調剤薬局に転職する薬剤師が、面対応薬局よりも門前薬局を選ぶ理由は?
■作成日 2018/3/4 ■更新日 2018/5/9
薬剤師の転職先として常に人気を誇る調剤薬局。病院ほど体力的にきつくなく、ドラッグストアよりも一般用医薬品に触れられるというのが人気の絶えない大きな要因です。
しかし、一概に“調剤薬局”とひとくくりにはできないのをご存知ですか?調剤薬局は大きく門前薬局と面対応薬局とに分けられるのです。
ではこの2つの違いは具体的には何なのでしょうか。転職先として人気なのはどっち?気になる業務内容やメリット、デメリットなど詳しく解説していきます。
同じ調剤薬局でも門前と面対応では業務が違う
1.門前薬局と面対応薬局の違い
門前薬局という単語は薬剤師であれば誰でも聞いたことがあるでしょう。しかし面対応薬局はどうですか?おそらく初めて聞くという方もいるのではないでしょうか。
簡単にこの2つの違いについて説明します。
門前薬局とは
病院やクリニックの前、もしくは近くにある薬局のことを指します。近くの医療機関の処方せんをメインに取り扱います。国内にある6万件近い調剤薬局のうち約7割がこの門前薬局が占めています。
主に1つの医療機関の処方せんを集中して受け取ることから“点対応薬局”と呼ばれることもあります。
面対応薬局とは
門前薬局の間逆と考えて頂けたらOKです。1つの医療機関に縛られることなくあらゆるところの処方せんの受付をすることを目的とした調剤薬局です。多くの面対応薬局はドラッグストアが調剤併設店として営業している薬局です。
そのため街中や駅中にあることが多いのが特徴です。利便性の高い場所にあるため、地域に根ざした活動ができます。首都圏では特にこの面対応薬局が多く見られます。
門前薬局と面対応薬局の業務の違い
どちらも基本的な業務は同じなのですが、対応している医療機関の数がそれぞれ違うため細かいところで業務に違いが出てきます。
門前薬局の業務内容
処方せん受付、調剤、監査、服薬指導などの基本的な業務がメインとなります。仕事のほとんどが医療用医薬品の対応です。
決まった医療機関からの処方せんがほとんどなので病院の診察時間に合わせて来局される患者さんの数が増減します。来局数にピークがあるのが特徴です。
面対応薬局の業務内容
調剤や服薬指導などの基本的な業務は門前薬局と変わりません。ただし、メインで処方せんを受ける医療機関が特に決まっていないので、一時的に来局数が増すピークが発生しにくいのが特徴です。
多くの医療機関からの処方せんを受け付けるため薬の在庫の調節がしにくく、患者さんの薬をすぐに用意できないことも珍しくありません。急ぎの場合は近隣の薬局に薬を借りに行くこともしばしばあります。
調剤併設のドラッグストアの場合、店舗によっては薬剤師以外の従業員と同じようにレジ業務をしなければいけない可能性もあります。また一類医薬品や要指導医薬品だけを買いに来られる方も多いので、服薬指導というよりは接客をする時間も多くなります。
門前薬局で働くメリットとデメリット
門前薬局で働くメリットやデメリットとは何でしょうか。
働く上でそれぞれの特徴はとても重要になるのでぜひチェックしておきたい項目です。
1.門前薬局勤務のメリット
在庫の管理がしやすい
門前薬局の場合、ほとんどが決まった病院からの処方せんです。ドクターが変わらない限り処方せんの内容はある程度パターン化されます。そのため、抱えておくべき医薬品の種類や量を判断しやすいのです。
ドクターの処方パターンに合わせて在庫しておけば良いので過剰在庫やデットストックも防げますし、在庫不足によって患者さんに薬を渡すまでに待たせてしまこともありません。
特定の科目に詳しくなる
扱う処方せんは決まったものばかりです。そのため、門前にある病院の科目にはかなり詳しくなることができます。
転職する際も今までに何の科目をメインに調剤してきたかというのは強いアピールポイントともなります。「この科目を〇〇年調剤していました!」と言うだけで科目に対する知識を持っていますという説得力も増します。
営業時間が早く終わることが多い
門前薬局の場合、近くの病院の営業時間に合わせて開局時間を決めている場合がほとんどです。病院はそこまで夜遅くまで開いていないので、薬局を閉める時間もその分早くなります。ほとんどの門前薬局が9:00から19:00前後で営業しているのではないでしょうか。
門前の病院でその日最後に来られた患者さんが病院を出たときに薬局に「最後の患者さんが向かわれています。」と病院側が連絡をくれることもあり、閉店間際に思わぬ来局で慌てることも少ないです。
