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第17回: 一つの分野を極める「匠の医師」か、幅広く活躍する「ジェネラリスト医師」か

一つの分野を極める「匠の医師」か、幅広く活躍する「ジェネラリスト医師」か

 

■ 記事作成日 2017/5/19 ■ 最終更新日 2017/12/6

 

2人の医師、それぞれの生き方

 

元看護師のライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で感じた“医師として活躍するために必要な素質”について考えてみたいと思います。

 

今回は、1つの専門分野を極めることが医師として働く方が良いのか、幅広い診療科での経験を経て活躍することが良いのか、実際に私が出会った2人の医師の生き方から考えてみたいと思います。

 

神経内科の1分野を極めたA医師

 

神経内科医であるA医師は、その道一筋、何十年ものスキルを持つ医師でした。神経内科の分野に関わる資格をいくつも取得し、さらには学会への研究発表も積極的に行い、実際に発表した論文は数知れず。その病院のある地域では“名医”といわれている医師でした。

 

そんな肩書を慕ってA医師の下にはたくさんの医師が集まり、同じ診療科の医師達からも崇められている存在です。名医の噂を聞きつけた患者さんも、他県から来院する人がいるほどの人気です。もちろん、看護師達からも神経内科の分野では、非常に尊敬されていました。

 

ただ一つの欠点があるとすれば、A医師は神経内科の分野にずっと身を置いていたため、他科に対する見識と診療経験が乏しい、という点です。例えばA医師が当直の時。A医師は内科系当直として数が月に1回の当直をこなしていました。

 

しかし、神経内科分野以外の患者さんが来院した時や、他科での入院患者さんの急変時など、的確な指示が出てこないことが多く、看護師からは「頼りない」という評価も、同時に受けていたようです。

 

呼吸器科→産婦人科→消化器外科での経験があるB医師

 

呼吸器科、産婦人科という全く異なる2つの診療科を経て、消化器外科で働くB医師。消化器外科への転向は、ある程度の年齢を経てからだったため、消化器外科の医局、特に「同期」や「ちょっと年下の先輩」たちの間では、年齢相応の対応ではなく、若干「下に見られている」という印象がありました。

 

しかし、それまでに得てきた知識や経験を活かし、一人の患者さん、一つの疾患、一つの症状にも、多方面からアプローチすることができるため、患者さんからの信頼はとても厚い医師です。さらに、看護師達からは「当直の際にはどんな疾患・病状でも、冷静に対応してくれる」と、一目置かれている存在の医師でした。

 

もちろん、B医師自身も「この診療科ではまだまだ下っ端」という意識があるからか、B医師の口癖には「経験値は年齢に勝る」というのがありました。その言葉通り、医局長クラスの医師に助言を求めることは多々ありますし、「ちょっと年上の先輩」や、外来・病棟の看護師にも、分からないことはしっかり教えを乞う、というスタンスだったようです。

 

「専門家」「ジェネラリスト」、医師の生き方としては、どちらが得をするのか

 

では、この2人の医師の例から、一つの分野を極めることと、広い知識を持っていること、どちらがより良い医師であるのかを考えてみましょう。

 

A医師は、長年培ってきた経験や患者さんの症例から、一つの分野に対しては確固たる地位を得ています。その分野では“名医”として崇められ、きっと最終的にはその分野の医局長、もっと上を目指すなら、病院長やその分野の学術の長を務めていくことも、可能となるでしょう。

 

まさに「一つの道を極める」という生き方なのだと思います。もし、周囲の医療者から「ここが欠点」と言われることがあっても、それを覆すだけの何かがあれば良いのです。

 

一方のB医師は、確かに他の診療科を渡り歩いてきているため、現在所属する診療科では、自分よりも若い医師が名医として扱われることは、避けては通れないでしょう。年齢の割に知識が浅いなどと、同僚の医師から言われてしまうこともあるかもしれません。

 

しかし、この様々な診療科の患者さんを診察できるという点は、医師の将来としては有益であり、今後は多くの場面で求められるスキルなのかもしれません。

 

どちらの医師も、世の中では必要とされている

 

現在、医学部の増設や医師の確保対策に、国を挙げて取り組んでいますよね。その結果、今後は医師数そのものが充足していくことが予測されています。

 

また、全ての医療機関や診療科で医師が不足しているというわけではなく、実際のところ、医師が充足している医療機関や診療科もあります。

 

今後、医師の絶対数が増え、充足する診療科が増えていくのであれば、医師としてのスキルを今以上に磨いていく必要が出てくるでしょう。

 

しかし、他の診療科の診療も出来るとなれば、自分が必要とされる診療科に戻ることが出来ますし、自分が働く医療機関において複数の診療科での診察も出来ます。

 

また、現在は全国的に「総合診療医」が求められる時代ですので、例えば地域医療や在宅診療など、複数の分野の知識と経験が求められる分野があることは明らかです。

 

1つの道を極めて突き進むのか、複数の道で知識と経験を積み重ねていくのか。いずれのパターンでも、医師として十分活躍していくことは出来るでしょう。どちらが“得をする”生き方なのかは分かりません。

 

結果的に自分自身が誰にどう見られたいか、医師としてどう活躍したいのか、将来どのポジションに就きたいのかなど、個人の仕事への展望や、生き方によって変わってくるのではないでしょうか。

 

参考資料

 

厚生労働省診療科別現員・必要医師数
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/other/dl/07.pdf

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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