ミクロの世界を覗いてみよう Vol.5 チームで働く白血球その2

■作成日 2018/2/27 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター紅花子です。

 

造血幹細胞から分化や増殖によって、さまざまな種類の免疫細胞が誕生しますが、これらをまとめて【白血球】とよびます。免疫機構に関わる大切な白血球は、恐るべきチームワークで私たちの体を守っています。今回は、このチーム白血球のメンバーを紹介します。


『チーム白血球』メンバー紹介

 

白血球は、造血幹細胞からの分化の道のりから、リンパ系と骨髄系に分けることができます。リンパ系にはリンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)があり、骨髄系には顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)やマクロファージ、マスト細胞(肥満細胞)があります。樹状細胞は多くの分化経路があります。

 

 

『チーム白血球』メンバーそれぞれの主な仕事内容

 

では、それぞれのメンバーの主な仕事を見ていきます。

 

マクロファージ

 

 

病原体の侵入を見張り役

 

  • 病原体を食べる
  • 病原体の侵入を、他のメンバーに知らせて呼び寄せる

 

名前の由来は「マクロ(Macro)=大きい、ファージ(PHage)=食べるもの」です。血管の中では単球ですが、血管の外にでるとアメーバ状になり、さまざまな臓器の細胞と細胞の間に存在し、名前を変えます。肺なら「肺胞マクロファージ」、脳なら「グリア細胞(ミクログリア)」、肝臓なら「クッパー細胞」です。

 

マスト細胞(肥満細胞とも呼ばれる)

 

 

  • 病原体の侵入を見張り役
  • 寄生虫を追い出す
  • アレルギーを引き起こすことも・・・

 

マスト細胞(肥満細胞)という名称ですが、これは発見当初にその形態から名付けられた「大食細胞」を意味するドイツ語(Mastzellen)が由来です。ちなみに、日本語に訳した時に「肥満」となりましたが、人間の肥満とは無関係です。

 

樹状細胞

 

 

  • 病原体の侵入を見張り役
  • 侵入した病原体を少し食べる
  • 侵入した病原体の溶けだした成分を少し飲む

 

侵入した病原体を食べ、その成分から病原体の種類を見極めます。その情報を別動隊(適応免疫チーム)のメンバーに伝える、という役割があります。尚、樹状細胞という名称は、「木の枝を伸ばしたような姿」がその由来です。

 

好中球

 

 

  • 血液中でパトロール(=遊走)する
  • マクロファージに呼び寄せられて病原体を食べる

 

好中球という名称は、「中性の色素に染まることから」であるといわれています。好中球はとっても食いしん坊。白血球の中には他にも「食べる」細胞がありますが、「食べる」ことにかけては、好中球がピカイチです。

 

好酸球と好塩基球 ※好中球と同じ『顆粒球』仲間

 

好酸球

 

 

  • 食べる力は弱い
  • 寄生虫に対しては強い働き

 

好酸球という名称は、「酸性の色素に染まることから」です。好中球と同じ理由です。病原菌を食べる力は弱いですが、寄生虫と対峙すると、非常に強い力を発揮します。

 

好塩基球

 

 

そもそも、とても数が少なく、まだ分かっていないことが多いようです。名前の由来は、「塩基性の色素に染まることから」です。

 

B細胞

 

 

  • 血管やリンパ管を通ってからだ中を巡っている
  • 抗体をつくる

 

チーム内で唯一、武器 =抗体を作り、戦うことができる細胞です。病原体や毒素と結合し、無力化します。

 

キラーT細胞(別名CD8T細胞)

 

 

  • 血管やリンパ管を通ってからだ中を巡っている
  • 攻撃、戦いの専門家
  • NK細胞が壊しきれなかった感染細胞を壊す

 

キラーT細胞という名称は、その働き(Killer=殺し屋)と、細胞成長の場である胸腺(Thymus)から来ています。CD8という分子を持つことから、CD8T細胞とも呼ばれます。

 

キラーT細胞は、からだ中を巡る間に、リンパ節にて樹状細胞から病原体の情報と補助刺激をもらうこと(=抗原提示)で、パワーアップ(=活性化)します。活性化する前、抗原に出会う前の段階はナイーブ(CD8)T細胞と呼ばれます。

 

ナイーブのままでは感染細胞を壊すことはできないため、必要な時にパワーアップします。

 

ヘルパーT細胞(別名 CD4T細胞)

 

 

  • 血管やリンパ管を通ってからだ中を巡っている
  • ほかのメンバーのはたらきをサポートし、さまざまな指示を出す(直接攻撃はしない)

 

ヘルパーT細胞という名称は、その働き(Helper=ヘルパー)と、細胞成長の場である胸腺(Thymus)から来ています。
ヘルパーT細胞には、3つの特徴的な働きがあります。

 

  1. マクロファージの食べる力を強化する
  2. B細胞を刺激して抗体を作る力を強化する
  3. キラーT細胞のはたらきを助ける

 

という「助ける」働きをします。

 

NK細胞

 

 

  • 血管やリンパ管の中を流れてパトロール
  • からだの中に入り込んだウイルスを感染した細胞ごと攻撃し、壊す
  • からだの中でできてしまったがん細胞を攻撃し、壊す

 

NK細胞という名称は、その働きから来ています。Natural Killer =生まれながらの殺し屋、という意味です。

まとめ

 

見た目も働きもちがうさまざまな細胞が、1つのチームとして働く「チーム白血球」。これらがすべて、元は一種類の細胞から出来ているというのは驚きです。

 

また、細胞同士で助け合ったり、情報を共有しあったり、そんなスゴイことが、私たちの体の中で起こっているって、想像すると面白いですよね。

 

 

参考資料

 

1.始めの一歩は絵で学ぶ 免疫学 「わたしの体」をまもる仕組み
著者:田中稔之 出版社:株式会社じほう
発行:平成28年8月31日

 

2.病気がみえるvol.6免疫・膠原病・感染症 第1版
編集:医療情報科学研究所 出版社:株式会社メディックメディア
発行:平成27年3月3日 第1版第9刷発行

 

3.病気がみえるvol.5血液 第1版
編集:医療情報科学研究所 出版社:株式会社メディックメディア
発行:平成27年3月20日 第1版第12刷発行

 

4. 京都大学再生医科学研究所 河本宏研究室 
一般の方向け記事:免疫のしくみを学ぼう!
http://kawamoto.frontier.kyoto-u.ac.jp/public/public_Top.html

 

5.岡山大学 大学院医歯薬学総合研究所・生体応答制御学 薬学部・免疫生物学分野
研究紹介 マスト細胞とは
http://www.pharm.okayama-u.ac.jp/lab/meneki/research/mast_cell/

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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医療と看護にまつわるミクロの世界 - チームで働く白血球 その2
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