Eテレ「きょうの健康」 H29年2月15日 13:35~
※画像はEテレ「きょうの健康」ウェブサイトより http://www.nhk.or.jp/kenko/kenkotoday/
2017年2月15日放送のEテレ「きょうの健康」では脂質異常症 隠れたリスクを見逃すな「食後高脂血症」をテーマに放送していました。以下は番組内容の要約ですので、番組を見落とした方などはチェックしてみてください。
出演者 岩田まこ都、黒沢保裕
出演医師 りんくう総合医療センター病院長 山下静也
脂質異常症 隠れたリスクを見逃すな「食後高脂血症」
油っぽい食事を摂ると、透明だった血液(血清の部分)は時間が経つにつれて白く濁っている。(白い部分が中性脂肪)
健康な人でも食後は若干濁るものの、しばらくすると透明に戻る。
食事で摂った中性脂肪が上手く分解されないために、食後血液中に中性脂肪が異常に増えてしまうことを「食後高脂血症」という。
食後高脂血症は動脈硬化、心筋梗塞、狭心症が起こりやすくなる。
通常の血液検査は空腹時の検査のため、食後高脂血症は分からない。
まさに食後高脂血症は隠れたリスク。
最近になって中性脂肪が空腹時とは別な振る舞いをすることや、動脈硬化の新たなリスクであることが明らかになってきた。
Q 食後、血液にどんなことが起こっているのか。
食事で摂った油は小腸で一端吸収され、その後中性脂肪をたっぷり含んだ巨大な塊が作られて血液中に入る。
この塊は肝臓に送られるまでの間にどんどん姿を変えていく。
中性脂肪が少しずつ分解され脂肪酸というものになり、塊から離れていく。
脂肪酸は細胞に入ってエネルギー源になる。
(中性脂肪が)姿を変えていく途中の塊を「レムナント」と呼ぶ。
どんな人でも脂質を摂ると、このようなプロセスが起こる。
ところが中性脂肪が分解されて肝臓に送られるというプロセスが遅い人がいる。
そうするとレムナントが血液中に異常に増えて、食後の中性脂肪値が上昇する。
本来すぐに分解して消えていくはずのもの(レムナント)が、血液中に長く居座ってしまうという状態が食後高脂血症の正体。
Q 中性脂肪は食後どれくらい増えるのか。
健康な人でも、食後は中性脂肪がある程度増える(食後3~4時間で最大の150~160㎎/dl)が、食後6~8時間経つと正常化する。
ところが食後高脂血症の人は、まず食後の中性脂肪の値も極端に高くなり(200以上)、そのピークは食後5~6時間後と遅くなる。
しかも8時間経っても空腹時の値に戻らない。
食後高脂血症の診断の目安は(まだ定められてはいないが)、食後4時間後の中性脂肪が200㎎/dl以上。
Q 食後高脂血症は動脈硬化をなぜ起こしやすいのか。
レムナントは中性脂肪だけでなく、食事で摂ったコレステロールも含んでいる。
食後高脂血症は長時間血液中にレムナントが居座っているうちに、血管壁に入り込んでしまう。
そして分解されてコレステロールが(血管壁に)溜まっていき動脈硬化が起こり、狭心症や心筋梗塞になる危険性が高まっていく。
しかもレムナントは悪玉コレステロールよりも血管壁に入り込みやすい。
またレムナントとして入り込んだコレステロールは、プラークが破れたときにできる血栓を一層悪化させる。
つまり動脈硬化の新しいリスクがもう一つ(レムナント)分かってきたということになる。
食後高脂血症によって狭心症や心筋梗塞の危険度がどれくらい増すかというと、中性脂肪(食後2時間値)が84以下の人のリスクを1とすると、167以上の人はおよそ3倍のリスクになる。
食後高脂血症は空腹時の血液検査では分からないため、自分のリスクを正確に知るためには、食後の検査も受けるということは必要。
空腹時の中性脂肪が高い人は、やはり食後も高い傾向にあるが、(空腹時は正常でも)食後だけ高くなるという人もいる。
Q 食後高脂血症はどんな検査で調べるのか。
標準的検査法はまだ定まっていない。
方法1
12時間絶食後血液検査を行い、その後高脂肪食を摂取してもらう。
その後1、2、3、4、6、8時間後に血液検査を行う。
検査中はベッドで安静にしてもらう。(動くと数値の変動が大きいため)
検査時間の長さと採血回数の多さが、患者さんには若干の負担。
方法2
空腹時の血液検査と食後4時間後の血液検査をすることである程度は分かる。
糖尿病の人の場合は、ブドウ糖負荷試験と一緒に検査をする。
方法3(最新研究)※保険適応外
空腹時1回の血液検査で食後の中性脂肪の上昇を予測できればベスト。
そこで、レムナントに含まれるアポたんぱくB-48という物質に注目した。
中性脂肪は食事で摂取するものと肝臓で合成するものの主に2つがある。
このアポたんぱくB-48は特に食事で摂取した中性脂肪などの粒子を取り込んでいる物質の一つで、空腹時に測定しても食後の中性脂肪値を正確に予測できることが分かった。
このアポたんぱくB-48を使った採血方法が今後保険適応になることを期待している。
Q 食後高脂血症の検査を受けたい場合はどうしたらよいか。
主治医と相談して、検査を専門的に行っている医療機関に行くのがベスト。
Q 食後高脂血症の検査を特に受けた方が良いのはどんな人か。
メタボリックシンドロームの人は食後高脂血症になりやすい。
また糖尿病の人、若い頃より体重が増えてお腹が出てきた人(中年の男性)は目立った肥満がなくても注意してほしい。
Q メタボリックシンドロームではなぜ食後高脂血症になりやすいのか。
メタボリックシンドロームの根本には内臓脂肪の蓄積がある。
内臓脂肪が蓄積すると様々な悪いホルモンを分泌するようになり、糖・脂質の代謝を乱れさせ、インスリン抵抗性が増す。
インスリン抵抗性とは糖尿病の原因の一つになっているが、脂質の異常にも関係している。
インスリン抵抗性が影響して、食後の中性脂肪の分解を停滞させてレムナントを増やしている。
さらにインスリン抵抗性があると、小腸で作られる油の塊がそもそも多くなってしまう。
メタボリックシンドロームの診断基準
内臓脂肪蓄積の目安となる腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)に加え、血圧・脂質・血糖のうち2つ以上が異常値の場合、メタボリックシンドロームと診断される。
血圧は130/85以上、脂質は中性脂肪150以上あるいは善玉コレステロール40未満、血糖は110以上。
食後高脂血症の対策は、1.生活習慣の改善(食べ過ぎ・運動不足を改める)、2.高脂肪食を控える、3.脂質異常症の薬を検討する。
Eテレ「きょうの健康」2017年2月13日放送「脂質異常症 隠れたリスクを見逃すな「食後高脂血症」」より引用、要約、および台詞等一部書き起こし
この記事を書いた人
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