漢方薬局への薬剤師転職はあり？年収、業務内容、勤務時間、メリットとデメリット

薬剤師が転職先を探す時、まず候補に挙がるのが調剤薬局や病院、ドラッグストアではないでしょうか。

しかし、実は転職先の候補はそれだけではありません。
皆さんも一度は漢方を専門に取り扱う薬局、漢方薬局を見たことがないでしょうか。
漢方専門薬局や漢方相談薬局とも呼ばれることもりますが、独特の雰囲気を醸し出す漢方薬局ですが一体どのような業務を行っているのか気になりますよね。

また、年収はどれくらいなのか、普通の調剤薬局と何が違うのか、漢方薬局についてとことん説解説していきます。

漢方薬局の薬剤師の年収はいくらくらいなのでしょうか。
漢方という専門的な分野を扱うため、年収は高そうなイメージがありますが、実は平均年収は400万円～500万円です。
薬剤師の平均年収が530万円くらいと言われているので、平均かそれよりやや低いと言えます。

漢方薬局だからといって極端に年収が高かったり、逆に低かったりということはありません。
しかし昇給があまり見込めないという特徴があるため、全体的には平均水準より低くなってしまう傾向にあります。

漢方薬局に足を運んだことがある人は多くはありません。
そのため一体どのような業務を毎日行っているのか気になりますよね。
ここでは漢方薬局で働く薬剤師の業務について紹介していきます。

１．患者さんの相談に乗る

漢方薬局へ来る人は何かしら体のことについて気になることがあるから来店されます。
患者さんがどのようなことを気にしているのか、また、治療していきたいのかについて相談に乗ることが一番のメインの仕事と言えます。
患者さんの健康状態について総合的に判断をし、適した漢方薬を選ばなければなりません。

ここでいかに丁寧に患者さんの状態をカウンセリングできるかが治療効果を上げるためにも、とても大切な工程となります。

ちなみにこのカウンセリングにかかる時間は短くて患者さん一人当たり30分～1時間ほどです。平均で2時間、長いと5時間ほどにまで及びます。
とても長い時間かかるためカウンセリングは体力勝負な面もあります。

２．漢方薬の調剤

カウンセリングによって患者さんに適した漢方薬を選んだ後は、調剤をして薬を患者さんに渡せる状態にしなければなりません。

薬局によっては必要な量をごっそりボールに入れてごちゃ混ぜにして一日分ずつに分けるという方法を取っているところもありますが、生薬の重さや粘り気などを考慮してきちんと生薬ごとに調剤をしているところもあります。

処方日数が多くなればなるほどこの作業は大変なものになります。
また、煮出すのに時間がかかるものと、数分で済むものも分けて分包する場合があります。
医療用医薬品と比べると調剤にかかる時間が割りと長くなる傾向にあります。

３．郵送業務

薬局によってはホームページ上で漢方薬のネット販売をしているところがあります。
そのようなところで働く場合は、注文が入るたびに郵送の準備も行わなければなりません。
こちらも調剤と同じように薬の種類や個数を間違えないように注意して作業を進めていかなければなりません。

この郵送作業が意外と大変だったという声もあります。

漢方薬局で働くためには漢方に関する知識が絶対に必要です。
しかし、漢方薬剤師として働くのに特別な資格は必要ありません。
そのため、薬剤師であれば誰でも漢方薬局で働くことができるのです。

しかし、漢方を専門とした薬局で働く以上は一人前の漢方薬剤師になるために日々努力していかなければなりません。
では一人前になるためには具体的には何をすれば良いのでしょうか。

漢方薬の勉強会に参加する

漢方の製薬メーカーが良く勉強会を開催しています。
ホームページなどをチェックすると日程が出てくるでしょう。
また薬局で漢方に関するセミナーを開いているところもあります。
漢方薬について学ぶ場というのは多くはないので、こういった機会を見逃さずにしっかり勉強していきます。

