都道府県によって就職転職の難易度が変わる

■作成日 2018/3/27 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター 紅花子です。
看護師の人手不足が言われ続けて早数年。しかし、実際にどこの都道府県の看護師がどう少ないのか、わかっている看護師は少ないのではないでしょうか。

 

人手不足による業務過多に嫌気がさして転職したのに、転職した先の都道府県も看護師数が少なければ本末転倒です。今回は看護師が不足している都道府県はいったいどこなのか、またその都道府県では具体的に看護師を確保するための対策はとられているのかについてご紹介します。


全国の都道府県別看護師数(人口10万対)少ないのはどこ?

 

看護協会が発表している最新データによると平成20年時点で就業している全国の看護師数は918,263人となります。
都道府県別に数値のみで見ると、最も看護師が少ないのが、鳥取県で5,388人、次いで山梨県が6,178人、福井県が6,719人となります。

 

しかし、人口10万対看護師数で見てみると最も少ないのが埼玉県で、691.9人、次いで神奈川県が693.7人、千葉県が710.8人、東京都が832.8人となり、関東圏において人口10万対あたりの看護師が少ない、という結果が浮き彫りとなりました

 

人数のみを一見すれば、関東圏の看護師は多く見えるのに、なぜ人口10万対の看護師数が最も少なくなるのか。これには「人口との比率」というポイントがあります。

 

「人口10万対看護師数」のマジック

 

人数のみを見ると、地方の看護師数は少なく、都市では看護師の人数が多いように見えます。しかし、ここには人口10万対看護師数のマジックがあります。

 

 

もともと人口が少ない県では必然的に看護師の人数が少なくなり、人口の多い県では看護師の人数は多くなります。上のグラフは、人口10万人あたりの人数を表していますが、人口10万人当たりで見て人口に対する条件をそろえることで、人口に対する看護師の割合がわかるのです。

 

先ほどのデータにおいて、実数では看護師数が少ないとされた3県は、人口も決して多くはないことから、看護師の人数が少ないように見えても人口に対する割合では看護師数が充実しているように見えてしまうのです。

 

一方で、人口10万対で見て看護師数が少ないとされた3県は、人口が多いため一見すると看護師数は多く見られがちですが、人口との兼ね合いを見ると看護師数が少ない、看護師が足りていない地域と考えることができます。

 

まだまだ足りてない都道府県、看護師確保対策は?

 

看護師数が足りていないとされる都道府県では、看護師を確保するにあたりどのような対策に講じているのでしょうか。

 

ここでは、先ほど人口10万対で見て看護師数が足りていないとされていた、埼玉、神奈川、千葉に加えて、4番目に看護師数が足りない愛知県について、第6次保健医療計画を参考に見ていきましょう。

 

看護師10万対での人数がワースト1だった埼玉県では、マンパワーの確保と資質の向上を目標としています。具体的には一度看護師としての就業経験がある看護師の取り込みを特に強調しており

 

  • ブランクのある看護師のための研修の充実や就職相談
  • 働きやすさの改革として育児と両立して働きやすい環境整備

 

などを、施策の中心としているようです。

 

ワースト2の神奈川県では、埼玉県とは逆に

 

  • 新人看護師の定着
  • 養成校を増やすことで看護師の人数そのものを増やすこと

 

を施策としています。また、最も離職しやすい時期を割り出し、その時期の離職防止策を中心に取り組んでいるようです。

 

ワースト3の千葉県では、現在働いている看護師の離職を防止するとともに、看護師の定着に向けた支援を実施しています。部分的には、神奈川県と似たような施策をとっていることが特徴的といえそうです。

 

さらに、愛知県では、看護学生の教育に力を入れつつ、再就職支援、離職防止への対策も平行して行う、としているようです。また「看護技術に不安のある新人看護職員の離職を防止するため、新人看護職員研修の助成や研修体制の整わない病院(主に中小病院)等に対し、出張研修を実施」という施策もあります。

 

これは愛知県の特徴的な部分かもしれません。

 

全体的にみると、看護師の母体の人数を増やしたいという県と、働いた経験のあるいわゆる即戦力の看護師をたくさん取り込みたいという県に分かれる、という結果になりました。どの県も、看護師が長く働き続けられるよう、女性のライフスタイルに合わせて育児との両立などを掲げています。

 

また、この4県になぜ注目したのか。その理由としては、実はこの4県、第6次保健医療計画において、県内にベッド数の増床が見込まれている医療圏がある県、であるためです。

 

ただでさえ看護師数が少ない県であるのに、患者の収容数が増える見込みとなっているため、医療機関がパンクしてしまう可能性が考えられます。

 

2018年からは、第7次保健医療計画がスタートしますが、新しい保健医療計画ではどのような施策が盛り込まれ、看護師の就業者数にどのような影響を及ぼすのか、注目していきたいポイントとなります。


まとめ

 

都心部は看護師数が充実し、地方のほうが看護師の人数が少ないというイメージがありそうですよね。しかし人口の変動を考慮すると、必ずしもそうではないのかもしれません。どの都道府県も、看護師の確保対策を明言しているものの、看護師経験者の取り込みをメインとしているか、新人看護師の取り込みと定着をメインにしているかなど施策にはそれぞれの特徴があります。

 

いずれにせよ、転職の際には一見したデータではなく、人口と対比した看護師数、あるいは都道府県が実施している施策が自分に合っているかどうかまで見ながら、転職先を検討していきたいものですね。

 

【参考資料】

 

日本看護協会 看護統計資料 都道府県別看護職員、人口対比
https://www.nurse.or.jp/home/statistics/pdf/toukei06.pdf

 

埼玉県 第6期保健医療計画 第2部 保健医療の推進
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0701/iryou-keikaku/documents/585689.pdf

 

神奈川県 第6期保健医療計画 第3章 医療従事者の確保対策の推進
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/573934.pdf

 

千葉県保健医療計画(平成23年度~平成29年度) 第3章 保健・医療・福祉の連携確保
https://www.pref.chiba.lg.jp/kenfuku/keikaku/kenkoufukushi/documents/a215-252.pdf

 

愛知県地域保健医療計画 第3部第7章~第3部第9章
http://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/34629.pdf

 

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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