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呼吸器内科医の現状(厚労省医師数調査から)

呼吸器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件

■ 記事作成日 2016/10/24 ■ 最終更新日 2017/12/6

 

厚生労働省は診療科別の医師数を公表していて、データからは「その科の現状」がみえてきます。呼吸器内科医のいまをみてみましょう。

 

呼吸器内科医は急増、10年で1.5倍以上に

 

厚労省の2014年のデータによると、国内の呼吸器内科医の人数は5,555人で、40科中17番目に多い人数です。全医師に占める呼吸器内科医の割合は1.9%となっていますが、1%を切る科が20科近くあるので「多い方」といえます。
増加率はインパクトがあります。

 

2004年の呼吸器内科医の人数は3,655人でしたので、2014年の5,555人と比較すると52.0%増、つまり1.5倍以上になっているのです。

 

国内の全診療科の医師数は2004年の256,668人から2014年には296,845人へと約4万人増え、増加率は15.6%増です。

 

医師数 2004年 2014年 増加率
呼吸器内科医 3,655人 5,555人 52.0%(1.5倍)
全医師 256,668人 296,845人 15.6%(1.16倍)

 

政府は医師の人数は将来的に過剰になると見込み、2020年度から医学部の定員を減らす方針を打ち出しています。

 

激務をこなしている現役の医師にとっては、「医師過剰説」はにわかに信じられないかもしれませんが、2015年度の医療費が史上初めて40兆円を超えるなど、財政面でも「医師減らし」は重要政策課題になっています。

 

平均より速い年齢上昇率、理由は呼吸器疾患人気?

 

呼吸器内科医の2014年時点での平均年齢は43.7歳で、40科中9番目に若い数字です。全医師の平均年齢が49.3歳なのでそれより5.6歳も下です。

 

しかし2004年との比較では「高齢化の速度は平均より速い」ことが分かります。

 

平均年齢 2004年 2014年
呼吸器内科医 41.7歳 43.7歳 2.0歳アップ
全医師 47.8歳 49.3歳 1.5歳アップ

 

全医師がこの10年で1.5歳しか上がっていないに、循環器内科医は2.0歳もアップしているのです。このことから、研修医が呼吸器内科を目指す率より、41.7歳以上の他科の医師が循環器内科に標榜替えした率の方が高い、ということが推測できます。

 

こうした「呼吸器科人気」は、呼吸器外科でも顕著で、呼吸器外科医の人数は2004年の1,110人から2014年の1,772人へと1.6倍も増えています。


呼吸器内科では「診療所医≒開業」が増えている

呼吸器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

診療所医はなぜ増加傾向にあるのか

 

呼吸器内科医のうち病院に勤務する医師は2014年は5,009人でした。全呼吸器内科医の90.2%を占めこの数字だけをみると「ほとんどの呼吸器科内科医は病院に勤めている」といえるのですが、ここで注目したいのは2004年の呼吸器内科医の病院医率が91.3%だったことです。

 

この10年で病院医の割合が1.1ポイント減っているのです。

 

呼吸器内科の病院医の割合が減っているということは、当然のことながら診療所医の割合が増えているということです。

 

しかし、すべての診療科の医師でみると、診療所医率は36.2%から34.3%に減っているのです。つまり診療所医の減少トレンドの中で、呼吸器内科は診療所医が増えているのです。

 

病院医・診療所医比

2004年

2014年

 

病院医

診療所医

病院医

診療所医

呼吸器内科医 3,337人(91.3%) 318人(8.7%)

5,009人(90.2%)
-1.1ポイント

546人(9.8%)
+1.1ポイント

全ての診療科の医師 163,683人(63.8%) 92,985人(36.2%)

194,961人(65.7%)
+1.9ポイント

101,884人(34.3%)
-1.9ポイント

 

すべての診療科の平均で診療所医が減っているのは、人口減少による患者不足や、患者不足による収入減への不安などが要因であると考えられます。「診療所医≒開業=リスクが高い」「病院医=安定=リスクが低い」という構図です。

 

COPDの治療に特化した呼吸器内科クリニックの将来性

 

