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2033年に医師の求人需要がなくなるのは本当か?

■ 記事作成日 2017/9/23 ■ 最終更新日 2017/12/6

日本全国で今、医師がもっとも必要とされているのはどこでしょうか。
当コラムではこれまで、病院機能や診療科から、必要とされている医師について考えてきました。
今回は、都道府県ごとの必要医師数と、必要求人医師数の違いについて、考えてみたいと思います。

 

5年前と比較した、必要医師数と必要求人医師数の違い

 

2015年に日本医師会が行った「病院における必要医師数調査結果」によると、日本全国での必要医師数倍率は1.11倍、一方の必要求人医師数倍率は1.06倍でした(いずれも常勤換算ベース)。

 

この調査は5年ごとに行われ、2010年は厚生労働省にて調査が行われました。
2010年の調査と2015年の調査では、必要医師数倍率、必要求人医師数倍率がどう変わったのか、その違いを見てみましょう。

 

都道府県別必要医師数倍率(常勤ベース)

 

必要医師数、必要求人医師数ともに、倍率の高い方から5つの都道府県を比較してみると、だいぶ順位が入れ替わっていることがわかります。
しかしその中でも、特に島根県は

 

  • 2010年には、必要医師数倍率が4位、必要求人医師数は1位
  • 5年後の2015年も、必要医師数倍率は、全国でもっとも高い

 

という結果になっています。
つまり、非常に際立って慢性的な医師不足の県といえそうです。

 

島根県では2010年の時点で「医師が足りない、医師確保に向けた求人を出そう」という動きだったようですし、倍率が高い方から5位までには入っていませんが、2015年の必要求人医師数倍率は、山梨県、鳥取県、滋賀県とともに、同率6位でした。
5年が経過した後でも、医師不足解消にはいたっていない県といえそうです。

 

必要求人医師数倍率が高い都道府県はどこなのか

 

では、全国に視点を移してみます。

 

2015年時点での必要求人医師数倍率全国平均は1.06倍でした。
都道府県ごとに、全国平均よりも低いところ、ほぼ全国平均並みなところ、全国平均よりも高いところで色分けすると、下の図のようになります。

 

都道府県別必要医師数倍率(2015年調査)

 

2015年での必要求人医師数倍率が高い、福井県や秋田県は、必要医師数倍率もそれぞれ2位と5位ですので、求人が多いこともうなずけます。
しかし必要求人医師数倍率3位である静岡県の必要医師数倍率は1.15で、全国平均の1.11との差は0.04ポイントです。
静岡県は、高齢化率は全国平均よりも高いものの、健康寿命では男性全国2位、女性全国1位で、男女計では全国1位の県です。

 

また、県民への意向調査の結果では、およそ68%の人が自分を「健康だと思う」「やや健康だと思う」と回答しています。
静岡県では、軽い病気にかかったと思われる場合

 

  • 診療所に行く:75.7%
  • 大きな病院に行く: 12.9%

 

となっています。

 

県民のおよそ63%の人は、自分の「かかりつけ医」をもっており、比較的軽い段階で、何でも相談できる「かかりつけ医」を受診していることが、健康寿命の延伸につながっているのかもしれません。

 

また、静岡県内における人口10万人あたりの医師数は193.9 人で、全国平均の 237.8 人と比較すると 43.9 人下回ってはいます。

 

しかし静岡県では全国に先駆けて、県をあげての医師確保対策に乗り出しています。
それが、医師確保対策を一元的かつ専門的に推進する「ふじのくに地域医療支援センター」です。
ここでは、若手医師の確保を目的に、様々な医師確保対策に取り組んでいるようです。

 

そういった背景からも、必要医師数倍率と必要求人医師数倍率の間での格差が、少なくなっているのかもしれません。

 

5年間で何が変わったのか、これからどう変わるのか

 

ではここでもう一度、2010年の厚生労働省の調査結果と、2015年の日本医師会の調査結果とを比較してみます。

 

都道府県別必要医師数倍率(常勤ベース)

 

必要医師数倍率、必要求人医師数倍率ともに、倍率が少し下がっているのが分かります。
それぞれ、0.1ポイントくらいの差が出ていますね。この背景には、何があるのでしょうか。

 

単純に考えると、全国的に医師の数が増えていることは事実です
日本では毎年、8,000人程度の新人医師が誕生しているわけですから、その分、毎年少しずつではありますが、医師不足は解消されていると考えることができます。

 

一方で、医療を必要とする患者さん側からみた、医師への需要はどうでしょうか。

 

日本は現在、人口減少傾向が続いています。
一部のエリアを除いては、どの都道府県でも病床数そのものが減少傾向にあることも事実です。

 

実際、必要医師数倍率が高いにも関わらず、必要求人医師数倍率が上位10以内に入らない都道府県、例えば福井県、徳島県、秋田県などは、少子高齢化の進行が早く、県全体での病床数は大きく減少すると考えられています。

 

今以上に病床数が増えないのであれば、医師が必要だと分かっていても、新たな雇用には結びつけにくいという状況があるのではないでしょうか。

 

また、推計上ではありますが、2033年頃には医師の需要と供給が均衡すると考えられています。
つまり、あと15年くらいの間には、医師の就職先・転職先が、非常に少なくなるということなのです。

 

もちろん、2025年問題や、高齢者が人口の3割を占めることになる2030年問題もあります。
医療を求める人たちから見ると、死に場所を選べないという世界が、すぐそこまで来ているのかもしれません。
しかし、医療を求める人口が増えるにも関わらず、医師の就職先がなかなか見つからない。

 

そんな世界もまた、すぐそこまで来ているのではないでしょうか。

 

【参考資料】

 

厚生労働省 病院等における必要医師数実態調査の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000ssez-img/2r9852000000ssgg.pdf

 

日本医師会総合政策研究機構 日本医師会 病院における必要医師数調査結果
http://www.jmari.med.or.jp/download/WP346.pdf

 

第7次 静岡県保健医療計画
https://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-410/documents/zenbun.pdf

 

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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