製薬会社(開発職)への薬剤師転職を考察する
■作成日 2018/2/28 ■更新日 2018/5/9
「製薬会社で働きたい」と考えている薬剤師の方はどれくらいいるでしょうか。
ほとんどの薬剤師が病院か調剤薬局で働いている現在、製薬会社を選ぶ薬剤師は決して多くはありません。
しかし、その専門性の高さや将来性、給料の高さなどから製薬会社に憧れを持つ人は大勢います。
製薬会社は主に「研究」、「開発」、「MR」の三つの分野に分けて人員を募集していますが、今回はこのうち「開発」に的を絞って業務内容や転職時のポイントなどを紹介していきましょう。
製薬会社開発職に勤務する薬剤師の年収
まず開発職とは一体何をするのかと言いますと、臨床試験となります。
つまり治験に関する業務がメインとなります。新薬を開発する上で欠かせない試験です。
研究、開発、MRと仕事内容は違うものの基本給はどこの製薬会社もほとんど同じですが、そこに能力給などが加算されるため少しずつ年収に差が出てきます。
一般に製薬企業の年収は400万円から800万円ほどですが、年齢別の平均年収はどれくらいなのでしょうか。
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製薬会社勤務(開発)20代:450万円
この年代の製薬会社の年収は大手、中小問わずおよそ450万円ほどです。
一般的な企業よりも少し高いくらいです。
企業によっては手当やインセンティブが発生するため年収500万円を超えることもあります。
製薬会社勤務(開発)30代:650万円
30代ともなると、入社して10年近くが経過していることになります。
これくらいの年になると役職が付く方も多く、年収はどんどん上がっていきます。
大手の製薬会社になると諸手当も含めて年収1000万円を超えることも珍しくありません。
しかし中小企業ですと年収500万円程度に落ち着いてしまうところもあります。
製薬会社で働く場合、出だしの給料はさほど差がありませんが、30代になる頃から大きく年収に開きが出てきます。
製薬会社勤務(開発)40代:900万円
40代になると課長や部長などの大事な役職を任されます。
ここまで来ると年収1000万円を超えるのは当たり前となるでしょう。
外資系だと2000万円にまで及びます。
製薬会社の年収は実力にも左右されるので勿論ですが、これ以上もこれ以下もありえます。
ちなみに、諸手当がつくことにより開発職の方がやや年収が高い傾向がありますが、研究職も開発職も年収はほとんど同じです。
他に治験に関わる職業にCRC(治験コーディネーター)がありますが、こちらの年収はどのくらいなのでしょうか。参考までに見てみますと…
- 20代:350万円~380万円
- 30代:380万円~410万円
- 40代:400万円~500万円
どうでしょう、開発職とは比べ物にならないほど低い年収です。
CRCの年収は地域によって多少の差があり、都心部ほど高い年収になる傾向がありますが、都心部とそれ以外の地域で約10万円の差が出ます。
またCRCになるには特に医療系の資格は必要ではありませんが、資格が有るのと無いのとでは20万円~30万円ほど差が出ます。
いずれにしても開発職の年収には及びません。
ただし、役職が付くことによって年収1000万円を超えることもありますので頑張り次第では調剤薬局や病院に勤めている薬剤師よりも高い年収を貰うことが可能です。
製薬会社開発職の具体的業務内容
製薬会社の開発職は研究部門で開発された新薬の安全性の確認や臨床試験を行うことが主な業務内容です。
時々、製薬会社の仕事を「研究開発」と、ひとくくりにする人がいますがそれは間違いです。研究職と開発職はそもそも請け負う仕事内容がまったく違うということを理解しておかなければなりません。
開発職は主に治験に関わる仕事を行います。
治験のデータを収集し、その結果を厚生労働省に申請するために書類にまとめます。
新薬の開発に大きく関わる職種のため高い専門性・知識を必要とされます。
開発職には様々な部署があり、その部署により仕事内容が異なります。
モニタリング
まず臨床試験をどのような方向性で行うかの計画案を作成します。
案が出来たら次は医療機関に行き、治験の依頼をします。
ここで同意が得られたら治験をスタートさせることができるので、臨床試験を行う医療機関を訪問して試験のデータを収集します。
