ミクロの世界を覗いてみよう Vol.6 チームで働く白血球その3 『自然免疫』『獲得免疫(適応免疫)』の連携プレー
■作成日 2018/3/23 ■更新日 2018/5/9
免疫細胞『チーム白血球』の各メンバーには、いろいろな特徴があり、それぞれに決まった役割がありました。しかしそれらは個々に働くのではなく、チーム内は大きく2つのグループ「自然免疫チーム」と「獲得免疫(適応免疫)チーム」に分けられています。その働きぶりを、覗いてみましょう。
免疫の前段階の機構「バリア」
病原体が私たちの体内へ侵入すると、『チーム白血球』が活躍することになりますが、実はそれ以前に、そもそも病原体などの異物が体に入り込まない仕組みがあります。
私たちの体が外界と接している体表面は、病原体などの異物が入りこまないようにする「バリア(壁)」になっています。体表面とは、皮膚や消化管・呼吸器などの粘膜を指し、これらの細胞のことを上皮細胞と言います。上皮細胞を含む生体機能が持つバリア機能には、大きく3つあります。
免疫の2つのグループ
では、いよいよ免疫機能について見ていきましょう。
免疫には、
- どんな敵にもとりあえず戦いを挑み、最前線ではたらくグループ:自然免疫
- 最前線のグループでは処理しきれないケースに対応するグループ:獲得免疫(適応免疫とも)
があります。2つのグループは仕事を分担し段階を経て違ったはたらき方をします。この連携プレーでより強い力(免疫力)を発揮することができます。
また免疫細胞たちは、異物を結合させることができる「レセプター(受容体)」を持っています。
レセプターはアンテナのようにはたらいていて、ここに異物が結合すると、病原体が侵入したことに気が付き、臨戦態勢へ突入します。レセプターの種類はそれぞれの免疫細胞が属しているチームによって違います。
第一段階:自然免疫
自然免疫とは、最初から体に備わっている機能です。この段階では、次のメンバーが活躍します。
その働きとしては、次のようなものがあります。
- 侵入した病原体にすぐに対応する
- 主なメンバーは、病原体を食べることで戦う免疫細胞(=食細胞・貪食細胞)
- 大まかなアンテナ分子(パターン認識レセプター)を使う・・・病原体に共通する成分を認識できる
- 第二段階:獲得免疫(適応免疫)・・・敵と出会ってから備わる防御機能
- 第二段階:獲得免疫(適応免疫)
獲得免疫(適応免疫)とは、一度「敵と出会う」ことで備わる防御機能です。この段階では、次のメンバーたちが活躍します。
- 自然免疫では対応できないケース・苦手なケースに対応する
- 小さな病原体
- 細胞の中に入り込んだ病原体
- 血液中に流れている毒素分子 など
- それぞれが、細かなアンテナ分子(抗原レセプター)をもっている
- 病原体の細かい特徴を厳密に把握できる
- B細胞の抗原レセプターを作りかえたのが、いわゆる「抗体」
- 病原体ごとに対応できるため、自然免疫よりも強い攻撃が可能
- 「抗体」を使った攻撃
- 感染細胞を「破壊」する戦術
2つのグループの違いをまとめると、次のようになります。
まとめ
今回は、『チーム白血球』の2つのグループが、それぞれどのように働き、どのように連携しているのか、大まかな流れをお伝えしてみました。それぞれの特徴を活かしたチームプレーには、まだまだ秘密がいっぱいです。
次回からはメンバーの動きについてもう少し細かく・詳しくお話していきたいと思います。
参考資料
1.始めの一歩は絵で学ぶ 免疫学 「わたしの体」をまもる仕組み
著者:田中稔之 出版社:株式会社じほう
発行:平成28年8月31日
2.病気がみえるvol.6免疫・膠原病・感染症 第1版
編集:医療情報科学研究所 出版社:株式会社メディックメディア
発行:平成27年3月3日 第1版第9刷発行
3. 京都大学再生医科学研究所 河本宏研究室
一般の方向け記事:免疫のしくみを学ぼう!
http://kawamoto.frontier.kyoto-u.ac.jp/public/public_Top.html
4. 免疫応答のフロントライン
九州大学 生体防御医学研究所 分子免疫学分野
山崎晶
http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/ss2012/Yamasaki.pdf