個人経営調剤薬局への薬剤師転職を考察する

■作成日 2018/2/28 ■更新日 2018/5/9

 

調剤薬局と言えば薬剤師の就職先でもかなり人気の職種です。薬学生のうち約3割が愁傷k先に調剤薬局を選んでいます。多くのことを学べ、尚且つある程度の収入が見込めるため人気が高いのです。

 

この調剤薬局ですが大きく分けると大手のチェーン調剤薬局と個人経営の調剤薬局の二つに分けることができます。個人経営の薬局ですと今回は個人経営の調剤薬局への転職を考えている方に向けて業務内容やメリット、デメリットなどを紹介していきます。


個人経営の調剤薬局の薬剤師の年収

大手の調剤薬局と比べると個人経営の調剤薬局は知名度がありません。
そのため経営者は常に薬剤師の人員を確保することに力を注いでいます。

 

従って、大手の調剤薬局と比べると年収は比較的高い傾向にあります。
年収は400万円から600万円で求人を出している薬局が多いです。

 

大手の調剤薬局よりも年収が低いところも勿論ありますが、高いところも容易に見つけることができます。

 

田舎の人手不足が慢性化している地域ですと年収700万円以上の求人も見かけます。
しかも家賃補助なども別途支給されたり、家族手当が出たりとかなり条件の良い求人も見かけます。

 

年収600万円を超える求人の割合が東京では約30%であるのに対し高知では約60%と倍違います。転職するなら田舎の調剤薬局が狙い目、という話は聞きますが実際にその通りなのです。

 

ここで一つ求人の例を見てみましょう。

 

※下記求人の出典元>> 初心者向け「ハズレのない」薬剤師転職求人サイト3社

 

  • 年収 450万円~600万円
  • 勤務時間 9:00~18:00
  • 年間休日 127日

 

ずば抜けて年収が高いという訳ではありませんが、経験により600万円も貰えるというのはかなり嬉しいですね。
また勤務時間も一般的なサラリーマンと同じくらいの時間帯なのでプライベートの時間もしっかり確保することができます。

 

そして、この求人の最大の魅力が年間休日の日数の多さです。
ある大手チェーン調剤薬局の年間休日の日数は120日です。
それと比べるとなんと7日も多く休日を貰うことができるのです。

 

大手の調剤薬局と年収がそこまで変わらなくても休日の日数が多ければ、それだけ時給は高くなります。

 

もう一つ求人を見てみましょう。

 

  • 年収 550万円~650万円
  • 勤務時間 9:00~18:00
  • 諸手当 住宅手当、地域手当、遠隔地手当、通勤手当

 

この求人はいわゆる“田舎”の求人です。
そのためかなり高めの年収が設定されています。
ただでさえ高い給料に加えて、更に諸手当が支給されるので年収としてはかなりの額になりますね。なかなか都会では見つからない求人内容です。

 

このように個人経営の調剤薬局には休日が多い、手当が多いなどの特徴があるため自分に合った求人を探すことができます。

個人経営の調剤薬局の薬剤師の業務内容

1.調剤や服薬指導などの基本的な業務

 

調剤薬局で働く以上、避けることのできない業務が調剤や服薬指導です。
メインと言っても過言ではない業務内容です。

 

個人経営の場合、地元の方が定期的に薬局に足を運んでいることが多く、処方もDO処方がかなり多くなります
ですので、患者さんと世間話をできるような温かい関係を築くことが重要です。

 

また、DO処方だとどうしても薬の情報提供や患者さんの状態の把握がおざなりになってしまいます。
服薬指導がルーチン化されてしまうと患者さんのちょっとした変化に気づきにくくなるので注意が必要です。

 

2.在庫の管理

 

個人経営の場合だと、薬局内の薬剤の在庫の管理もしっかり行わなければなりません。
勿論、大手の調剤薬局でも在庫管理は必要ですがチェーン展開しているという性質上、ある程度は店舗間で貸し借りができるため融通が利きやすいのです。

 

薬剤は多すぎてもたりなさ過ぎてもダメなので管理が難しいのですが、店舗を運営していく上で在庫管理は欠かせません。

 

3.実習生の教育

 

これは何も個人経営の調剤薬局に限った話ではありませんが、薬学部に通う生徒の調剤実習を受け入れ、指導を行うこともあります。

 

認定実務実習指導薬剤師の資格を取得することで学生への指導ができるようになります。
次世代の薬剤師を教育するという重大な仕事といえるでしょう。

 

