ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」を交付すべき患者さんに、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%「日新」を誤交付

■作成日 2018/5/24 ■更新日 2018/5/24

 

 

薬剤師ならば多かれ少なかれ経験したことがあるだろう調剤過誤。職業柄避けて通れない自らのミスから、医師の処方ミスまで要因は様々です。このコーナーでは、薬剤師の皆様が調剤過誤、そして調剤事故に少しでも遭遇しないよう、他の薬剤師さんが実際に経験した「調剤過誤にまつわるヒヤリ・ハット事例」を物語でご紹介しています。


 

私は30歳代半ばの女性薬剤師です。
私が勤務しているのは、けっこう大きな総合病院の門前薬局です。

 

ちなみに、私はこの薬局の開局当初からずっと勤務しており、もうすぐ10年が経とうとしています。

 

私たちの薬局には常勤の薬剤師が5人在籍しており、毎日100枚前後の処方せんを受け付けています。処方せんのほとんどが午前中に集中するので、午前中、特に複数科受診の患者さんの処方せんが集中する12時前後はとても忙しいです。

 

今回の調剤過誤は、1日のうち最も忙しい時間帯である昼近くの時間帯に発生しました。

 

薬剤の誤使用はなく患者さんに健康被害はありませんでしたが、一歩間違えば大変なことになっていたかもしれないので、報告します。

 

患者さんは80歳代の女性で、総合病院の内科・泌尿器科・整形外科・眼科を定期的に受診されている方でした。

 

足が悪く杖をついているため、服薬指導の際に投薬カウンターに御本人が来ることはほとんどなく、いつも付き添いの女性(おそらく60歳代くらいの方)が服薬指導を受けていました。

 

薬の管理は御本人がされており、服薬カレンダーを使ってしっかり飲めているとのことでした。

 

調剤過誤が発生した日は4科すべてを受診しており、患者さんたちが薬局に来局したのは12時近くでした。一包化指示の薬も処方されていたため長い時間お待たせしてしまい、監査をしていた私はだいぶあせっていました。

 

やっと監査が終わり薬歴の確認もそこそこに患者さんの名前を呼ぶと、いつものように付き添いの女性が投薬カウンターにやって来ました。

 

薬を見せながら服薬指導を行ったのですが、処方内容に変更はなく、患者さんの体調も特に変わりはないとのことだったので、こみ入った話はせず、長時間お待たせしたことをお詫びしながら薬とお薬手帳を渡しました。

 

しかしこの時、薬歴やお薬手帳をもっとしっかり確認しておくべきでした。確認をしっかりしておけば、用意した目薬がいつもと違うものであることはすぐにわかったはずだからです。


調剤過誤発覚はその日の午後。患者さんからの電話で誤交付が判明

その日の午後3時頃のことです。患者さんのご家族からまず電話がありました。

 

「さっきもらった目薬が、いつもとなんだか違うとか言っているんだけど…。要領を得ないから本人の話を聞いてくれる?」

 

とのことでした。

 

そこで、患者さんにかわってもらい話を聞くと「目薬のフタは同じだけれど大きさが違う。」との訴えであることがわかりました。

 

どういうことだろう?と思い薬歴を確認した私は「あっ。」と思いました。患者さんの薬歴のレセコン入力は「ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」」となっていたのです。

 

しかし私が監査・投薬したのは「ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%「日新」」だったのです。

 

間違いに気づいた私はすぐに謝罪し正しい目薬を患者さん宅へ持って行こうとしたのですが、「まだ前にもらった目薬があるから大丈夫だよ。明日の午後にお薬を取りに行くね。」と患者さんに言われたため、薬を用意して次の日を待つことにしました。

 

次の日の午後2時過ぎに、私が誤交付してしまった目薬を持参して患者さんが来局してくれました。

 

患者さんの少ない時間であったため、私は待合で患者さんの横に座り、改めて謝罪して服薬指導を行いました。

 

ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%「日新」とヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」はフタの色がよく似ていますが、目薬瓶の大きさも形も違います。そのため患者さんが違和感を覚え、残薬と比較して薬がいつもと違うことに気がついたそうです。

 

実は、この患者さんは以前ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%「日新」を使ったことがあるのですが、目に刺激感を感じたため医師に相談し、医師の指示で防腐剤無添加のヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」をお渡しするようになったのでした。

