ミクロの世界を覗いてみよう Vol.3 ちっちゃいけれど働き者『血小板』その2

■作成日 2018/2/27 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター紅花子です。

 

止血には、大きく2つの段階があります。
一つは、前回お伝えした、血小板が主役となって進む「一次止血」でした。

 

今回はもう一つ、次の第2段階である「二次止血」をみていきましょう。


二次止血・・・凝固因子による二次血栓

実は血小板だけでできた血栓では、出血を止めるには、まだまだ不安定な状態です。
これをさらに強固な血栓とするために、フィブリノゲンで補強し、止血栓として完成させる必要があります。

 

こうした二次止血のことを「血液凝固」といい、この過程で血栓に働きかける物質を「凝固因子」といいます。

 

血液凝固因子の多くは、血漿の中に含まれている蛋白質です。
血液凝固因子は、肝細胞で合成され、その数は十数種類になります。

 

このうち第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子などと呼ばれる血液凝固因子の産生には、ビタミンKが必要であるため、服薬や疾患などによりビタミンKが欠乏すると、血液凝固因子の産生が低下し、凝固時間が延長することになります。

 

今現在、わかっている血液凝固因子には、ⅠからⅩⅢまでの番号がついたもの(ただし、Ⅵは欠番)があります。
実際に「止血」に至るまでには、この他にも2つ(あるいは3つ)の因子が必要となることが分かっています。

 

 

少なくとも、この12の因子は覚えておきましょう。
この他には、タンパク質分解酵素に変わるものや、フォンヴィブランド因子(血小板の粘着、第Ⅶ因子の安定化などの働きがある)があります。

 

ところで、血液凝固反応を図などで表すとき、この因子名がよく使われます。活性化前が因子名、活性化後はその数字に「活性化」を示す「a」をつけて、表記しています。

 

 

血液凝固反応=カスケード反応(理論)の進み方

 

液凝固反応は、ある凝固因子の活性化が別の凝固因子を活性化させるという連鎖的な反応(=カスケード反応)によって進みます。最終的には、フィブリノゲンがフィブリンに変換されたところで、この反応が終わります。

 

ここまでの反応をまとめて「カスケード反応(理論)」といいます。

 

ちなみに「カスケード」とは、階段状に続いた小さな「滝」のことです。
血液凝固因子の活性化という変化が、次の活性化を呼び、まるで段々になった階段を水が流れていく様を連想させるため、「カスケード反応(理論)」と呼ばれています。

 

実際の血液凝固反応では、スタートするきっかけになる因子の違いから、内因系と外因系と、大きく2つの経路に分けられています。

 

  • 内因系:血管内で第ⅩⅡ因子が活性化されることによってスタート
  • 外因系:第Ⅲ因子(組織因子)が血管内に流れ込むことによってスタート

 

という違いがあります。

 

では、皆さんもきっと一度は見たことがあるであろう、あの図を見ていきましょう。

 

 

【内因系の反応】

 

ここでは、ⅩⅡ因子、ⅩⅠ因子、Ⅸ因子、ⅩⅢ因子がさまざまな反応を次々に引き起こします。
また、ⅩⅢ因子の活性化には、内因系の後の反応である「共通系」の反応で活性化されたⅡa因子(トロンビン)も関係しています。

 

【外因系】

 

Ⅲ因子は「組織因子」と呼ばれますが、これが血管内に流れ込むことで、反応がスタートします。
また、外因系の反応には、カルシウムイオンも関与しています。

 

【共通系】

 

プロトロンビンは、凝固因子やカルシウムイオンと反応して、トロンビンに変換されます。
この反応には血小板の細胞膜上のリン脂質を必要とします。

 

さらにトロンビンはフィブリノゲンをフィブリンに変換し、フィブリンは網目状の構造をつくり、そこに赤血球がからみ合うことで血餅がつくられ、傷を塞ぎます。
通常は2-6分で血餅が固まり止血が完了します。

 

ちなみに凝固カスケードは正常な血管では起こらないように、アンチトロンビン(AT)やプロテインCなど多くの凝固阻害因子がはたらいています。
このはたらきによって、損傷部位にだけ凝固が生じるようになっています。

 

もしもこのようなはたらきがなく、どこでも凝固が起こってしまうと大変なことになりますね。

 

仕事(止血)を終えたその後

 

「止血」という仕事を終えると、さらに2つの仕事が待っています。

 

【線溶】

 

血管の修復が終わった血餅はもう必要なくなります。
そこでプラスミンがこの血餅を分解・溶清浄解するはたらきをします。
この反応をフィブリン溶解(繊維素溶解=線溶)といいます。

 

プラスミンとは、肝臓で産生されるプラスミノゲンが血餅中に取り込まれ、組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)によって活性化したものです。
t-PAの放出は非常にゆっくりと、ゆるやかにおこなわれます。

 

【線溶阻止】

 

線溶が急速に進み過ぎてしまい、血管壁が修復される前に血栓を溶解してしまうと再出血をきたすため、線溶はゆっくりと進める必要があります。
このときにはたらきかけるのが線溶阻害因子です。

 

線溶阻害因子にはアルファプラスミンインヒビターやプラスミノゲンアクチベータインヒビターがあります。

 

このようにして、線溶は進んでいき、数日かけて血餅が溶解・除去されます。

まとめ

 

「止血」にはいくつもの段階がありますが、どれか一つでも欠けてしまうと、うまく止血されません。
例えば「血友病」は、血液凝固因子のうち、どれが欠けているのかで、2つのタイプに分かれています。

 

  • 血友病A:第VIII因子の欠損あるいは活性低下
  • 血友病B:第IX因子の欠損あるいは活性低下

 

さらに、一次止血である「血小板による止血」がうまく進まないと、次の段階、二次止血には進めません。
止血とは、私たちの体の中で、静かに、でも確実に起こっている反応なのです。

 

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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