長野県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

元看護師のライター　紅花子です。

各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は信州そばで有名な長野県の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、長野県の第6次保健医療計画にあたる、第1期信州保健医療総合計画をもとにお伝えします。

長野県の看護職員数の動向

本州のほぼ中央にあり、「日本の屋根」と言われる日本アルプスをはじめ3000ｍ級の山々が連なる長野県。
村の数の多さでは日本一、農業が盛んで県民の幸福度も高い長野県は、「移住したい都道府県」調査でも堂々の1位。

ウインタースポーツが盛んで、1998年に長野冬季オリンピックが開催されたのは皆さんもご存知の通りですが、古くから教育県としても知られ、美術館・博物館の数も日本一を誇る、文化面でも豊かな土地柄と言えるでしょう。

県民の保健医療的な面を見ると、長野県の平均寿命は男女共に、長年全国1位をキープしてきました。
そのため高齢化率は全国で11番目と高くなっているものの、医療への依存率は低く、後期高齢者1人当たりの医療費の低さは全国で4位（平成22年）となっています。

65歳以上の就業率も全国1位と、まさに「健康長寿県」の名にふさわしいと言えるでしょう。

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は25,548人（保健師1,333人、助産師666人、看護師18,060人、准看護師5,489人）で、平成26年には、就業看護職員数は28,041人（保健師1,466人、助産師797人、看護師20,439人、准看護師5,339人）となっています。

人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は969.1人で、全国平均855.2人よりも113.9人上回っている状況です。

図１　長野県　看護職員数の推移

図２　長野県の看護師就業場所

長野県では病院勤務の看護師が最も多く70.5％で、全国平均の72.8％をわずかに下回っています。
また、診療所に勤務する看護師も全国平均12.4％であるのに対し、長野県は10.7％と、やや少なくなっています。

在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国平均の3.3％とほぼ変わらない3.4％、介護保険施設等は全国平均6.5％に対し10.1％と割合が高くなっています。

全国平均と比較すると、病院・診療所の就業率が低く、在宅関連、特に介護保険施設等の就業率が高い点が特徴と言えるでしょう。

長野県では政策によって、平成12年～平成22年の10年間で、看護師数が29.3％増加しました（全国の増加率は26.4％）。特に介護保険施設での増加率が高くなっているようです。

一方、常勤看護職員の離職状況を見ると長野県全体で10％と高く、新卒に限ってみると約6％が離職しているという状況でした。

長野県では現在、医療機能の強化に向けて、老朽化した施設の一新もあわせ、中核病院などの大規模な建て替え・新築計画が進んでいるようです。

高度先進医療を担う信州大学医学部附属病院では、新病棟が平成30年4月にオープンするほか、長野圏域の長野赤十字病院・南長野医療センター篠ノ井総合病院、東信地域の佐久総合病院などで再編・新築が次々と行われています。

医療の高度化・専門化にともない、特定の分野に精通した高い看護技術を持つ看護師の確保が全国的に求められていますが、長野県ではこうした医療機関の再編と共に、そのニーズはより一層高まってくることが予想されます。

長野県では、県立看護大学において大学院での専門看護師の養成、看護実践国際教育センターで認定看護師の養成を行っており、県内には平成30年3月現在で、認定看護師が374人、専門看護師が17人、認定看護管理者が67人います。

次に、医療圏ごとの状況を見ていきたいと思います。

図3　長野県　二次医療圏

県内に3,000ｍ級の山々が連なる長野県では、県内を三次医療圏として大きく4つの地域に分け、その中ですべての医療が完結するよう設定しています（三次医療圏の設定については「保健医療計画からみる都道府県の姿」長野編を参照）。

人口10万人当たりの看護師の就業者数を見ると、県内では二次医療圏ごとに偏りが見られ、佐久は984.9人、松本が946.2人と全国平均を超えている一方で、上小は740.3人、上伊那は702.7人、木曽が689.4人と全国平均を下回っています。

なお、上伊那、木曽、大北、北信の4医療圏は、厚労省の基準では二次医療圏設定の検討対象となっていましたが、長野県は広大で人口の少ない村も多く、見直しによっては医療過疎を招いてしまう可能性があることから、従来の区分のままで設定されているという経緯があります。

このような状況のもと、長野県では看護師確保策として以下のような取り組みを行っています。

離職防止策・再就業促進

• 病院内保育所の運営や勤務環境改善の施設整備に補助金
• 24時間保育、休日保育を実施する病院内保育所に補助額を加算
• 医療機関へのアドバイザー派遣や相談窓口の設置で勤務環境改善を支援
• ナースバンク事業で潜在看護職員の再就業を促進

人材確保・資質の向上

• 資質向上のための各種研修を実施
• 新人看護師の卒後臨床研修の体制整備費を支援
• 卒後臨床研修の指導者研修を実施
• 認定看護師を養成し、看護ケアの質を向上

次々と大病院の再編が進んでいる長野県。
研修や医療者の育成にも力を入れているので、専門的なスキルを身につけたい、キャリアアップを図りたいというナースにとっては魅力的な地域と言えますね。

在宅医療への取り組みも他県より実績があるので、在宅医療は未経験のナースも入職しやすいかもしれません。また、保育園は待機児童ゼロで、病院内保育も拡充される見通しなので、ママさんナースも働きやすい環境ではないでしょうか。

プライベートでも全都道府県の幸福度ランキング4位という住みやすい環境に加え、上高地をはじめとする豊かな自然、そして数多くの美術館などで美しいものに触れ、心癒されることでしょう。温泉を利用した公衆浴場の数も全国1位を誇る長野県で、休日ごとに湯めぐりをするのも楽しそうですね。

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