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第46回:保健医療計画からみる長野県の姿

長野県の医師転職事情と未来~保健医療計画と地域医療から読む

 

■ 記事作成日 2018/4/3 ■ 最終更新日 2018/4/3

 

保健医療計画からみる長野県の医師転職事情

 

元看護師のライター紅花子です。

 

「保健医療計画からみる都道府県の姿」というこのコラム、前回は岐阜県についてご紹介しました。今回は、中部地方にある長野県の医療情勢を、長野県の第6次保健医療計画にあたる、第1期信州保健医療総合計画をもとに見ていきます。

 

長野県の現状を分析

 

長野県は本州の中央に位置し、総面積は13,562.23㎢で土地の広さは全国で4番目。隣接する県の数は8つで、これは日本で最も多くなっています。

 

3,000m級の山々と清流が美しい自然豊かな県で、日本百名山の数は全国1位。
平成22年の調査では、平均寿命が男女共に全国1位で、しかも後期高齢者の1人当たりの医療費は全国で4番目に低くなっています。さらに65歳以上の就業率も全国1位(平成27年調査)で、トップクラスの「健康長寿」県の地位を確立しています。

 

ちなみに平成24年の調査では、野菜の摂取量が全国1位となっており、これも健康長寿の一要因かもしれません。さらに女性の社会進出も進んでおり、平成27年時点で、女性の就業率は全国2位となっています。

 

豊かな自然があふれる長野県は農産品も多く、レタス・セロリ・エリンギ・ぶなしめじ・えのきだけ・ワイン用ブドウの生産量は全国1位、りんご・ぶどう・ソバの実は全国2位と、全国の食卓に出回る食材の多くが長野県で作られています。

 

温泉地、キャンプ場、スキー場など観光地の豊富さも全国有数で、1998年に冬季オリンピック会場になったことは、皆さんご存知の通りです。
長野県の平成27年の総人口は2,100,000人、全国で16番目に人口の多い地域です。

 

図1 長野県 人口の推移

 

平成13年をピークに長野県の人口は減少傾向となっており、今後も人口の減少が予測されていますが、その一方で、老年人口は今後も増加すると見られています。

 

図2 長野県の高齢化率と人口増加率の推移

図2 長野県の高齢化率と人口増加率の推移

 

内閣府の「平成28年版高齢社会白書」によれば、平成26年の高齢化率は29.2%と全国で11番目。さらに平成52年には38.4%と、14番目に高い高齢化率になると予測されています。

 

平均寿命が高いだけに、今後は必然的に高齢者数も増加していくため、高齢化率は着実に上昇していくことになるでしょう。

 

長野県の人口動態は

 

引き続き、長野県の人口動態に関するデータをいくつか見ていきたいと思います。

 

平成27年の出生率は人口1000人当たり7.5となり、全国平均の8.0を下回っています。
一方、合計特殊出生率は1.58であり、平均値である1.46を上回っています。

 

長野県は女性の社会進出率が全国で2番目に高く、保育園も待機児童ゼロのため、働きながら子育てしやすいことが、合計特殊出生率の高さと関係しているのかもしれません。

 

続いて死亡に関するデータを見ていきます。

 

平成26年の死亡者数は24,534人で、人口1000人当たりで見ると11.8です。全国平均である10.3をかなり上回っていることからも、高齢化が進んでいることが読みと取れます。

 

また、死因を見ていくと、悪性新生物が最も多く、続いて心疾患、脳血管疾患、肺炎の順となっています。全死因に占める3大死因の割合は55.1%(平成22年)で、全国平均の55.6%とほぼ同じ水準で推移しています。

 

長野県の医療状況はどうなっているのか

 

次に長野県の受療率を見ていきます。

 

図3 長野県 受療率

図3 長野県 受療率

 

平成26年度の受療率をみると、入院では全国平均が人口10万人当たり1,038に対して長野県は970と全国平均より低く、13番目に入院受療が少なくなっています。

 

また、外来受療率も全国平均の人口10万人当たり5,696に対して長野県は5,122と平均を下回っており、外来受療率の低さは9番目。高齢化率が高い県でありながら、医療への依存度は低い県であることが読み取れます。

 

年齢別の受療率を見てみると、県内における75歳以上の高齢者の受療率は人口10万人当たり12,801(平成20年)と最も多いものの、全国平均の16,980と比較すると、だいぶ低い値です。

 

その他の各年齢においても、受療率は全国平均と同等もしくは下回る値となっており、全般的に医療への依存度が低い傾向が見られます。

 

傷病別に見ると、消化器系の疾患が患者総数の16.1%と最も多く、続いて循環器系の疾患が13.4%、筋骨格系及び結合組織の疾患が13.1%となっています。

 

こちらもほとんどの疾患において、受療率は全国平均を下回っている状況になります。

 

長野県の保健医療圏はどうなっているか

 

