製薬会社(品質管理職)への薬剤師転職を考察する
■作成日 2018/5/7 ■更新日 2018/5/8
薬剤師の転職先は病院や調剤薬局だけではありません。
品質管理職として製薬メーカーに転職するという方法もあるのをご存知ですか?製薬メーカーに転職したいという薬剤師はたまに見かけますが品質管理職というのはあまり聞きません。
しかし、実際に品質管理職として働いている薬剤師がいるのは事実ですが、いまいち外部の人にとってはその職務内容が理解されていないと感じています。
ここでは品質管理職の詳しい仕事内容や年収、品質管理職へ転職するためのコツなどをご紹介していきます。品質管理職への転職に興味のある方はぜひ参考にしてください。
製薬会社での品質管理職の業務内容とは?
品質管理とはいったいどのような仕事をするの?何の品質管理をするの?普段あまり耳にすることがないため、品質管理職の業務内容を詳しく知っている人は多くありません。
まず、何の品質管理をしているのかという話からですが、自社で生産している医薬品の品質管理を行っています。発売する前の化学物質が医薬品として販売するに値するのかというのをチェックしているのです。
- 医薬品の原材料の化学試験
- 試験結果の資料作成
- 試験結果に異常があったものの改善案の提案
などを行っています。
では、これらの内容について一つ一つ詳しく見ていきましょう。
医薬品の原材料の化学試験
医薬品を作るためには安心で信頼できる原料から作らなければなりません。原料の信頼性が薄ければ医薬品の効果も十分に期待できないためです。
医薬品の製造に使う原料が本当に製造に適しているのかを化学的に試験します。
しかし、いくら原料が製造に適しているものであっても、品質にバラつきがあっては意味がありません。そのため品質のバラつきの有無に関しても確認します。
試験のほとんどはクロマトグラフなどの分析機器を使用します。
試験結果の資料作成
原料の試験結果が医薬品の製造に適しているのかそうでないのかの資料を作成します。
品質に関するデータは会社だけでなく、今後その医薬品を購入する可能性のあるすべての方へ安心と信頼を裏付けるための重要なデータです。この資料によって大きく信頼を揺るがすこともあるので責任を持って資料を作成していきます。
試験結果に異常があったものの改善案の提案
常に試験結果が正常であるとは限りません。特に天然の原料を使用しているものだと品質にバラつきが出やすいのが特徴です。
もし品質試験に異常があった場合はなぜ異常が出たのか?どうすれば異常が出ないようになるのかなどの改善案を考えます。
この改善案を担当の部署へ提出し今後、より良い結果を得られるように改善していきます。
実は全く違う“品質管理”と“品質保証”のお仕事。違いはいったい何?
品質管理と品質保証って物凄く似ています。
そのためどちらも同じ仕事内容だと勘違いしている方もたまに見られます。
しかし、この2つの職種はまったくの別物です。
製薬会社への転職を目指している方は間違わないように気をつけてください。
品質管理とは?
品質管理とは先ほども触れたように、医薬品の原料の化学的試験を行って品質に問題がないかを確認する仕事です。原料が医薬品を作るための基準を満たしているのかを試験します。
クロマトグラフ、核磁気共鳴装置、赤外分光光度計などの機器を使うことが多いので、これらの機器に関する知識も必要とされます。
品質管理職では原料の試験だけでなく、医薬品の製造途中での試験や、製品が出来上がった後の試験も行います。
あらゆる工程で試験を行うことにより、徹底的に発売する商品品質のチェックが行われることになります。
同じ製薬会社で製造された医薬品なのに製品にバラつきがあってはいけないので、市場流通前に徹底的に管理をすることになります。
品質保証とは?
一方で品質保証職ではどんな仕事をしているのでしょうか。
品質保証職では製造した製品を安心してお客様へ届けるために、品質の保証に関する業務を行います。
- 製造した製品の品質確認。
- 製品が出荷できるかの判断。
- 問題があった場合は解決できるように動く。
- 製造している状況を実際にチェックして管理状況を確認する。
品質保証職では主にこのような仕事をしています。
製造した製品が自社の品質規格に適合しているかを確認し、適合していれば合格、適合していなければ製造部門に送り返します。
仕入れた原料を化学的に検査するのは品質管理職の仕事ですが、仕入れ前の段階で原料の検査をするのは品質保証職の仕事です。
規格に合っているのか、分析表と実際の原料に差異がないかを確認して原料を受け入れるかどうかの判断をします。
また、原料や製品の確認だけでなく製品を製造している工場に直接出向くこともあります。製品を作るのに適している環境なのかをチェックするのですね。工場側が提示する資料に基づいてしっかりとチェックを行っていきますが、これはだいたい3年ごとに行われます。
これ以外にクレーム対応も品質保証職の仕事です。
納品した製品が規格に合っていない、異物が入っているという場合もたまに起きてしまうんですね。なぜ規格に合っていないのか、なぜ異物が入ってしまったのかの確認を品質保証職で確認します。
決められた仕事を淡々とこなしていく毎日を送るのでやりがいがあるかと聞かれると「?」ですね。
割とルーチンワークなので、仕事そのものにはすぐに飽きてしまう人もいるようです。
製薬会社の品質管理職に勤務する薬剤師の年収
品質管理職も高年収という認識の高い製薬会社の一員です
。そのため他の職種の薬剤師よりも年収が高いイメージをどうしても持ってしまいますが、実際のところはどうなのでしょうか。
品質管理職の平均年収
品質管理職の年収は平均するとだいたい550万円以上の年収になるのではないでしょうか。平均だけ見ると一般的な薬剤師の年収と大差がないように見えますね。しかし品質管理職の年収は上と下の差がかなり激しいのです。
そのため実際のところは年収1000万円以上貰っている人もいますし、500万円以下という人もいます。