試験内容の説明から有害事象の報告まで業務は多岐にわたっています。
プランニング
プランニングでは臨床試験の企画を行います。
モニタリングを経験した人が配属されることの多い部門です。
データマネジメント
モニタリング部門が医療機関から回収した臨床試験のデータを集めて統計的に解析を行います。どれくらいの人に効果が出たのか、副作用が出たのかなどを解析していきます。
治験薬の科学的根拠を示すために、この解析はとても重要ですので、解析結果が臨床試験の立案に大きく関わるため正確に解析を行わなければなりません。
メディカルライティング
集めたデータを定められた形式に沿って書き出します。
書き出す際は必ず規定のルールに則って書かなければなりませんし、英語で記載することもあるため、英語のスキルも求められます。
他にも臨床試験の品質管理や安全性に関わる業務もあります。
このように、開発職は研究職とは違い実験は行いません。
治験を行う医療機関を訪ねたり、データをまとめて書類作成をしたりすることがメインの仕事となっており、意外とデスクワークが中心の業務内容です。
開発職で働くメリットとデメリット
製薬会社と言えば誰もが憧れる高収入で専門性の高い職業ですが働く上でのメリットやデメリットは勿論あります。
開発職勤務のメリット
1.年収がずば抜けて高い
薬剤師の平均年収はおよそ500万円前後です。
管理薬剤師などになったとしても600万円ほどにまでしか上がりません。
そんな中、製薬会社は1000万円プレーヤーも少なくない、とても年収の高い職種です。
普通に薬剤師として働くだけでは年収1000万円を超えることは基本的にあり得ないことなので、とにかく高い年収を目指す人には垂涎の的であると言えます。
2.福利厚生がしっかりしている
製薬会社のほとんどは大手の企業です。
そのため福利厚生が充実していることもメリットの一つです。
ほとんどの企業で家賃補助があるのですが、これがとても凄いのです。
企業によって違いはありますが、「全額負担」「上限12万円まで支給」だとか「自己負担1万円のみ」というところが多くあります。
ここまでの手厚い補助は他の職種ではなかなかないですね。
また、育休や産休などの制度も充実しているため女性でも働きやすい環境が整っています。
3.土日祝日に休みが取れる
基本的に医療機関は土日祝日が休みのところが多いです。
その関係で開発職の場合、土日祝日は休みであることがほとんどです。
製薬会社、特にMRを目指す人は就職先の第二候補としてドラッグストアを選ぶ人がかなり多いですが、ドラッグストアのシフトは不定休のため身体に負担の大きい職種です。
一般的なサラリーマンと同じように土日祝日に休みが取れるということはかなり魅力的です。
知り合いとも休みを合わせやすいため、プライベートを充実させたい他人には働きやすい環境です。
4.仕事にやりがいがある
専門性の高い職種であるため、仕事の内容も責任の大きなものばかりです。
しかし、病気で苦しんでいる人、治療薬がなくて困っている人を助けることのできる素晴らしい職種です。
製薬会社で働いている人は「患者さんのために役に立ちたい」と大きな志を持って働いている人が多くいます。
開発職勤務のデメリット
1.就職や転職の難易度が高い
薬剤師の就職は一般的に売り手市場だと言われています。
実際に調剤薬局やドラッグストアであれば、受ければだいたい採用してもらうことができます。
しかし、製薬会社はそんな話は一切関係ありません。
とても人気の高い職種のため倍率は100倍はくだらないと言われていますし、人気の大手製薬会社では500倍近くにも及びます。
製薬会社で働きたい、と思うすべての人が希望通りに働けるわけではないのです。
また開発職で働くためには修士課程以上は必須となります。
これも就職や転職を難化させる原因の一つとなっています。
2.基本的に多忙
開発職の仕事は責任が大きい分、日々忙しさに追われがちです。
頑張った分の成果がそのまま報酬に繋がるため、残業をして仕事を終わらせることもあります。残業時間は人にもよりますが月に20時間~30時間の人が多い傾向にあります。
3.転勤がある
開発職は転勤がとても多い職務です。
