病院への薬剤師転職を考察する
■作成日 2018/3/3 ■更新日 2018/5/9
より専門的な知識を身に付けて、医療の現場で活躍したい、そんな思いを叶えるのに最も適している薬剤師の職場が病院です。
しかし、残念ながら病院薬剤師の求人の多くは新卒者が対象のものばかりです。
そのため、他の職種に比べて病院への転職はかなり難しいものとなっているのが現実です。
しかし、病院への薬剤師転職がまったく不可能なわけではありません。
ここでは病院薬剤師のお給料事情や仕事内容、面接の時のコツなどをお伝えしていきます。
病院勤務薬剤師の年収
私たちは普段、病院とひとくくりに呼んでいますが実は大きく分けて国立病院、公立病院、民間病院の三種類に分けられるのです。
どちらに勤めるかによって収入は大きく変ってきます。
病院種類 |
昇給規定 |
平均年収 |
---|---|---|
国立病院薬剤師 | 国家公務員に準ずる(定期昇給あり) | 300万円~600万円前後 |
公立病院薬剤師 | 地方公務員に準ずる(定期昇給あり) | 300万円~500万円前後 |
民間病院薬剤師 | 病院による(定期昇給あり・なし双方) | 300万円~500万円前後 |
国立病院薬剤師の年収
一般に年収がやや高い傾向にあるのは国立病院の方です。
国立大学病院で働く薬剤師は国家公務員と同じ扱いとなるため国によって初任給が一律で20万8千円と設定されています。
年収にすると300万円前後です。
そのため、他の職種と比べるとスタート時の年収はかなり低めになっています。
しかし、初任給は低いものの、国家公務員の規定に則って定期的に昇給していくシステムが整っています(民間企業ではありえない年功序列ですね)。
昇給額は年間6~7千円程度です。
勤務年数が長ければ長いほど年収は高くなります。
国立病院の薬剤師の年収は平均すると600万円以上あると言われているので長い目で見れば高い収入を得ることも可能な職種です。
公立病院薬剤師の年収
公立病院とは都道府県や市区町村が運営している病院のことです。
○○県立病院や○○市立病院というのがそれに該当します。
国立病院とは違い、地方公務員の規定に従うことになります。
そのため各都道府県や市区町村によって給料に大きな差があります。
年収は国家公務員よりは低くなりますが、安定した職業という点では変わりありません。
こちらも初任給は20万円前後のところが多く、年収も300万円ほどです。
もちろん公務員なので定期的な昇給があります。
全体的な平均年収は550万円ほどとなっています。
民間病院薬剤師の年収
民間病院とはその名の通り、民間の法人や団体が運営している病院のことです。
医療法人や社会福祉法人などが主な運営先となっています。
民間病院は公務員の扱いではないため、病院の運営先の規定により給料が決まります。
そのため、各病院ごとに年収はかなり異なります。
初任給は20万円~25万円、年収は300万円~500万円のところが多い傾向にあります。
国立病院薬剤師や公立病院薬剤師よりもやや低めの設定となっています。
病院薬剤師の業務内容、薬局薬剤師との違い
病院薬剤師の業務内容、薬局薬剤師との違い
薬局薬剤師も病院薬剤師もざっくりと言えば調剤や服薬指導がメインの仕事です。
しかし、病院薬剤師はその他にも様々な業務をこなしていく必要があります。
それらの仕事はより専門的で技術の必要な業務となっています。
業務内容 | 病院薬剤師 | 薬局薬剤師 |
---|---|---|
調剤、服薬指導 | カルテを元に調剤 | 処方箋から病体を推測 |
注射剤の調製 | 実施する | 注射剤の調製そのものがない |
入院患者持参薬の確認 | 刻印などから判断 | お薬手帳で判断 |
医療情報 | DI担当薬剤師に聞く | 外部に問い合わせる |
チーム医療 | 薬剤師も参加 | 不参加 |
病棟業務 | より患者に寄り添う仕事 | 調剤までが仕事 |
病院薬剤師の業務1.調剤、服薬指導
薬局でも調剤や服薬指導は当たり前のようにしていますが、病院薬剤師の場合はそのやり方に違いがあります。
薬局の場合は患者さんが持ってきた処方箋から病体を“推測”して調剤を行わなければなりません。しかし、病院にはカルテというものが存在しています。
血液検査などの各種検査値、診断名、治療経過などをすべて見ることができます。
そのため、推測による服薬指導ではなく、患者さんにきちんと合わせた服薬指導を行うことができます。
病院薬剤師の業務2.注射剤の調製
よっぽど大きな調剤薬局でない限り、クリーンベンチや安全キャビネットは置いていないので注射剤の調製をすることはありません。
しかし、病院ではそのような業務もしっかりと行っていかなければなりません。
陰圧や陽圧を気にしながら、バイアル内の薬剤による暴露をしないように慎重に作業をします。