約2ヶ月半にも及ぶ調剤薬局実習ですが、この実習の内容や担当の指導薬剤師の対応により学生たちへ「調剤薬局はやめといたがいい」とか「あそこの薬局は行かないほうがいい」などといった印象を与えてしまいます。

 

薬局の将来のためにも、薬学生の将来のためにも受け入れた実習生に教えて上げられることは懸命に教えてあげます。

個人経営の調剤薬局勤務のメリットとデメリット

個人経営と聞くと給料が高いのに仕事は楽そうという人がたまにいますが、決してそうではありません。
個人経営の調剤薬局で働くメリット、そしてデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

 

個人経営調剤薬局のメリット

 

1.異動がない

 

これを理由に大手チェーンの調剤薬局には行かない人もいるほどです。
複数に店舗を展開している訳ではないので異動は基本的にはありません。
そのため決まった店舗で仕事を続けることができます。

 

異動がないことによって患者さんとの距離を縮めることができますし、安定した仕事をすることができます。

 

また、一軒家を建てたため引越しが不可能な人でも働きやすいというメリットがあります。
異動のたびに新しい環境に慣れるのが億劫な人、通勤の心配をしたくない人に魅力的なメリットです。

 

2.地域に貢献できる

 

個人経営の調剤薬局はより地域の方たちと関わりやすい環境にあります。
そのため、患者さんとの距離を縮めて深く関わりたい人に向いています。
薬局の経営者の知り合いの人が来局したり、地域の人がただただお話をしに来たりということもあります。

 

大手のようにマニュアル化された業務では患者さんと接する時間が長く取れないこともあり、どうしても仕事が作業になりがちです。
時にはいつも来る患者さんから自宅の畑で採れた野菜やお菓子の差し入れを頂くこともあります。表面上だけではない深い関わりを築きやすいのです。

 

3.仕事に拘束される時間が短い

 

大手とは違い個人経営の調剤薬局では残業が少ない傾向にあります。
そのためプライベートの時間も確保しやすいのです。

 

また、自宅から近い薬局を選べば通勤時間も短縮できるため仕事のために使う時間も少なく済みます。

 

営業時間も9:00~18:00というようなところがほとんどで、夜遅くまで働く必要もないので仕事とプライベートのオンとオフをしっかり区別することができます。

 

個人経営調剤薬局のデメリット

 

1.昇給しにくい

 

大手とは違い多彩なキャリアパスが用意されていることはあまりありません。
そのため昇給がしにくいというデメリットがあります。
管理薬剤師くらいにはなれるかもしれませんが、それより上にはほぼ行くことができません。

 

また、昇給のための基準も大手のようにマニュアル化されていないためスキルを上げていっても給料は変らないということが多くあります。

 

2.扱える処方箋が限られる

 

個人経営の調剤薬局のメリットとして異動がないこと挙げましたが、逆にこれがデメリットにもなります。

 

異動がないことにより扱う処方箋の内容が限定されてしまうのです。
門前にある病院の科によって処方箋の内容はある程度決まってしまいますので、様々な処方箋を扱って知識を深めたいと考えている人には不向きです。

 

3.教育制度があまり整っていない

 

E-ラーニング制度や研修制度が整っていないことが多く、何かを学びたいなら自力で勉強するしかありません。

 

教育制度の整っている薬局では資格を取るために補助金が出たり、資格試験に合格した際にお祝い金が支給されたりすることがありますが、このような制度が個人経営の調剤薬局にあることはあまりありません。

 

個人経営調剤薬局では、何かを学びたいのなら自発的に学習する必要があります。

ホワイトな調剤薬局とブラックな調剤薬局の見分け方

年収が高い求人も多く、魅力的な転職先の一つではありますが、失敗をするとトンデモないことになる可能性もあります。

 

「こんなはずじゃなかった!」とならないためのポイントをいくつか紹介していきます。

 

年収だけに騙されない

 

お給料がたくさん貰えるのは誰にとっても嬉しいことであり憧れでもあります。そのため高収入の求人に飛びついてしまいがちですが、ここに実は落とし穴があります。

 

「なぜこんなに年収が高いのか?」ということを求人を見てまず考えなければなりません。
交通の便が悪いところある、人手が不足している、メンタル中心の処方箋である、など理由は多くあります。

 

年収アップを目的で転職する人は給料にだけに目を奪われやすいですが、その背景もしっかり確認しておかなければなりません。

 

