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呼吸器外科医の現状(厚労省医師数調査が伝える事実)

呼吸器外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

■ 記事作成日 2016/11/28 ■ 最終更新日 2017/12/6

医師の絶対数は小さいが増加率が高い

 

厚生労働省の調査によると、2014年の呼吸器外科医の人数は1,772人で、全40科中28位と「医師の数が少なめの診療科」といえます。

一方で、呼吸器内科医の人数は5,555人、17位と、この分野でも「内高外低」の傾向は顕著でした。

 

ただ呼吸器外科医の数は、2004年から2014年の10年間で662人増え、増加率は59.6%にも及びます。同時期、全医師数は15.7%しか増加していないので、呼吸器外科医の急増ぶりは特筆ものです。

呼吸器内科医の増加率も52.0%と、呼吸器外科医には及ばないものの高率を維持しています。

 

医師数 2004年(多い順) 2014年(多い順) 増加
呼吸器外科医 1,110人(22/35位) 1,772人(28/40位) 662人(59.6%)
医師全体 256,668人 296,845人 40,177人(15.7%)
呼吸器内科医 3,655人(16/35位) 5,555人(17/40位) 1,900人(52.0%)

注:2004年調査の診療科数は35科、2014年は40科だった。
注:2004年調査では「呼吸器内科」のことを「呼吸器科」と呼んでいた。ただ2004年調査でも「呼吸器外科」はそのまま用いられていた。

 

呼吸器外科医人気の実態は一般外科医からの転身か?

 

呼吸器外科の人気は急上昇しているといえそうですが、ただ不思議な現象があります。呼吸器外科医の平均年齢は、2004年の41.5歳から2014年の44.3歳へと、10年間で2.8歳上昇しました。

 

同じ期間、全医師の平均年齢は1.5歳しか上がっていません。

呼吸器外科医の平均年齢は、2014年の若さランキングでは40科中13位なので「若い方」といえるのですが、高齢化のスピードが速いのです。

 

純粋に「呼吸器外科人気の高まり」であれば、臨床研修医がこの分野に飛び込んでくるはずで、そうなれば呼吸器外科医の平均年齢は下がるはずです。

 

ところが実際は、下がるどころか上がっているので、「他科の医師が標榜変えしたのではないか」と推測できそうです。
この推測を裏付けるかのように一般外科医が2004年の23,240人から、2014年の15,383人へと約8千人も減っているのです。

 

再び平均年齢を見ると、一般外科医は10年間で4.3歳上昇しています。

このことを考え合わせると「若い一般外科医は専門性を打ちだし、呼吸器外科医などの他科を標榜するようになった」という仮説が立ちそうです。

 

平均年齢 2004年(若さ順) 2014年(若さ順) 増加
呼吸器外科医 41.5歳(4/35位) 44.3歳(13/40位) 2.8歳
医師全体 47.8歳 49.3歳 1.5歳
一般外科医 47.9歳(20/35位) 52.2歳(33/40位) 4.3歳

 

平均年齢 2004年 2014年 増加
呼吸器外科医 1,110人

(22/35位)

1,772人

(28/40位)

662人増

(59.6%アップ)

一般外科医 23,240人

(20/35位)

15,383人

(33/40位)

7,857人減

(33.8%ダウン)

 

呼吸器外科クリニックが急増する「異変」

 

呼吸器外科医は2004年、全35科の中で「最も病院に勤務する医師の割合が多い診療科」でした。同年の呼吸器外科医数は1,110人で、その内訳は、病院医1,105人(99.5%)、診療所医5人(0.5%)です。

 

「病院でないと手に負えない」手術が多い分野なので、当然の結果といえそうです。

 

しかしその10年後の2014年に異変が起きます。同年の呼吸器外科医数は1,772人で、内訳は病院医1,752人(98.9%)、診療所医20人(1.1%)と、診療所医が数にして4倍、診療所医率も0.6ポイント上昇しました。

 

そこで呼吸器外科を標榜している診療所、医院、クリニックのホームページをランダムに調べたところ、

 

  1. かつて病院の呼吸器外科に勤務していた医師が開業後も呼吸器外科を標榜しているが、実質は呼吸器内科クリニック
  2. 呼吸器外科を標榜することで手術適応になるかもしれない患者を受け入れ、実際に手術が必要になった場合は提携病院に紹介する

 

――という2パターンに分かれるようです。

 

 

2004年

2014年

  病院医

(病院医率)

診療所医

(診療所医率)

病院医

(病院医率)

診療所医

(診療所医率)

呼吸器外科 1,105人

(99.5%)
★35科中1位

5人

(0.5%)

1,752人

(98.9%)
★40科中5位

20人

(1.1%)

全医師 163,683人

(63.8%)

92,985人

(36.2%)

194,961人

(65.7%)

101,884人

(34.3%)

