【医療ニュースPickUp 2018年4月2日】がんゲノム医療、全国の連携病院を厚労省が公表
2018年3月27日までに厚生労働省は、「がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療連携病院の一覧表」を公表した。
これは、がん患者の遺伝子情報から最適な治療を選んでいく「がんゲノム医療」を行う連携病院のリストであり、がん研究会有明病院(東京)、大阪国際がんセンター(大阪)などの全国132施設がリストに並んでいる。
厚生労働省は2018年2月にも、「がんゲノム医療中核拠点病院」11施設を選定し、公表している。
今回公表された132の病院は、先に公表された中核拠点病院と連携し、4月からの全国における「がんゲノム医療」の実施体制が整ったことになる。
がんゲノム医療とは、がんの原因となる遺伝子情報(ゲノム)を調査し、患者一人ひとりの遺伝子情報に応じた効果的と思われる治療を選択する医療である。治療すべき「標的」が突き止められるため、効果が高く、副作用が少ないとされる。
連携病院は、それぞれの病院と連携する中核拠点病院に患者の検体を送って遺伝子検査を依頼し、中核病院側ではゲノム調査を行う。
連携病院側では、中核病院から戻った結果をもとにして、治療法を選択する。中核拠点病院は検査を行うとともに、連携病院に対して治験や臨床試験の紹介なども行う。
さらに、中核病院が収集した遺伝子情報は、国立がん研究センターに設置されたがんゲノム情報管理センターに集約され、治験などの情報と共に臨床情報のデータベースとして蓄積・管理される。
現在選定されている、がんゲノム医療中核拠点病院と連携病院数は次のとおり(中核病院…連携病院)。
- 北海道大学病院(北海道)…2施設
- 東北大学病院(宮城)…6施設
- 国立がん研究センター東病院(東京)…6施設
- 慶應義塾大学病院(東京)…24施設
- 東京大学医学部附属病院(東京)…14施設
- 国立がん研究センター中央病院(東京)…9施設
- 名古屋大学医学部附属病院(愛知)…14施設
- 京都大学医学部附属病院(京都)…20施設
- 大阪大学医学附属病院(大阪)…8施設
- 岡山大学病院(岡山)…16施設
- 九州大学病院(福岡)…13施設
厚労省は、段階的ではあるが、すべての都道府県でがんゲノム医療が実施できることを目指している。
現在、岩手、群馬、熊本、大分、沖縄の5県は、連携病院がないものの、がんゲノム医療連携拠点病院から連携する病院の追加申請を6カ月ごとに受け付けるとしており、今後も順次増加していく見込みとなっている。
参考資料
厚生労働省 がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療連携病院の一覧表
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000199651.pdf
同上 がん診療連携拠点病院等
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin.html
同上 健発1225第3号 がんゲノム医療中核拠点病院等の整備について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000190014.pdf
同上 がんゲノム医療中核拠点病院のこれまでの経緯
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000194185.pdf
国立がん研究センター 中央病院 ゲノム診療とは
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/genetic_medicine_services/020/index.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
相変わらず日本人の死因第一を独走している「がん」ですが、ついに「遺伝子レベルで治療法を選べる時代」になった、というのが個人的な感想です。
さて、私自身、そろそろ「がん」を発症してもおかしくない年齢になりつつありますが、「ゲノム診療」が本格化するとともに、やはり気になるのが「どこまでが保険適応になるのか」というところです。
例えば、現在は「粒子線治療」については、一部のがん(前立腺がんや頭頸部がん)では保険適応がスタートしますが、それ以外はまだ自費です。
また、未承認薬など「新しい抗がん剤治療が、あなたには適しています」という結果が出た場合、その治療法を選択すると治験の対象になるのかもしれません。
しかし、「ゲノム調査」の段階では、どうなのでしょうか。自分にとって「より適切な治療を選択する」ための検査に、保険が適応されないとなると、どれくらいの患者さんがこの「ゲノム調査」を希望するのか。このあたりの情報が、もう少し欲しいとは感じます。
とはいえ、世界でもすでに「がんゲノム治療」への研究や、実現体制の構築に乗り出しています。「自分にとって最適な治療法」が、誰にでも分かる時代は、もうすぐそこなのかもしれません。
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