看護師のための保健医療計画のミカタ No.44 「北海道での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」
■作成日 2018/4/3 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は食の宝庫・北海道の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、平成20年度から平成29年度までの計画期間として策定し、平成24年度に一部の見直しを行った北海道医療計画[改訂版]をもとにお伝えします。
北海道の看護職員数の動向
日本の北端に位置し、都道府県では最大の面積を誇る北海道。
自然の恵みである農産物、海産物の豊富さは日本トップレベル。230もの温泉、変化に富む雄大な山々、知床五湖や摩周湖など数多くの美しい湖沼、広大な湿原など、大自然のすばらしさは誰もが知るところでしょう。
他にも、札幌大通り公園の雪まつり、旭山動物園、帯広のばんえい競馬、函館の五稜郭、富良野のラベンダーなど、北海道の魅力的な場所は枚挙にいとまがありません。
保健医療的な面で見ると、北海道は広大な土地の中で札幌などの大都市に人口が集中しているため、過疎地域では少子高齢化が進行し、地域産業が衰退するなど地域経済の格差が顕著になっています。
医療も同様で、医師数や看護師数の地域格差が大きく、過疎地域では十分な医療が提供されているとは言い難い状況となっています。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は76,588人(保健師2,764人、助産師1,526人、看護師50,849人、准看護師21,449人)で、平成26年には、就業看護職員数は81,579人(保健師3,028人、助産師1,647人、看護師57,732人、准看護師19,172人)となっています。
人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は1,069.1人で、全国平均855.2人よりも213.9人と大幅に上回っている状況ではあります。
図1 北海道 看護職員数の推移
北海道の看護師需要
図2 北海道の看護師就業場所
北海道では病院勤務の看護師が最も多く76.8%で、全国平均の72.8%を上回っています。
一方、診療所に勤務する看護師は全国平均が12.4%であるのに対し、北海道は10.2%と、少なくなっています。
在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国平均3.3%に対し3.1%、介護保険施設等は全国平均6.5%に対し5.5%でした。全国平均と比較すると、病院勤務の看護師がかなり多く、他の就業場所は少なくなっていることがわかります。
これは、人口当たりの病床数が全国より多いことも関係しているのかもしれません。
北海道では、積雪、寒冷などの気候条件や、広大な地域に医療施設が分散していることから、他都府県に比べて人口当たりの病床数が多く、そのため看護師の需要が高いという現状があります。
病床100床当たりの看護職員数で見ると、全国では54.0人であるのに対し、北海道全体では51.7人と、全国平均を2.3人下回っています。つまり、病床に対する看護師数は、充足しているとは言い難い状況にあるのです。
また全国的にも、医療の高度化・専門化に対応できる高度な看護技術が看護師には求められるようになっています。
さらに看護を提供する場も、介護保険施設など医療機関以外の施設にも拡大しているため、看護師の役割はますます大きくなってきました。
そのため、北海道では看護師資格の取得後も引き続き、知識・技術の向上を図っていくことを課題としています。道内には平成30年3月現在で、認定看護師が823人、専門看護師が103人、認定看護管理者が164人います。
北海道は、広大な面積で各地の医療を確保するため、21もの二次保健医療圏に分かれています。また、三次医療圏も6つの医療圏に分かれ、各地で医療が完結できるよう整備されています。
三次救急やがん診療連携拠点病院などは三次医療圏ごとに配置されているのに対し、災害拠点病院、周産期医療センター、小児救急、へき地医療拠点病院は圏域ごとに配置され、自圏域で完結できる体制が整えられています。
図3 北海道 二次医療圏
看護師の就業者数を圏域ごとにみると、道全体では全国平均値を上回っているものの、二次医療圏ごとでは差が出ています。
保健師、助産師、准看護師などを含めた看護職員数で見ると、人口10万人当たりで北空知が1800人超、中空知が1600人超と全道の平均を大幅に上回っている一方で、根室は700人未満、日高は800人超と、その数には倍以上の開きがあります。
看護師の需要が高い北海道ですが、道内の養成施設では受験者が減少していることから、大幅な定員増は難しく、さらに就業率も低いため、道では看護師の定着・離職防止対策や未就業看護師の再就業を進めていくことが、大きな課題となっています。
北海道の看護師確保に向けての取り組み
こうした状況を受けて、北海道では「養成」「就業定着」「再就業促進」「質の向上」を4つの柱として看護師の確保対策を進めてきています。
【養成数や教育環境の確保】
- 看護師養成所の開設や運営に対する相談・助言
- 教員や実習指導者の養成を支援
- 実習施設の情報提供
- 看護師養成所の施設整備や設備整備、運営などへの支援
【就業定着や離職防止の推進】
- 地域の医療機関への就業を促す修学資金貸付制度の効果的な運用
- 医療機関で院内保育所を運営する取り組みの推進
- 多様な勤務形態を導入する医療機関の取り組みを促進
- 地域の小規模病院での勤務環境改善や離職防止対策などの取り組みを支援
- 卒後臨床経験1年未満の新人看護職員に対する研修を促進
【未就業看護職員の再就業促進】
- 未就業・離職ナースの把握や求人・求職者に対する情報提供
- ナースバンク事業などの利用者拡大に向けた周知
【知識や技術の向上(質の向上)】
- 関係団体と連携して病院や事業所等に勤務する看護職員の質の向上
- がん・糖尿病など専門分野の看護の質を高めるための研修を実施
- 小規模病院のナースが先進医療に対応できるよう出前講座によって技術演習
- 先進医療を行う医療機関で臨床実習などの技術研修
- 准看護師が働きながら看護師資格を取得しやすい環境の充実を図る支援
地域によって医療状況がさまざまな顔をみせる北海道。とはいえ各圏域に救急医療を担う病院は確保されており、地域の病院でも研修や演習によるナースのスキルアップを支援しているようなので、現場で積極的に学びたい看護師が転職を考える際は有力候補かもしれません。
夏はドライブやアウトドアスポーツ、冬はウインタースポーツや雪まつりなど、年間を通してアクティブに楽しめる地域なので、体を動かすのが大好きな人にとっても魅力的な地域ですね。
旬のスイートコーンを畑で丸かじりしたり、牧場でたっぷりのジンギスカンに舌鼓を打ったり、地元でしか味わえないグルメ三昧で休日を過ごすのも楽しそうです。
参考資料
北海道医療計画[改訂版]
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/cis/iryokeikaku/00hokkaidouiryokeikaku.htm
平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf
平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf
北海道ホームページ
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/
北海道看護協会ホームページ
http://www.hkna.or.jp/