ミクロの世界を覗いてみよう Vol.7 チームで働く白血球その4 食いしん坊細胞―マクロファージと好中球
■作成日 2018/4/23 ■更新日 2018/5/9
前回は『チーム白血球』が連携して、私たちの体を守ってくれていることがわかりしました。
今回から、メンバーそれぞれについて、もう少し詳しくお伝えしていきます。
まずは「食細胞」と呼ばれるマクロファージと好中球です。
マクロファージはこんなヤツ
まずは食細胞の代表格、マクロファージをご紹介します。
名前と大きさ
まずはこのマクロファージという名前についてですが、このコラムのvol.5でお伝えしたとおり、「マクロ(Macro)=大きい、ファージ(PHage)=食べるもの」からきています。そのため、マクロファージは別名「大食細胞」とも呼ばれます。
その大きさは、直径0.02~0.05mm(20~50μm)にもなりますから、赤血球0.007~0.008mm(7~8μm)や大腸菌0.001~0.002mm(1~2μm)に比べると、相当大きな細胞といえます。
生い立ち
すべての血球の元となる造血幹細胞から、単球へと移行・分化し、さらに組織内に入り成熟するとマクロファージとなります。
単球からすべてがマクロファージになるのではなく、樹状細胞へと移行・分化していく単球もあります。
仕事内容
- 主な仕事は病原体の侵入を見張ること
- 侵入者を発見したら、侵入した細菌を食べる(=貪食)すること
- 他のメンバーに、伝達物質(=サイトカイン)で侵入を知らせる
マクロファージがつくるサイトカインは主に6種類で、このうち炎症の発生に関わる「炎症系サイトカイン」と「ケモカイン」が、チーム白血球のメンバーを呼び寄せる道具として使われます。
- 炎症系サイトカイン(TNF-α、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-6(IL-6))
- 血管に出口の手がかりをつけ、細菌の居場所を、好中球に伝える
- 血管反応を起こす
- 血管拡張・・・近くの血管を拡張することで、血液の流れをゆるやかにし、血流量を増やす
- 血管透過性の亢進・・・血管壁をつくる細胞の隙間を拡げることで、血液成分や血液細胞が組織に出やすくなるようにする
- ケモカイン(インターロイキン-8(IL-8))
- サイトカインのひとつ。ケモタクティックな(化学遊走させる)サイトカイン という意味
- 好中球を病原体の侵入部位まで呼び寄せる
また、マクロファージの中には、あらかじめ体の特定の部分にとどまっているものもあり、とどまる部位によって名称が変わってきます。
これを「組織内マクロファージ」とよび、生まれも育ちも違うため、一般のマクロファージとは区別をしています。
好中球はこんなヤツ
では次に、好中球をご紹介します。
名前と大きさ、特徴
好中球は顆粒球という種類のメンバーです。
その名のとおり細胞質内にツブツブ(顆粒)を持っています。
好中球と同じように、細胞室内にツブツブ(顆粒)を持つ細胞は他にも、好酸球と好塩基球があります。
また、好中球はその昔、ミクロファージと呼ばれていた時期がありました。その対比としてマクロファージが「マクロ」と呼ばれたほどですので、好中球(ミクロファージ)はマクロファージよりもずっと小さいサイズです。
仮にマクロファージの大きさがサッカーボールだとしたら、好中球はソフトボールくらいの大きさになります。
サイズは小さいのですが、メンバーだけはたくさんいて、末梢血管中白血球の50%程度を占めています。しかし、数は多いのですが寿命は短く、血管内で10時間程度、組織内でも数日しか生きていることができません。
仕事内容
- 主な仕事は病原体を食べることで、無作為(=非特異的)に食べる
- 食べる力が強いため殺菌力が強いが、この殺菌力の強さが仇になることもあり、好中球が働きすぎると、正常な「わたし自身」の細胞まで傷つけてしまうこともある
- ふだんは血管内を流れている
- マクロファージから放出されるサイトカインにより、炎症部位や感染部位まで呼び寄せられるが、この動きを遊走と呼ぶ
- 血管内皮に接着して転がりながら(ローリング)、血管を構成する細胞の「すき間」を探して血管外に出て、貪食することにより殺菌力を発揮する
- 役目を終えると死んでしまうが、その残骸が「膿」になる
マクロファージと好中球の連係プレー?
体の中に何らかの病原体が入り込むと、まずマクロファージが病原体を見つけ、サイトカインを放出します。
サイトカインは、血管壁の細胞の隙間を拡げながら、自分の相手を探して移動します。血管内にいる好中球がこれに気付き、血管内をローリングしながら、呼ばれている場所まで移動していきます。
やがて血管外へ出て病原体を見つけた好中球は、それを捉えて食べてしまいます。
役目を終えた好中球は死亡し、「膿」となります。
まとめ
2つの食細胞はそれぞれの役割を持ち、しっかり連携しています。
この2つの細胞の連携プレーにより、病原体を撃退する第一段階をクリアしています。
次回は、マクロファージと好中球が「もっと効果的に食べるための秘密」と、「ウイルスが侵入してきたとき」のことをお伝えします。
参考資料
1.始めの一歩は絵で学ぶ 免疫学 「わたしの体」をまもる仕組み
著者:田中稔之 出版社:株式会社じほう
発行:平成28年8月31日
2.病気がみえるvol.6免疫・膠原病・感染症 第1版
編集:医療情報科学研究所 出版社:株式会社メディックメディア
発行:平成27年3月3日 第1版第9刷
3.免疫ペディア 101のイラストで免疫学・臨床免疫学に強くなる!
編集:熊ノ郷淳 出版社:株式会社羊土社
発行:平成28年7月1日 第1刷
4. 特定非営利活動法人 日本免疫学会
免疫学Q&A
http://www.jsi-men-eki.org/general/q_a.htm
5.摂南大学 感染と防御第4回
http://www.setsunan.ac.jp/~p-bisei/Lecture_files/NID13-04.pdf