シリーズ医師の年収と未来:「泌尿器科医」編

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シリーズ医師の年収と未来:「泌尿器科医」編

泌尿器科医の現状(厚労省医師数調査から)

比較的医師数が多い診療科、増加率も堅調

厚生労働省の調査によると2014年の泌尿器科医の人数は6,837人で、全40科中15位と、「国内では比較的多い医者」という位置づけです。

増加率をみると、2004年の6,032人から10年間で805人増え、増加率は13.3%でした。

堅調に増えていますが、医師全体が2004年の256,668人から2014年の296,845人へと15.7%増えているので、それよりは低い増加率です。

医師数 2004年(32科中順位) 2014年(40科中順位) 増加数(率)
泌尿器科医 6,032人(14位/32) 6,837人(15位/40) 805人(13.3%)
全医師合計 256,668人 296,845人 40,177人(15.7%)

医師数が増えている中、泌尿器科医の高齢化スピードがかなり速いその理由とは

泌尿器科医の平均年齢は、2014年は48.9歳でした。医師全体の平均年齢49.3歳よりは若いのですが、若さランキングでは全40科中24位と、真ん中より下に位置します。

そして特筆すべきは高齢化のスピードです。医師全体の平均年齢は、2004年から2014年までの10年間で1.5歳しか上がっていませんが、泌尿器科医は同期間で4.0歳も上がっているのです。

医師数は堅調に増えているのに高齢化スピードが速いという泌尿器科医の傾向は、他科ではあまりみられません。
なぜなら、医師数が増える診療科は「人気が上がってきた診療科」であることが多く、そうなると臨床研修医がその診療科に進むので平均年齢が下がるのです。

逆に、平均年齢が上がっている診療科は、臨床研修医が敬遠していることが多いので、医師数も減少傾向か横ばいになっていることが普通です。

泌尿器科医はそのどちらにもあてはまりません。なぜこのような現象が起きているのかは、詳細な取材をしないと判明しませんが、ただ、厚生労働省の別の資料にヒントになりそうな材料がありました。次にそれをみてみましょう。

平均年齢 2004年(若さ順位) 2014年(若さ順位) 増減
泌尿器科医 44.9歳(13位/32) 48.9歳(24位/40) 4.0歳
全医師 47.8歳 49.3歳 1.5歳

透析など開業チャンスが多い泌尿器科への標榜替えか?

厚生労働省は診療科ごとの病院医・診療所医の人数を公表しています。

2014年の泌尿器科医の内訳は、病院医が5,012人(73.3%)、診療所医が1,825人(26.7%)となっていて、泌尿器科は圧倒的に病院医の比率が多い診療科といえます。

ところがここに「小さな異変」がみられました。

それは泌尿器科医の診療所医の比率が2004年の22.9%から2014年の26.7%へと、10年間で3.8ポイントも増加しているのです。

医師全体では、診療所医は2004年の36.2%から2014年の34.3%へと、1.9ポイント減っています。よって、診療所医≒開業医とみなすと、「泌尿器科医の開業マインドはかなり強い」といえそうです。

このデータと、先ほどみた「泌尿器科医の人数は増えているのに平均年齢の上昇率が高い」という結果を合わせると、「独立開業するために泌尿器科に標榜替えするベテラン医師が多い」という推測が立ちます。

泌尿器科は、透析クリニックとして独立しやすいことや、バイアグラの処方や包茎手術など性機能障害を診る自由診療も展開できることが、診療所医人気につながっているのではないでしょうか。

病院医・診療所医比 2004年 2014年 増減(増減率)
泌尿器科医数 6,032人(100%) 6,837人(100%)
うち病院医数 4,649人(77.1%) 5,012人(73.3%) 3.8ポイント減
うち診療所医数 1,383人(22.9%) 1,825人(26.7%) 3.8ポイント増

病院医・診療所医比 2004年 2014年 増減(増減率)
全医数 256,668人(100%) 296,845人(100%)
うち病院医数 163,683人(63.8%) 194,961人(65.7%) 1.9ポイント増
うち診療所医数 92,985人(36.2%) 101,884人(34.3%) 1.9ポイント減

泌尿器科医の求人票ひろい読み

求人が多く人気の診療科、地方を厭わなければ3000万円の大台も

医師求人サイトの「リクルートドクターズキャリア」には、泌尿器科医の求人が232件掲載されています(2016年12月時点)。他科と比べて求人数は多いといえます。

泌尿器科医の求人の特徴はズバリ、年収が高いことです。引っ張りだこなので年収が上がるのは当然といえば当然で、「年収2000万円以上」で絞ると5件もありました。

さらに、北海道根室市や山形県庄内町など「地方手当」がのると3000万円を狙うことも難しくありません。また、求人票の下限年収に1000万円を切る提示が少ないという特徴もあります。泌尿器科医は基礎年収も高いといえます。

地域
病院or診療所
年収 業務内容 当直 勤務/休み
北海道根室市
病院
1500万~ ★3100万円 記載なし 記載なし 週5日勤務
山形県庄内町
病院
1000万~ ★2500万円 外来、病棟 0~2回 週4.5~5.5日勤務
東京都台東区
病院
1500万~ 1600万円 オペ必須、外来、病棟 月2~3回 週4or4.5勤務
名古屋市緑区
病院
1300万~ 1800万円 外来、病棟 月2~3回 週4or4.5勤務
★埼玉県桶川市
病院
1800万~ 2000万円 透析、シャントオペ 当直なし 週4~5日勤務年117日休