長野県の保健医療圏は、他の都道府県同様に一次医療圏、二次医療圏、三次医療圏にそれぞれ分かれています。

 

図4 長野県 二次医療圏

図4 長野県 二次医療圏

 

長野県は山脈などによって地域が分断されているため、車両による遠方への救急搬送は困難なのが現状です。また面積も広大なため、各地域で救急医療を完結させるため、県内は4つの三次医療圏に分けられ、その中でさらに細かく二次医療圏が設定されています。

 

長野県の二次医療圏は、人口が最も多く県庁所在地を含む長野医療圏、さらに人口の多い順に松本医療圏、佐久医療圏、諏訪医療圏、上小医療圏、上伊那医療圏、飯伊医療圏、北信医療圏、大北医療圏、木曽医療圏の10医療圏で成り立っています。

 

二次医療圏ごとに医療施設数の状況を見ると、上小医療圏以外のほぼすべての医療圏において、医療施設数は人口10万人当たりで全国平均を下回っている状況です。

 

各医療圏を見ると、長野医療圏、松本医療圏、佐久医療圏、上小医療圏、諏訪医療圏は、長野県全体の人口10万人当たりの施設数を超えているものの、他の医療圏は、県の平均施設数に満たない状況となります。

 

平均寿命が全国トップクラスで、その分、高齢化率も比較的高い長野県。今後平均寿命1位をキープし続けることによって、高齢化率がますます加速していくことが考えられます。

 

医療依存度は少ないとはいえ、実は医療の偏在が顕著であり、医療体制を整えていくことが必要であるとも考えられます。
次は引き続き長野県の医療面を見ていきます。


長野県の病床数とこれから

軽井沢白糸の滝

 

長野県内の各保健医療圏における既存病床数と基準病床数について見ていきます。

 

図5 長野県 既存病床数と基準病床数

図5 長野県 既存病床数と基準病床数

 

長野県では、既存病床数が基準病床数を1266床上回っているという現状があります。

 

各医療圏での既存病床数と基準病床数の差が10床~200床未満という中で、上小医療圏のみが566床と、大幅に基準病床数を超えています。その一方で、松本医療圏、諏訪医療圏は平成29年度末までに、病所数の増床が検討されているという状況です。

 

図6 長野県 病床数の推移

図6 長野県 病床数の推移

 

さらに精神病床、結核病床においても、県全体で既存病床数を基準病床数が上回っています。また、長野県では平成14年前後をピークとして、県全体の病床数は、減少傾向に転じています。病床の利用率や、平均在院日数も、全国平均よりも低い水準で推移しているようです。

 

長野内にはどのような機能を持つ医療機関があるか

 

長野県では、地域医療再生計画として3つの施策を打ち出しています。

 

1つは循環器疾患などにおける三次救急医療機関の機能強化と、その負担軽減のための二次医療圏における救急患者受け入れ体制の強化。
2つ目は高度・専門がん診療機能の強化。3つ目は医師・看護人材の確保対策です。

 

このことを念頭に置いたうえで、現在の長野県の医療機能を見ていきましょう。

 

図7 長野県 特定の医療機能を有する病院数

図7 長野県 特定の医療機能を有する病院数

 

特に注目すべきなのは、地域医療支援病院の部分です。長野県では、特定機能病院として大学附属病院が1施設、地域医療支援病院には6つの二次医療圏に8つの病院が指定されています。また、三次救急医療機関は計7カ所設置されています。

 

長野県では、設備や構造の点では要件を満たしている病院でも、地域医療支援病院の承認がなかなか進んでいません。

 

その理由として、「紹介患者中心の医療を提供している(他の医療機関からの紹介率が80%を超える等)」という条件を満たすのが難しいことが挙げられています。長野県では、設備の整った病院に、初診を含めた多くの患者が集中することに要因があるようです。

 

このことから、役割分担と連携の強化によって、かかりつけ医は日常・継続的な医療の実施、病院は高度な医療の円滑な実施というそれぞれの医療機能を活かすことで、地域医療支援病院の承認を進めていくことが必要となりそうです。

 

在宅医療については、県内の在宅医療を受ける患者のうち、92%を65歳以上の患者が占めており、今後さらに高齢者が増加していくことを考慮して、更なる在宅医療の充実が求められています。

 

長野県は在宅での看取りが進んでおり、人口10万人当たりの在宅死亡者数は824.9人と全国平均の669.4人を大幅に上回り、全国で最高となっています。

 

県民の意識調査でも、終末期は可能な限り自宅での療養を希望する人が6割以上、要介護状態でも自宅や子どもの家での介護を希望する人が4割以上となり、実際に在宅(自宅または老人ホーム)で亡くなる人は、全国でも上位です。

 

図8 長野県 在宅と医療機関における死亡者数の推移

図8 長野県 在宅と医療機関における死亡者数の推移

 

