研修期間はコミュニケーションスキルの練習期間でもある

第14回: 研修期間はコミュニケーションスキルの練習期間でもある

研修期間はコミュニケーションスキルの練習期間でもある

■ 記事作成日 2017/3/13 ■ 最終更新日 2016/3/13


筆者プロフィール

名前:紅 花子(べに はなこ) 
性別:女
PR:正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在はフリーライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

コミュニケーションスキルを研修医時代から磨くことの重要性

 

元看護師のフリーライター元看護師のフリーライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で感じた“医師として活躍するために必要な素質”について考えてみたいと思います。今回は“研修医のコミュニケーション”について考えていきます。

 

研修医は他職種に対してイエスマンであれ?

 

研修医時代は、自分の受け持ち患者さんの診療だけでなく、他の医師から技術を学ぶために、自分の担当患者以外の処置や手術の介助、研究や調査など、医師としての長い人生の中で最も多忙な時期なのではないでしょうか。

 

そんな多忙であるにもかかわらず、研修医時代は他職種、特に看護師からいろいろと“お願いごと”をされることが多くなります。

 

本当に医師としての力が必要で頼む場合もありますが、経験年数が長い看護師からすると、医師として頼りたいという気持ち半分、研修医に様々なことを学んで頂きたい気持ち半分という状況で、何かを頼むことが多いようです。

 

もちろん、時と場合にもよりますが、「多忙だから」、「自分でできるか不安だから」と、頼まれたことに対して何でもNOを出してしまうと、看護師の間で「あの研修医の先生は、何もしようとしない」というレッテルを貼られてしまうことがあります。

 

そうなると、それ以後“お願いごと”をさせる機会は圧倒的に減ります。これはこれで良いのかもしれませんが、看護師という職種との関係性が、悪化する可能性は否めません。

 

実際の事例を挙げてみます。

 

ある時、同期として赴任してきた研修医2人組がいました。

 

A医師は、いつも笑顔を絶やさず人当たりも良いからか、看護師からよく医療処置などの“お願い”をされていました。しかし、NOといったことは一度もなく、“お願い”をすると数分で飛んできて下さり、初めての処置でも物怖じせず、時には看護師に「これで良いの?」と確認しながら、必要な処置を行うという研修医でした。

 

一方のB医師は、A医師同様に人当たりは良いものの、看護師が“お願い”をすると、自分がすぐにできそうなものだけを選んで実施する、というタイプの研修医でした。

 

この2人の研修医の差は、研修期間が終了するころに、明らかになりました。A医師は、看護師をはじめとする医療スタッフからの信頼が厚く、医師としての医療技術も磨かれ、病院から一目置かれる医師へと成長を遂げ、研修期間後の残留を強く希望されました。

 

一方のB医師は、自分で施せる医療技術の偏りが大きいだけではなく、経験年数の高い看護師や他の医療スタッフからも「選んで仕事をする医師」というレッテルを貼られてしまい、関係性が悪くなってしまいました。

 

 

もちろん、患者さんにまでこれらが伝わることはあまりありません。

 

しかし、研修医という多忙な時ほどイエスマンとなっておくことで、医師としてのスキルが向上するだけではなく、他職種との関わり方も学ぶことができるのではないでしょうか。

 

これは、医師に限らず、どんな職種でも同じことです。

 

新人の頃に、自分のできる範囲とはいえ、周りの人からのちょっとした“お願い”に応えていくかどうかで、その人の仕事の幅は各段に広がり、信頼を得ることに繋がっていくのです。

 

 

研修医時代こそ、カルテではなく患者を診る?

 

研修医時代こそ電子カルテの画面ではなく目の前の患者を“診る”ことが必要なのかもしれません。ここでは、ある指導医の立場の医師の言葉を、思い返してみます。

 

ある時、とある病院C医師という研修医がやってきました。

 

ある科に配属された時、指導医にあたるベテランD医師は、C医師に「どんな時でも患者さんを“診る”こと」と伝えたそうです。

 

C医師は最初、意味が分からなかったのですが、実際にD医師の外来診療を見学する機会がありましたので、D医師指導医の行動を観察していたそうです。

 

するとD医師は、患者さんを診察室に呼び、あらかた診察をしました。特に異常はみられず、その旨を電子カルテに表示されている検査結果を見ながら患者さんに伝えたところ、患者はもう診察は終わりなのかというような不満そうな表情をしたようです。

 

するとD医師は、患者さんの胸に聴診器を当て、触診をし、同じことをもう一度患者に伝えました。すると患者さんは表情が一変。「ありがとうございます。」と、満足気に深々と頭を下げたのだそうです。

 

後に、その患者さんはD医師に対し、大きな信頼を寄せていることが分かったそうです。

 

現在の医療技術や医療機器による検査の結果が、実際に医師がほんの数秒診察しただけで、覆る可能性は低いでしょう。

 

しかし、電子カルテの画面を見ながら病状を伝えるのではなく、実際に患者さんに触れてコミュニケーションをとった後、同じ結果を伝えただけであるにも関わらず、大きな信頼を得るということにも繋がることがあります。

 

医療の知識や技術だけでなくコミュニケーションの練習も

 

医師の人生の中で最も多忙であろう研修医。しかし、この時期に培ったものは医師としての一生の支えとなっていくのではないでしょうか。

 

患者さんは、医療的な知識や技術だけでなく、医師との関わりも求めています。実際に、「医師のコミュニケーション能力が患者やその家族に多大な影響を及ぼす」という研究を行っているところもあるほどです。

 

また、地域包括ケアシステムの推進により、医療機関と在宅医療機関との連携が強化されている現在、医師のコミュニケーションスキルはますます必要とされるでしょう。

 

患者さんやその家族だけではなく、周りの医療スタッフとの連携力が、カギを握っているためです。

 

まとめ

 

研修医という時期は、非常に多忙であることは事実です。しかし、この時期に積極的にコミュニケーションスキルを上げることで、病院全体からも一目置かれる医師へと、成長できるのではないでしょうか。

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在はフリーライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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