宮城県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む

第32回:保健医療計画からみる宮城県の姿

宮城県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む

■ 記事作成日 2017/10/4 ■ 最終更新日 2017/10/4


保健医療計画からみる宮城県の医師転職事情

 

元看護師のフリーライター紅花子です。

 

「保健医療計画からみる都道府県の姿」というこのコラム、今回は東北地方の宮城県の医療の現状について、宮城県の第6次地域医療計画をもとにお伝えしていきます。

 

宮城県の現状を分析

 

宮城県は4県に隣接した太平洋を望む地域にあり、35市町村で構成されています。
総面積 は約7,285.6平方キロメートル、四国4県に匹敵するほどの広大な面積を有する、全国で4番目に大きい県となっています。
東北地方の中でも温暖で、積雪量が少ない地域という特徴があります。

 

宮城県は人口の4割以上が仙台市に集中しています。
仙台市は盛大な七夕祭りで全国的に有名ですが、他にも仙台城や伊達政宗公像など、多くの見どころがあります。
また、海に面して広大な土地を持つことから、海の幸、山の幸が豊富に採れることでも有名で、ササニシキやひとめぼれといったブランド米をはじめ、牡蠣や仙台牛、まぐろ、フカヒレ、まいたけ、梨といったさまざまな特産物があります。

 

宮城県の平成27年10月現在の総人口は約2,334,000人で、全国で14番目に人口が多い県となっています。
平成17年に初めて減少傾向に転じ、以後減少が続いていますが、その一因として、平成23年3月に発生した東日本大震災の影響が考えられます。

 

全人口の約1割が死亡、行方不明となっている他、変わり果てた街に住み続けることができず、宮城県を去らざるを得ないという状況が、宮城県の人口動態に少なからず影響を及ぼしているものと考えられます。

 

宮城県の人口動態は

 

引き続き、宮城県の人口動態に関するデータをいくつか見ていきたいと思います。
平成27年国勢調査によると、出生率は人口1000人当たり7.8となり、全国平均の8.0を下回る結果となりました。
合計特殊出生率は1.31で、これも平均値である1.46を大きく下回っています。

 

図1 宮崎県 出生率と高齢化率の比較

 

人口構成割合を見てみると、年少人口は全国平均の12.6%に対して宮城県は12.5%、生産年齢人口は全国平均の60.7%に対して同61.7%、老年人口は全国平均26.6%に対して25.7%となっています。
人口構成割合は、全国平均にほぼ近いといえそうです。

 

図2 宮崎県 人口の推移

 

現在は出生率が全国平均を下回っていますが、年少人口は全国平均とほぼ変わらず生産年齢人口が多いので、今後出生数が増加する可能性もあります。
また、高齢者の割合が全国平均よりも低いことから、少子高齢化の進み方は他の県と比べて比較的緩やかであることが分かります。

 

また、平成29年8月時点で約1500人の県外避難者がおり、現在、宮城県が帰郷支援を積極的に行っていることから、県外避難者の帰郷によって人口動態がさらに変化する可能性もあります。

 

続いて死亡に関するデータを見ていきます。

 

平成26年の死亡者数は23,067人で、人口1000人当たりで見ると9.9人となり、全国平均の10.3を下回る結果となりました。
その死因は、上位から悪性新生物、心疾患、脳血管疾患という順位となっています。
平成23年には東日本大震災の影響で、不慮の事故が33.0%と群を抜いて1位となり、続いて悪性新生物が18.4%、心疾患が10.9%、脳血管疾患が8.7%となっていました。

 

悪性新生物と心疾患は年々上昇傾向であるものの、脳血管疾患は緩やかな減少傾向にあります。その一方で、死亡原因4位であった肺炎の割合が、徐々に上昇する傾向となっています。

 

宮城県の医療状況はどうなっているのか

 

次に宮城県の受療率を見ていきます。

 

平成26年度の受療率をみると、入院では全国平均が人口10万人当たり1,038に対して宮城県は900と全国平均を大きく下回っています。
東北地方では最も少なく、全国的に見ても少ない方から10番目でした。
また、外来受療率は全国平均が人口10万人当たり5,696に対して5,656と、わずかに全国平均を下回っています。

