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■ 記事作成日 2016/12/5 ■ 最終更新日 2017/12/6

 

厚生労働省では毎月、「職業安定業務統計」を行っています。この調査では、各月の職業別有効求人件数や有効求人倍率などの、実数値が公開されています。

 

今回はこのデータを元に、医師の転職市場の状況を、考えてみます。

 

医師の転職 相変わらず“超”売り手市場?

 

今回参考にしている厚生労働省の調査結果では、全体での数値もありますが、職業別での統計データも公表されており、医師の求人は「専門的・技術的職業」のうち、「医師、薬剤師等」として分類されています。

 

尚、看護師は「保健師、助産師等」に含まれるようです。

 

 

この結果から、過去6年間の毎年3月時点での時系列データをグラフ化してみました。

 

 

3月はやはり、他の月よりも有効求人数、有効求人倍率ともに、多い傾向があります。それだけ、年度替わりで転職をする人が多い、ということを表しているようです。

 

それにしても、医師等の有効求人倍率が6倍以上というのは、かなりの高倍率です。看護師も人手不足が続いているため、有効求人倍率は高い方ではあるのですが、それでも3.5倍を超えることはありません。

 

実際に2016年3月時点での有効求人倍率を職業別で比較すると、もっとも高いのが「医師、薬剤師等(6.60)」であり、次に「建設躯体工事の職業(6.59)」「保安の職業(5.43)」と続きます。

 

医師の転職市場が、超!売り手市場であることが分かります。

 

民間で転職するか、公的機関で転職するか

 

前述のデータ(グラフ)を見る時に、注意すべき点が1点あります。それは、この統計は厚生労働省が行っているものであり、公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況を表しているということです。

 

ここ数年、医師や看護師だけではなく、様々な職業に対する、いわゆる転職ビジネスの市場が拡大しています。

 

ハローワークで転職先を探すよりも、民間の転職ビジネスを生業としている企業からの転職の方が、転職をする側としてのメリットがあるためです。

 

【民間の転職市場ビジネス運営会社から転職するメリット】

  • 様々な地域、条件で、求人情報を一気に検索することが出来る
  • 転職条件の良い「非公開求人」の情報が多数ある
  • 担当の転職コーディネーターが、自分の条件に見合う求人情報を検索してくれる
  • 転職に関する連絡や手続きをサポートしてくれる  など

 

少なくとも、民間の転職ビジネス企業から転職した方が、公共職業安定所よりも転職者にとっては有利となることが多いようです。勤務しながら転職活動を行う場合には、自分自身で転職先を探すことも、ままならないこともあります。

 

ただし、そこにはビジネスがあるわけですから、公共機関よりも公平性を欠くケースが有り得ることを、念頭においておくと良いでしょう。

 

医療者の転職ビジネスバブルは、いつまで続く?

 

例えば、看護師の転職ビジネスは、今後は徐々に淘汰されていくといわれています。看護師転職を掲げた、転職ビジネスを運営する企業の数が、増えすぎてしまったためです。

 

今後、淘汰されるであろうという予測の根拠は、診療報酬の改定にあるようです。

 

そもそも、看護師転職ビジネスの市場が活発になったのは、2006年の診療報酬制度の改定の頃でした。厚生労働省は、重症患者さんに対する「高度な医療」を提供すべく、看護師の人員を多く配置した医療機関に対して、診療報酬を増やす仕組みを導入したことが、きっかけです。

 

該当する看護師の配置基準は「7対1」。入院患者さん7人に対し、1人以上の看護師を配置しなくてはならなかったのです。

 

結果的に、様々な地域の病院の間で、看護師の争奪戦が始まりました。

 

元々、医師の数よりも断然多い人数が必要とされる看護師ですから、看護師転職ビジネスは、医師の転職ビジネス市場よりも、市場規模が大きいといわれています。

 

「看護師転職バブル」という言葉もあるほどです。「当サイトを通じて転職した人には、転職ボーナス●万円プレゼント!」などという謳い文句で、転職希望の看護師を集めるのに必死です。

 

しかし、この「看護師転職バブル」も、そろそろ終わるかもしれません。今後は看護師をたくさん集めなければならなかった「7対1」の配置基準をもつ病院が、減少傾向となるためです。

 

厚生労働省は、2013年に「(当時)約33万床ある7対1一般病床を急性期機能に再編、18万床に絞り込む」という方針を打ち出しました。現在、こういった流れも含め、病床の絞り込みが、全国でも着々と進行しています。場合によっては複数の医療機関が合併したり、病床規模を縮小する病院も出てくるでしょう。

 

つまり、「看護師転職ビジネス」の市場が、小さくなっていくということです。

 

一方で、今後は看護師の働く場所として「病院」よりも「訪問看護」などでの需要が高くなっていきますし、看護師はまだまだ女性が多い職業であるため、一時的に休職する人も多い職業です。

 

ですから、今すぐに「看護師転職ビジネス」の市場が、大幅に縮小されるとも限らない、という見方もあるようです。

 

医師の転職ビジネスバブルは、今後も続くのか

 

では、医師の転職市場はどうでしょうか。

 

医師の全体的な人数は、毎年少しずつ増えており、2030年頃には需要と供給が均衡するといわれています。しかし、医師の転職と看護師等との転職には、決定的な違いがあります。それは、専門性をどこまで追求されるか、ということです。

 

いくつかの項目で、医師と看護師の転職ビジネスの特徴をまとめてみました。

 

 

医師の場合、特に地方の病院では「●●科の医師が△月までに決まらなければ、その診療科は閉鎖する」という状況にもなります。

 

一方で看護師の場合、専門性を求められることもありますが、「●●の専門看護師を□人配置しなければならない」という決まりはありませんので、病院側の都合ということになります。

 

今後は、地域医療の経験がある医師、高い専門スキルを持った医師は、特に地方での求人が増えていくと考えられます。地方都市の周辺地域やへき地医療に関係する地域では、医師の高齢化や「若い医師が定着しない」などの理由で、医師不足・医師の偏在が大きな問題となっているためです。

 

まとめ

 

医師の転職は、他の職業よりも、簡単にはいかない部分がたくさんあります。医師の転職ビジネスは今後、ある程度は縮小(淘汰)されていくとも考えられますが、客観的な評価が良い企業であれば、今後もその事業が拡大していく可能性があります。

 

【参考資料】

 

厚生労働省 一般職業紹介状況(平成28年3月分及び平成27年度分) について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000122520.html

 

同上 平成28年3月分 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11602000-Shokugyouanteikyoku-Koyouseisakuka/G35_42.pdf

 

同上 平成27年3月分 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11602000-Shokugyouanteikyoku-Koyouseisakuka/G35_4_2_2.pdf

 

同上 平成26年3月分 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11602000-Shokugyouanteikyoku-Koyouseisakuka/G35_4_2_1.pdf

 

同上 平成25年3月分 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000304fx-att/2r985200000304o3.pdf

 

同上 平成24年3月分 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000028z5b-att/2r98520000028zdh.pdf

 

同上 平成23年3月分 職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001a00i-att/2r9852000001a08x.pdf

 

東京保険医協会 7対1病床を15万床削減――厚労省 医療提供体制の縮小を計画
http://www.hokeni.org/docs/2016111100292/

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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