糖尿病の治療に特化した診療所が「繁昌クリニック」になった事例は全国にいくらでもあります。それは、糖尿病の治療が数十年単位にわたることと、糖尿病が深刻な合併症を引き起こすためです。

 

「長期化」「深刻化」しやすい慢性疾患は「診療所経営の柱」になりやすいといえ、そのような病気がある診療科は独立開業がしやすいといえます。

 

「慢性疾患を専門に扱う科」というイメージが強い一般内科では、診療所医の割合が2004年の52.8%から2014年の64.8%に激増しています。また、こうした流れは国の「病院から診療所へ」という政策とも合致します。

 

呼吸器内科分野における「長期化」「深刻化」しやすい慢性疾患は「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」でしょう。日本呼吸器学会も、慢性呼吸器疾患の認知度の向上に力をいれています。

 

COPDは「死亡者数/患者数」の割合がとても高い

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)による死亡者数は、2007年に初めて15,000人を突破して以降、2015年まで15,000~16,000人で推移しています。厚労省が2008年に、生活習慣病に関する興味深いデータを公表しました。

 

結論から申し上げますと「COPDの患者数は他の生活習慣病より圧倒的に少ないのに、死亡者数はとても多い」のです。

 

2008年 患者数 死亡者数 死亡者数/患者数
COPD

224,000人

15,520人

6.9%

糖尿病

2,371,000人

14,462人

0.6%

高血圧

7,967,000人

6,264人

0.08%

厚生労働省健康局生活習慣病対策室「慢性閉塞性肺疾患(COPD)の現状について」から

 

死亡者数を患者数で割った率は、COPDでは6.9%でしたが、糖尿病では1%を割り込み高血圧に至っては0.1%にも満たないのです。この数字が意味することは、COPDは糖尿病や高血圧よりはるかに「死の病」であるということであり、患者が治療に専念しやすいといえます。

 

もちろん糖尿病は腎不全へ、高血圧は心筋梗塞や脳梗塞へと「より深刻な死の病」に進むわけですが、しかし糖尿病や高血圧でとどまっているうちは、診療所での治療がメインとなります。「だから糖尿病や高血圧を治療する一般内科の開業が増えているのではないか」と推測できます。

 

COPDはすでに「死の病」なのですが、軽症であれば禁煙、薬物療法、栄養管理、呼吸リハビリといった治療が可能で、呼吸器内科クリニックの得意分野といえるでしょう。

 

「COPD患者が増えているから呼吸器内科医の開業が増えている」と結論付けるのは早計すぎますが、ただ「COPD特化型クリニック」は有望であることは間違いなさそうです。

 


呼吸器内科医の求人票ひろい読み

呼吸器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

「医師紹介会社研究所」の転職サイトランキングで上位に入っている「MCドクターズネット」などを閲覧してみましたが、病医院に勤務する呼吸器内科医の年収は、2000万円の大台どころか1500万円に乗せることも容易ではなさそうです。相場は「1200万~1800万円」といった印象です。任意に抽出した求人票を紹介します。

 

場所・形態

業務

年収

勤務時間

休日

その他

札幌市
診療所

救急往診のみ 1500万円 3交代 記載なし  

つくば市
病院

外来、病棟 1500万円 当直有

日祝休み
土半休

できれば専門医

足立区
病院

外来、病棟、救急 1400万~2000万円 当直有 4週8休+祝日 勤務日数4日/週も可

大阪市北区
病院

外来、病棟、救急 1300万~1800万円 当直有 土日祝  
東京都あきるの市 病院 外来、病棟 1200万~2000万円 当直なし 日祝 内科なら専門問わず

千葉県市川市
診療所

外来、病棟、往診 1200万~1400万円 当直相談    

 

市川市の診療所の「1200万~1400万」は、都心に近い診療所なので高額年収を提示できないのは、ある意味仕方がないでしょう。しかし足立区の病院は、週4日勤務も可能としているためと思われますが下限の「1400万円」は気になるところです。

 

そのような中、2000万円以上を提示している医療機関もあるのですが、「北海道釧路市2280
万~2340万円」「北海道枝幸町2000万~2500万円」「新潟県胎内市2000万円」など、地方がほとんどでした。