漢方薬・生薬認定薬剤師の資格をとる

認定薬剤師には漢方薬や生薬に関する資格もあります。
規定の単位を取得し講習などを受けることにより取得することができます。
日本薬剤師研修センターと日本生薬学会の連名で認定を受けることができ、漢方薬・生薬認定薬剤師として認定されることにより自信を持って患者さんの治療にあたることができます。

http://www.jpec.or.jp/

http://www.jsphcg.or.jp/

漢方薬局はその独特の働き方から、他の薬剤師とは違う経験を積むことができます。
しかし、独特であるが故にデメリットも存在します。
ここでは、薬剤師が漢方薬局で働くことのメリット、デメリットについてそれぞれ紹介していきます。

漢方薬局勤務のメリット

１．漢方薬の知識を専門的に学べる

漢方を専門に扱う薬局であることから、かなり専門的な漢方の知識を学ぶことができます。
煎じ薬も扱っている場合だと店舗に置いてある漢方薬の種類は何と300種類近くにもなりますので、かなりの量です。

漢方薬局に訪れる患者さんは処方箋は持っていません。
薬局にいる薬剤師に直接、悩みを相談します。
一般用医薬品とは違い漢方薬は患者さんの体質や症状に合わせて一つ一つ選ぶ必要があるため、高度で質の高いスキルが要求されます。

漢方薬の専門家として成長することができるのです。

他にも健康食品や養生の話などもする機会が増えるため、そういった知識も習得することができます。
漢方薬局の中には中国の伝統医学を実践する医師である中医師が在籍している薬局もあります。
このような薬局で働くことができれば、中医師の考え方や知識も同時に吸収することが可能です。

２．未病の治療に取り組める

未病とは病気でもなく、病院に行っても診断名は下されないけども何だか調子が悪い、言わば病気になる一歩手前の状態のことを指します。

未病を解決していくには薬剤師の力が必要だと以前から言われていますが、漢方薬局ではより薬剤師が活躍しやすい環境となっています。
未病に取り組むことは現在の日本ではとても重要視されており、医療費が年々膨れ上がっている日本に足止めをする大事な役割を果たしています。

漢方薬局は気軽に体の不調に関して相談できる環境が整っており、場合によっては漢方薬による治療も可能です。
病院とは違い、いつでも気軽に相談しに行ける漢方薬局では通常の調剤薬局以上に未病に取り組むことが可能となります。

３．自分で選んだ薬で患者さんを治療でき

薬剤師として働いている人の中にはこんなことを考えている人がいます。

「医師から出された処方箋通りに調剤しているだけでは薬剤師の存在意義がない。」

「自分で患者さんの状態を診て治療に貢献したい。」

患者さんから預かった処方箋に基づいて調剤するというのは、ごく当たり前のことですが、それに関して疑問を抱く薬剤師が実は多くいます。

医師や看護師にしかできない仕事はたくさんあっても、薬剤師にしかできない仕事というのは多くはありません。

しかし、漢方薬局では十分に薬剤師としての職能を発揮することができます。
勿論、医師ではないので診断することはできませんが、患者さんの状態を自分で確かめて、自分の知識を使って薬を選び治療を進めていくことができます。

漢方薬局勤務のデメリット

１．経験を積むまでは裏方作業が多い

漢方薬局に転職したからといって、すぐに患者さんの相談役として働けるという訳ではありません。

長く漢方薬局に通っている患者さんには既に担当の薬剤師がついています。
そのため新規の患者さんが来ないと中々相談役として対応する機会がありません。

そのため最初は薬の準備やＰＯＰ作りなどから業務を開始するパターンが多い傾向にあります。
新規の患者さんを担当していく中で少しずつ表に出て相談役として働くことができるようになっていきます。

２．医療用医薬品の知識が付かない

当たり前のことではありますが、漢方薬局では処方箋は扱っていないので医療用医薬品の知識を仕事の中で習得することはかなり難しい状況にあります。
そのため漢方薬局以外のところで働こうと思った時に中々思うように仕事先を見つけられない可能性もあります。