 

その経緯は薬歴に記載されていたのですが、随分前の話だったので服薬指導時に確認ができなかったのです。もし患者さんが気づかずに使っていたら、以前と同様の副作用が生じていた可能性があります。

 

大事に至らず本当に良かった、とホッとしました。

今回の過誤はどうすれば防ぐことができたのか

 

調剤過誤防止策1.一般名処方の場合は、今までどのメーカーの薬剤を渡していたかを確認してから一連の調剤業務を行う。必要に応じてお薬手帳の薬剤名にマーカーなどで印をつける

 

今回の目薬は処方せんに「(般)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%」と記載されており、ピッキング者も監査者である私も、普段あつかいなれている「ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%「日新」」を交付すれば良いと思いこんでいました。

 

しかし、私たちの薬局には「(般)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%」に該当する薬剤が3種(先発品であるヒアレイン点眼液0.1%と今般問題となった2種)あったのです。

 

先発品希望の方は電子薬歴のポップアップ画面に「先発品希望」と入力しているので、患者さんの薬歴を呼び出したときに気がつくようになっています。

 

しかし、後発品については特に何も設定していませんでした。そのため、いつもと違う薬剤を渡してしまったことに気づかなかったのです。

 

またジェネリック医薬品の場合、メーカー名が商品名の最後に記載されるので、薬歴に入力されている薬剤名を最後までしっかり見ないと確認できない、という事情もあります。

 

今後はこのような調剤過誤を出さないよう、薬歴でしっかりメーカー名まで確認して調剤業務を行わなければならないと思っています。

 

なお今回の調剤過誤を受けて、ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」をお渡ししている患者さん(調剤過誤の被害に合われた患者さんを含め数名いました)については、電子薬歴のポップアップ画面にその旨を記載しました。

 

また、今後はヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」を処方されている患者さんについては、お薬手帳の薬剤名の「PF」の部分に、確認の意味も込めてマーカーでラインを引くことになりました。このようにしておけば、他の薬局で薬をもらう場合にも注意してもらえると考えたからです。

 

もっとも、患者さんがお薬手帳を他の薬局に持参しなければ意味がありません。特別な事情で使える薬が限定されている患者さんには、今まで以上にお薬手帳の使い方や有用性をアピールする必要もあると考えています。

 

調剤過誤防止策2.服薬指導時には、可能な限りメーカー名まで確認して薬を交付する

 

ジェネリック医薬品の交付が当たり前となった今日では、今回のようなメーカー違いの調剤過誤にも注意が必要です。

 

私たちの薬局では、原則としてジェネリック医薬品は各薬剤につき1種類しか採用していません。

 

しかし、今回のように副作用防止のために複数のメーカーを採用していることもありますし、患者さんの強い希望でやむを得ず複数のメーカーのジェネリック医薬品を用意していることもあります。

 

そこで、調剤時・監査時はもちろん、服薬指導時にも可能な限りメーカー名まで確認して薬を交付する必要があると考えます

 

とはいえ、服薬指導時にすべての薬剤のメーカー名を確認していると時間がかかりすぎますし、患者さんのストレスも薬剤師のストレスも増えてしまいます。

 

そこで、複数のメーカーを採用している薬剤のみ可能な限りメーカー名まで確認をする、という方法をとるのが良いと考えます。

 

具体的には、今回のように使用する患者さんが限られている薬剤(副作用防止目的や患者さんの強い希望で採用し、まれにしか使用されない薬剤)については電子薬歴のポップアップ画面に注意喚起の記載をし、服薬指導時に該当薬剤をメーカー名まで確認するという方法であれば、効率よく服薬指導を行うことができると思います。

 

調剤過誤防止策3.特定の患者さんにしか交付しない薬剤は「○○様専用」など札を貼って注意を喚起する。薬剤ケースに「他メーカーあり。注意!」という札をつける

 

その他、調剤室内でできる調剤過誤防止策として、複数のメーカーを採用している薬剤については注意を喚起する札を用意することにしました。

 

例えば、特定の患者さんにしか交付しない薬剤については「○○様専用」といった札を貼ることにしました。患者さんの強い希望で採用した薬剤はその患者さん専用となっているケースが多いので、このような札で誤調剤防止をしようと思います。

 

