ヒアレインミニ点眼液0.3%が処方されていた患者さんにヒアレインミニ0.1%を渡してしまう調剤過誤が発生、ハンディターミナルにエラーが表示されなかったのでそれを盲信。しかしピッキングミスは存在した…。
■作成日 2018/2/28 ■更新日 2018/5/8
薬剤師ならば多かれ少なかれ経験したことがあるだろう調剤過誤。職業柄避けて通れない自らのミスから、医師の処方ミスまで要因は様々です。このコーナーでは、薬剤師の皆様が調剤過誤、そして調剤事故に少しでも遭遇しないよう、他の薬剤師さんが実際に経験した「調剤過誤にまつわるヒヤリ・ハット事例」を物語でご紹介しています。
私は繁華街にある面薬局に勤務している30歳代の薬剤師です。
1日の処方せん枚数は50枚から100枚程度で常勤の薬剤師は私を含めて3人いますが、午前中に処方が集中することが多いので繁忙期はけっこう大変です。
そこで、私が勤務している薬局では調剤過誤防止のためにレセコンと連動したピッキングシステムを導入しています。
導入直後は操作になかなか慣れずハンディターミナルにエラー表示が出てしまうことが多かったのですが、使いこなせるようになると非常に有用な過誤防止システムであることがわかってきました。
そして、最近ではハンディターミナルがないと過誤が生じるのではないかと不安になってしまうこともあります。
しかし今回、ハンディターミナルを上手に活かせず、またピッキングシステムを盲信してしまったために誤った薬剤を患者さんに渡してしまうという調剤過誤が発生してしまいました。
患者さんは30歳代の女性で、公費番号のある方でした。シェーグレン症候群で生じる目の乾燥に対してヒアレインミニ点眼液0.3%などが処方されている方で、私たちの薬局でお薬を渡すのは初めてでした。
患者さんが来局されたのは、薬局が比較的混んでいる平日の午前でした。
しかし処方されていたのは目薬が2種だけだったので、問診票などを書いていただいている間に薬剤のピッキングは終了していました。
ハンディターミナルにエラーは表示されず、ピッキングは問題なく行われているはずでした。
私は安心して監査を行い、投薬窓口に向かいました。
ここでハンディターミナルを盲信せずしっかり監査を行っておけば今回の過誤は防ぐことができたのですが、それに気づいたのは残念ながら2日後のことでした。
規格の間違いに気づかないまま投薬・服薬指導。患者さんも薬が間違っていると思わずそのまま帰宅、薬剤を使用してしまった…。
新規の患者さんで公費の番号もあるためレセコン入力に少し時間がかかり、待ち時間が長めになってしまいました。
そこで、私はお待たせしたことを謝罪しながらお薬の説明をしました。
問診票の内容からシェーグレン症候群であることはわかっていたので、シェーグレン症候群についての説明も行い、公費番号がレセコンに入力されていることをしっかり確認の上、患者さんにお薬を渡しました。
しかしその2日後、棚卸時にヒアレインミニ点眼液の在庫がずれていることが発覚しました。
ヒアレインミニ点眼液0.1%の在庫が168本少なく、0.3%の方が168本多かったのです。
そもそもヒアレインミニ点眼液が処方されることがめずらしく、0.3%が処方されていたのは私が担当した先日の患者さんのみでした。
そこで私は患者さんの携帯電話にすぐ連絡をしました。
患者さんは外出先とのことでしたがヒアレインミニ点眼液を携帯されており、すぐに目薬のラベルを確認してくれました。
すると「白色のラベルで青字で「ヒアレインミニ点眼液0.1%」と書いてある」との答えが返ってきました。
やはり渡したのは規格違いの0.1%の方だったのです。
私は間違った薬を渡してしまったことを謝罪してすぐに薬の交換にうかがうことを伝えました。
しかしその日はあいにく都合が悪いとのことで、翌日午前中に患者さんご本人が薬局に来局してくださるとのことでした。
約束通り、患者さんは翌日午前中に未使用のヒアレインミニ点眼液0.1%をもって来局されました。
まず薬が間違っていたことを謝罪し、正しいお薬を日数分お渡ししました。
この患者さんは以前も処方せんの発行元である病院内でヒアレインミニ点眼液0.3%をもらったことがあったそうです。