漢方薬についての知識は申し分ないくらいに得ることができますが、その反面、薬剤師が一般的に知っていなければならない医療用医薬品についての知識が疎かになってしまいます。

３．年収や昇給が少ない

漢方薬局の求人は年収400万円台のところがほとんどです。
新卒でも年収500万円を超える企業もある中、この年収は低い方であると言えます。

また、定期的に昇給していくシステムを持つ漢方薬局の数は多くなく、年収が上がることもあまり期待できません。
更に年収が高くないにも関わらず、募集人員がかなり少ないことから求人倍率が高くなり、希望する漢方薬局へ転職がしにくいというデメリットもあります。

漢方薬局には個人で経営しているようなところから大手のチェーンのところまで幅広くあります。
大手のチェーン薬局の場合は勤務形態や福利厚生も整っており働きやすい環境の場合が多いです。

しかし個人経営の薬局はすべての薬局がそうとは限りません。
薬局によっては漢方薬に関する勉強会を設けてくれるところもあります。
この勉強会が勤務時間内にあるのであればまだ良いのですが、仕事の後にあるところもあるのです。
勿論、残業代など出ません。

勉強できる機会を与えられるという環境はとても恵まれてはいるのですが、それが仕事の後となると体力的にも限界が来てしまいます。

漢方薬局で勉強会を行っているところは多くありますが、それが勤務時間内なのか時間外なのか、また自由参加なのか強制なのかはあらかじめ調べておいた方が良いでしょう。

また、薬局によっては新規の患者さんが少なくリピーターばかりのところもあります。
これは患者さんとの信頼関係を築けている証拠でもありますが、リピーターの患者さんには既に担当の薬剤師が付いているため新規の患者さんが来ない限りはカウンセリングを担当することが難しくなります。

中々新規の患者さんを掴めずにずっと裏で作業をしていたという薬剤師も実際にいます。
こういったことを防ぐためにもやはり、大手の漢方薬局に転職することをオススメします。

アピールすべきこと

転職活動時にはいかに漢方に対して積極的に学ぶ姿勢を持ち、それを活かしていけるかという点を重視されます。

漢方薬局という少し特殊な職場で働くことになるので、どれだけ知識を習得していけるかは、かなり重要になります。

また、カウンセリングが処方を決定する肝となるため、傾聴能力に長けていることも重要です。漢方薬局のカウンセリングはゆっくり時間をかけて行いますので一人の人と長く向き合える方、親身になって話を聞いてあげられる方が適しています。

初対面の人と何時間も話すのは思っているよりも大変です。
人によってはかなりのストレスとなります。そのため、コミュニケーションをうまく取れる方が向いているでしょう。

1. 漢方薬を学ぶ意欲
2. 話をじっくり聞くことができる能力
3. コミュニケーション能力

以上の三つの点をアピールできると良いでしょう。

志望動機

漢方薬局では薬剤師が処方を決定し調剤を行います。
これは他の職種では絶対に見られない光景です。

面接では必ずと言っていいほど「なぜ漢方薬局で働きたいのか」を聞かれます。
そのため調剤薬局でもなく病院やドラッグストアでもなく、漢方薬局でしかできないことをやりたい、ということを志望動機に組み込むようにすると良いでしょう。

「患者さんを診るところから治療過程までしっかり見ていきたい。」

「医師の処方箋通りの調剤では満足できない。」

「患者さんとより近い距離で接していきたい。」

などを参考に志望動機を考えてみましょう。
他にも転職しようとする理由もほぼ聞かれます。

できるだけ相手にマイナスのイメージを与えるような言葉は使わずに転職理由を説明する必要があります。
絶対に前の職場をけなすようなことは言ってはいけません。

漢方薬局というのは人と人との繋がりが大変重要になるのでトラブルを起こしそうな人は雇いません。
いかにこの薬局で働きたいかということを軸に説明していきます。
漢方薬局の求人は多くはないのでアピールポイントや志望動機をしっかり練って挑みましょう。

この記事を書いた人