薬剤師の人数を確認する

 

年収も勤務地も希望通り、でもいざ働いてみると薬剤師の人数が少なくて休憩がろくに取れない、意外とこういうことは良く起こっています。

 

一人薬剤師の調剤薬局も中にはあります。
責任も重大ですし、一人という不安もかなり大きなものです。

 

薬剤師の人数が少ないと全体的にバタバタと忙しく駆け回ることが多く、落ち着いた仕事をするのが難しくなります。
休憩が取れない職場ははっきり言ってブラックの分類です。
転職先にブラックな調剤薬局を選ばないためにも薬剤師の人数は必ず確認しましょう。

 

準備されている機械の種類や数を確認する

 

意外と昔の型のままの機械を使っている薬局は多くあります。
しかし長年使っているとどうしてもガタがきてしまい正確な調剤ができなくなってしまいます。

 

機械が古いと良く起こるのが一包化する際に錠剤が飛んでしまう、散剤の分量にバラつきが出てしまうなどのことです。
機械の不調により無駄な時間を費やすことになってしまいます。

 

機械は毎日使うものなので働く側にもストレスがたまっていきます。
スムーズな調剤を行うためにも導入されている機械の確認はしておいた方が良いでしょう。

 

また一包化したいのに機械が他に使われていて仕事が進まないということもありますので処方箋の枚数に対する機械の数も一緒に確認しましょう。

 

薬剤師専門の転職サイトを利用する

 

ブラックとホワイトを見分けるために一番活用してほしいのが転職サイトです。
転職サイトはただ求人を乗せているだけではなく、転職希望者のサポートをとことんしてくれます。

 

登録すると大抵のサイトは電話をかけてきます。
希望の年収はいくらか、自宅から何分で通えるところが良いか、いつから働けるかなどかなり詳しく希望を聞かれますし、その希望に合致する求人が見つかるとメールや電話で教えてくれます。

 

また、転職を考えている薬局の雰囲気だったり評判、残業など実際に働いていた人の声などの情報も知っている限り提供してくれます。
職場の雰囲気や残業の頻度などは実際にその薬局で働かないと分からない情報です。
しかし、転職サイトをうまく使うことによってそれらの情報をあらかじめ入手することができるのです。

 

>> 初心者向け「ハズレのない」薬剤師転職求人サイト3社

個人経営調剤薬局への転職面接時でアピールしたい内容

 

個人経営の調剤薬局となると、面接はかしこまった場所ではなく薬局の片隅や空き部屋で行われることもあります。
場の雰囲気に流されてリラックスしすぎないように注意しなければなりません。

 

個人経営ということもあり、地域に根ざした調剤薬局が多くあります。
そのため薬局側はコミュニケーションをしっかり取れる薬剤師を欲しがる傾向にあります。

 

もともと薬剤師はコミュニケーション能力が高い人があまりいないと言われている職種ですので、この能力があるということは十分にアピールして良い内容となります。

 

コミュニケーションをうまく取れることで患者さんとの距離も縮まりますし、健康を管理する上での必要な情報も状況に合わせて収集することができます。

 

また周りのスタッフと円滑にコミュニケーションを取れることで仕事も捗りますし、職場の雰囲気を良くすることにも繋がります。

 

突出した能力は必要なく「患者さんとお話するのが好き。」「喋ることが好き。」程度のもので問題ありません。

 

また、前職で学んだこと、これから学びたいこともぜひアピールしましょう。
薬剤師は一生学び続ける職業とも言われており、日々新しい情報を吸収していかなければなりません。
学ぶ姿勢というのも重要視される項目です。

 

志望動機に関してですが、面接官にいかに負のイメージを与えないように伝えられるかが鍵となります。
おそらく面接の際に転職の理由をだいたい聞かれるとは思うのですが馬鹿正直に「人間関係が悪くて。」とか「給料に不満があって。」のようには言ってはいけません。

 

あまりマイナスのことばかりを言ってしまうと面接官に「この人に何か問題があるのでは。」と思われてしまいます。

 

薬剤師としてしっかり働きたいということ、これからこういうことにチャレンジしたいということをアピールできる回答ができるとOKです。
他に個人経営の調剤薬局の場合、より地域に密着した仕事となるため地域貢献したいことなども伝えられると良いでしょう。

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)
某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

【2018最新版】正社員登録高格付け企業 Best3

個人経営調剤薬局への薬剤師転職はあり?年収、業務内容、勤務時間、メリットとデメリット

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