広島県の地域医療と保健医療計画 = 連載コラム「保健医療計画からみる医師と地域医療の未来」第17回

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広島県の地域医療と保健医療計画

第17回:保健医療計画からみる広島県の姿

連載コラム「保健医療計画からみる医師と地域医療の未来」

広島県の保健医療計画

「保健医療計画からみる都道府県の姿」というこのコラム、今回は中国地方でも人口の多い都市、広島県についてお伝えしていきます。

広島県の現状を分析

広島県は中国地方に位置し、14の市と9の町から成り立っています。広島県の国土面積は8,479.03?、全国で10番目に広い国土を持った地域です。

北と南を山地に挟まれているその地形から、降水量、降雪量が少なく、比較的晴天が多い地域のようです。

その気候を生かした、畜産業、林業が盛んにおこなわれ、広島牛は高級ブランド牛としてその名が知られています。また、瀬戸内の海の恵みを生かして牡蠣の生産も盛んにおこなわれています。

さらに、広島県は全世界で初めて原子爆弾が落とされた地でもあり、二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないと“国際拠点ひろしま構想”を推進しており、全世界の平和の在り方について考えているという特徴もあります。

広島県の平成27年10月現在の総人口は2,845,000人。全国で12番目に人口の多い都市となります。第1回目の国勢調査が行われた大正9年以降、人口は増加傾向にありましたが、平成に入ってからはほぼ横ばいで推移しています。

平成22年に行われた国勢調査人口集中地区境界図を見てみると県庁所在地である広島市に人口が集中しているということが分かります。

広島市の平成27年度の人口は1,194,034人で、広島県の総人口の約半数近くを占めており、次いで山口県との県境にあり鉄道が発達している福山市が464,811人でした。

人口の増加率をみると、この2都市では増加傾向にあるものの、他の市では減少傾向となっているようです。

人口の内訳を見てみると総人口に占める65歳以上の割合は27%を超えており、広島県でも高齢化が着々と進んでいます。

特に市に属していない町の高齢化率は顕著であり、大崎上島町では、生産年齢人口や年少人口を高齢化人口が上回っているという結果になりました。

図1 広島県 人口の推移

図1 広島県 人口の推移

広島県の人口動態は

それでは、広島県の人口動態に関するデータをいくつか見ていきたいと思います。

平成26年の出生率は人口千対では8.5となり、全国で9番目に多い結果となりました。また、合計特殊出生率は1.55であり、その年の平均値である1.46をわずかながら超え、全国12位という結果になりました。

図2 広島県 高齢化率と人口増加率の推移

図2 広島県 高齢化率と人口増加率の推移

一方高齢化率は、平成22年の時点ですでに24%に届くレベルでした。特に安芸太田町の高齢化率は47.9%であり、約2人に1人が高齢者という現実があります。

60歳から75歳までの高齢者の割合が33.7%と最も多く、今後はさらに高齢化率が上昇していくことが見込まれます。

少し古いデータですが、「広島県保健医療計画 第6次」には、平成22年現在の各市町村の高齢化率が掲載されています。元は平成22年の国勢調査の結果から作図されたもののようですので、今回はこのデータを元に作図してみました。

図3 広島県 市町村別の高齢化率

図3 広島県 市町村別の高齢化率

続いて死亡に関するデータを見ていきたいと思います。

平成26年の死亡者数は29,463人、人口千対では10.5となり、全国平均である10.1よりもやや多いものの、全国的に見ると、比較的死亡者数が少ない県といえるかもしれません。

「広島県保健医療計画 第6次」の資料によると、死因は悪性新生物が最も多く8,151人、続いて心疾患が4,770人、肺炎が2,997人となります。

図4 広島県 主要死因別の構成割合(平成24年)

図4 広島県 主要死因別の構成割合(平成24年)

統計開始後より死因第3位は肺炎であり、全国平均とほぼ同等です。他にも不慮の事故よりも老衰が多いなどの特徴が見られますが、この辺りも時々順位が入れ替わることがあるようです。

広島県の医療状況はどうなっているのか

次に広島県の受療率を見ていきます。

平成26年度の入院受療率をみると、全国平均が人口10万対1,038に対して広島県は1,210となり、入院率は全国平均を上回っています。その一方で、外来受療率は全国平均が人口10万対5,696に対して6,215と全国平均を大きく上回る結果となりました。

