【医療ニュースPickUp 2015年11月20日】再生医療製品2つの保険適応を承認 中央社会保険医療協議会
2015年11月18日、厚生労働省は、ヒトの組織の細胞を培養して作る2つの再生医療製品を、新たに保険適用とする方針を固め、18日に開かれた中医協=中央社会保険医療協議会に提案した。
2つの再生医療品が保険対応に
今回、保険適応となるのは、2つの再生医療品である。
- ハートシート:筋肉の組織の細胞を培養して作る製品で、重い心不全の患者に移植して心臓の働きを再生する効果が期待できる
- テムセル:骨髄の細胞を培養して作る製品で、臍帯血移植などによる合併症を治療す効果が期待できる
厚生労働省は、この2つの製品に対する、治療の有効性が確認できたなどとして、新たに保険適用とする方針を固めた。ただし、どの医療施設でも使用できるものではなく、それぞれにはある程度の条件が課せられている。
まず「ハートシート」については、「虚血性心疾患で左室の収縮機能が低下しており、最大限の内服治療を行っているにもかかわらず心不全状態が持続し、標準的な治療(冠動脈バイパス手術、僧帽弁形成術、左室形成術、心臓再同期療法、経皮的冠動脈インターベンションなど)を施しているにもかかわらず心不全の悪化が危惧される患者に適用する場合に限る」場合に適応となる。
さらに、使用できるのは心臓血管外科の専門医であること、その他、循環器専門医、心臓血管外科専門医、再生医療認定医、臨床培養士が存在すること、これらの医師等は、製造販売業者が企画する研修を受講していること、などが条件となる。
施設基準としては、「植込型補助人工心臓実施施設」を有すること、心エコーやCT/MRIといった画像診断装置を備えること、ICUなどの設備が整っていることなどが挙がっている。
「テムセル」については、「造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病」に対する効果が期待されており、「本品は副腎皮質ステロイド剤で十分な治療効果が得られない患者に対して使用することと」が条件となっている。
施設基準としては、「緊急時に十分対応できる医療施設において、造血幹細胞移植に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、臨床検査による管理等の適切な 対応がなされる体制下で本品を使用すること」となっている。
また、再審査の期間中は、「症例全例を対象として使用成績調査を実施し、必要に応じ適切な措置を講ずること」が必要となる。
これらの製品は、「医薬品医療機器法」の施行後、初めての保険適用となる。再生医療製品を巡ってはこれまで、「治療が不可能とされた病気を根本的に治す可能性」が指摘される一方、価格が高額なことなどが課題となっていた。
医療保険が適用されることで、患者はより安価に、再生医療を受けられるようになると期待されている。
参考資料
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第313回) 議事次第
再生医療等製品の保険償還価格の算定について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000104468.pdf
同上 ヒト(自己)骨格筋由来細胞シートの使用要件等の基準について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000104470.pdf
同上 再生医療等製品に係る保険適用決定区分及び価格(案)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000104469.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
再生医療という言葉が聞かれるようになって久しいですが、「再生医療製品を新たに定義し、安全対策などの規制を盛り込んだ「医薬品医療機器法」の施行後、初めての保険適用」という点は、非常に画期的な医療品なのだと思います。
保険適応となる以前にも、これらの製品を使った治療を受けた人はいるのだろうと思います。しかし、保険適応にならないと、本当に高額ですね。例えば「ハートシート」には、AキットとBキットがあり、Bキットは168万円だそうですが、Aキットは636万円です。単純に3割負担として考えても、Aキットだと自己負担額=180万円以上になります。高額!
でも、これが保険適応となれば、高額医療の適応となるのだと思いますので、自己負担額は1か月あたり10万円以下になるわけですから、保険適応になってよかった!という患者さんは、たくさんいるのではないでしょうか。
「テムセル」の方も、算定薬価は「10.8mL1袋 868,680円」だそうです。1回の治療でどれだけの「テムセル」を使用するかは個人によると思いますが(体重換算が必要)仮に1袋だけだとしても、3割負担で250万程度、こちらも高額医療の適応になれば、使える患者さんも増えると思います。
再生医療は日本における先端医療の1つだと思いますが、これまでは経済的な理由であきらめていた患者さんも、救えるかもしれません。今後の動きに、大きく期待したいと思います。
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