今後の日本で求められる医師像 “総合診療医”

第10回: 今後の日本で求められる医師像 “総合診療医”

今後の日本で求められる医師像 “総合診療医”

■ 記事作成日 2016/10/27 ■ 最終更新日 2016/10/27


筆者プロフィール

名前:紅 花子(べに はなこ) 
性別:女
PR:正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在はフリーライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

あと数年で「多死社会」になる日本

今後の日本で求められる医師像 “総合診療医”

 

元看護師のフリーライター元看護師のフリーライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で感じた“医師として活躍するために必要な素質”について考えてみたいと思います。

 

今回は、2017年から研修および養成が始まることになっている「総合診療医」について考えてみたいと思います。

 

日本の医療の現状

 

平成28年10月3日、厚生労働省は「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」を開催しました。

 

この有識者会議は、平成27年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」(以下、基本方針)が根底にあるようです。

 

この基本方針の中には「経済・財政一体改革」の取組として「経済・財政再生計画」が挙げられていますが、そこには「人口構造の変化や地域の実情に応じた医療提供体制の構築に資するよう、地域医療構想との整合性の確保や地域間偏在等の是正などの観点を踏まえた医師・看護職員等の需給について、検討する。」と明記されています。

 

厚生労働省ではこれまでにも、この基本方針に則り、医療従事者の需給に関する検討会などを開催してきました。そこでは、医師の需給推計や医学部の定員増員計画、特に地方における医師の偏在対策などについての議論が行われてきました。

 

そこから今度は、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(以下、検討会)を開催するに至った、ということのようです。

 

前置きが長くなりましたが、この検討会により公表されている資料によると、日本はあと数年で「多死社会」となるそうです。

 

2015年の死亡数(推計値)と、死亡者数が今後もっとも多くなると推計されている2040年とを比較すると、年間でおよそ36万人の差がある、とされています。

 

今後の日本で求められる医師像 “総合診療医”

 

検討会からの資料では、2015年も推計値となっていますが、2015年を実数値に置き換えると、その差はさらに広がり、38万人/年の差、となります。これが、多死社会の到来ということのようです。

 

また、死亡者数の死亡場所による年次別死亡数を見ると、1950年代は自宅での死亡が80%を超えていましたが、1980年代後半から30%を切るようになり、2000年代には15%程度になっています。

 

その代り、老人ホームや介護老人保健施設での死亡者数が増えてきましたが、2005年頃を境として、病院での死亡者数が減少傾向にあります。

 

日本の医療事情からみた“総合診療医”の需要

 

この様な背景がありつつ、日本は少子化の進行により、今後は医療者全体の人数も減っていくことから、全国的に病床数全体が減少していく傾向となっています。つまり、今後はさらに病院以外の場所での死亡が増える、ということです。

 

そこで厚生労働省では、数年からからかかりつけ医の普及に取り組んできました。

 

かかりつけ医とは

 

なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師

 

と定義されています。

 

平成28年度からは、日本医師会による「日医かかりつけ医機能研修制度」も始まりました。かかりつけ医は、診療報酬にも反映されることになります。

 

これを受けて厚生労働省の「専門医のあり方に関する検討会」では、総合的な診療能力を有する医師を「総合診療医」とすることを決め、専門医としての名称を「総合診療専門医」とすることとしました。その位置づけは、次のようになっています。

 

今後の日本で求められる医師像 “総合診療医”

 

つまり、神の手を持つ脳神経外科医や、天皇陛下の命を救った心臓血管外科医のような、ウルトラ級のスペシャリストだけではなく、より地域住民の声に耳を傾け、臓器に特化せずに総合的な診断ができる内科医が、これからの日本では必要だとされている、ということになります。

 

看護師視点からみた“総合診療医”に求められる資質?

 

私自身は、一定規模以上の総合病院での手術室勤務と、単科でのクリニック勤務経験があります。つまり、スペシャリスト的な医師と、総合診療医的な医師の、両方を見ているわけです。

 

単科は内科ではありませんでしたが、患者層としては圧倒的に高齢者が多く、そのクリニックでのメインとなる病態だけではなく、全身的な状況も判断する必要がありました(高齢者ですので、既往歴が多く、合併症のある人も多かった)。

 

その両方の医師を比べると、クリニックの医師は、患者さんの不定愁訴にも付き合い、患者さんからの話を聞くことに、一番の時間をかけていたと思います。

 

もちろん、総合病院のスペシャリスト的な医師も、患者さんの話に耳を傾けてはいたのですが、医師の入れ替わりもありますから、何年にもわたり、1人の患者さんvs一人の医師 という付き合い方をしている医師は、非常に少ないというのが現実でした。

 

一方で、クリニックであれば、患者さんと医師との「ウマ」が合わなければ、患者さんはかかりつけ医を変えることが自由にできるわけですから、医師の方も「人としての付き合い」を重視しているように感じました。

 

患者さんからは、メインとなる病態に対する訴えだけではなく、時には「孫が〇〇してくれて・・・」という、ある意味世間話のような話もありましたし、医療者からすれば関係のなさそうな症状が「きっと関係があると思う」と断言する患者さんもいました。

 

これが、内科クリニックだったら・・・と考えると、不定愁訴もさらに多くなると思いますし、1日のうちに何人もそういった患者さんの相手をしていくことになります。

 

それを横から見ている看護師からみると、患者さんの声に耳を傾けようとする姿勢が、総合診療医に求められているのではないかと、感じます。

 

しかも、そういった話を聞きながら、現在の病状を判断し、治療方針を適宜修正し、必要に応じて検査や処置を行い、場合によっては他院を紹介する、という複数の診療行為を、同時進行していくことになるわけですから、医師の頭の中はフル回転していると思います。

 

こういった柔軟性や、頭の回転力も、総合診療医には必要なのではないでしょうか。

 

名医よりも良医

 

私自身は現在の仕事柄、いろいろな立場の医師へ取材させて頂くこともあるのですが、ある医師に「名医になるより良医になれ、という言葉がある」と伺ったことがあります。

 

どちらも、優れた医師という意味では変わりないのだと思いますが、名医と良医とは、違うのだそうです。次回は、この辺りに触れてみたいと思います。

 

 

参考資料

 

厚生労働省 新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会  資料1 本検討会の設置に至る経緯
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000138743.pdf

 

同上 資料4 我が国の医療の現状
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000138746.pdf

 

e-stat 人口動態総覧  年次別にみた人口動態総覧
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001157964

 

国立社会保障・人口問題研究所 日本の正将来推計人口(平成24年1月推計)
出生中位・死亡中位家庭による推計結果
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401smm.html

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在はフリーライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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