しかしそれと同時に、在宅医療においても、急変の対応や24時間対応ができるといった機能を持つ医療機関は地域によって偏在が見られ、各地域での体制の整備が課題となるようです。

 

一方、長野県では現在、三次救急における医療機能の強化に取り組んでおり、老朽化した施設の一新もあってダイナミックな再編が行われているようです。

 

長野県の高度先進医療を担う信州大学医学部附属病院は、最先端の医療設備を備える新病棟「包括先進医療棟」が平成30年4月にオープンします。がん治療、救命救急、周産期医療の拡充、女性専用病棟の新設などが注目されます。

 

また、長野圏域の基幹病院である長野赤十字病院は、2025年新病院着工、2027年竣工を目指して動いています。また、救命救急センターである南長野医療センター篠ノ井総合病院は、新病院が平成29年10月に竣工しました。

 

東信地域の三次救急を担う佐久総合病院は、医療機能の分担を明確化する方向で再構築を行っており、基幹医療センター、地域医療センターと段階を分けて医療施設の建て替え・再編成を進めています。

 

一方、長野県は無医地区が比較的多く、その数は全国で12番目となっています。へき地診療所も全国で9番目に多く、1日平均患者数は全国平均を大きく下回っていることから、無医地区への医師の配置やへき地診療所の維持も課題となっています。

 

こうした実情を踏まえて、医師の人材確保体制を見ていきましょう。

 

長野県内の医師数と今後の確保対策

 

図9 長野県 医師数の推移

図9 長野県 医師数の推移

 

長野県内の医師数は人口10万対の医師数を全国と比較すると、平成22年では全国平均の219.0人を下回る205.0人であり、全国で33番目となります。

 

県の平均を超える医師数を確保できているのは松本医療圏、佐久医療圏のみとなっており、医師の地域偏在の解消が課題となっています。

 

また、医師の診療科にも偏在が見られます。以前は全国平均を下回っていた産婦人科や小児科分野は、着実に医師数を増やして全国平均を上回ったものの、そのほかの診療科を見ると、麻酔科、精神科の人口10万人当たりの医師数は全国平均を下回っています。

 

また、県内の病院では幅広い診療能力を持つ総合医が求められています。

 

女性医師の割合は、長野県では、女性医師の割合が28.2%と、全国平均を下回っているのが現状です。今後、女性医師が出産・子育てで離職せず働き続けられる環境の整備が重要と考えられます。

 

長野県では、健康長寿を支え、患者の全身を幅広く診療できる「信州型総合医」の養成と、即戦力を確保することを課題としています。

 

奨学金などを活用して、卒業した医師をそのまま長野県内へ定着させるための取り組みも行っています。その結果、長野県内出身の高校生が、そのまま長野県内の医学部へ進学する例が増えてきました。

 

また、信州大学医学部と県立病院機構が連携して「信州医師確保総合支援センター」を設置し、医師のキャリア形成を支援しながら地域医療を担う医師の確保・定着を進めています。

 

専任の医師がキャリア形成の相談に応じながら、長く勤務できるよう支援していくのが特徴で、長野県内での勤務を検討している県外在住の医師についても、勤務から暮らしまできめ細かく支援をする体制を整えています。

 

まとめ

善光寺

 

長年、男女ともに平均寿命のトップクラスをキープしながら、高齢者の受療率が全国平均よりもだいぶ低く、医療依存度の低い長野県。
地域の実情に即して独自の医療政策を進めながら、高度な医療を担う病院と地域の病院・診療所の役割分担と連携に向けて、総合診療を担う医師の確保に一層力を入れています。

 

また、もともと女性の就業率が高い県であることから、保育園にも子供を預けやすく、女性医師の就業環境もしっかり整えられていくことでしょう。

 

地域に密着した総合医、無医地区での診療に興味のある医師にとって、キャリア形成や暮らしの面までサポート体制の整った長野県は、転職を考える際の魅力的な選択肢のひとつとなるかもしれません。

 

 

参考資料

 

長野県保健医療計画 
https://www.pref.nagano.lg.jp/kenko-fukushi/kenko/iryo/shisaku/sekai1.html

 

国土交通省 国土地理院 都道府県別面積の順位
http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO/201710/H29_sanko.pdf

 

長野県ホームページ
https://www.pref.nagano.lg.jp/koho/kids/menu02/ookisa.html

 

長野県観光部 信州ブランド推進室
http://shiawase-shinshu.jp/data

 

長野県保健医療計画
https://www.pref.nagano.lg.jp/kenko-fukushi/kenko/iryo/shisaku/sekai1.html

 

総務省統計局 平成27年国勢調査
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/pdf/gaiyou.pdf

 

第1節 高齢化の状況 内閣府
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_1.html

 

平成 27 年 人口動態統計月報年計(概数)の概況  
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/dl/gaikyou27.pdf

 

厚生労働省 平成26年患者調査の状況 受療率
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/02.pdf

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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