薬剤師の独立開業 その年収と実情とは?

■作成日 2018/3/13 ■更新日 2018/5/9

 

薬剤師として成功の道を歩む方法の一つに独立開業という手段があります。薬局を開業し運営するのです。普通のサラリーマンとして働くよりもリスクはありますが、同時に大きなリターンも期待できます。しかし、リスクがある以上は生半可な気持ちでは開業はできません。今までに既に開業してきた人たちは、どのような理由で開業に踏み切ったのでしょうか。また、開業にかかる資金やその調達方法も気になりますね。

 

ここでは開業に関わる気になるアレコレについて一つずつ見ていきます。


独立開業薬剤師の背景

そもそも、薬局を開業した人はなぜそうしようと思ったのでしょうか。雇われの身でいるよりもリスクはかなり多くあります。それに、開業する動機がある程度しっかりしたものでないと開業後に立ちはだかるであろう困難に対応することは難しくなります。

 

では、実際に開業した人たちの動機を見てみましょう。

 

1.収入を増やしたかったから

 

収入を増やしたい、この思いが開業を考えさせる一番多い理由でしょう。薬剤師の平均年収は500万円前後です。世間では年収1000万円を超えると富裕層というイメージが付いていますが、薬剤師の平均年収は富裕層と呼ばれる年収には遠く及びません。

 

このような現実があるため、年収1000万円プレーヤーになるには開業するしかないとも言われています。ただ雇われて働いているだけでは年収を大きく上げることが難しい職種であるため開業に至るのです。

 

2.患者さんは二の次、数字ばかり求める薬局に嫌気がさしたから

 

薬局とは本来ならば患者さん第一であるべきなのです。しかし経営者によっては売上を貪欲に追い求めすぎて患者さんのための経営ではなくなっている薬局もあります。薬局も利益を上げて経営しているので売上を気にするのは当たり前のことではありますが、売上に目が向きすぎると従業員の不満は大きくなっていきます。

 

こんな薬局で働くのが嫌だ、もっと患者さんのことを考えた薬局を作りたい、そう思って開業に踏み切る方もいます。

 

3.誰にも縛られたくなかったから

 

会社に属している以上は、会社のルールに従わなければなりませんし、自分の好きなように仕事を進めていくわけにもいきません。誰かの指示に従うことを強制され、自分の意見を言えない職場にいる人や、自分の思うように働ける環境を作りたいという思いを持つ人が開業を考えることもあります。

 

4.開業すれば何歳になっても働き続けられるから

 

これは少しレアな理由かもしれません。どこかの会社に雇われて働くスタイルを取っていると、必ず迎えるのが“定年”です。その年齢は会社によって異なりますが、ほとんどのところが60歳か65歳です。定年を迎えたあとも雇ってくれる会社はありますが、給料は驚くほど安いところばかりです。新卒の給料と同程度と思って頂けたら問題ありません。

 

しかし開業すれば定年は自分で決められますし、自分で経営している薬局なので給料が大幅に下がることもありません。開業すれば何歳になってもモチベーションを保ったまま働くことが可能なのです。

薬剤師の独立開業パターンと年収

開業する方法には実は大きく2種類あり、自力で調剤薬局を開く“独立開業”と、既に開業している薬局の名を借りて調剤薬局を開く“フランチャイズ方式”の2パターンがあります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

 

1.自己資本や借り入れによる完全独立開業

 

どこに薬局を開くか、手続きはどうするか、すべてを自分一人で行わなければならないのがこの個人開業です。誰かが開業のフォローをしてくれるわけではないので、かなりの労力が必要です。しかし、フランチャイズとは違いロイヤリティの支払いがないため、大きな利益が見込めます。
門前の医院の繁盛具合にも左右されますが1000万円以上の年収が見込めます。複数の調剤薬局を開業した場合は1500万円~3000万円ほどになることもあります。会社員として病院や調剤薬局に所属して働くよりもかなり高い年収が期待できます。

 

2.フランチャイズ方式

 

フランチャイズとは既に開業している調剤薬局の名前を借りて新しい店舗を開く方式のことです。個人開業とは違いどのような立地がいいのか、どうやって資金を集めたらいいのかなどのアドバイスを貰いながら開業することができます。薬剤師の採用のフォローもあるため人員の確保も容易です。