そして、それ以外の理由で複数のメーカーを採用している薬剤(今回のヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%「日新」とヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」など)については「他メーカーあり。注意!」という札を両薬剤の薬剤ケースや引き出しなどに貼り付けることにしました。

 

調剤過誤防止策4.ピッキング時にメーカー名を処方せんのコピーに記入、監査時・服薬指導時・薬歴記入時にメーカーをチェックする。

 

また今まで、私たちの薬局ではピッキング時にピッキングしたジェネリック医薬品のメーカー名を処方せんのコピーに記入するということはあまり行っていませんでした。しかし、今回の調剤過誤を受けて、可能な限りメーカー名を記入しようということになりました。

 

もちろん、メーカー名の記入がストレスになってはいけません。そこで、上記の注意喚起の札が貼り付けられている薬剤については必ずメーカー名を処方せんのコピーに記入、その他は任意で記入ということになりました。

 

そして、監査時・服薬指導時・薬歴記入時に過去の処方歴や入力内容、ピッキングした薬剤に間違いがないか確認し、問題がなければ記入されたメーカー名に◯印あるいは✓を入れたりマーカーでラインを引いたりすることになりました。

 

本来ならば、ジェネリック医薬品は各薬剤につき1種類しか採用しないのが在庫管理の点でも調剤過誤防止の点でも理想でしょう。

 

しかし、ジェネリック医薬品の普及状況を考えると、今後も複数のメーカーを採用せざるを得ない状況が発生する可能性はあります。

 

私たち薬剤師からすればジェネリック医薬品はどれも成分が同じですし、「メーカーが違うけれど(成分は)同じ薬」と患者さんに説明することすらあります。しかし、添加物が異なる可能性はありますし、見た目が異なることもよくあります。

 

特に、今回の調剤過誤の原因となった2つの目薬は防腐剤の有無という点で大きく異なり、患者さんからすればもはや同じ薬剤とは言えないでしょう。

 

薬剤師目線ではなく患者さんの立場に立ち、「メーカーの異なる薬剤は別の薬剤」という気持ちで今後もしっかり調剤業務を行いたいと考えています。

 

調剤過誤防止策5.業務にあたっては、気を引き締める。だれもが間違いなく調剤業務にあたれるように業務手順書を作成しなおす

 

これは私たちの薬局自体の問題だと思うのですが、私の勤務する薬局は従業員の異動がなく、薬局の勤務歴が5年以上の人がほとんどです。

 

そのため信頼関係が篤く、業務に関しても経験に基づいた「慣れ」があるように思います。

 

しかしよくよく考えると、最近は信頼関係が「甘え」となり、慣れが「馴れ合い」になっていたようにも感じられます。

 

そういったことが、今回のような思い込み調剤やピッキングミスにつながってしまっているのかもしれません。

 

例えば、「○○さんのピッキングだから大丈夫。」「△△さんが監査だから大丈夫。」のような甘えが、私の中には確かにあったように思います。

 

そして、一般名処方の場合は何をピッキングするか、というルールは何となく決まっているものの、薬局内で特に具体的に話し合ったことはありません。

 

業務手順書にも特に記載はありません。私たちは調剤過誤が発生するたびに業務を見直し、少しずつルールを変えているので、業務手順書もそれに応じて改訂する必要があるのでは?と考えています。

 

今のところ、薬局内の従業員が増えたり減ったりする予定はないのですが、今後はわかりません。

 

将来、新しい従業員が業務に戸惑うことがないようにするためにも、業務手順書の見直しをしなければならないと考えています。見直しを管理薬剤師に一任するのは心苦しいので、時間のあるときにみんなで手直しをしていきたいと考えています。

 

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参考資料

 

日経メディカル ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/13/1319720Q3132.html

 

この記事は実際に発生した調剤過誤事例、インシデント事例の聞き取りレポートを元にして、薬剤師個人の年齢や性別等情報を変更した上、薬剤師本人の了承の元に記事化しております。

この記事をかいた人


久米真純(くめ ますみ)薬剤師
薬剤師歴12年…病院勤務6年を経て、大手製薬会社や製薬会社卸で学術DIとして長年勤務してきました。個人的経験から、特に病院勤務での医師やコメディカルの方々との連携した業務には思い入れがあります。OTC医薬品には精通しております。旦那は外資系大手製薬会社のMRとして勤務中。

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