでは、婦人科検診の募集で1日12万円を提示しています。拘束時間は午前8時30分から午後5時。拘束時間8時間30分で割った時給は14,118円です。

婦人科健診では、子宮頸がんや乳がんのほか、骨粗鬆症の検査などを行います。このクリニックでは、1日に最大100人の受診者が来院します。拘束時間のうち1時間半休憩するとしたら、労働時間は7時間です。

1時間で14.3人を診なければならないのです。1人4分でさばかないとなりません。この状況で健診バイト医師は、人生を左右しかねない病気を発見しなければならないのです。

これが時給1万4千円のノルマです。患者は「医師の診察時間が短い」「3分診療」などと不満を口にしますが、それは医師業務のこうした実態を知らないからです。

以上の時給を、表にまとめてみました。

高額の医師アルバイト報酬ランキング

次に、相場をはるかに超えるような高額の医師アルバイト報酬を見てみましょう。

ＣＭＥ＠医師転職は医師アルバイト報酬ランキングを公開していますが、これによると、終日バイトで1回130,000円、半日バイトで1回60,000円、日当直バイトで1回320,000円という超高額の医師アルバイト求人がズラリと並んでいます。

終日の医師アルバイト報酬ランキング（引用：https://www.cme-drtenshoku.jp/drmbc-lp/）

半日の医師アルバイト報酬ランキング（引用：https://www.cme-drtenshoku.jp/drmbc-lp/）

日当直の医師アルバイト報酬ランキング（引用：https://www.cme-drtenshoku.jp/drmbc-lp/）

1回32万円の医師アルバイト求人票の中身

さすがに1回32万円という超高額バイトは産婦人科の日当直業務であり、救急対応もほぼ毎回迫られるという非常に緊張感のある職場であることはまちがいありませんが、子供の進学、将来的な開業資金のためなど、経済的モチベーションが高い医師にとっては、非常に頼りになる求人であることは間違いありません。

産婦人科以外の医師にとっても「1度くらいは興味があるよなあ」と思わずうなってしまうような求人票です。

1回の報酬32万円の産婦人科日当直アルバイト（救急対応あり）（引用：https://www.cme-drtenshoku.jp/drmbc-lp/）

主要な医師転職サイトの単発アルバイト求人数は

上記は少し極端な高単価事例をピックアップしましたが、産科に関わらず、あらゆる診療科の医師を求めて、相当多数の単発アルバイト案件が、医師転職サイト各社のウェブサイトに掲載されています。

代表的な企業の単発アルバイト保有数をピックアップしてみましょう（※調査日は2017年6月2日）。

リンクスタッフのアルバイト求人数…2,760件

リンクスタッフの単発アルバイト求人数（引用：https://www.e-doctor.ne.jp/s/）

リクルートドクターズキャリアのアルバイト求人数…5,779件

リクルートドクターズキャリアの単発アルバイト求人数（引用：https://www.recruit-dc.co.jp/hijokin/）

m3.com CAREERのアルバイト求人数…5,762件

m3.com CAREERの単発アルバイト求人数（引用：https://career.m3.com/recruits/parttime）

Dr.アルなびのアルバイト求人数…5,762件

Dr.アルなびの単発アルバイト求人数（引用：https://arbeit.doctor-navi.jp/sh）

医師転職ドットコムのアルバイト求人数…2,262件

医師転職ドットコムの単発アルバイト求人数（引用：http://www.dr-8.com/）

このように、大まかに見てそれぞれの医師転職サイトでは平均して2500件前後のスポットアルバイト求人を保有している状況であることが見て取れます。

スポットアルバイトの求人ライフサイクルは非常に短く、募集スパンによってはとても回転が目まぐるしく早く流れていくため、各社とも最新の医師スポットアルバイト求人情報を営業して仕入れてきては、既に横暴者多数で充足してしまった古い求人情報については、細かく削除、内容改定していく業務に追われています。

アルバイトのみで年収2000万、3000万円の医師は普通にいる

このように高額単価の医師アルバイト求人があふれていると、常勤で日々ヒイコラいいながら長時間労働をするのがバカらしくなってきてしまうという医師の気持ちもよくわかります。