 

しかし、フランチャイズで開業した場合はロイヤリティの支払いが発生します。月の売上のうち何%かはフランチャイズの大元の会社に支払わなければなりません。薬局の経営は近年、厳しい状況にあるためこの僅かな出費も大きな痛手となる場合があります。フランチャイズの場合、大きな収入には繋がりにくく、500万円から1000万円くらいが年収の相場となります。

 

開業のリスクが伴う分、独立開業の場合は軌道に乗りさえすればかなりの年収が期待できます。MRの経験などがあり人脈を広く持つ方であれば個人開業でも成功しやすいです。

 

開業はしたいけど、リスクは最低限にしたいという方はフランチャイズに加盟して薬局を経営するのもありです。

独立開業向けの診療科は?

開業するにあたり、どの科の門前にするかということは薬局の運命を大きく左右する大事な要因となります。診療科によって利益の取れやすさが異なるためです。また在庫すべき薬の種類や量も変わってきます。

 

本来ならば開業できるチャンスを掴めるだけでも恵まれた環境であるため、科目を選り好みする余裕はありません。しかし科目の違いによって薬局の経営にどれだけの影響を与えるかは最低限、知っておく必要があります。

 

1.内科

 

・メリット

 

内科には循環器系や消化器系も含まれており、年中を通して処方箋の枚数が安定しているという特徴があります。血圧や血糖値、コレステロールなどの薬は基本的に毎日継続して飲む必要のある薬です。

 

継続する必要があるということは、急にパタリと患者さんが来なくなることが少ないのです。冬になると風邪の患者さんのピークがやってくるものの、比較的、季節による処方箋枚数の変動が少なく済みます。安定して処方箋を受け取ることができると言える診療科でしょう。

 

内科医師の市場分析

 

・デメリット

 

様々な種類の薬が処方されるため、他の科の門前よりも薬の在庫量が多くなりがちです。内服薬だけでなく湿布などの外用薬や目薬なども処方されます。多くの薬が処方されるということは、つまり薬の飲み合わせなどの相互作用にも注意を払わなければなりません。

 

そのため薬剤師としてのスキルも高いものが求められます。

 

2.耳鼻咽喉科

 

・メリット

 

処方内容がある程度パターン化されるため、調剤が比較的楽です。在庫も少なく済みます。また、調剤料を取る際に服用時点の異なる内服薬については最大で3剤まで算定が可能なのですが、耳鼻咽喉科はこの3剤での算定が取りやすいという傾向があります。そのため開局する人にはとても人気の科目です。

 

・デメリット

 

花粉の時期や風邪の時期は患者さんの数が爆発的に増えます。逆に夏場は落ち着きます。年間で患者さんの数にバラつきがあるため、薬剤師の配置が難しくなります。

 

耳鼻咽喉科医師の市場分析

 

3.皮膚科

 

・メリット

 

皮膚科では軟膏剤の混合が出るため、計量混合の算定を取りやすい特徴があります。処方内容も難しいものはあまり出ないので、薬剤師に求められるスキルもそこまで高くありません。

 

・デメリット

 

皮膚科のピークは耳鼻咽喉科とは間逆で、夏場にきます。そのため皮膚科だけが門前の場合は冬場に売上が激しく落ち込みます。また、皮膚科は流行る医院とそうでない医院との差が大きく、門前の医院の医者の腕によって薬局の売上も左右されます。

 

皮膚科医師の市場分析

 

4.眼科

 

・メリット

 

眼科の調剤は簡単なものが多く、手間がかかりません。在庫数も少なく済みます。目は年を取ると共にほとんどの人が悪くなるため、新規開業の医院でも患者の囲い込みがしやすく、安定して処方箋を受け取ることができます。

 

・デメリット

 

内服薬の処方が少なく、目薬だけという処方が多いため技術料で利益を稼ぐことは難しいです。また、処方内容が薄いため物足りなく感じる薬剤師もいます。ひたすら処方箋の枚数を捌いていくことになるので、眼科のみを門前に開局するのは難しいかもしれません。

 

眼科医師の市場分析

 

5.整形外科

 

・メリット

 

鎮痛剤や湿布薬などの処方が多くを占めているため、処方内容は比較的簡単です。流行りの医院の門前であれば年間を通しての客足も見込めます。特にリウマチを専門としている整形外科が門前の場合は外来化学療法加算なども算定できるため利益に繋がりやすいです。