呼吸器内科 3,337人

(91.3%)

318人

(8.7%)

5,009人

(90.2%)

546人

(9.8%)


呼吸器外科医の求人票ひろい読み

呼吸器外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

年収の上限額と下限額の差がとても大きい、内科系ではみられない傾向

 

医師求人サイトの「リクルートドクターズキャリア」には、呼吸器外科医の求人が70件掲載されています(2016年11月時点)。求人数は他科と比べると少なめです。

 

循環器外科医の年収の特徴は「低いところはとことん低い」そして「スキルが高いと2000万円超は比較的容易」の2点です。

 

求人票の年収表示において上限額と下限額の差がとても大きく、これは内科系医師の求人票ではあまり見られない傾向です。

 

地域
病院or診療所

年収 業務内容 当直 勤務/休み

北海道釧路市
病院

850万~

 2500万円

記載なし 記載なし 週4~5日勤務

福島県郡山市
病院

1000万~

 2000万円

手術or手術補助、外来、病棟主な疾患「肺腫瘍、縦隔腫瘍、気胸、肺気腫、膿胸、抗酸菌症、アスペルギルス症」 月3~4回 日、祝

年間休日104日

東京都東大和市
病院

650万円~ 手術or手術補助、外来、病棟 月4~6回 週5日勤務

東京都葛飾区
病院

1200万円~ 外来、病棟 月3~4回 週4~5.5日勤務

 

手術スキルをシビアに査定か

 

北海道釧路市の病院の年収提示は850万~2500万円と、下限と上限で3倍近い開きがあります。

 

2500万円は釧路市という地方ならではの金額ですが、850万円については「手術のスキルはシビアに査定する」という雇用主の意図が透けて見えます。

 

また1000万~2000万円を提示している福島県郡山市の病院は、求人票にしっかりと「手術or手術補助」と記載しているので、「指導医レベルの手術スキルがある先生には2000万円を約束しますが、そうではない先生には1000万円です」と読み取ることができます。

 

さらに東京都東大和市は「650万円~」という提示です。もちろん上限の記載がないということは「上限なしという意味」と解釈することもできますが、しかし下限が650万円では、これを閲覧した医師はそれほど大きな期待は持たないでしょう。


「こんなに凄い」世界に誇る日本の呼吸器外科

呼吸器外科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

日本呼吸器外科学会のホームページに「呼吸器外科医になりませんか?」というコーナーがあり、そこに寄稿している虎の門病院の河野匡・呼吸器センター外科部長は「日本の呼吸器外科は世界の呼吸器外科をリードしている」と断言しています。

 

そこまで言い切るのは、きちんとした根拠がありました。

 

手術の成功率が凄い

 

別の学会ですが、やはり呼吸器外科分野の日本胸部外科学会が2010年に行った調査によると、原発性肺癌の手術を受けた33,112人のうち、手術後1カ月以内に死亡したのは0.4%でした。

 

アメリカでは3%にも上るので、日本の呼吸器外科医たちの凄さが分かります。

 

さらに「手術後に不整脈を発生する率」も、日本の1%未満に対し、アメリカは20%超です。また国内の肺癌患者の5年生存率は69.6%ですが、これもアメリカより10ポイント以上上回っています。

 

治療を確立したことが凄い

 

肺癌の手術では郭清するリンパ節の範囲を番号で表示しますが、この「世界スタンダード」を生み出したのは成毛韶夫氏です。

 

やはり世界中で使われている「胸腺腫の進行度分類」も、名古屋市立大学名誉教授の正岡昭氏が提唱しました。

 

両医師ともすでに物故していますが、その伝統は現代でも受け継がれています。先述した河野医師の虎の門病院には、中国、インド、インドネシア、タイ、ベトナムの外科医が研修に訪れます。

 

また、順天堂大学医学部附属順天堂医院の呼吸器外科のホームページには「世界制覇」という文字が掲げられ、その下には「圧倒的な臨床を行い、それを元に圧倒的な研究成果を上げ、世界に向けて発信する」という方針が掲げられています。

 

「世界に冠たる日本の医療」ではありますが、ここまで「豪語」する診療科も珍しいのではないでしょうか。エビデンスに裏打ちされた「自信」からの発言なので、頼もしさを感じます。

参考資料:

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2014年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2004年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/index.html

 

●リクルートドクターズキャリア
https://www.recruit-dc.co.jp/jokin/search/

 

●「呼吸器外科の魅力」(虎の門病院、河野匡)
http://www.jacsurg.gr.jp/top/recrute.html

 

●日本胸部外科学会「2010年日本胸部外科学会学術調査結果」
http://www.jpats.org/modules/general/index.php?content_id=21

 

●順天堂医院「呼吸器外科の教育・診療方針」
http://www.juntendo.ac.jp/hospital/intern/kouki/geka/course/kokyuki/

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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