そして今回、目薬のラベルの色が違うことには気がついていたそうなのですが、病院内と薬局では薬のラベルが違うのかもしれない、と思ったそうであまり疑問をもたなかったそうです。
なお、使用日数が少なかったためか特に気になる健康被害はなかったとのことでした。
今回の過誤はどうすれば防ぐことができたのか
今回の調剤過誤では、ハンディターミナルにエラーが表示されていなかったにも関わらず誤った薬剤がピッキングされていました。
そこでピッキング者に経緯を確認したところ、とんでもないミスが発覚しました。
ピッキング者はまずヒアレインミニ点眼液0.3%が保管されている引き出しを開け、薬剤外箱のバーコードをスキャンしたそうです。
しかしこの引き出しには外箱の外観がそっくりなヒアレインミニ点眼液0.1%が入れてあったのです。
ピッキング者は外箱がそっくりであることから両薬剤が同一のものであると思い込み、使用期限の短いヒアレインミニ点眼液0.1%をピッキングしてしまったというのです。
つまり、ハンディターミナルでスキャンしたものとは別の箱から薬剤をピッキングしていたのです。
スキャンしたバーコードはヒアレインミニ点眼液0.3%のものなので、エラーが出るはずありません。
そして、ハンディターミナルでエラーが出なかったことから私の監査がおざなりになり、また比較的処方されることの多いヒアレインミニ点眼液0.1%がピッキングされていたことから「間違っていないだろう」という思い込みもあり、過誤に至ったということがわかりました。
今までピッキングされているものとスキャンされたバーコードが違うというミスはほとんど経験したことがなかったので、「まさか!」という思いでいっぱいでした。これはピッキングシステムを過信し監査をおろそかにした私のミスといえます。
ピッキングシステムは調剤過誤防止に役立つ有効な手段ですが、そのシステムを使うのは人間です。正しい使い方をしなければ過誤を誘発するし、過信してはいけないと反省しました。
そして、ピッキングシステムの適切な使い方について再度周知徹底するよう会社および管理薬剤師から指示がありました。
今回は、ハンディターミナルでスキャンしたのは正しい薬剤の外箱でした。
しかし別の箱から薬剤をピッキングしてしまったため過誤が起きてしまいました。これではピッキングシステムがあっても調剤過誤を防ぐことができません。
そこで、ピッキングはスキャンした箱・あるいは錠剤カセットから確実に行う、万が一間違えた場合にはスキャンおよびピッキングをやり直すということになりました。
今までは誤ってスキャンしてしまった場合にはその旨を監査者に口頭で伝えて、場合によってはエラーの出たハンディターミナルを強制終了していました。
しかし、それではピッキングシステムを使った意味がありません。
せっかく調剤過誤防止の有用なシステムがあるのですから、これをしっかり活かすために多少時間がかかっても確実にスキャン&ピッキングを行わなければなりません。
また、今までは原因のわからないエラーが出た場合にも、たいてい強制終了をしていました。
ピッキングミスやスキャンミス、ハンディターミナルへの数値入力ミスがないにもかかわらずエラーが出るのは、外箱のバーコードが変更になった場合のほかレセコンへの入力ミスが原因であることが多いのですが、忙しい時は原因追求する時間が惜しく、放置してしまうこともありました。
そして薬歴記入時に入力ミスを見つけることもあり、気になってはいました。
今回の調剤過誤をきっかけに、原因のわからないエラーも極力原因追求するということになりました。
外箱のバーコード変更に関しては、気がついた時に全員に周知する・そして早急にデータを変更するということになりました。
また、レセコンの入力ミスに関してはエラーの有無にかかわらず必ず処方せんと付き合わせて内容を確認する、入力ミスがあったらその場で入力を直す、時間がかかるようなら適宜患者さんに声をかける、という方向で業務を行うことになりました。
今回の過誤の原因は、私が監査をしっかり行っていなかったことにもあります。
ハンディターミナルでエラーが出なかったとしても、私が監査をしっかり行っていたら過誤は防ぐことができたはずです。
初心に戻り、しっかり監査すべきでした。