図5 外来および入院受療率の全国比較

図5 外来および入院受療率の全国比較

年齢別に見てみると、64歳以上の受療率が40%を超えているようですので、やはり高齢化率の高いことと受療率の間には、何らかの相関関係があると考えられます。

また、病院の平均在院日数を見ると、全国平均と同等の日数であるにもかかわらず、病床利用率は全国平均を大きく上回っており、その中でも特に療養病床の利用率が高いことも、高齢化率の増加と結び付く結果となりました。

広島県の保健医療圏はどうなっているか

広島県の医療圏は、一次医療圏、二次医療圏、三次医療圏にそれぞれ分かれており、二次医療圏は7の医療圏に分類されています。

図6 広島県内の二次保健医療圏

図6 広島県内の二次保健医療圏

広島県の患者流入流出状況を見てみると、県庁所在地を抱え、人口の多い広島医療圏への患者よりも、そのお隣である広島西医療圏の方が流入、流出率が高く、いずれも20%を上回っていることが分かります。

広島医療圏は広島県内で最も人口の多い地域であり、さらに医療資源が発達している地域となるものの、一部には高齢化率の高い市町村を含んでおり、医療機関の利用率が比較的高い地域といえます。

医療資源が発達していることから他の医療圏やお隣の山口県からも患者がたくさん流入してくることで、患者の受け入れが困難となり、いわゆるたらいまわしの状況に陥っていることが課題となっているようです。

そんな中、広島西医療圏ではかかりつけ医体制を促進し、搬送体制の強化をすることで適切な症状の患者を適切な場所へ運ぶ取り組みがなされています。

その結果、不要不急の救急患者を減らしたことで空き病床をつくり、他の医療圏からの患者を受け入れているものと推測されます。

広島県の病床数とこれから

平和記念公園

平和記念公園

次に、広島県内の既存病床数と基準病床数について見ていきます。平成25年3月時点でのデータによると、全ての医療圏で、既存病床数が基準病床数を上回っており、合計して約5000床ほど既存病床数が基準病床数を上回っていることが分かります。

図7 広島県内の既存病床数と基準病床数の比較

図7 広島県内の既存病床数と基準病床数の比較

広島県は、病院数が人口10万対の全国平均である6.7よりも高い8.7となるため、今後は病院そのものの改編も視野に入れられる可能性が高くなります。特に多いのが、やはり広島県の医療の中心である広島医療圏です。

基準病床数は1万を超えていますが、既存病床数との差が2,500床近くもあるため、すでに病床の改編などが始まっているのではないでしょうか。

また、精神、結核病床も基準より、既存病床数がやや多く、今後は改編に向けた動きがあると推測されます。

現在、広島県の入院受療率として最も多いのが精神病床となっており、全国平均を大きく上回っています。今後は、精神病床の改編も必要とされており、精神疾患分野での外来や地域での取り組みが、注目されることとなります。

広島県のこれまでの病床数の推移をみると、病床数の実数、人口10万対病床数ともに、平成17年(2005年)頃がピークだったようです。

図8 広島県内の病床数の推移

図8 広島県内の病床数の推移

広島県内にはどのような機能を持つ医療機関があるか

広島県では県内の県立大学病院を中心に第三次医療圏の確保をしています。

また、広島県内の人口が過密状態にある広島医療圏には、三次医療に対応可能な医療機関も集中しており、他の医療圏から患者が流入してくるという現状に繋がっていくようです。

図9 広島県内の特定の医療機能を有する病院数の比較

図9 広島県内の特定の医療機能を有する病院数の比較

広島県では、三次医療圏を担う医療施設を広島医療圏のお隣である「広島西医療圏」に増設し、広島医療圏内で飽和状態となってしまう状況を、改善しようと試みています。

また、それ以外の医療圏でも、ヘリポートの設立や救急車の台数を増加などにより、三次医療の充実を図ってきているようです。

さらに平成23年より、受け入れ困難ケースの解消、必要に応じた医療施設の受療を目的とした“救急医療コントロール機能”を開始し、さらなる三次医療圏の強化を図っています。

また、へき地医療への対策も行っており、例えば「内科」を標榜とする医療機関へのアクセス状況では、一部の島諸部や山間部を除き、30分以内でのアクセスを可能とする、などの取り組みをしている状況です。