透析医療の困難症例に対応できると厚遇は確実

埼玉県桶川市の病院の求人票をご覧ください。年収の下限提示は1800万円です。

ここの勤務は週4~5日なので、週4日勤務でも1800万円と読み取れます。東京へのアクセスが良い関東圏の病院でこれだけの年収提示はかなり魅力的に映るのではないでしょうか。

しかし業務内容をみると、その金額もうなずけます。透析に専念しなければならないことはもちろんのこと、透析医療において最も難しい症例のひとつ、シャントトラブルに対応できないとならないのです。

つまり、泌尿器科医が年収を上げるには、1.透析に専念する、2.シャントオペのスキルを磨く――この2点が近道であるといえます。

日本泌尿器科学会が「混乱している」と嘆くわけ

一般社団法人日本泌尿器科学会のホームページに「混乱している」という文字が現れました。どうしたのでしょうか。

決裂はしないが日本専門医機構への不信感は募っている?

日本泌尿器科学会のホームページを開くと大きなリンクボタンがあり、そこには「2017年4月からの泌尿器科専門研修開始について」と書かれてあります。

それをクリックすると長文が現れ、そこには

「専門医制度は現在非常な混乱期にある」
「このような時期に専門研修を開始することを非常に遺憾に思う」

などと、少々不穏な言葉が並んでいます。

これは、当初2017年4月からスタートするはずだった新専門医制度が延期になったことに端を発しています。新専門医制度は、各学会が専門医を認定するのではなく、一般社団法人日本専門医機構が認定することが最大の特徴であり、そしてそれが混乱の種になっています。

泌尿器科は、新専門医制度の「1階部分」に当たる、基本領域19科の1つです。それだけに日本泌尿器科学会は、新制度の開始延期の影響をもろに受けているのです。

日本泌尿器科学会はこのほど、専門研修プログラムについて、日本専門医機構とは別に運用することを決めました。

この処置は「2018年以降は未定」としていて、日本専門医機構と完全に決裂したことを意味していませんが、「混乱」「遺憾」という強い言葉を用いていることからすると、不信感は相当募っているようです。

「安心して専門医研修を開始してください」

厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」は2011年10月に発足しました。

そして同省は2015年3月に「新しい専門医制度」を打ちだし、その中で現行の専門医制度には「専門医の質」「患者の専門医への信頼度」「専門医としての誇りと責任」について課題があるとしました。

「新しい専門医制度」は、

  1. 専門医制度は2段階とし、1階部分は基本領域19科、2階部分はサブスペシャルティ領域とする
  2. 専門医の認定は各学会が行うのではなく、中立的第三者機関が行う
  3. 専門医育成は「プログラム制度」に従って行う

ことなどが柱となっています。

ところがこうした方針にさまざまな学会から異論が出て、現場は混乱しました。そこで新制度の開始時期が遅れたわけですが、延期までの過程の中で「骨抜き化」もみられました。

3の「プログラム制度」についてですが、これは「専門医研修は、経験すべき疾患や処置、取得すべき技能といった到着目標を、期限を定めたスケジュールとともに管理する」という内容でした。

しかし「地域医療の事情を考えるとフレキシビリティーに欠ける」といった批判が出ました。

そこで日本専門医機構は2016年11月に、「プログラム制」ではなく「カリキュラム制」で専門医研修を運用する方針を示したのです。

カリキュラム制であれば、期限を定めず、到達目標を達成すれば専門医試験の受験資格が得られるのです。

また、1についても、当初は「1階部分の基本領域19科の専門医資格」を取得してから「2階部分のサブスペシャルティ領域の専門医資格」を取得することが「求められる」としていましたが、それを「基本領域専門医資格を取得してからサブスペシャルティ専門医資格を取得することが『望ましい』」に緩和したのです。

日本泌尿器科学会は「学会としてはこれから泌尿器科の専門研修を志す先生方にとって決して不利益なことが起こらないよう全力を挙げて対処していく所存ですので安心して研修を開始されるようお願いいたします」と注意喚起しています。

基本領域19科:

1:総合診療科 2:臨床検査 3:病理 4:形成外科 5:リハビリテーション科 6:救急科 7:放射線科 8:泌尿器科 9:眼科 10:整形外科 11:精神科 12:小児科 13:麻酔科 14:脳神経外科 15:耳鼻咽喉科 16:産婦人科 17:外科 18:皮膚科 19:内科


参考資料

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2014年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2004年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/index.html

●リクルートドクターズキャリア
https://www.recruit-dc.co.jp/

●「2017年4月から泌尿器科専門医の研修を希望されている先生方へのお知らせ」(日本泌尿器科学会)
https://www.urol.or.jp/specialist/system/training_program.html

●「新しい専門医制度」(厚生労働省2015年3月30日)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000080199.pdf

●「新専門医制度、サブスペ領域はカリキュラム制も可」(日経メディカル)
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/report/t221/201611/549071.html

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野村龍一

野村龍一

某医師紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。
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