 

図3 入院および外来受療率の全国比較

 

受療率は男女ともに10代が最も低く、年齢が上がるにつれて上昇する傾向にあります。
傷病別に見てみると、入院受療では高い順に、精神および行動の障害、循環器系、悪性新生物となっており、外来では消化器系、循環器系、筋骨格筋系および結合組織となっています。

 

精神および行動の障害の受療率は年々上昇しており、全国平均を超えています。
その中でも、躁うつ病を含む気分(感情)障害や統合失調症に関する障害、ストレス関連の障害のほか、身体表現性の障害が受療率なども、比較的高くなっています。

 

宮城県の保健医療圏はどうなっているか

 

宮城県の保健医療圏は、他の都道府県同様に一次医療圏、二次医療圏、三次医療圏にそれぞれ分かれています。

 

図4 宮城県の二次医療圏

 

前回策定された第5次保健医療計画では7つの医療圏に分かれていましたが、第6次保健医療計画を策定するにあたり、患者の流入、流出率や人口動態を加味した上で、4医療圏に変更しています。

 

医療圏の設定については以前から見直しを検討していましたが、震災によって人口動態や患者の流入・流出率が著しく変動したこと、交通インフラなどが大きなダメージを受けたことを受けて変更となったようです。

 

宮城県の二次医療圏は、県庁所在地の仙台市があり人口が最も多い仙台医療圏、仙南医療圏、大崎・栗原医療圏、石巻・登米・気仙沼医療圏となっています。

 

平成24年9月時点における、石巻・登米・気仙沼医療圏の医療機関再開状況を見ると、旧石巻医療圏で88.1%、旧気仙沼医療圏では73.1%となっています。
しかし医療圏を再構築したことによって、全医療圏に中核病院となる大病院が配分され、医療を補い合いながら稼働することができるようになっています。

 

二次医療圏を再構築した後、各医療圏での患者の流入・流出率はどうでしょうか。

 

仙台医療圏では入院、外来共に98〜99%と高い割合で自医療圏の医療をまかなうことができています。
しかし他の3医療圏の医療自給率は、かなり低いのが現状です。
仙南医療圏以外の三つの二次医療圏は、外来であれば自医療圏で90%の医療をまかなえているものの、入院受療についてはどの二次医療圏も90%に達しておらず、仙南医療圏に至っては70%を切っています。

 

ほとんどの地域が仙台医療圏に入院医療を依存している状況なのかもしれません。
仙台医療圏は県外からの流入も多く、近隣県も含めた地域医療の基幹を支えていることがうかがえます。


宮城県の病床数とこれから

松島

 

宮城県内の既存病床数と基準病床数について見ていきます。

 

平成24年時点でのデータでは、既存病床数は基準病床数を2,769床上回っています。
また、受療率の高い精神病床においても既存病床数が基準病床数を上回っています。

 

図5 宮城県 病床数の推移

 

次に二次医療圏ごとに見ていくと、仙台医療圏だけが基準病床数を既存病床数が2380床も上回り、他医療圏では既存病床数が基準に満たない状況です。

 

図6 宮城県 二次医療圏別病床数

 

宮城県内には146の病院がありますが、仙台医療圏だけで81施設と、その半数以上を占めています。
仙台医療圏だけに医療機能がかなり集中しているということが分かります。
当計画が策定された時点(平成24年)には、全医療機関のうち80施設以上が休廃止となっています。

 

その一方で、全体的にみると、逆に増えているエリアもあります。
特に医科診療所は、仙台保健所管内の医科診療所は、30施設近くも増えたことになります。
現在でも復興に向けの動きが続いているようです。

 

図7 宮城県内 保健所別医療機関数(震災前と震災後との比較)

 

ところで、他の都道府県の記事の中でも、前述のような「二次医療圏別病床数」のイメージ図を使用していますが、宮城県は他の都道府県と違うところがお分かり頂けますでしょうか。

 