2.門前薬局勤務のデメリット
営業日が病院によって左右されやすい
ゴールデンウィークや年末年始などは大抵の場合、病院は閉めています。閉めている間は薬局にも患者さんは来ません。そのため、病院の営業スケジュールに合わせて薬局も営業日を定めることになります。
そうすると、例えば5月なら初旬は連休のためほとんど仕事に行くことはなく、後半は連勤ばかりでしんどい思いをする、といったことになってしまいます。
大きな病院の門前は多忙を極める
規模の大きな病院はそれだけ患者さんの数も多くなります。そんな病院の門前薬局は目が回るくらい忙しい日々が続きます。処方せんの受付から薬の受け渡しまで60分以上待たせてしまうような薬局も実際に存在します。休む暇もないくらいの忙しさです。
そのため、患者さんへの服薬指導もあまり時間を割くことができません。必要最低限の情報提供で終わってしまい、あれこれと会話をする余裕はありません。患者さんに寄り添った服薬指導がどうしても難しくなってしまうのです。
応需できる科目が固定化される
先ほどはメリットのところで「特定の科目に詳しくなる」とお伝えしましたが、これは逆にデメリットともなり得るのです。
整形外科や眼科などの門前で働いたことがある人は思い当たる節があるでしょう。毎日毎日、湿布や目薬の調剤。もっと他の科目の調剤もやりたいと思うはずです。
あまりにもパターン化された処方せんは薬剤師に飽きをもたらしてしまいます。そして習得できる知識にかなり偏りができてしまいます。
面対応薬局で働くメリットとデメリットと
続いて面対応薬局で働くメリットとデメリットをまとめておきます。
1.面対応薬局勤務のメリット
来局患者数にピークが発生しない
さまざまな病院から患者さんが集まってくるため、極端に患者さんの数が多くなるようなピークはほとんどありません。ピークがないのでどの時間帯も安定した業務を行うことができます。
バタバタと忙しくなる繁忙時間が少ないというのは、かなりのメリットとなります。いつの時間に来られた患者さんにもしっかりとした服薬指導を行えます。
かかりつけ薬局として機能しやすい
近頃よく聞く“かかりつけ薬局”ですが、実は門前薬局よりも面対応薬局の方がかかりつけ薬局として機能しやすいのです。
門前薬局に来る患者さんは門前の病院にかかったから、たまたまその薬局に来ただけです。しかし、面対応薬局に来られる患者さんは「家から近いから」「良く買い物にくる場所にあるから」と何かしらの理由を持って来られる方が多いのです。
そうすると1度来た患者さんがまたいつか来局する可能性が非常に高くなるわけです。面対応薬局はどの病院の処方せんも同じ薬局で、と必然的になりやすいのです。
幅広い知識を習得できる
門前薬局のように決まった病院が近くにあるわけではありません。そのため本当にさまざまな科目の処方せんを取り扱うことになります。
広く浅くという言葉がぴったりかもしれません。1つの科目に集中することなくあらゆる科目を取り扱えるので知識に偏りができにくいのです。
2.面対応薬局勤務のデメリット
在庫不足になりやすい
いつどのタイミングでどのような処方せんがやってくるか分かりません。するとどうしても薬の在庫調整が難しくなっていまいます。この在庫不足、けっこう頻発するんです。「〇日後に入荷するのでまた来て頂けますか?」と患者さんに断りを入れるシーンも多く見られます。
時には患者さんの都合が合わずに薬を郵送したり、家まで直接持って行ったりすることもあります。
帰宅時間が遅くなりがち
門前の病院に合わせて営業時間を決めている門前薬局とは違い、面対応薬局では薬局自らが営業時間を定めていることが多いです。しかも面対応薬局にはドラッグストアに併設されていることが多いので、売場の営業時間い合わせて夜遅くまで薬局を開けていることがほとんどです。
門前の場合は19時頃には薬局を閉められるのに対し、面対応薬局では時に夜の24時まで営業というようなところもあります。
土日祝日も営業している
一般的な調剤薬局は土日や祝日はほとんど休みですよね。病院側が土日祝日が休みの場合が多いからです。門前薬局であれば病院の営業日に合わせて開局するので必然的に土日祝日は休みになりやすいです。
しかし面対応薬局ではそうはいきません。他の調剤薬局が閉めているような日でもいつも通り営業していることが多くあります。来局数は少ないでしょうが土日祝日に休みが取りにくいのはあまり嬉しいことではありません。
門前薬局と面対応薬局はどちらが転職人気が高い?