監査時には処方せんのコピーをしっかり確認し、用量用法・規格をピッキングされたものと照らし合わさなければなりません。必要に応じてチェックや丸印を入れることも必要でしょう。
これらの作業は、ピッキングシステムが導入される前は当たり前のように行っていたものです。しかしいつの間にか省略されていたのです。
「ハンディターミナルにエラーが出ないから大丈夫」という思い込みが私自身にあったのでしょう。
今後はしっかりチェックや書き込みを行っていこうと思います。
私たちの薬局では、今回の調剤過誤をきっかけに薬剤の配置を若干変えました。
今まではヒアレインミニ点眼液の0.1%と0.3%を同じ引き出しに入れていたのですが、別の引き出しに入れることにしました。
両剤は外箱の外観がとても良く似ているので、一緒に入っていたらピッキングミスが誘発されるのは当たり前です。
もちろん引き出しを別にしても思い込みでピッキングをしてしまう可能性はあります。そこで、「規格違いあり!処方せんをもう一度確認!」と注意をうながす赤いカードを引き出しに貼ることにしました。
また、ヒアレインミニに関してはいずれの規格も100本包装品と500本包装品があります。そこで、比較的処方頻度の高い0.1%の方は500本包装品で問屋から購入し、次回から0.3%の方は100本包装品で購入することにしました。
このようにすれば箱の大きさが明らかに違うので、ピッキングミスが起こりにくくなると思います。
バーコードが変わるとピッキングシステムの登録をやり直さなくてはならないので少々面倒ですが、手間を惜しんで調剤過誤を出すわけにはいきません。
ヒアレインミニ点眼液の両規格ほど外箱の似ている薬剤はあまりないと思いますが、場合によってはヒアレインミニ点眼液と同じようにわざと包装単位の異なるものを採用する必要もあると思います。
患者さんと一緒に薬を確認する時も、薬情の写真を一緒に見ながらチェックしなければいけないと思いました。
今までと同じ薬かどうか、外観も含めて患者さんと確認すればある程度調剤過誤を防ぐことはできると思います。
今回の場合、患者さんがラベルの色が違うことに気づいていたわけですから確認不足が本当に悔やまれます。
服薬指導時に患者さんの病気の話をしたり質問などに回答したりしていると、しっかり薬の確認をしないまま何となく薬袋やレジ袋に入れてしまうことが多くなりがちです。しかし、これからはそのようなことがないように気を引き締めていきたいと思います。
今回の調剤過誤を受けて、私はこの患者さんの薬歴に注意をうながす記述をしました。
私たちの薬局では電子薬歴を使っているので、この患者さんの薬歴を開いた時に立ち上がるポップアップ画面に「ヒアレインミニ点眼液の規格は0.3%です!」と表示されるようにしたのです。
このようにしておけば、万が一調剤ミスや入力ミスがあっても、投薬者が過誤を未然に防ぐことができると思われます。紙薬歴であっても、表紙に同様の記載をしておけば服薬指導前にミスを見つけることができると思います。
また薬歴記入時に、渡した薬剤の外観の特徴なども記録しておくと良いと思います。たとえば今回の場合ならば、「黄色ラベル」あるいは「白色ラベル」と記録すれば良いでしょう。
画面に色付きで記録できるならば、なお良いと思います。
通常は服薬指導前に前回分の薬歴を見るので、その時にラベルの色が前回と違うことに気がつけば過誤を未然に防ぐことができます。
また、薬歴記入時にラベルの色などを記入することで、処方せんどおりの薬を渡したかどうかの再確認ができます。
もっとも、この方法は初来局の患者さんにはあまり有効ではないかもしれません。しかし、次につなげるためにやっておくべきだと思います。
参考資料
日経メディカル ヒアレインミニ点眼液0.3%
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/13/1319720Q5038.html
日経メディカル ヒアレインミニ点眼液0.1%
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/13/1319720Q4031.html
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