東日本大震災による大きな被害を受けた当道府県を「被災3県(岩手県、宮城県、福島県)」といいます。
現在の第6次保健医療計画を定めるにあたり、国は各都道府県に二次医療圏の見直しを求めましたが、「被災3県は見直しの対象から除く。但し見直しを妨げるものではない」としています。

 

当計画がまとめられた頃の宮城県は、未だ震災前の状態まで病床数が確保できてはいない状態だったようです。
特に仙台医療圏を除く三つの地域では、一見増床傾向にあるように見えますが、計画完了後に予測される「基準病床数」ではなく、当計画がスタートする平成25年4月の予測値です。

 

つまり、宮城県の第6次保健医療計画には、当計画完了時となる平成29年度末の「基準病床数」という目標がありません
これが他の都道府県とは少しところです。

 

宮城県全体に目を戻し、当計画で公表されている病床利用率を見てみます。

 

平成22年の病院における病床利用率を見ると、全病床で78.6%となり、近年は、ほぼ横ばい傾向となっています。
この数字は全国の82.3%よりもかなり下回っており、総数で見ると病床の利用率は低い県と言えるでしょう。

 

しかし病床の種類ごとに見てみると療養病床の利用率は全体的に高く、特に仙南医療圏では94%、旧登米医療圏と旧気仙沼医療圏では98%を超えています。
今後高齢化が進むにつれて、療養病床が不足する医療圏が出てくることが予測されます。

 

宮城県内にはどのような機能を持つ医療機関があるか

 

宮城県では、診療所もあわせて精神疾患や難病などの治療が適切に行えるよう、県内にそれぞれ専門の医療機関を細かく分散して設置しています。
特に受療率が高い精神分野では、震災によるPTSDを含む心のケアも含めて取り組めるような医療体制を整えています。

 

図8 特定の医療機能を有する病院

 

また、救急医療の分野においては、三次救急として6つの医療機関が指定されています。
救命救急センターのうち、3施設が仙台医療圏にありますが、受け入れ困難のために他の医療圏へ搬送する場合もあるのが現状です。

 

県内では救急告示医療機関数が少なく、独自に病院群輪番制を展開することで対応している自治体もありますが、それでも夜間の救急体制の維持に苦労しています。
今後は初期救急・二次救急体制を充実させ、救命救急センターとの役割分担を進めることが課題となっています。

 

仙台市では医師が同乗するドクターカー事業を24時間体制で運用しているほか、平成28年には県全域をカバーするドクターヘリの運行も開始されました。
他にも救急医療施設の病床数確保のため、病状に応じた患者の転・退院の促進、県民への救急医療制度に関する知識の普及などを対策として盛り込んでいます。

 

災害医療体制について、宮城県は、東日本大震災を教訓として平成25年に地域防災計画を見直しました。従来あった地震対策に津波対策が新たに加わり、県の災害医療救護体制の強化が進められています。

 

県は15施設を災害拠点病院に指定し、災害時に備えてヘリポートや発電設備、通信・情報網の整備を進めるほか、県全体や地域の医療救護活動の調整を担う災害医療コーディネーターの養成を進め、DMAT(災害派遣医療チーム)を保有する「宮城DMAT指定病院」10カ所と県が災害地派遣に関する協定を結ぶなど、着々と対策に取り組んでいます。

 

がん医療の分野における宮城県の特徴としては、仙南医療圏には「がん診療拠点病院」がありません。
しかしながら、平成23年には全拠点病院で、地域医療連携ツールとして「5大がんに関する地域連携クリティカルパス」を整備しています。

 

これにより、拠点病院が生活圏内に無い場合でも、近接する医療圏の拠点病院との連携を深め、拠点病院がある地域と同等のがん治療を受けられる体制を整えています。

 

宮城県内の医師数と今後の確保対策

 

厚生労働省の調査によると、平成22年の宮城県の医療施設に勤務する医師数は5,235人、人口 10 万人当たりでは222.9人となっています。
全国平均が人口10万人当たり230.4 人なので、医師数はやや少ないと言えます。

 

図9 宮城県 医師数の推移

 