呼吸器内科の学会の幹部の「目」

 

呼吸器内科の最新トピックを探るため、日本呼吸器学会の幹部を務める医師がどのような研究に取り組んでいるかみてみましょう。

 

iPadで正しい吸入薬の使用法を指導

 

日本呼吸器学会の理事長は、日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野の橋本修主任教授です(2016年10月現在)。橋本教授は本来の呼吸器内科学の研究と併せて、e-ラーニングの推進普及にも力を入れています。

 

電子機器を使った教育「e-ラーニング」には、研修医や医学部生を対象にしたものと、患者を対象にしたものの2つがあります。橋本主任教授の研究室は2015年、患者向けe-ラーニングとして「iPadによる吸入指導~手技習得と持続性の検討~」を公表しました。

 

吸入薬は喘息やCOPDの治療で欠かせない治療法ですが、患者にとっては操作が難しく、4~94%の患者が間違った方法で吸入薬を使用しているという報告があるほどです。

 

それもそのはずで、主な吸入薬だけでも「エアゾールタイプ」「エアゾールタイプ+スペーサー」「ドライパウダータイプ」「ネブライザー」の4種類があります。それぞれに操作方法が異なるため、子供や高齢者が迷うのは当然といえば当然です。

 

アプリ「吸入レッスン」の概要

 

そこで同研究室は、「吸入レッスン」というiPadとスマホ向けのアプリを開発しました。4分間の動画で、吸入器の正しい使い方と、復習テストの2本立てになっています。

 

同研究室はこのアプリの効果を検証しています。呼吸器疾患を持つ患者を、「従来の使用説明書による指導を受けるグループ」と「アプリ『吸入レッスン』による指導を受けるグループ」の2グループに分け、指導から3~6カ月後に正しい操作ができるかどうか試してみました。するとアプリ「吸入レッスン」グループの方が有意に改善できていました。

 

アプリ「吸入レッスン」のURLは「http://www.kyunyu.com/Public/movie/2#」です。


まとめ

呼吸器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

「日本呼吸器学会」は「日本呼吸器内科学会」?

 

厚生労働省は2008年、都道府県知事に対し、医療機関に「呼吸器科」と標榜させないよう指導する通達を送りました。それまで国内には「呼吸器科」と「呼吸器外科」があり、患者は「呼吸器科は外科を含むの? それとも外科以外のことを呼吸器科というの?」と混乱していました。通達の狙いはこうした混乱を避けるためです。

 

現在でも「呼吸器科」を掲げている病医院はありますが、それは同省が「看板をかけ替えることまではしなくてもよい」としたからです。それで「日本呼吸器学会」は、理事長が呼吸器内科の権威であるにも関わらず「呼吸器」を使っているのです。

 

参考資料

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2014年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2004年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/index.html

 

●日経新聞2015年9月13日「医学部の定員削減、政府検討、医療費膨張防ぐ」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS12H1Y_S5A910C1MM8000/

 

●COPD情報サイト「日本におけるCOPD死亡者数」
http://www.gold-jac.jp/copd_facts_in_japan/

 

●厚生労働省健康局生活習慣病対策室「慢性閉塞性肺疾患(COPD)の現状について」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/dl/s0611-8a.pdf

 

●MCドクターズネット
http://mc-doctor.net/fulltime/area-01:12:40/medical-022003/

 

●リクルートドクターズキャリア
https://www.recruit-dc.co.jp/agent/jokin/list/page/2/?status=1&income=1200&pref=13,27,23&dept=45

 

●日本呼吸器学会
http://www.jrs.or.jp/modules/about/index.php?content_id=38

 

●日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野「吸入レッスン」
http://www.med.nihon-u.ac.jp/department/resmed/lesson.html

 

●「喘息及びCOPD患者における電子媒体を用いた吸入指導研究」(伊藤玲子ら)
http://www.med.nihon-u.ac.jp/research_institute/bulletin/2015/2015_009.pdf

 

●「広告可能な診療科名の改正について」厚生労働省医政局長通達、医政発第0331042号
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/koukokukanou.pdf

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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