注射剤は直接、血管内に投与するという性質上、調剤ミスはあってはなりません。
より確実な調剤技術が要求されます。
病院薬剤師の業務3.入院患者の持参薬の確認
新しく入院した患者さんが来ると、調剤室に良くるのが持参薬の確認依頼です。
お薬手帳などを持参されていればすぐに何の薬かわかりますが、ほとんどの方が薬だけを持って来られます。
病院で別に処方される薬との相互作用や重複防止のために持参薬が何の薬であるかを判定しなければなりません。
判定用のソフトがあるのでそれを使用して、薬の外見や刻印などから薬の名前を判定します。
調剤薬局であればお薬手帳などから判断するしかありませんが、病院であれば刻印などから判定することが可能です。
病院薬剤師の業務4.医薬品情報の提供
大きな病院には大抵、DI担当の薬剤師が在籍しています。
調剤などには関わらず医薬品情報の収集や提供を主な業務としています。
DI担当薬剤師は医薬品を安全に効果的に使うためには欠かせない存在です。
薬剤師だけでなく医師や看護師、その他の医療従事者にも必要に応じて情報を提供します。
薬局にはDI担当薬剤師がいないため、提携しているDI専門業務を行っている所に電話で聞くしかありません。
しかし病院であれば何かあった時にすぐに直接聞くことができます。
病院薬剤師の業務5.医療チームの一員としての業務
薬局薬剤師もチーム医療に参加はできますが、病院薬剤師ほど深く関わることはできません。
病院内にはNSTや院内感染予防チーム、褥瘡対策チームなど、様々なチームが存在しています。
チーム内では医師や看護師を始め、管理栄養士や理学療法士、言語聴覚士などの多岐に亘る医療従事者が活躍しています。
他の医療従事者たちが患者さんに対してどのように対応しているのか、どのような考えを持ちながら治療にあたっているのかを間近で触れることができます。
病院薬剤師の業務6.病棟業務
薬局薬剤師の場合、薬を調剤して患者さんに渡したらそれでお終いです。
しかし、病院薬剤師の場合は薬を渡した後の患者さんの経過を直接目で見て確認することができます。
病棟を回って患者さんの様子を見に行くことができるので、より患者さんに寄り添った医療を提供することが可能です。
また、病棟を回るときに患者さんの状態を見ながら直に薬の提案をすることもできます。
病院勤務薬剤師のメリット
病院勤務の薬剤師にとって、何よりも大きなメリットは薬剤師として働く上でのやりがいを感じることができるということです。
ただ薬を調剤して終わりではなく、検査値などを確認しながら薬で病態がきちんとコントロールされているかなどを直接目で見て確認することができます。
より深く患者さんと関わることができるのです。
それにより病態知識も得ることができます。
注射剤の調製を通して配合変化についても学べます。
また、他の医療従事者の方との連携がとても大切になってくるので、薬の知識以外にも様々なことを吸収することができます。
私の知り合いに聴診器を首から下げて病棟を回っている薬剤師がいるのですが、その方は「同じ患者さんを診ているドクターから聴診器の使い方を教えてもらった。」と言っていました。
補聴器を使い鼓動の早さや音の特徴を拾って薬のコントロールができているかを確認しているのです。
このように医師がかなり身近にいるため、処方の提案も行いやすい環境にあります。
こんな経験は病院薬剤師でしかすることができません。
また、認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取りやすいのもメリットの一つです。
患者さんと近い距離で接することができるので、資格取得に必要な知識を得やすく、論文を書く際にもしっかりとしたデータを持って書くことができます。
病院勤務薬剤師のデメリット
仕事の責任の大きさに対して給料がかなり安いというのが最大のデメリットでしょう。
病院薬剤師を希望する人は「欲しいのはお金ではなく、知識と経験」という考えを持っている人が多いため、給料は二の次になってしまうのです。
しかし、病院薬剤師はとても人気が高いのでなりたいと思っても簡単にはなれません。
運よく転職に成功したとしても、周りにいる薬剤師は既に何年もの経験を積んできたベテラン薬剤師ばかりです。
ある程度の業務に慣れるまでは病棟を担当させてもらえないこともあるため、転職して暫くの間は思い描いていたような仕事ができない場合もあります。
また、病院薬剤師には夜勤や当直というものが存在します。
もちろんその分の手当ては付きますが、かなり体力的にきつい仕事となります。
当直は基本的に1人で行うので責任も重大です。
何かあった時にはすべて自分一人で解決しなければなりません。
他に病院薬剤師に付き物なのが勉強会です。
出勤時間の1時間前くらいから任意で集まって勉強会を実施するのです。
それから通常通り勤務を開始します。
