応援で入った一人薬剤師の薬局で調剤過誤!やっと探し当てて交付した薬剤は規格違いのものだった…
■作成日 2018/2/28 ■更新日 2018/5/8
薬剤師ならば多かれ少なかれ経験したことがあるだろう調剤過誤。職業柄避けて通れない自らのミスから、医師の処方ミスまで要因は様々です。このコーナーでは、薬剤師の皆様が調剤過誤、そして調剤事故に少しでも遭遇しないよう、他の薬剤師さんが実際に経験した「調剤過誤にまつわるヒヤリ・ハット事例」を物語でご紹介しています。
私は調剤薬局の一人薬剤師です。
一人で薬局を切り盛りするのは大変ですが、患者さんと親しくなれるし、何より患者さんの健康を自分が守るという大きなやりがいがありました。
しかし、私とて人間です。ある時ぎっくり腰になり、1週間ほど店を休まざるをえない状況になりました。そこで他店舗から応援を頼み、自宅療養をしていました。
今回の過誤は、そんな私の不在中に起きました。
応援に来てくれたのは、OTCが専門でほとんど調剤経験のない薬剤師でした。
しかし経験の長い事務さんが常駐しており、適宜アドバイスをしながら仕事をしてくれるということで安心をしていました。
腰痛が落ち着いたところで出勤したものの、やはり不在中の患者さんのことが気になり、私は在庫と薬歴のチェックをしました。
幸い在庫の過不足はなく、薬歴も不十分ながら記載されておりホッとしました。
予約日前に薬がなくなってしまい過誤発覚!患者さんは3倍量の薬を飲んでいた
ところが数週間後、私の不在中に薬をもらいに来ていたある患者さんが「薬が不足していた」と来局されたのです。
この方の薬は
- ウルソ錠100mg 1日1.5錠 1日3回毎食後 84日分
という内容で、ウルソ錠100mgを0.5錠ずつ252包分包して渡してあるはずでした。しかし、投薬日から4週間で薬がなくなってしまったというのです。
「在庫はあっていたし、そんなはずはない」と思いつつ患者さんの話をよく聞くと、ウルソ錠100mgが1.5錠ずつ分包されており、84包(1日3回飲んだ場合4週間分)しかなかったことが明らかになりました。
患者さんによりますと、投薬時には薬の内容について目視による確認はなく、薬剤師から「いつもの薬ですね」と薬袋に入った薬を渡されただけだったようです。
帰宅後、薬を飲もうとして薬が1.5錠ずつ分包されていることに気が付き不思議に思ったものの、薬袋には「1日3回毎食後 1回1包服用 84日分」と記載されていたので毎食後1.5錠ずつ飲んでしまっていたのです。
患者さんは「処方内容が変わったのを薬剤師が説明し忘れたのだろう。いつもの薬剤師じゃないし、しょうがない。」と思い、病院にも薬局にも問い合わせをしなかったそうです。
しかし4週間で薬がなくなってしまい、予約日も約2ヶ月先であることから薬局に相談に来たということでした。
あわてて処方せん原本を確認したところ過誤であることが明らかであったため、患者さんに謝罪し病院で検査を受けてもらいました。もちろんすぐに病院にも連絡しましたが、こってり絞られ、厳重注意を受けました。
幸い患者さんに健康被害はなかったのですが、これが抗がん剤などであったら患者さんにどんな被害が起きていただろう…と考えると本当にゾッとします。
今回の過誤はどうすれば防ぐことができたのか
今回の過誤は、調剤経験の浅い応援薬剤師が一人で調剤業務を行っていた時に起きました。
特に忙しい時間帯ではなかったのですが、
- ウルソ錠を半錠に割らなければいけないこと
- 分包機の扱いに慣れていなかったこと
- 分包数が多かったことから患者さんの待ち時間が長くなってしまったこと
から、十分に監査・服薬指導を行う精神的余裕が薬剤師になかったために過誤が生じたと考えられます。
なお、待ち時間が長いことについてのクレームは患者さんから一切なく、客観的には切迫感はまったくなかったため、事務職員も薬剤師が余裕のない状態になっていることに気づかなかったようです。
患者さんが帰宅した後に薬剤師は薬歴記入を行ったのですが、その日の分の記録を簡単に行っただけで、前回分の薬歴に分包方法(0.5錠✕○包分包、印字なし)が記載されていたことに気づかなかったようです。
事務職員はレセコンの入力及び入力後のチェックを行いましたが、入力内容に特に問題はなかったため過誤には気づきませんでした。
今回のような過誤を防ぐためには、たとえ一人薬剤師の店舗であっても、常任の薬剤師が不在の場合は複数人で調剤にあたるべきであると考えます。
またいかなる場合であっても、服薬指導時に患者さんと一緒に薬の内容(特に変更の有無)を確認するべきです。今回のケースでも、患者さんと一緒に薬の内容を目視で確認していたら、過誤は防ぐことができたと思われます。
さらに、今回は薬歴記入時にもミスに気づかなかったことから、薬歴記入にも工夫が必要でしょう。どのような状態で薬を分包したか(0.5錠✕252包、あるいは1.5錠✕84包など)を毎回記入し、分包方法が前回と異なっていないか等を確認することで、過誤を防ぐことができると思われます。
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