広島県内の医師数と今後の確保対策

厳島神社

厳島神社

平成24年現在のデータをみると、医療機関で働く医師数は6,992人であり、平成20年に比べると増加傾向ではあります。

しかし、市町別では11市町で医師数が減少していることから、地域ごとでの医師の偏在が表面化してきているようです。

また、北海道に次いで2番目に無医地区数が多い広島県では、広島医療圏にも7地区の無医地区が存在していることが分かります。

医療施設で従事する医師数は全国平均が人口10万対 226.5人であるのに対し、広島県では245.5人と、こちらも全国平均を上回っています。病院に従事する医師数が多い地域であることが分かります。

図10 広島県内の医師数の推移

図10 広島県内の医師数の推移

一方、広島県の調べでは、医師数全体は増えているものの、過疎地域での医師数は減少しており、地域における「医師の偏在」が大きな課題となっているようです。

広島県全体では、8つの市町で医師数は増加していますが、13の市町で医師が減少しています。

特に平成20年(2008年)から平成22年(2010年)までの2年間では、広島市の医師数は238名増加している一方で、その周辺の市町では多くが減少となっています。

図11 市町ごとの医師数の増減

図11 市町ごとの医師数の増減

広島市内には、広島大学病院、広島市民病院、県立広島病院、広島赤十字原爆病院など、広島県内の中核を担う病院が半径数キロ圏内に集中しているという状況があります。

しかしながら、一歩広島市を出ると周辺の地域はいわゆる「へき地」であるところが多く、特に中山間地域の中核的な病院等において、医師や看護職員等の確保が困難となっており、他の医療機関からの支援なくしては、へき地への医療支援体制が整わない、という状況にあります。

その理由の1つが、公立診療所や民間診療所における、医師の高齢化による後継者問題のようです。

こういった状況を鑑み、広島県では医師の確保対策を一層推進していくため、平成23年に広島県地域保健医療推進機構を設立し、医師の招聘や確保体制の強化、特に山間地域への医師の配置調整、人材育成等を積極的に行うことを始めています。

若手の医師数の増加や過疎地への医師数の増加、女性医師の就業環境調整などを具体的な数値で目標を出し、県を挙げて取り組んでいるようです。

医師や医療資源の地域偏在が問題となっている広島県。その対策には、具体的な目標数値を定めており、平成30年(2018年)以降の「第7次 保健医療計画」では、これらの取り組みへの結果が、明確となってくるのではないでしょうか。

今後の取り組みに、期待できる地域です。


参考資料

広島県ホームページ 人口・面積・気候
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/19/kids-01.html

統計局平成27年国勢調査
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/pdf/gaiyou.pdf

平成22年国勢調査人口集中地区境界図
http://www.stat.go.jp/data/chiri/gis/did.htm?/shichoson_34

広島県 人口・世帯平成27年度
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/toukei/kokuseityosa.html#h27

厚生労働省 平成26年患者調査の状況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/02.pdf

広島県保健医療計画
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/97230.pdf

厚生労働省 人口統計月報
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/dl/gaikyou27.pdf

厚生労働省 平成26年受療率
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/02.pdf

総務省統計局 人口推計(平成25年10月1日現在)結果の要約
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2014np/

厚生労働省 受療率
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/02.pdf

厚生労働省 医療計画
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/

国立社会保障・人口問題研究所 地域医療計画
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/sakuin/kikan/..%5C..%5Cdata%5Cpdf%5C00330406.pdf

データ参照元

統計局 平成26年医療施設(静態・動態)調査 下巻 年次 2014年
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001141081

同上 平成25年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001126654

同上 平成23年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001102729

同上 平成20年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001060675

同上 平成17年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001060675

同上 平成14年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001048369

同上 平成11年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001048408

同上 平成8年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001048434

平成12年 医師・歯科医師・薬剤師調査医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/00/tou05.html

人口10万対医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/00/tou06.html

平成16年 医師・歯科医師・薬剤師調査医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/tou12.html

人口10万対医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/tou13.html

平成20年医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/08/dl/toukei02.pdf

人口10万対医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/08/dl/toukei02.pdf

平成24年医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/12/dl/toukeihyo.pdf

人口10万対医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/12/dl/toukeihyo.pdf

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紅 花子

紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在はフリーライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。
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