【医療ニュースPickUp 2015年11月25日】働く世代のがん死削減を 厚労省が「がん対策加速化プラン」とりまとめ
厚生労働省は、2015年11月20日に第55回がん対策推進協議会を開催し、「がん対策加速化プラン」の取りまとめを行った。
日本では、毎年26万人ががんを発症すると推計されるが、今回の「がん対策加速化プラン」では特に、働く世代へのがん対策に重点がおかれた。これまでは自主的な取り組みとなっていた職場のがん検診については、現在の実態を調査し、その上で、検査項目などを示したガイドラインを策定する。
現状のままでは目標未達
また、市区町村が実施するがん検診についても、自治体ごとでの受診率を公表し、働く世代などへの対策強化を促すこととしている。
さらに、
- 抗がん剤などによる副作用や後遺症の治療ガイドラインの整備や、働く世代のがん患者への就労支援などに対しても重点的な対策を実施し、治療と仕事との両立を進めること
- 患者個人の遺伝子の情報に基づく「より効果的な診断および治療法の開発」に力を入れること
- 禁煙治療への保険適用を拡大すること
などが明示されている。
がんは日本人の死因で最も多く、2人に1人が罹患するといわれている。しかし実際には、がん検診の受診率は、国の目標である50%には届いていない。ほかの先進国に比べても低い水準にあり、早期発見・早期治療につながっていないという指摘があった。
さらに、2007年施行の「がん対策基本法」に基づいて策定された「がん対策推進基本計画」では、国は2017年までに、がんで死亡する75歳未満の人を「20%減少させる」という目標を掲げていた。しかし実際には、2013年時点で未だ80.1。目標達成には届いていなかった。
今年5月の時点では、がんで死亡する人は10年前に比べておよそ17%の減少にとどまることが、国立がん研究センターの推計で明らかとなっていた。この数値は、2015年での予測値として76.7人となることを示しており、現状のままでは目標が達成できないとされていた。
参考資料
厚生労働省 第55回 がん対策推進協議会(資料)
参考資料2 がん対策推進基本計画(平成24年6月)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000104744.pdf
同上
参考資料3 がん研究10か年戦略(平成26年3月)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000103482_1.pdf
同上
参考資料4 がん対策推進基本計画中間評価報告書(平成27年6月)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000103483_1.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
がん検診の受診率って、いまだに世界水準ではかなり低いようです。実際に自治体が行っているがん検診の受診率は、子宮頸がん・乳がん検診では近年上昇傾向にあり、年代によっては40%を超えているそうです。今年は特に、乳がん検診受診率が高くなったかもしれません。しかし全体的には依然として諸外国よりも低く、20% から30%程度、だそうです。
その理由としては、「がん検診へのアクセスが悪い、普及啓発が不十分であること等が指摘され、また、厚生労働省研究班によると対象者 全員に受診勧奨をしている市町村は約半数に留まっている。」となっていました。
私自身は一応都民ですし、がん検診をどこで受けられるのか、区からお知らせが届きます。それによると、がん検診を受けることが出来る医療機関はたくさんありますし、まぁどこに行くとしても、それほど交通手段には困りません。自転車でさくっと行けるところもいくつかあります。
でも地方にいくと、これも難しいのかもしれません。そもそも過疎地と呼ばれる地域では、医療機関の数も少ないと思いますし、「よし、がん検診に行ってこよう」とは、なかなかならないのかもしれませんね。
普及啓発はそれなりに進んでいるようにも思うのですが、まだまだなのでしょうか。
最近では、小学校くらいから「がんについて知る授業」なども行われているようですし、まだ子どものうちから、「がんは誰でもなり得る病気」「早期発見・早期治療が生き残るカギ」ということを、学んでおく必要が、あるのかもしれません。
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