年齢が上がるにつれて年収も上がる傾向にある
品質管理職の年収は年齢が上がるにつれて年収も上がる傾向にあります。仕事の評価や実績が年収に直結しているためですね。
20代~30代では年収500万円台から600万円台の方がほとんどです。40代~50代になると年収700万円以上を貰っている方が多くなります。50代になると中には年収1000万円を越す方もいます。
品質保証職の実際の求人
では、実際の品質保証職の求人を見てみましょう。
品質保証職の薬剤師求人1
- 勤務地:東京都
- 仕事内容:製造立会い、工場衛生点検指導、衛生・品質・環境マネジメントなど
- 対象となる方:ISO9001を含むQMS主管業務経験を3年以上お持ちの方
- 所定労働時間:7時間40分 休憩時間60分
- 年収:560万円~
- 年間休日:124日
年収560万円からというところだけ見てしまうと、そこまで年収が高い求人には見えませんが、所定労働時間や年間休日を見るとそこそこ良い求人なのではないでしょうか。
一般的な企業の労働時間は実働8時間のところがほとんどですが、こちらの求人では7時間40分となっています。
通常より20分も短いですね、それに年間休日124日はかなり多いほうです。
年間休日は少ない企業だと100日台のところもあるのでこの職場はかなり恵まれている環境と言えます。
品質保証職の薬剤師求人2
- 勤務地:佐賀県
- 仕事内容:製造立会い、工場衛生点検指導、クレーム対応、各業者対応など
- 対象となる方:化粧品・化粧品OEMメーカーでの品質管理・品質保証経験者
- 所定労働時間:8時間00分 休憩時間60分
- 年収:600万円~800万円
- 年間休日:120日
年収が最大で800万円まで上がる可能性のある求人ですね。全職での経験を加味して年収が決められるので転職していきなり年収800万円というのもありえないことではありません。
労働時間は一般的な企業と同じ8時間です。
年間休日も120日あるので条件としては悪くありません。
やはり品質保証の年収は薬剤師の平均年収よりも高い傾向にあるようですね。
品質保証職で働くメリットとデメリット
品質保証職で働けば年収1000万円超えも無理ではないので、高収入を目指す薬剤師にとっては夢のある職種であることには間違いありません。
そんな品質管理職で働くメリットとデメリットをまとめてみます。
品質管理職で働くメリット
落ち着いた環境で毎日仕事ができるイメージのある品質管理職ですがここでは2つのメリットをご紹介します。
品質管理職の仕事は仕事内容に大きなムラがありません。
毎日ほとんど同じような時間に同じような仕事をしていきます。
言い換えればルーチンワークですね。
調剤薬局や病院、ドラッグストアだとその日の処方箋の枚数や来客数によって大きく仕事内容が変化しますが品質管理職で働く場合はそのようなことがまずありません。
毎日決まった仕事をするのでイレギュラーな仕事が発生しにくく、残業もほとんどないので定時に帰れることが多いです。
品質管理職は製薬会社の職員の一員です。
製薬会社は大きな会社である場合が多いので福利厚生もしっかり整っているところが多くあります。
また、年間休日が多いのも特徴です。
ほとんどの求人で年間休日が120日を超えています。
年収が大幅に上がる可能性があり、福利厚生もしっかりしているとなると、かなり働きやすい条件が整っているように思います。
品質管理職で働くデメリット
仕事内容が毎日変わらず残業が少ないなどのメリットがある品質管理職ではどのようなデメリットがあるのでしょうか。
こちらについても見てきましょう。
品質管理職で働いている限りは薬剤師らしい仕事に手をつけることはまずありません。処方せんも扱いませんし調剤もしません。病院や調剤薬局にいるような薬剤師がごく普通に身に付けられる調剤のスキルをなかなか習得することができないのです。
そのため、品質管理職の仕事から他の職種に転職するときに少々大変なこともあります。
品質管理職の仕事はとにかく単調です。
毎日のように決まった仕事を淡々とこなしていきます。
単純作業やルーチンワークが好きな方はあまり気にならないようですが、あまりに単調なためにやりがいを見つけきれずに辞めてしまう方もいます。
品質管理職未経験者が転職面接でアピールすべき内容
分析機器が使えること
品質管理職ではクロマトグラフなどの分析機器を頻繁に使用します。
測定の際に必要な理屈や、機械を扱う能力が十分にある人は品質管理職でも重宝されます。
大学の研究で分析機器を使ったことがある方が意外といるのではないでしょうか。分析機器を使いこなせることをうまくアピールできるとポイントが高いです。
正確に物事を進められること
品質管理職での仕事は何度も言うようにかなりルーチンワークです。そのためある程度仕事に慣れてくると途中で気を抜いてしまいミスをしてしまうこともあるのですね。
しかし、どんなに決まった仕事でもしっかりと物事を正確に進められる能力のある方は例えルーチンワークが続いたとしても大きなミスをあまり起こしません。コツコツと作業を続けられる方、同じような仕事でも気を抜かずにきちんと作業をできる方は求人先にどんどんアピールしていきましょう。
英語能力に長けていること
品質管理職だけに限らず製薬会社では英語が難なく使える方をとても重宝しています。
目安としてTOEIC600点以上を取っていれば十分にアピールできる材料となるでしょう。
点数だけでなく実際に英語で会話ができるのか、英文をきちんと読めるのかという実践的な面の方が重要視されます。
海外に出張に行くことも多くありますし、取引先として海外の方と英語でしっかり意思疎通をする必要が出てくるため、英語が使える方はどれくらいのレベルで使えるのかという点について、面接ではしっかりとアピールできるように努めるべきです。
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