実際に常勤勤務から離れて、日々スポットアルバイトや非常勤アルバイトの勤務スケジュールを組み合わせて働くことで、年収3000万円を簡単に達成している医師はしっかり存在しています。

医師アルバイトの年収が常勤の勤務医師の年収を大きく上回るという逆転現象は様々な方が指摘しており、ニューハンプシャーＭＣのキャリアコンサルタント中村氏も、下記のように東洋経済オンラインの記事で触れています。

週5日、常勤で勤務しても2000万円稼いでいる方はかなり少数です。勤務医の平均給与は第2回目のコラムでもお話ししたとおり当直を含めても1500万弱。当直もしないアルバイト医師が勤務医の3割も多い年収になってしまうということが起きてしまいました。

 

=中略=

 

一般のサラリーマンが週末にアルバイトをするとしても、年間数百万円のプラスを稼ぐのは到底無理。そういった意味においては、時給１万円の割高のアルバイトができるという医師という職業は、やっぱり「おいしい」ということになるかもしれませんね。

 

※引用：http://toyokeizai.net/articles/-/14176

都合の良い「嘘の医師求人」を掲載している企業に注意

上記では大手の信頼できる医師紹介会社、医師転職サイトの掲載アルバイト求人例をピックアップしましたが、小規模で経営が苦しい医師紹介会社の中には「嘘の求人広告で医師を釣り上げようとする悪質な企業や転職サイト」が混じっているので注意してください。

悪質な事例としては、上記リンクの当研究所の取材記事をご覧になってください（上記の事例で取り上げた企業はニセ医者派遣事件までも引き起こした、非常に許しがたい例でした）。

2013年の日本経済新聞電子版に、興味深い記事がありました。病院やクリニックに勤務している医師840人にアンケートを取ったところ、平均年収は1,477万円でした。平均年齢は45.6歳です。勤務医ですので、医療法人の理事長やクリニックのオーナー院長は含みません。

もちろん「とても高い収入」ですが、「ぼろもうけ」というイメージではありません。ちなみに、製薬会社「第一三共」の平均年収は、勤続18年、42.5歳で1,111万円というデータがあります。

再び日経の医師アンケートの記事に戻りますと、年収のうち、アルバイトで稼いだ額は平均184万円です。平均年収1,477万円の12.5％を占めます。もちろん、一般民間企業の第一三共の社員は、アルバイト禁止です。

つまり、もし仮に医師たちが一般の人よりリッチな生活を送っていたとしても、それは空き時間にアルバイトに出掛けているからなのです。一般の人は、医師の高年収ばかりに目が行きがちで、医師の仕事状況まで見ようとしません。

研修医、若手医師の惨状

医師アンケートではこんな数字も弾きだしていました。35歳以下の若手医師の平均年収は940万円で、そのうちバイトの稼ぎは160万円。年収に占めるバイト給与の割合は17％になります。若手医師ほどバイトに熱心であることが分かります。

若い医師の年収が、実はそれほど高くはないという実態が浮かび上がるデータといえるでしょう。若手医師の低収入の歴史は古く、1960年代の学生紛争時代、大学を卒業したばかりの医者の卵たちが、給料が安いと訴えてデモや闘争を繰り広げ、逮捕者も出ています。

2001年の文部科学省の調査では、ある国立大学病院の研修医は週78時間も働いていることが分かりました。週6日勤務としても1日13時間も働いていることになります。ほとんどの先生は、そのような経験をお持ちなのではないでしょうか。

当時、研修医には「給料」は支払われません。渡されるのは、20万円足らずの「奨学金」でした。労働時間で割ると最低賃金を下回ります。さらに「給料ではない」ということは「正職員でない」という意味で、つまり「社会保険をかけてもらえない」ということです。

研修医の過酷な労働環境は、ついに過労死を引き起こしました。1998年の大学病院研修医過労死事件です。亡くなった研修医は、午前7時から午後10時まで働き通しでした。