さらに医療圏ごとに人口10万人当たり医師数をみると、仙台医療圏が 269.9 人と最も多くなっています。
医師数で見ると4,022人、宮城県の医師の約4分の3が仙台医療圏で従事していることになります。

 

また、内科の医師数は充実しているものの、圏域によっては一部の科での専門医不足が、問題になっているようです。
さらに、受療者の多い消化器の外科分野および多数の専門的な診療科が存在しない圏域もあることから、医療者、診療科の偏在解消が大きな課題となっています。

 

旧石巻医療圏における医師数は、被災の影響により減少傾向となっています。

 

このことから、宮城県ではドクターバンク事業や奨学金貸与、無料職業紹介など従来の対策に加え、宮城県の医師育成機構を設立して、さらなる奨学金の拡充、女性医師が働ける環境の充実など、県内就職希望者の精力的なサポートを行っています。

 

実際に、震災からある程度年月が経った現在では、宮城県内に就職を希望する医師も増えつつあるようです。

 

まとめ

伊達正宗像

 

震災によって人口動態だけでなく、医療機能や医療圏までも大きな変化を余儀なくされた宮城県。
もともと医療機能の偏在は見られていたものの、震災によってそれが顕在化してしまったとも言えるかもしれません。

 

しかし、県内では復興を目指し、また震災の教訓を生かして着実に医療機能を回復しています。
内科以外の専門領域で診療可能な分野がある、精神医療へ携わりたい、救急や災害医療について学びたいという医師にとっては、やりがいを感じられる県ではないでしょうか。

 

 

参考資料

 

国土交通省 国土地理院
http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO/201310/ichiran.pdf

 

宮城県観光連盟
http://www.miyagi-kankou.or.jp/page/osusume_sendai/

 

平成27年国勢調査 
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/pdf/gaiyou.pdf

 

宮城県公式ホームページ
http://www.pref.miyagi.jp/site/ej-earthquake/kikyousien.html

 

平成 27 年 人口動態統計月報年計(概数)の概況 
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/dl/gaikyou27.pdf  

 

内閣府 高齢化の状況
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_1.html

 

厚生労働省 平成26年患者調査の状況 受療率
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/02.pdf

 

宮城県地域医療計画
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/iryou/rmpindex.html

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在はフリーライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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福井県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む
元看護師のフリーライター紅花子です。新コラムとして「保健医療計画からみる地域医療の姿」がスタートしましたが、1つの都道府県の姿をお伝えしています。今回は、福井県の医療事情についてみていきたいと思います。
熊本県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む
元看護師のフリーライター紅花子です。新コラムとして「保健医療計画からみる地域医療の姿」がスタートしましたが、1つの都道府県の姿をお伝えしています。今回は、熊本県の医療事情についてみていきたいと思います。
宮崎県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む
元看護師のフリーライター紅花子です。新コラムとして「保健医療計画からみる地域医療の姿」がスタートしましたが、1つの都道府県の姿をお伝えしています。今回は、宮崎県の医療事情についてみていきたいと思います。
石川県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む
元看護師のフリーライター紅花子です。新コラムとして「保健医療計画からみる地域医療の姿」がスタートしましたが、1つの都道府県の姿をお伝えしています。今回は、石川県の医療事情についてみていきたいと思います。
奈良県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む
元看護師のフリーライター紅花子です。新コラムとして「保健医療計画からみる地域医療の姿」がスタートしましたが、1つの都道府県の姿をお伝えしています。今回は、奈良県の医療事情についてみていきたいと思います。
山口県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む
元看護師のフリーライター紅花子です。新コラムとして「保健医療計画からみる地域医療の姿」がスタートしましたが、1つの都道府県の姿をお伝えしています。今回は、山口県の医療事情についてみていきたいと思います。
愛媛県の医師転職事情と未来〜保健医療計画と地域医療から読む
元看護師のフリーライター紅花子です。新コラムとして「保健医療計画からみる地域医療の姿」がスタートしましたが、1つの都道府県の姿をお伝えしています。今回は、愛媛県の医療事情についてみていきたいと思います。

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