 

・デメリット

 

患者さんの容態が薬を処方するほどでもない場合は院内で処置を済ませてしまいます。そのため、医院に足を運んだすべての患者さんが薬局に処方箋を持ってやってくるわけではありません。

 

利益も見込み辛いため、整形外科単独の門前はあまりオススメできません。処方内容も単調なものが多く、薬剤師として成長していきたい人には向いていません。

 

整形外科医師の市場分析

調剤薬局開業に必要な資金と資金調達法

調剤薬局を開業するには、かなりの額の資金が必要になります。その額はおよそ2000万円ほどです。詳しい内訳は以下の通りです。

 

1.物件取得費

 

  • 保証金 家賃数か月分
  • 保証金 10万円~30万円

 

2.設備費

 

  • 分包機やレセコンなど、調剤に必要な機材 200万円~500万円
  • 調剤台などの備品費 100万円~200万円

 

3.開業費

 

  • 調剤報酬が入るまでの3か月分の経営費用 200万円~300万円
  • 薬剤代 100万円~200万円
  • 広告費 15万円~20万円
  • 人件費 50万円~
  • 家賃 10万円~

 

このように開業するためには多額の資金が必要となります。では、どのようにしてこの資金を調達したら良いのでしょうか。お金を借りるとなると銀行というイメージがあるかもしれません。しかし何の信用もない個人が銀行で大金を借りることは極めて困難です。

 

そのため、公的資金である日本政策金融公庫や地方公共団体の制度融資制度を利用します。日本政策金融公庫は他の金融機関に比べて審査が通りやすく、金利も低いので実績のない故人事業主でも手を出しやすいです。

 

ただし、審査が終わるまでに1ヶ月近くかかるので余裕を持って申し込みをしましょう。地方公共団体の制度融資制度は都道府県や市町村などが運営している制度融資です。こちらも実績のない個人事業主でも借りやすいので利用する方が多いです。その分審査に2ヶ月ほどかかってしまうというデメリットもあります。

成功する開業ポイント

 

1.頭金を用意しておく

 

開業にリスクは付き物です。開業に必要な資金をすべて融資によって賄うこともできますが、経営がうまくいかない時や店を畳むことになった時に手元にお金がまったくないなんてことにもなり兼ねます。リスクを考慮して1000万円ほどは用意しておくと良いでしょう。

 

2.単独の科目だけは危険

 

内科のように一年を通して処方箋の枚数が安定している科目は良いのですが、耳鼻咽喉科や皮膚科のようにピーク時とそうでない時の差が激しい科目もあります。一つの科目しか応需の見込みがない場合は開業を考え直しましょう。

 

季節による変動を少なくするためにいくつかの科目を抱き合わせで応需できる条件を探すことで、経営のリスクを少なくできます。

 

3.立地は慎重に選ぶ

 

薬局に限らず、すべての施設に共通して言えるのが立地の大切さです。どんなに腕の良いドクターでも、薬局の立地が悪ければ誰も来ません。周辺の道路が混みやすいところだったり、一方通行の道路に面したところだと途端にアクセスは悪くなります。

 

行きたい時にいつでも行ける場所か、ある程度の集客が見込める場所なのかを見極める必要があります。

 

4.今まで以上に責任感を持つ

 

雇われて働くサラリーマンとは違い、開業した後は常に薬局のことを気にかけなければなりません。従業員を雇っている場合はその人たちの生活もかかっています。生半可な気持ちでは薬局の経営はうまくいきません。

 

自分がこの薬局の運命を握っているのだと自覚を持ち、経営していかなければなりません。

 

5.待っているのは成功だけではないことを自覚する

 

薬局の開業には資金、労力、人脈、様々なものが必要です。条件が揃えば薬局の経営は軌道に乗り利益を生み出せるようになります。年収も1000万円を超え、薬剤師としての成功者の仲間入りを果たせます。しかし時には失敗してしまうこともあります。

 

開業したものの経営がうまく行かず、やむを得ず薬局を畳んできた薬剤師も多くいます。失敗することもある、ということをきちんと自覚していないと開業のプレッシャーに押しつぶされてしまいます。

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)
某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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薬剤師の独立開業 年収と実情

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