【医療ニュースPickUp 2017年7月6日】2020年、医療のAI導入を診療報酬に反映
2017年6月27日、厚生労働省の「保健医療分野におけるAII活用推進懇談会」は、2020年度にも「人工知能(AI)を利用した病気診断や医薬品開発の支援」を実現すると盛り込んだ報告書を公表した。同省は20年度の診療報酬改定で、「AIを用いた医療」を診療報酬に反映させることを目指す。
報告書では、「ゲノム医療」「画像診断支援」「診断・治療支援」「医薬品開発」の4領域を、早期に実用化できる分野として挙げており、その後段階的に「介護・認知症」「手術支援」にも取り組むべきとした。
また、保健医療AIの開発に必要な、全国をカバーするビッグデータ収集体制を整備。さらにAI開発用のクラウド環境を整備・認証すると同時に、治療の安全性、有効性の確保に向けて、AI機器の評価体制も整えていく考えだ。
AIは、膨大な医療・介護データの分析に用いることが検討されており、ディープラーニングによる「医師による診療の支援」や、「個々の患者に合った最適な健康管理方法の提案」が可能になると考えられている。具体的には
- 新たな診断方法や治療方法の創出
- 全国どこでも最先端の医療を受けられる環境の整備
- 患者の治療等に専念できるよう、医療・介護従事者の負担軽減
の実現を目指して、AIを導入した医療機関や介護施設の「診療報酬・介護報酬」を上乗せすることで、最先端技術の普及を促し、限られた人員でも質の高い医療・介護サービスを提供できるようにするのが狙いだ。
AIには、人間と同等の汎用的な知的処理を行う「強いAI」と、人間の役割を補う知的処理を行う「弱いAI」があるといわれている。現在実用化が進んでいるのは、後者の「弱いAI」であり、医療診断の現場でAIが果たす役割は、現段階では誤診防止、診断の迅速化、確定が困難な診断の支援、過疎地域での診療といった補助的な役割であり、AI自体が確定診断を下すものではない。
報告にも、「AIの判定には誤りがあり得ることを踏まえ、最終的な診断や治療方針の決定と責任は医師が担うべきだ」と明記されている。
参考資料
厚生労働省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」報告書
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000169230.pdf
概要
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000169232.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
現在、巷には「AIに〇〇をさせる」というニュースが飛び交っています。もちろん「それが現実的なところまで来ているから」ではありますし、これを開発する技術者の方からすれば、これまでの知識と経験を生かして大きな仕事を!という部分があるのでしょう。しかし一歩下がって見てみると、かつてのITバブルのような盛り上がりを見せているように思います。
ニュース本文の最後の方にも書きましたが、AIには「強いAI」と「弱いAI」があるのだそうです。
「強いAI」は、それこそSF映画に出てくるような「人と共存する、人並み以上の知能を持つAI」であり、それこそ「AIに仕事を奪われる」という恐怖心を煽る一面もあります。これは、理論的には実現可能なものとして、世界各国で研究中のものであるようです。
一方の「弱いAI」は(この呼び方もどうかと思いますが)、分かりやすくいえば「人の苦手とする作業を代行してくれるもの」あるいは「人が実際にやると膨大な時間がかかるところを短時間で代行してくれるもの」と考えれば良いのかもしれません。
分かりやすく言えば「医師の診療を助けてくれるもの」「診断に至るまでの過程に対しヒントをくれるもの」です。このような活用をすることで、例えばこれまでは数時間かかっていた「診断」までの過程が、ごく短時間になるかもしれません。
また、確定診断が難しい症例に対しては、ある程度の「ヒント」をその理由と共に導き出してくれる、医師はその内容を元に確定診断をする、というシーンもあり得るでしょう。
いずれにしても、医療の分野で「AI」が出来ることは、「医師の診断の補助的な役割」を担うことであり、AIが実際に診断をすることは無いと思います。
ただ、せっかく発達してきた技術なのですから、医師という立場からみて、利用できる部分は利用する、その結果として医師対患者の関係がもっと良くなるのであれば、ぜひとも訪れてほしい未来の姿ではないでしょうか。
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