勤務時間が終わったとしてもかなりの確率で勤務時間内に薬歴などの業務を終わらせることはできません。
そのため居残りして仕事を終わらせます。
このように拘束される時間が長いのもデメリットです。
病院薬剤師 | 薬局薬剤師 | |
---|---|---|
業務上メリット |
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業務上デメリット |
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ホワイトな病院とブラックな病院見分け方
薬剤師として勤務予定の病院がホワイトかブラックかを見分けるのに有効な手段は「病院の雰囲気を読み取る」というものです。
病院によっては薬剤師の扱いがかなり、ぞんざいな職場も残念ながらあります。
そのような職場で良いチーム医療などできるわけもありません。
また、ドクターの人柄もかなり重要です。
忙しさのあまりかなりそっけない態度をしてくるドクターもいますが、そのような方とコミュニケーションをうまく取ることはかなり難しくなります。
面接の際に病棟の見学をさせてくれる病院がほとんどなので、これらのことを踏まえて雰囲気をチェックしておくことがブラックな病院を避ける一つの手段となります。
他に、あまりにも患者さんが少ない病院も要注意です。
そのような患者さんの出入りが少ない病院はほぼ何かしらの問題があります。
しっかりと診察をしてくれないドクターだったり、態度が悪いスタッフがいたりする可能性が非常に高いです。
病院の口コミはネットの口コミサイトで簡単に見ることができるので、気になる病院の口コミはチェックしておきましょう。
また、急性期病院の場合は患者の容態がめまぐるしく変わるため、調剤室内は常に忙しく動き回っている薬剤師で溢れています。
時間に追われながら目の回るような業務をこなすのは苦手、という人には急性期病院は向いていません。
逆に薬剤師としてしっかりと知識を身につけ、他の医療従事者と協力しながら医療を提供したいと考えている人が慢性期病院に行ってしまうと、毎日の業務がかなり物足りないものとなってしまいます。
自分がなりたい病院薬剤師像をはっきりと明確化させ、それに適した病院を選ぶことも大切です。ホワイトな病院を見つけるにはとにかく病院の雰囲気をしっかりと確認することが重要です。
ホワイト病院とブラック病院の選び方ポイント
1.病院の雰囲気
2.ドクターの人柄
3.患者さんが少ない病院は注意
4.慢性期病院と急性期病院の選択
病院薬剤師へ転職する時の面接でのアピール内容、志望動機
人気の病院は空きができると、物凄い数の転職希望薬剤師から応募が殺到するため転職はかなり難しい状況にあります。
そのような状況の中で如何にして自分をアピールしていけるかがポイントとなります。
面接対策1.希望する転職先のホームページを必ず確認する
ホームページにはその病院が目指している治療体系やドクターの信念などが記載されています。ホームページをしっかりとチェックしておくことで、自分がどれほどこの病院で働きたいのかをアピールするためのネタを拾うことができます。
この時に、在籍している医師が発表している論文なども頭にいれておきましょう。
細かいところまでチェックしてくれているという印象と同時に、勉強熱心な印象も与えることができます。
志望動機には必ずその病院の特徴や力を入れていることに共感しているということを入れるようにしましょう。
面接対策2.周りと協力しながら仕事をしたいことをアピール
病院薬剤師として働きたいと思っている人の多くは、現場での知識を高めたいということを志望動機としてほぼ必ず挙げてきます。
もちろん、大事なことなのでしっかりとその思いを伝える必要がありますが、これだけでは面接官の印象には残りません。
現在、薬剤師にはコミュニケーション能力が求められている傾向にあります。
「チーム医療のメンバーの1人として、他の医療従事者の方と協力して医療に参加していきたい。」というように伝えれば、学ぶ意欲と同時にコミュニケーション能力のアピールにもなります。
面接対策3.転職した理由はすべてプラスの言葉に置き換えて伝える
転職理由がマイナスな要因ばかりだと面接官の方にかなり不安を持たせてしまいます。
言葉をうまく置き換えてプラスの言葉として伝えましょう。
「患者さんともっと身近で関わりたい。」
「今ある知識をもっと増やしたい。」
などのように今後の活躍を期待させるような伝え方をしましょう。
病院薬剤師への面接対策
1.病院のホームページをチェック
2.在籍ドクターの論文をチェック
3.病院の特徴と力を入れている医療内容をチェック
4.コミュニケーション能力の高さをアピール
5.転職理由は「プラスの言葉」で組み立てる
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