【2014/12/19】定説とは違う自己免疫疾患の発症メカニズムを発見か 東大研究チームの研究結果より

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【医療ニュースPickUp】2014年12月19日

医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。

 

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定説とは違う自己免疫疾患の発症メカニズムを発見か 東大研究チームの研究結果より

【2014/12/19】定説とは違う自己免疫疾患の発症メカニズムを発見か 東大研究チームの研究結果より

 

2014年12月9日、東京大学は、東京大学大学院医学系研究科の宮寺浩子助教(研究当時)、徳永勝士教授らの研究グループが、HLAタンパク質の安定性を大規模に解析した結果、1型糖尿病の罹患のしやすさに関連するHLA遺伝子型が、安定性が顕著に低いHLAタンパク質を作ることを見出したと発表した。

 

この研究論文は、アメリカのThe Journal of Clinical Investigation(2014 年 12 月 8 日オンライン版)で公開されている。

 

研究チームによると、「従来の研究ではHLA 遺伝子多型と自己免疫疾患との関連は HLA タンパク質のペプチド結合性によって説明されているが、実際の発症機序については不明な点が多く残されている。

 

本研究で得られた知見は、自己免疫疾患発症の過程に、これまでの定説とは根本的に異なる発症機序が働いている可能性を示唆している」としている。

 

これまでの定説としては、特定の HLA 遺伝子型を持つと 1 型糖尿病の発症率が高くなることが、日本人、欧米人、アフリカ系米国人などで報告されていた。例えば欧米諸国では、1 型糖尿病に罹患した人の約 9 割が”DR3-DQ2”, “DR4-DQ8”と呼ばれる HLA 遺伝子型の少なくとも一つを持ち、日本人では別のタイプの HLA 遺伝子型が 1 型糖尿病の罹患しやすさに関連しているといわれていたが、その発症機序には不明な点も多かったのも事実だ。

 

今回の研究では、「HLA のタンパク質の安定性と自己免疫疾患の罹患しやすさとの関係の可能性」に着目した。HLA タンパク質の安定性を推定するための測定手法を構築し、主要な HLA 遺伝子型(HLA-DQ 座位)約 100 種類のHLA タンパク質安定性を測定した。

 

その結果、1型糖尿病への罹患のしやすさに関連するHLA遺伝子型は安定性が顕著に低いHLAタンパク質を作ること、逆に1型糖尿病への罹患のしにくさに関連する HLA 遺伝子型は非常に安定な HLA タンパク質を作ることを見出したという。

 

さらに、HLA タンパク質の安定性制御に関わる、アミノ酸残基を変える遺伝子多型を同定することに成功、この遺伝子多型が 1 型糖尿病のかかりやすさに強く関連すること、さらにこの遺伝子多型の起源が非常に古いことを明らかにした。

 

これまでの定説では、HLA 遺伝子多型がさまざまな自己免疫疾患の罹患しやすさに関連することは分かっていた。しかしその根本は未だに明らかではない部分も多く、従来はインスリンなどの「自己ペプチドを結合しやすいHLA」 が、発症リスクを上げると考えられていた。

 

しかし今回の研究結果により、これまでは着目されていなかった「HLA のタンパク質安定性」特性が、自己免疫疾患の発症率に大きく影響する可能性を見出し、従来の定説とは異なる発症機序が存在する可能性を示唆している。

 

研究グループでは、この成果を糸口とし、1 型糖尿病を始めとする自己免疫疾患発症の根底にあるメカニズムの解明を進めるとしている。

 

1型糖尿病はそもそも、地域や集団間での多様性があり、日本ではフィンランドやイタリアなどと比較すると発症率は非常に低い。日本人での1型糖尿病の成因などを明らかにするには、単独施設での患者数では症例数が絶対的に不足する、という背景もある。

 

今後、この研究成果がどのように展開していくのか。その動向に注目したい。

 

参考資料

 

QLifeProニュース 1型糖尿病などの自己免疫疾患のかかりやすさ、免疫タンパク質の不安定さが関係か?東大
http://www.qlifepro.com/news/20141216/relationship-in-autoimmune-disease-and-instability-of-the-immune-proteins.html

 

東京大学大学院 医学系研究科・医学部 プレスリリース
免疫タンパク質の不安定さが、自己免疫疾患のかかりやすさに関係〜定説とは異なる発症機序の可能性〜
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/press.html#20141209

 

東京大学 免疫タンパク質の不安定さが、自己免疫疾患のかかりやすさに関係−定説とは異なる発症機序の可能性−
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20141209.pdf

 

JCI The Journal of Clinical Investigation
Cell-surface MHC density profiling reveals instability of autoimmunity-associated HLA
http://www.jci.org/articles/view/74961

 

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