県を跨ぐことも普通にありますし、特に大手の製薬会社ほど転勤の頻度は高い傾向にあります。家庭がある方は家族と離れ離れになってしまうことも考えられます。
あまりにも転勤があるため、マイホームをなかなか建てられないと嘆く方も中にはいます。
ホワイトな開発職とブラックな開発職の見分け方
年収も高く、やりがいも大きい開発職の仕事ですが、ブラックな職場というものは存在するのでしょうか。
基本的には製薬会社はホワイト企業であると言われています。
しかし、いざ入社してみると思っていたより働き心地の悪いブラックな職場だったというようなことがあります。
では、どうすればブラックな会社を見分けることができるのでしょうか。
1.就職四季報をチェックする
就職四季報というのは就職先を探すのにはとても有効なものです。
3年後の離職率、35歳時の賃金、月の平均残業時間などが記載されています。
実際に働いてみないと分からないような情報が就職四季報を読むことですぐに分かってしまうという優れものです。
入社して三年以内に辞める人が多い会社はブラック企業であると言われているので3年後の離職率はぜひチェックしておきたい項目です。
就職四季報は書店で簡単に購入することができます。
2.同族経営ではないかをチェックする
同族経営とはある特定の親族などが会社のトップを占めている会社のことです。
このような会社はその一族でないと出世ができません。
どんなに頑張っても会社のトップには行けないのです。
製薬会社に行く人は出世にもこだわっている人が多いので上に上り詰められないのは辛いことです。
また同族経営の場合、雇われの社長と違い株価を上げることにそこまで熱心になっていない場合もあります。
今後の会社の成長の有無を調べるためにも同族経営か否かを知っておくと良いでしょう。
3.終身で働きたい人は外資系を避ける
外資系の企業はPIPという退職勧奨を行い従業員を退職に追い込む制度のことです。
そもそも外資系の企業は同じ会社で一生働くという考え自体がありません。
そのため急に解雇されることがあるのです。
せっかく倍率の高い製薬会社に就職をすることができたのに、いきなり解雇されるなんて、長く安定した職場で働きたい薬剤師にとってはたまったものではないと思います。
外資系でもPIPを行っていない企業もあるので、解雇状況について下調べをしておくことが必要です。
開発職への転職面接でアピールしたいこと
倍率の高い製薬会社に転職するにはどのようなアピールをしたが良いのでしょうか。
高い倍率を背景に、相当しっかりとした面接準備をしておかないとまず内定は貰えない職種であることは間違いありません。
「なぜ?」を突き詰められても答えられる志望動機を作る
面接の時に「なぜ?」と聞かれて答えに困ってしまうような志望動機はインパクトに欠けます。例えば「人の命を助ける仕事がしたい」という志望動機があったとします。
「なぜ人の命を助けたいのですか?」と聞かれた時に黙ってしまうようではダメなのです。
応えられないくらいの意志しかないのだと思われてしまうのです。
どんなに深く「なぜ?」と聞かれても応えられる志望動機を用意しなければなりません。
メディカルライティングに対応できる実務的な英語力
開発職は英語のスキルも求められます。
英語は外資系の企業だけでなく、国内の製薬企業でも求められます。
TOEICで800点以上は必要であると言われています。
どれだけ英語力がありそれを使いこなせるか、メディカルライティングに対応できる実務的な英語力は備えているかという点がアピールポイントとなります。
企業によっては英語のみでの面接をするところもあります。
今まで努力してきたことを適切にコミュニケートできるか
前職ではどのようなことをしていたのか、何に力を入れていたのかをアピールしましょう。
何か論文を書いたものやその他の実績があれば、それを面接官に把握してもらいやすいように伝えます。この時の伝え方も大事です。
大学の研究でこんな成果を出した、前職の調剤薬局では○○に力を入れて実績を出した、など「何かしらの実績や過去の努力の成果」を的確にコミュニケートできる言語表現力がある良いでしょう。
製薬会社の仕事内容は根気のいるものが多いので、何かの目的のために長くやり続ける能力を企業は欲しています。
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