ここまで門前薬局と面対応薬局の違いについて説明してきました。
で、転職希望の薬剤師には結局はどちらが人気なの?と疑問に思うかと思います。
結論から言いますと門前薬局の方が圧倒的に人気です。
それにはいくつかの理由があります。
1.門前薬局の方が働きやすい
営業時間が夜遅くまでやっていないこと、決まった科目の処方せんを受け付けしやすいことなどから、働きやすさは門前薬局の方が高いのです。薬剤師には女性が多いというのもあり、帰りが夜遅くなる面対応薬局はあまり好まれません。
また、さまざまな科目の処方せんを調剤すると、それこそ知識は広く付くものの、深い知識は習得できません。それに経験の浅い薬剤師だとどの科目が来るか分からない状況というのは怖いものでもあります。
「詳しく知らない薬が来たらどうしよう。」
「初めてみる吸入器だけど、うまく説明できるかな。」
など、多くの不安が生じてしまいます。
いつも決まった処方せんが来る門前薬局の方が安心して働けるのです。
転職を考えている人の場合、前の職場では皮膚科がメインだったから次は内科にチャレンジしようかな、のように転職先を決めることもあります。そうなるとやはり門前薬局のほうが転職先として選びやすくなりますよね。
2.調剤業務以外の仕事が多い
面対応薬局の場合、時にレジ業務などもしなければなりません。薬剤師なのに何でこんなことしなきゃいけないの?と思う人も中にはいるでしょう。
また、万が一急ぎの薬の在庫がなかった場合、近隣の薬局へすぐに取りに行かなければなりません。夏の暑い日ざしの中、走って取りに行くこともあります。薬がすぐに用意できないことについて患者さんに謝罪することも必要です。
患者さんの中には薬の用意がないことに対してお怒りになる方もいます。しょっちゅう患者さんに頭を下げるのも気持ちの良いことではありません。
主にこれらの理由から面対応薬局ではなく門前薬局を選ぶ人が多いのです。確かに処方せんの内容に統一性がないのは経験の浅い薬剤師にはドキドキものですよね。できれば科目を絞って調剤したいものです。
転職を成功させるためのポイント
転職市場で門前薬局が人気なのはご理解頂けたかと思います。では門前薬局への転職を成功させるためには何かポイントがあるのでしょうか。
個人経営の調剤薬局に転職した場合、辞めない限りはずっと同じ薬局で働くことになります。そうなると、もっと他の科目にチャレンジしてみたいと思ったときに再び転職するしかなくなってしまいます。
しかし、チェーンの調剤薬局であれば他の科目をやりたいという意思を伝えれば、希望の門前薬局へ異動させてもらうことも可能です。学びたいことが変わったとしても、できるだけ転職回数は少なく留めておきたいですよね。
そういうときにチェーン薬局の方が立ち回りが利きやすいのです。
仕事の忙しさは門前の病院だけでなく、薬局の環境によっても左右されます。一日にどれくらいの処方せんを受け付けいるのか、その枚数に見合うだけの薬剤師の頭数が確保されているのか事前にしっかり確認しましょう。
思ったより忙しくて大変、なんてことは避けたいものです。
転職を成功させるためには最低限、上記の2つのことは確認しましょう。ちょっとした下調べ1つで転職後の働きやすさというのは大きく変わります。
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