指導医から指導を受けながら、患者への採血、点滴、診察、データベース整理、雑用をこなしていました。連続38時間勤務が月に6回もあり、最も働いた週は114時間勤務でした。これだけの激務をこなしながら、「奨学金」は月6万円＋当直1回1万円だけでした。

この研修医は自宅で亡くなっていました。死亡時の年齢は26歳です。

この事件をきっかけにして、若手医師の過酷な労働環境が社会問題化して、研修医制度が見直されました。2004年4月から研修期間は2年とし、研修中はアルバイトが禁じられました。

一方で国は、研修医を受け入れる病院に対し、年収360万円を保証するよう求めました。実際に研修医の平均年収は365万円になりました。

レントゲン写真をひたすら見続けるアルバイト

話がそれたので、アルバイト医師に戻します。次に注目したいのは、少し変わったバイトです。それは「レントゲン写真の読影」です。

読影のバイトが増えている背景には、医療訴訟の増加があるようです。例えば胸のレントゲン検査をした場合、肺がんや結核、塵肺、石綿肺、肺炎などを見つけなければなりません。病院としては「検査をしたのに病気を見逃したら、訴訟で負ける」と考えるようになりました。

そこで念には念を入れて、治療を担当する医師の他に、バイト医師に読影を依頼するのです。また病院は、病気の見逃しだけでなく、本当は病気ではないのに病気があると間違えるリスクも嫌います。

診療報酬の支払い基準の厳格化に伴い、いわゆる「不要な治療」への監視の目が厳しくなっています。読影バイト医師の活躍の場はますます拡大するでしょう。

その読影アルバイトですが、時給1万3千円や、3時間拘束で4万円といった求人票が出ています。3時間4万円の求人元が要求する読影枚数は300枚です。1時間100枚、1分で1.6枚を見なければなりません。

写真を見るだけ、といえばそれまでですが、病気の見落としは許されません。気持ちが張る仕事でしょう。

遠隔医療はバイト医師が支える？

そしてこの読影バイトは、未来の医療を支えるかもしれません。実はすでにIT技術が発達して、読影バイトはモバイル化しています。病院が患者の大量の検査画像をクラウド上に保存して、バイト医師がクラウドにアクセスして自分のパソコンやタブレットで読影するのです。

これなら、出張中の空き時間にも仕事ができます。夜間、自宅で行うことも可能です。

この技術がどうして未来につながるかというと、これこそが遠隔医療だからです。無医村ではどうしようもありませんが、医師が1名しかいないという地域が国内にはたくさんあります。都会に住むバイト医師が都会に居ながらにして、孤軍奮闘している地方の医師の手助けができるのです。

医師不足がこれだけ深刻になると、最早医師は住民の「財産」です。その医師たちを、非効率な激務で疲弊させるのは、社会的な損失です。医師人材不足による激務解消が難しいなら、せめてアルバイト報酬に関しては現状よりかさ上げすべきではないか？というのが当方の考えです。

とはいえ、現実的に医師のアルバイト給料を上げるために、診療報酬を上げ続けるほど、日本政府の財布の中身は豊かではありません。そこで、ITや連携を強化しておカネをかけずに医療の質を維持しなければならないというのは、医療業界に関わる人墓地の共通認識でしょう。

アルバイト医師の拡大の流れは避けられない状況です。医師のアルバイト環境がより医師にとって有利に働くように、多方面からの整備が政官財全方位から必要になるではないでしょうか。

【2018年版】 非常勤/スポット求人に強いTop3社

非常勤/アルバイト求人を考えている医師の場合、当研究所調査で高評価をマークしたこの３社だけまとめて同時登録しておけばまず間違いありません。以下の３社は非常勤、アルバイト求人募集を豊富に所有しており、３社同時登録することで、優良求人入手のチャンスを逃さない確率が高まり、かなり自由度の高い好条件の案件獲得につながる可能性が大きくなります。

注意すべき点は、医師紹介会社の求人獲得営業には特徴と強み弱みがあり、「常勤に強い会社」と「非常勤/アルバイトに強い会社」は全く異なっている点です。登録候補先の紹介会社は、常勤、非常勤のどちらが得意分野なのかを事前に把握しておきましょう。

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