【医療ニュースPickUp 2016年2月22日】高齢者の排泄の悩みをクラウドで管理するスマートデバイスを開発 北大
2016年2月16日、北海道大学の大学院医学研究科腎泌尿器外科学分野の篠原信雄教授と同大学大学院情報科学研究科情報メディア環境学研究室の山本強教授らの研究グループは、「高齢者の排泄の悩みを解決するスマートデバイスを開発」したことを公表した。
自宅トイレに設置しクラウド管理
この新デバイスは、自宅のトイレに簡単に設置できるもので、携帯電話インフラとクラウドサービスを利用し、排泄の状況を医療機関と共有するというもの。このスマートデバイスは「かわや日記帳」と名付けられた。
この新デバイスは、次のような特徴がある。
- 着脱可能なタッチパネル式で、トイレに設置しても邪魔にならない設計
- 人感セ ンサーにより、トイレ入退室時の人の動きを検知する
- プライバシーを守りながら、排尿・排便時の生活音を記録する
- タッチパネル操作により、利用者と便形状を選択する
- ここで得られたデータは、リアルタイムでアップロードされ、かかりつけ医にデータを自動送信する
これらのことから、本デバイスは「地域医療の充実並びに超高齢化社会の QOL(Quality of Life)向上に貢献するものである」という。
医療機関側の端末の特徴としては
- 多数の在宅患者の排泄状況をほぼリアルタイムで把握できる
- 異常な排泄行動(頻回な排便、長期間の便秘など)を自動検出できる
- 長期間にわたる排泄状況のモニタリングが容易にできる という点が挙げられている
同大学によると、日本は急速な高齢化を迎えているが、これに伴い、頻尿や慢性の便秘など、何らかの「排泄の悩み」を抱える高齢者は、30%を超えている。
その結果「QOLに重大な影響を及ぼしている」ことが、近年特に問題視されている。「排泄」行為は、日常生活の中でも特に「個人の尊厳」にも関わる重要な機能。
しかし、医療・介護分野での対応は、患者自身から家族やかかりつけ医に排泄の悩みを相談しにくいことなどから、後回しになりがちである。自己記入型の排泄記録では、「付け忘れ」などが問題となっており、排泄に対する適切な治療を進めるうえで、信頼性が担保できていない現状にあるという。
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
少し古くなりますが、老人ホーム入所者1000人以上を対象(有効回答数821名)に行ったある研究によると、排尿障害を自覚している人は、男性38%、女性23%だったそうです。内訳としては、男子では排尿困難、女子では頻尿がもっとも多く、尿失禁があると回答した人は124名(全体の15%)で、男性8%、女性19%が該当したとのこと。
今回の北大が開発したスマートデバイスでは、尿失禁については分からないようですが、排尿の状況だけではなく、排便の状況も記録できるのは、非常に優れていると感じました。
例えば、中規模病院の泌尿器科外来をみると、「おしっこの出方の検査」を受けにきている患者さんを多く見かけます(印象としては男性の方が多い?)。一方で「便秘や下痢などの排便に関すること」は、泌尿器科ではなく消化器内科などになりますよね。
同じ「排泄」でも、受診する科が違うと、患者さんは「あまり人に知られたくない排泄の状況」を、2度話すことになりますので、一度に両方のデータを得られるシステムは、それだけですごいなと思います。
ただ、もう少し知りたいと思ったのは、どうやって家族を見分けているかという点。データを取る必要のない家族(中高年よりも若い世代)は、むしろデータを取られたくないだろうなと思います。
トイレに端末があるくらいは良いと思いますけどね。人を見分けることが出来ても、不要な人のデータまでクラウド管理されるのはちょっと…という声も聞こえてきそうです。家族全員の健康状態を管理する、という点ではスゴイと思いますけどね。
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